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251 対抗

■対抗■




トルフォの屋敷の庭では、トルフォ参派が数名、トルフォを囲んで、話していた。


「胡散臭いヤツめ・・・」

「なにごとですか?」


「ここに、エルドがやって来た」

トルフォは右手を顎にやった。


「エルドが?」

「なんのために?」

「わたしのところにいるSSに現場復帰させることを、直接伝えたいということらしい・・・」


「最高理事が、SSに直接ですか?」

「ああ。匂うか?」

トルフォは発言した男を振り返った。


「まさか、超時空転送システムの使用に、気づいたんじゃ・・・」

「ありえん。昨日の今日だ。システムログさえ、解析できてないはずだ」


「作戦は?」

「5日で十分だ。その中で、ユティスを取り戻す」

トルフォには並々ならぬ決意が感じられた。


「エージェント引き上げに関する工作は、彼らに任せて大丈夫なんですか?」

「SSたちなら、ライセンスの仮復帰に目の色変えたよ。エサが大きければ釣れる魚も大きい」


「SSたちへのブレストの指揮は確実でしょうね?」

「うむ。抜け目のない男だ。いろいろあったが、今回は直接ブレストが指揮を執る。あいつなら、万事、うまく片付けるだろう」


「送還のタイミングは、どの時点で?」


「まぁ、結論を急ぐな。Z国とやら、予想以上に、野蛮なようだ。餌をちらつかせて、ちょっと、背中を押すだけで、地球を混乱させるだけのことしてくれるだろうよ。リッキー・Jには、うんと働いてもらうつもりだ」


「そうなると、時空封鎖は、時間の問題ですね?」


「うむ。それこそが狙いだ。それに乗じて、委員会の決定を取り付ける。準備調査前の仮調査で、一波乱起きれば、今度こそ、委員会も、リーエスとは言わんだろうよ。それを見計らって、うまくユティスを引き上げるんだ」


「それまでは、Z国大使館にユティスを保護するんですか?」

「うむ」


「超A級SSは?」

「無能さをさらけ出した、ということになるだろうよ」

にやり・・・。

トルフォは口の端を上げて含み笑いをした。


「では・・・」

「アンニフィルドとクリステアは、ライセンスの剥奪だろうな。悪くとも停止にはなろう」


「ユティスを送還した後、Z国の輩は?」


「放っておけ。騒ぎの発端がヤツラとなれば、委員会もそれなりの対応をするだろう。どのみち、時空封鎖は決定的だし、そうなれば、こっちからの連絡も必要なくなる。ユティスさえ手に入れば、あんな野蛮人どもに用はない。他の連中・・・」


「他の連中とは?」

「ごほんっ!」

トルフォは大きく咳払いした。

「そんなことは、どうでもよい」


「エルドは、どう出し抜くんですか?」


「ふっふ。ミューレスの二の舞とあっては、ヤツもユティスの引き上げに反対はせんさ。そして、地球のプロジェクトが挫折すれば、ミューレスに続いて、立て続けに失敗を重ねたことになろう。今度こそ、エルドも責任を追及され、最高理事を辞めざるを得んだろうよ」


