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248 乗取

■乗取■




ぶわんっ。


エルフィアの文明促進推進支援委員会の専用超時空転送システム室に、5人の影が浮かび上がった。


「異常なし」


「ファナメル」

「リーエス。システム室要員2名の精神波捕捉」


「まだ?」

「待て。チャンスは、一度きりだ。計画した通り、正確に進めるんだ」

ブレストが慎重に言った。


「リーエス」

「時間は?」

「1分前」


「いつでも、OKよ」

「リーエス」


「転送プログラム発動50秒前」

「やれ」

ブレストは小声で指示した。


「リーエス」


ぴっ。

ファナメルの強力な精神波で、転送システム室の管理者は、一瞬で気を失った。


どさっ。

どたっ。


「やったわ」

「よし、入るぞ」


しゃーーー。

システム室に5人が入った。


「転送プログラム発動40秒前」

「行くぞ」


さっさ・・・。

ブレスト他、4人のSSたちも転送室に入った。


「転送先データのチェック」

ぴ、ぱ、ぴ、ぴ・・・。


「30秒前」


「リーエス。指示通りの値に、切り替わってるわ」

「自動転送は?」


ぴ、ぱ。

「設定されているわ」


「予定通り、作戦を実行する」

「リーエス」


「すぐに、全員転送チャンバーに入るんだ」

「リーエス」


すっ。

5人は、転送室内の中央部に、集まった。


「時間。10秒前」

「ゾーレ、ドアロックしろ」

「リーエス」


ぴっ。

「5秒前。4,3、2、1、転送」


ぶわーーーっ。

たちまち5人の周りに白い光が溢れてきて、全員を包んだ。


ぱぁーーー。

ぱっ。


白い光は、ピークに「なると、一瞬で消えた。そして、5人の姿も消えていた。




がたっ。

(お・・・。しまった。一瞬、落ちてしまったぞ)


転送室の管理者の一人が、時間を確認した。

1分か・・・。

ぼぅ・・・。


(居眠り・・・?シセリアに、バレちゃったかも・・・)


彼は頭を振って同僚を見た。

ぷるぷる。


ところが、もう一人も、同じように頭を振っていた。

ほっ・・・。


「シセリア。居眠りしたな?」

「してないわよ。ジェロンド、あなたこそ、してなくて?」


「ははは。ま、まさっか・・・」

「そう?」


ぴっ。

「そうさ。ちゃんと、僕はシステムのログを見てたんだから」


彼はそう言いながら、システム管理画面から転送システムの稼動ログ画面を呼び出した。


ぴぴぴっ・・・


「ログをだね・・・」

が、ジェロンドは途中で言葉を飲み込んだ。


「どうしたの?」

「た・・・、大変だぁ・・・」


「なに?」

「大変なんだよぉ・・・」


「どういうことよ?」

「見ろよ、これ・・・。システムが、作動してたんだ・・・」


「作動?バカなこと言わないでよ。だれも転送なんかしてないわよ」

「ち、違うんだ・・・。こ、これを見てくれよ・・・」


空中スクリーンに映し出されたログに、シセリアも立ちすくんでしまった。


「な、なに・・・これ・・・?」

「システムが動いたんだよ。僕たちが、居眠りしてる時に!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「失礼ね。居眠りなんかしてないわ。考え事してただけよぉ・・・。一瞬、だと思うけど・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんなこと、今はもうどうだっていい。ほら、見てごらんよ。これを・・・」

ログには、明らかに、システムが超銀河間転送を行なったことを示していた。


「絶対に、誤りなんかじゃないぞ・・・」

「リーエス。確かに作動してるわ」


「間違いないよ・・・」

「でも、今の今よ・・・」


「だから、問題なんだ。きみは、それに気づいたかい?」

「ナナン・・・」

「ボクもだ。だれも転送室には入ってない・・・」

「はずよね・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「監視モニタービデオを付けてくれ」

「リーエス」


ぴっ。

しかし、監視モニターには白い光が一面に映っているだけだった。


「やっぱり、妨害工作か・・・」


「ねぇ、だれかが転送されたってこと?」

「リーエス。それとも、きみが悪戯したのかい?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ナナン。あなたこそ、どうなのよ?」

「僕も悪戯なんかしてないぞ。まったく、気づかなかった・・・」

「どういうことなの?」

「二人とも、同時に、居眠りを・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「もとい。同時に、気を失ったってことだよ。そして、その間にシステムが、だれかを、どこかに転送したってこと。しかも、超銀河間の・・・」

