表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
247/408

247 空似

■空似■




ばちばちばち!


「きゃはははは!やってくれるじゃない、キャサリン!」

ホテルの自室でテレビで観戦していたクリスチナは、手を売って喜んだ。


「ショーとしちゃ、最高の盛り上がりだな」


びくんっ!

クリスチナの後ろでジョバンニの声がし、クリスチナは振り返った。


「わっ!びっくりさせないでよぉ!」

「そんなんじゃ、優勝は本当に無理だぜ」


「うるさいわねぇ。で、どこに行ってたのよぉ?」

「特等席でショーを見てたのさ」


「特等席?」


--- ^_^ わっはっは! ---


その時、クリスチナはジョバンニの黒ずくめのスーツに気付いた。


はっ・・・。

「あなた・・・、まさか、あのリングの中で・・・」


にやり。

「そうだ」


「信じられない・・・。レフェリーに立てついていた葬儀屋さんでしょ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ドクターだ。訂正しろ」

「そうとも言うのね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「左手を出せ。包帯を巻いてやる」

しゅるしゅる・・・。

ジョバンニはクリステアにしたように、クリスチナにも包帯を巻いた。


きゅきゅっ。

「1回、2回・・・。6回、これでよし・・・」

ジョバンニは手際よく包帯を巻いていった。


にっ。

「クリスにしたのとまったく同じ巻き方だぜ」


「ありがとう・・・」

クリスチナはジョバンニをじっと見つめた。




「さてと、わたしたちはちょっと用事があるけど、あなたたちはどうする?」

真紀がイザベルと二宮を見た。


「オレたちは・・・」

二宮はイザベルの機嫌を窺った。


「わたしは・・・」

「食事でもしようよ、イザベルちゃん。さっきの試合の話しでもしながら」


「あは。そういうことなら、そうします。社長さんたちと!」

「ええ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「信用は一日にしてならず。だな、二宮?」

俊介が二宮にウィンクした。


「じゃ、一緒に来て。でもね・・・」

真紀は立ち止まって、二人に向き直った。


「これからのことは、絶対に秘密よ。国家機密に係わることだから・・・」

「国家機密・・・?」


ごっくん・・・。

二宮は息を飲み込んだ。


「じゃ、いいです・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ダメ、もう二人とも知ったわけだから。イザベル、あなたも来ること」

「あ、はい・・・」

イザベルは心配そうに頷いた。


「アンニフィルド、クリステアに連絡してくれ」

俊介がアンニフィルドに言った。


「リーエス。みんな、そこの部屋に入って」

アンニフィルドはスタジアムの中の空き部屋にみんなを入れた。


「な、なに?」

イザベルは不安になり、無意識に身構えた。




「ところで、クリステアは?」

「後ろを見な」


「後ろ?」


クリスチナが振り返ると、そこにあんぐり口を開けたセルジとクリステアが立っていた。

「・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「セルジ・・・、いつ現われたの?」

「きみこそ、いつ現われたんだ?」

「あなたが現われたんじゃない!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「セルジ、クリスチナ、二人ともよく聞いて」

クリステアが、真面目な顔になった。


「わたしたちは、ある極秘のプロジェクトに携わっているの」

「極秘プロジェクトだって・・・?」


「リーエス。だから、このことは絶対に内緒にして欲しいの」

「わかった」


「クリスは?」

「わ、わかったわ・・・」


「いつかは、みんな真相を知ることになるけど、今は、まだ公にはできないわ。地球全体にとって、とても大切なことなの」


「わかってるな。クリスが入れ替わってたことが、バレりゃ、あんたらもタダじゃ済まないことも」

「了解した・・・」


「わたしたちは、瞬間移動装置を実用化したの。何万年も前のことだけど」

「んん?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「移動は、このシステムのおかげ。純粋に科学の成果だわ。呪術や妖術、おまじないの類ではないから、少しも恐れることはないわよ」


「はぁ・・・、そうは言っても・・・」

「そうよ。この目で見なけりゃ、とても現実とは思えない・・・」


「アンデフロル・デュメーラ、アンニフィルドと繋いで」

クリステアは両手を広げて天井を見つめた。


「リーエス。SS・クリステア、只今、お繋ぎます」


しゅん。

間髪入れず、エストロ5級の母船CPUの擬似生体イメージ体が現われ、それに答えた。


「だ、だれ?」

「ぎゃあっ!」


「アンニフィルドを呼び出しました」

アンデフロル・デュメーラの落ち着いた声が心地よく部屋に響いた。


ぽわーーーん。

部屋の真ん中に立体スクリーンが出現した。


「はぁーーーい、クリステア。手首はよさそうね?」

アンニフィルドとユティスたちが、手を振っていた。


ぎょっ・・・。

「な、なんだ!今度は・・・?」


びくっ。

「だ、だれよ、こいつら?」


「最新プロジェクトの一つ、空中スクリーンに映った立体映像だ」

ジョバンニが言った。


「合衆国のテクノロジーなの?」

「すげぇ・・・」


「といいたいところだが、実は・・・」

「日本なのか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「さすが、ロボットが作ったロボットが、ロボットを作るだけあるわ」