「委員会の理事たちは認めますかねぇ・・・?」

「バカもの。わたしも理事だぞ。ベルザスもいる・・・」


「では、次なる最高理事の座は・・・」

「ユティスを無事取り戻した暁には、その立役者として声の大きいものが得るだろうな。ふっふっふ」

トルフォは一同を見回した。


「異議あるヤツは今のうちに申し出ていいぞ」

にや・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---




一方、エルドの執務室では、5人の転送後の対応について、細かな意思調整が行われていた。


「ユティスたちには連絡はできたのかね?」

エルドがきいた。

「ナナン。これから通知するところです」


「了解した。アンデフロル・デュメーラには、ログ解析情報から、転送地点の割り出しをしてもらいたいが・・・。アンデフロル・デュメーラ、今言ったように可能かな?」

「リーエス、エルド」

アンデフロル・デュメーラの声が部屋に響いた。


「それから、フェリシアスには、スクランブル待機を」

「リーエス。いつでも出動できますよ、エルド」

「うむ。アルダリーム(ありがとう)」


「ユティスには、わたしが直接連絡を入れる」

「リーエス」

一同は同意した。


「エルド?」

「なんだい、フェリシアス?」


「わたしのスクランブルに、最高理事直下のSSをもう一人付けたいのですが?」

「リーエス。SSのアサインはきみに任すよ。きみが一人でも二人でも、必要な人員がいるなら、直ちにしてくれたまえ」


「リーエス。アルダリーム(ありがとう)、エルド」

「きみがそう言うということは、本当に必要だということだ。今回の5人の地球転送はとてもハードになるかもしれんな・・・」

エルドはフェリシアスを見た。


「リーエス。なにか胸騒ぎがします。リュミエラは・・・」

「リーエス。わかるよ。彼女はきみにとって災厄になるかもしれんな・・・」


「地球には、クリステアがいます。正直言いますと、もし、2人が鉢合わせたらどんな風になるやもしれません・・・」


「難しい問題だな、フェリシアス・・・」

「リーエス・・・」


「わたしも、もう少し早く彼女たちのライセンスを復活させておけばよかったと、今になって後悔しているよ」

「エルド・・・。それは、わたし個人の問題で・・・」


「いい、いい。言わずともわかるよ。リュミエラは飛びぬけて優秀なSSだ。しかし、クリステアには彼女にないものがあった。きみはそれを認めている。こうなる前に、彼女たちには次の任務に就かせるべきだったのかもしれん・・・」


「わたしには、なんとも・・・」

「もてる男は辛いな・・・。ふっふ」

エルドは緊張した雰囲気を無理矢理和らげようとしたが、フェリシアスにとっては冗談ではなかった。


「本当に、マズイかもそれません・・・。ふぅ・・・」

フェリシアスは溜息をついた。




エルドはユティスを呼び出した。

「エルド。なんですの?」


ユティスはいつもと雰囲気の違うエルドに途惑った。


「大変憂慮する事態が発生した。トルフォの言葉に乗って、A級以上のSSが4人、エルフィアから消えた。委員会の参事一人も一緒だ」


「まぁ・・・、どういうことですの?」

「トルフォの画策という明確な証拠はまだない。だが、深刻なのは、消えたSSたちというのが、転送システムを無断使用し、地球に転送されたことだ」


「ここへですか?」

「リーエス」


「なんのためにですか?SSなら、アンニフィルドとクリステアがいます」

「リーエス。だが、彼らの狙いは、エージェントとコンタクティーの護衛ではないよ」


「え?どういうことですの?」

「一つに、きみのエルフィア強制送還。二つに、和人の宣誓の無効化。そして、三つに、和人への報復・・・」


「和人さんへの報復って・・・。まさか、そんな・・・!」

ぶるっ。

ユティスは体中に震えが走った。


「いかにも。すでに、相当時間が経過している。クリステアとアンニフィルドの二人には、緊急体制を取らせる。それから、直ちに、フェリシアスを応援に行かせることにした」


「まぁ・・・。そんなに大変なことになってますの?」

「これは純粋にエルフィア人自身の問題だ。地球人に迷惑がかかるようなことがあってはならない」


「リーエス。理事会の参事というのは、トルフォ理事の同調者でしょうか?」

「きみの察しの通りだ。SSたちはともかく、参事のブレストは、地球支援反対派だ」


「リーエス。わたくしを査問会にかけようとなさった方・・・」

「ユティス。そういうことだから、十二分に気をつけてくれ」

「リーエス」


「わたしは確信しているが・・・、トルフォの目的は、和人ときみを永遠に分かち、きみを奪い返すことだよ」

「リーエス・・・」


「わたしは、きみも和人もSSたちも、すべて無事でいてもらいたい」

エルドの脳裏には、ユティスが引き継いだミューレスの悪魔のような滅亡の様子が、浮かんできた。




「聞いたわ。今までのように、地球人相手のお遊びじゃすまないわね」

クリステアが真顔になった。


「ミューレスで、SSを任された4人か・・・」

「どうしたの、クリステア?」

アンニフィルドがクリステアを気遣った。


「超A級SS、元教官リュミエラ。A級SS、シェルダブロウ、ゾーレ、ファナメル」

クリステアは、4人の名前を一つ一つ確認しながら、考え込んだ。


「超A級SS・リュミエラ・・・」

クリステアの表情がみるみるうちに曇っていった。


「知りたくなかったわ・・・」

クリステアは動揺を隠せなかった。


「リュミエラが、どうしたというの?」

アンニフィルドは、そんなクリステアの様子が気になり、励ますつもりで言った。


「あは。揃いも、揃って、資格を剥奪された4人じゃない?」

しかし、クリステアはうかない顔のままだった。


「けどね。結果は、ああだったかもしれないけれど、リュミエラは、本来は、相当な使い手よ。そんな彼女が、ミスをするわけがない。フェリシアスと同等の力があるのよ」

クリステアは慎重に言った。


「教官レベル。わたしたちだって、超A級よ。そのわたしたち二人合わせてもより、上だっていうの?」

アンニフィルドは疑った。


「さぁ。この際、力はあまり関係ないかもね。とにかく、修羅場の経験数なら間違いなくリュミエラが上ね。いや、そういう問題じゃないの・・・」

冷静なクリステアがかなり動揺していた。


「フェリシアス・・・、ね?」

「え?」

「ふぅーーん。やっぱり、男を巡る女の戦いかぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


アンニフィルドが茶化した。


「バカ!」


「負けないでよ、クリステア。親友の恋路は、ちゃんと応援してあげるわよ。フェリシアスは、わたしのタイプじゃないけど・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ほっといてよ!でも、ありがとう。アンニフィルド・・・」