「隠密転送だわ・・・」


たらーーー。

転送システム担当者の二人は、冷や汗が流れてくるのを感じた。


ぴ・・・。

「待てよ・・・。一人じゃないみたいだ・・・」

「複数の人間だっていうの?」

「リーエス・・・」


「ジェロンド。ログの詳細を調べてみて」

「リーエス」


ぴっぴっぴ・・・。

「くっそう。ダメだ・・・。稼動詳細情報が、消されている・・・」

「こっちも。転送者も転送先も、詳細データを消されているわ・・・」

シセリアとジェロンドは、顔を見合わせた。


「偶然なんかじゃないわ。明らかに意図的よ・・・」

「極めてね・・・。だれかはわからないが、転送システムを乗っ取られたんだ・・・」


「委員会に、至急、報告しなきゃ・・・」

「リーエス」




転送システム係りから連絡を受けたエルフィアは、不穏な空気に覆われていた。


「エルド、極めて深刻な事態が発生しました」

エルドの秘書は顔を曇らせた。


「なにごとかね、メローズ?」

「はい。なにものかが、転送システムを乗っ取り、無許可で、だれかをどこかに送り込んだ様子です。しかも、転送されたのは、一人ではありません」


「それは本当か・・・?」

エルドは信じられないという顔で、秘書を見た。


「リーエス・・・」

「メローズ、転送先も不明なのか?」

「申し訳ありません」


「きみのせいではない」


ぽんぽん。

エルドは優しく秘書の肩を叩いた。


「どうも・・・」

「それで、システム管理者たちは?」

「無事です。一瞬、意識を失っただけです」


「暴力行為はなかったんだね。それは幸いだった・・・」

「リーエス」


「彼らに話は聞けたのかな?」

「リーエス。あっというまに気を失って、その時の様子は、まったく記憶から抜け落ちています」


「精神操作されたのか・・・」

「リーエス。その筋の専門家が、からんでいる可能性があります」

「リーエス。わかった・・・」


「転送係りも、最初は、自分たちが、一瞬気を失っていることに、まったく

気づかなかったんです」


「それが、どうして、わかったんだ?」

「ログです」


「システムログのことか?」

「リーエス。ログは、問題の時間に、システムが、一瞬作動したことを示していましたが、彼らは、それに、まったく心当たりがなかったんです」


「二人が、二人とも、システムの作動を知らない。つまり、二人は同時に気を失ったということか・・・?」

「リーエス。送室の空気は正常でした。彼らが自然に意識を失う理由はありません。なにものかが、意図的にそうしない限り、そんなことには、なりません」


「きみの言う通りだ・・・」

「とにかく、時間にして、ほんの一瞬なんです」


「どのくらいの間かね?」

「長くても、20秒・・・」


「とんでもなく短いな・・・」

「リーエス。鮮やかです」


「うーーーむ・・・」

エルドは顎に手をやった。


「どこに送ったかはわからないが、確かに、よほどの専門家でない限り、転送先のデータを、一瞬でシステムにセットすることなど、到底無理だな」


「どうやったのでしょうか?」

「蛇の道は蛇だ。システム管理者に、きいてみよう」


「それに、だれが、どこに転送されたんでしょうか?」

「この時期に、転送システムを無断使用するとなると・・・・」


「転送地と関係ありそうですね?」

「無論だ。とにかく、ログを解析すれば、転送先は、必ずわかるはずだね?」

「リーエス」


「転送システム管理室と連絡を取り、至急、調査に取り掛かってくれ給え」

「リーエス」


「それに、だれが、何人転送されたかも・・・」

「リーエス・・・」


はっ。

秘書はふと考え込んだ。


「メローズ、どうしたというのだ?」

「もしかして・・・、なんですが・・・」


「メローズ。この際、なんでもいい。気づいたことがあるなら、話してくれ給え」

「ひょっとしてですが、ユティスに、関係してませんでしょうか?」


「ユティスに・・・?どうして、ユティスに関係があると思うのか?」

「ええ。ユティスの地球派遣について、地球支援反対派が、委員会で、強行に異議申し立てをしたことは、覚えてらっしゃいますか?」


「リーエス。ユティスのエージェント資質にまで踏み込んで、査問会を開こうとしただけでなく、それに失敗すると、理事たちにロビー活動を強化してきた」

「リーエス。その通りです。特に、トルフォたちには、手を焼きました」


「リーエス・・・」

エルドはため息をついた。


「トルフォ・・・。彼は、まだ、諦めていません・・・」

メローズは断言した。


「ユティスをかね・・・?」

「リーエス。もし、彼らが、転送システムの無断使用にからんでいるとしたら・・・?」


「彼は、エルフィアにいるぞ」

「しかし、彼の仲間は?」


「証拠は?」

「もちろん、現段階ではありません。しかし、目的は予想できます・・・」


「地球の支援計画の阻止、または、地球に派遣されているユティスの強制送還・・・」

「もしくは、その両方・・・。いずれにせよ、ユティスを手に入れたがっています」


「それを企んでいる・・・、かもしれんということか?」

「大いにあり得ます」


「うむ。メローズ、真っ先に、その線を調べることにしよう」

「リーエス、エルド」




転送システム室では、メローズが中心となって、管理室のメンバーと転送ログの解析をしていた。


「どうですか?」

メローズは冷静に尋ねた。


「見込みはあります。ログの3重バックアップが功を奏しました。先の2システムについては、ログが見事に消されていましたが、最後のものが、消される直前に、ハイパー通信システムを介して、エルフィア大教会に飛んでいたことが判明しました」