「といいたいところだが、本当のところは・・・」


「違うの?」

「エルフィアのテクノロジーよ」

にたっ。


「エルフィア?」


にこっ。

「エルフィアよ」


にっこり。

「エルフィアねぇ・・・」


にんまり・・・。

「そうだ、エルフィアだ・・・」


セルジとクリスチナは、ゆっくりと顔を見合わせた。

「知らない」

「オレも・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


ゆらゆら・・・。

「それに、この一杯やって揺れてるお嬢さんは、だれなんだ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


セルジは、イメージ体のエストロ5級母船のCPU、擬似精神体に向き直った。


「わたしは、アンデフロル・デュメーラ」


「彼女は、わたしたちを技術的にサポートしてくれるエストロ5級母船のCPUよ。会話する時には、こうして擬似生体のイメージ体で現われるの」


「はい?」

「わからんでもいい。そのうちに慣れる」

ジョバンニは言った。


「とにかく、これが現実だということ、そして、内緒にしておいて欲しいということよ」

空中立体スクリーンの中から、アンニフィルドが答えた。


「信じられない・・・」

「じゃ、こういうことよ」

アンニフィルドは右手を挙げ、優雅な動作でなにか指示を出した。


ぽわーーーっ。

ぱっ。

スクリーン中のアンニフィルドたちが、白い光に包まれると、突然消えた。


「げっ!」

「き、消えたわ!」




同時に部屋に白い光が充満し、一瞬の後、そこにスクリーンに映っていた面々が立っていた。


「はじめまして、クリス。あは」

アンニフィルドが微笑んだ。


「よぅ!」

俊介が右手を上げた。


「他人の空似にしても、ほんとにそっクリッスね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ、二宮さんったら!」

「ふふ。二宮、寒いわよぉ」

真紀が笑いながらイザベルに同意を求めた。


「どう、びっくりした?」

クリステアがクリスチナたちを見つめた。


「こんばんわ。うふふ」

ユティスが微笑んだ。


「ようこそ、日本へ」

和人が握手しようと手を差し伸べた。


「どうも・・・」

クリスチナは和人の手を軽く握ったが、やっとそう言っただけだった。


「あの・・・、ここは・・・?」

和人が辺りを見回した。


「わたしの部屋よ」

クリスチナが答えた。


「クリスチナ」

クリステアがクリスチナを呼んだ。


すくっ。

クリスチナがソファーから立ち上がり、クリステアと並んだ。


「どう?」

「クリス・ジニンスカヤさんが、二人いる・・・?」

イザベルがクリスチナとクリステアを見比べて、困惑したように言った。


「クリステア、その髪型・・・」

「えへ。クリスと同じでしょ?」


「ええ?双子だったんですか、あなたたち?」

イザベルが目を白黒させた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「実の母ちゃんでも、見分けがつかないよ」

セルジがあらためて言った。


「まぁ、そう言う訳だ。わざわざ、クリステアが左手首を捻挫したのも、よんどころない事情があったってことだな」

俊介は両手を広げた。


「じゃあ・・・、その、リングで戦ってたクリスさんて・・・」

二宮はイザベルと顔を見合わせた。


「お察しの通り、わたし・・・。因みに、手首の捻挫は、もう治ってるわよ」


「ええ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ほれ」


ぎゅっ。

クリステアは二宮の手を左手で握り締めた。


「あ痛たたたーーーっ!」


ひらひら・・・。

「な、なにすんるんだよぉ!」

二宮は手を振った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「わっはっは!」


「負傷したのは、わたしの方なの・・・。試合で出れないと、いろいろ困ったことになって・・・」


「それで、なんという偶然か、ボクがクリステアに出会ったということさ。天から助けとは、まさにこのことだね」


「ところで、セルジ、なんで飲み屋街をうろついてたの?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なに疑ってるんだ?ボクは、きみを探し回ってたんだぞ」


「ありがとう、恩に着るわ、クリステア」

「どうも」


「なんで、そうなるんだ?彼女を見つけ、とっさに判断し、説得したのはボクだぞ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「とにかく、そういうことで、どこかでつじつま合わせが必要になったんですわ」