「ところで、ユティスは、5人が地球に内緒で来たってこと、知ってるの?」

「リーエス。エルドから直接聞いてるそうよ・・・」


「ショックを受けたと思うわ」


「リーエス。アンニフィルド・・・。わたしね、ミューレスの惨劇を、思い出すだけで、心底、身震いがする。ユティスが、また、トラウマにならなければいいけど・・・」

「まったくだわ・・・」


「それこそが、トルフォの狙いなのよ」

「惨い。ホント、なんて悪知恵の効くヤツなの・・・」


「ナナン。それは、トルフォのシナリオでは、ないと思うわ。参謀のブレストの策略よ」

はぁ・・・。

クリステアは、溜息をついた。


「そういうことで、フェリシアスも緊急出動・・・」

アンニフィルドが言い終わらないうちに、彼女たちの後ろで声がした。




「ベネル・ロミア(おはよう)、諸君」


さっ。

さっ。

二人は後ろを振り向いた。


「えっ?」


金髪のロングヘアで背が高くすらりとして、しかも筋肉質の男と、彼より少し背の低い、濃い茶色の髪をした男が、SS二人の目の前に、だしぬけに現れた。


「やぁ・・・」

背の高い方の男は、長い金髪をアンニフィルドのように後ろで束ねていた。


「フェ・リ・シ・ア・ス・・・」

クリステアは声を失った。


「久しぶりだな、クリステア」


じわぁ・・・。

クリステアは、フェリシアスが一瞬見せた優しい眼差しに、今にも涙があふれそうになった。それをぐっとこらえて、クリステアはフェリシアスを見つめた。

「フェリ・・・ス」


「いらしてくれましたのね?」

ユティスが笑顔で言った。


「こちらの男性は?」

「A級SS、キャムリエルだ」


「こんにちは。ようこそ、地球へ」

「一緒になれて、光栄です、ユティス」

「リーエス。キャムリエル」


「あれ?キャムリー、あなただったの?フェリシアスの補佐って?」

ちゅっ。

アンニフィルドはおどけた様子でキャムリエルに頬をくっつけた。


「ア、アンニフィルド、クリステア・・・。凄腕の二人と一緒に仕事だなんて、光栄だよ・・・」


「どうせ、ユティス、お目当てなんでしょ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


クリステアが、フェリシアスから離れて、茶目っ気たっぷりに言った。


「なにを言うんだ、クリステア。彼女にはカズトがいるよ。ぼくは、真剣に・・・」

「わかってるわよ。相変わらず冗談が通じないのね?」

「ホント。フェリシアスと大して変んないわ」


「アンニフィルド。委員会がキャムリエルを選んだのは、そのような理由からではない」

「だから、なに?まじになっちゃって・・・」


「彼は、A級SSであると同時に、エストロ5級母船のA級エンジニアだ。いざという時には、アンデフロル・デュメーラとともに、地球上に降りて、行動する」


「それは、心強いですわ」

ぱちくりっ。

アンニフィルドは、フェリシアスを見上げて、ウィンクしながら、陽気に言った。


「エルダフォレ・ミザ・テーラ!ようこそ、地球へ」

「おほん!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「深刻さが伝わってないようだな、アンニフィルド」

「わかってるわよ。緊張したところで、いい仕事ができるとは、限らないでしょ?」


「おどけたところで、仕事の能率が上がる訳でもない」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ん、もう!相変わらず、堅物なんだから!」

アンニフィルドは、フェリシアスにもう一度ウィンクをした。


かあっ。

アンニフィルドの色っぽいウィンクに、たちまちフェリシアスは、赤くなり咳払いした。


「おほん!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ちょっと、アンニフィルド!」

それを間近で見ていたクリステは、真顔で文句を言った。


「ジョークよ!」

「あーーーっ、ひょっとしてクリステア、妬いてんのかい?」


--- ^_^ わっはっは! ---


和人も、クリステアの意外なほど感情的な部分に触れ、びっくりした。


「そのようですわ」

ユティスも、笑顔の中にも、あれっというような顔をした。

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