「エルフィア大教会・・・?また、なんで、そのようなところに?」

「それは、エルフィアにおいては、転送システムのバックアップが、エルフィア全土で一体となっているからです」


「なるほど。どこで、どういうシステム事故が、起ころうと、エルフィア全土にパリティ情報があれば、必ず、再生可能になるということですね?」


「仰せの通りです。今回の場合、エルフィア教会には、パリティ情報が送られていますが、それだけではありません。さらにその先にまで、情報が飛んでいます。それらを、トレースしないと、元の情報は再現できないのですが・・・」


「とにかく、ログ再生の道は、残されているというわけね?」

「リーエス。そういうことです。解析できれば、真っ先にお知らせします」

「助かります」


「エルフィア大教会への連絡は?」

「済ませました。そろそろ、向こうの解析が終る頃です」


「じゃ、もうすぐ、ここに連絡が来るのね?」

「リーエス」




「まったく、なんだって、ここに超時空転送システムのログ情報が、あるというの?」


エルフィア大教会の一室では、女性司祭の一人が転送システム室の人間とやりとりをしていた。


「いやぁ。その時その時によって、エルフィア中で、ランダムにバックアップ先が変りますんで、ま、運良く、たまたま、ここに順番が来たとでも・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それは、それは・・・」

「運が良ろしいとでも、おっしゃるんで?」

女性司祭はにっこり微笑んだ。


「リーエス。すべてを愛でる善なるもののお導きです」


にっこり。

「エルドは、大いに感謝されるでしょう。あーーー。もちろん、わたくしも」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ、エルドのためでしたら、労力は惜しみません。で、なにをすれば?」


「本日、転送システムからのログと、そちらから、さらに分配したところの情報をマッチンッグさせたいんです。そうすれば、転送システムを無断使用した、人間や、人数、転送先が、芋づる式に判明します」


「どうやるんですか?」

「こちらから、そちらのシステムに、リクエストを出しますので、立会いをいただければ結構です」


「立ち会うのに、お祈りは必要ですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「もちろんです。ログが無事再現できますように!」

「うふふ。それでしたら、わたくしにも、大いに協力ができそうです」

「よろしく、お願い申しあげます」




「リーエス。すべてを愛でる善なるものより、汝に、永遠の幸、あらんことを」

「ア・リーエス」



「メローズ、妙なことが・・・」

「どうしたの?なにか判明したのですか?」


「これをご覧ください」

転送システム室でログ解析中の作業員は、あるログを示した。


「これは?」

「プログラム設定です・・・」


「どういうこと?」

「これは、予め、転送システムが、そう作動するように組まれていた、ということです」


「いつのこと?」

「数ヶ月前・・・、正確に言うと、97日前です」


「では、その時、既に、システムが乗っ取られていたと?」

「リーエス。そういうことになります」


「いったいだれが・・・?」

「さぁ・・・」


「どうして、その日に、組む必要があったのかしら?」

「わかりません・・・。でも、これだけは、言えそうです」


「なにか閃くものがあるの?」

「リーエス。そうした人間がいること。なにかしらの意図で、システムの作動を設定したこと。そして、その日でなくてはならなかったということ」


「そう・・・。で、その日、なにがあったの?」

「転送システムのメンテナンス。Aチェックです」


「Aチェックですって・・・?」

「リーエス。ハードのみならず、ソフトのチェックもしっかりしたはずです」


「これは、なにかあるわね・・・」

「だれが係わったの?」


「わたしを含め、10人近かったと・・・」


「怪しそうな顔ぶれは?」

「ナナン。わたしの思い出す限り、もう長い付き合いのメンバーばかりですので、彼らのうちに、そのようなことする人間がいるとは思われません・・・」


「そう・・・」

「教会に、メンテナンス係りを呼びますか?」


「ナナン。まずは、その日のことを調べましょう。もし、本当に、彼らがからんでいるとしたら、うっかりヒアリングなんかできません」


「それは、またなぜ?」

「黒幕たちに、こちらが、それに気づいたと知らせるようなものです」


「エンジニアたちから、漏れるでしょうね?」

「リーエス。彼らは、転送システムを無断使用した痕跡を、消し去ったつもりでいます」


「今回のシステム設定には、運用担当者か、メンテ担当者か、設計者か、とにかく、それを組める内部事情に詳しいもの手助けがなくては、とてもできることではないと思います」

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