「ユティスの言う通りね。クリスが左手首を検査でもされた日には、たちどころにバレちゃうわ」

アンニフィルドがクリスチナにウィンクした。


「ええ。本当にありがとう。心より感謝してるわ」

「それでなんですね。左手首を負傷したように・・・」


「ええ。騙してて、ご免なさい」

「でも、それ、立派な詐欺じゃないのか?」

二宮が言った。


「そう。詐欺だわ。だから、替え玉のわたしが、優勝する訳にはいかなかったの」


「わかります。それに、あのキャサリンさんのベルト返上とコメント・・・。今、やっと納得できました」

「ものわかりがいいわね、イザベル」


「もし、わたしがキャサリンさんだったら、きっと同じことをしてると思います」


「そうかもしれんな。クリステアにあれだけスピードと技を見せつけられ、圧倒的に押されてたんだから。キャサリンとしては、腹が煮えくり返るだろうな」

俊介が頷いた。


「その相手に、手首の故障で、はい、棄権です。チャンピオンベルトは持ってっていいわよ。じゃ、納得しないわよ。武道家のプライドってものがあるでしょ?」

アンニフィルドも加わった。


「うん、うん・・・」

「それに、こっちの理由もある」

ジョバンニはクリステアに目配せした。


「合衆国にも、なにか理由があるんですか?」

二宮はびっくりしたように言った。


「まぁな」


「初戦のジェニー・M、彼女はZ国の通商部のエージェント。超最先端技術の鍵を知っているユティスの拉致を企んでいる、その一味なの」

クリステアは真顔になった。


「ええ?」

「もし、ユティスを拉致されるようなことがあれば、国際問題、いや超銀河間問題に発展しかねない」


「超銀河問題って?」

「超銀河問題ですって?」

イザベルと二宮、そしてクリスチナとセルジは、同時に聞き返した。


--- ^_^ わっはっは! ---


「とにかく、ユティスは大統領並みのVIPと言えば、わかるか?」

ジョバンニが4人を見つめた。


「そんなぁ・・・。ユティスさんが、超最先端技術の秘密を知ってるVIPだっただなんだって・・・」

イザベルは仰天していた。


「そうよ、イザベル。なにがあっても、ユティスたちをZ国には奪われてはいけない」

真紀が慎重に言った。




セレアムの社員たちは、ホテルを後にした。


「ほら、みんな乗れよ。帰るぞ」

俊介がみんなを急がせた。


「はぁーーーい」


「でも、どうして、まだ入社してもいないわたしなんかに、そんな大変な秘密を打ち明けたのですか?」

「それはな、イザベル。きみがセレアムに入ることもわかってるし、ここで、大事な役目を担うこともわかってるからだ。しかも・・・」


「オレとスーパーカップルになることも・・・」

「二宮とぉ?バカップルの間違いじゃない?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ひどぉーーーい、アンニフィルドさん!」

「あははは。イザベルはともかく、カップルじゃくても、コイツはアホだからな!」


「常務!イザベルちゃんの前で、あんまりじゃないっすかぁ・・・」

「で、イザベル。わたしたちは、仕事もそうだけど、あなたを高く買ってるの」


「ええ・・・?なにかの間違いじゃないですか?」


「いいや。姉貴の言ったことは本当さ。オレたちは、きみが口が堅いことを知ってるつもりだ。いずれ、彼女たちのことは、世間に公表される。きみには、いわば、ちょっとしたテストも兼ねてるんだ」


「なんのテストですか?」

「地球外超高文明世界の生命体と接触して、なお、平静で日常生活を続けられるか・・・」


「ど、どういうことですか・・・、その、地球外超高文明世界って・・・?」

「平たく言えば、宇宙人ってことよ」


「ええっ!」

イザベルは目を大きく開き仰天した。

「宇宙人・・・。ユティスさんたちが・・・?」


「なになに?宇宙人ですって、聞き捨てならないわね。人を怪物みたいな言い方してぇ」


「ち、違うぜ、アンニフィルド」

「俊介、あなただって、四分の一、宇宙人でしょうが!」


「ええ?」

今度はイザベルに加えて二宮が腰を抜かす番だった。


がたっ。

「常務が、宇宙人だってぇ・・・?」


「悪いかよ?」

「おす・・・。なんか実感湧かないんすけど・・・。いつ、なったんですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「アホか、宇宙怪人、二宮!」


「オレ、怪人なんっすかぁ?」

「土星の裏から裏ビデオと共にやってきた、宇宙怪人。人呼んで、二宮祐樹!」


「裏ビデオと共にって、どういうことですか?」

「どういうことですか?」


きょとん・・・。

イザベルとユティスが同時にきいてきた。


「あー、ユティスとイザベルちゃんは知らなくていいの。特殊な技術用語だから」


--- ^_^ わっはっは! ---


「技術用語なんですか、二宮さん・・・?」

「そうそう。もう、いいから、いいから・・・」


「で、さっきの質問、なんだって、イザベル?」

俊介が話を元に戻した。


「ですから、みなさん、宇宙人なんですか?」

「変か?」


「ぜんぜん、そうは見えませんけど・・・」

「だろ?」

二宮がイザベルに同意を求めた。


「きっと、地球人に化けてるんですね・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なんじゃ、それ?」


「化けてなんかないわ。地よ、地。ありのまま。DNAだって同じよ。地球人とは子供だって作れるんだからね・・・」

ぱち。

アンニフィルドが俊介を見て片目をつむった。


「子供?」

「リーエス。欲しいの、俊介?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「おっほんっ!」


「それはそれとして、わたしたち、地球人と同じなの。化ける必要なんてないわ」

にこっ。

クリステアも微笑んだ。


「本当に、化けてないんですか?」

「リーエス。わたくしたちは、ほとんどお化粧はしません」

にこにこ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あははは!ユティス、あなた天然だわよぉ!」

真紀が大笑いした。


「ぷふっ。面白い、ユティスさん」

「そうですか。良かった、みんな楽しそうで」


「あははは」

「わははは」


レストランへの道中、みんなははしゃぎまくっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