237 誤認
■誤認■
クリステア、アンニフィルドのSS二人と、俊介、そしてアンデフロル・デュメーラは、精神波で会話をしていた。
(くっくっく・・・。アンニフィルドの指示よ)
クリステアは笑いを堪えた。
(実に、いいタミングだ)
俊介が言った。
(会話記録中です)
アンデフロル・デュメーラが会話を記録している旨、SSたちに告げた。
(アンニフィルド、いい調子よ)
(あは。絶妙だったでしょう?)
(俊介から、例の件、単刀直入に聞いてくれる)
(リーエス。わかったぜ)
(え?今、シェルダブロウって言ったわよね?)
(リーエス。SS・クリステア)
(尻尾を出し始めたわ)
(続けてよ、俊介)
(リーエス。まかしとけ)
「これは、これは、セレアムの常務さん」
「ごきげんよう。リッキーさん。エルフィア人たちについて、確認したいことが、あるようですな?」
「ええ。エルフィアのエージェントは、ユティスだけなのか?」
「そん訳ないだろ。エルフィア本星には、ゴマンといるさ」
「ここの話しだよ」
「さぁ、どうかね。オレは一人しか知らん」
「われわれは、あくまでも彼女をわが国に招聘しようと思っている。が、他にいるなら、礼を欠くことになるんでね」
「一度断られたんじゃないのか?」
「いや。準備不足のための延期だ。日本政府は断ったわけではないんだ」
「それがお断りってことじゃないのか?」
「いえ。地球の一般的解釈ではノーではありません」
--- ^_^ わっはっは! ---
(まったく、政府の連中、あいまいな回答をしやがったな・・・。こにう答え方をするから、つけこまれるんだぜ、まったく・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「再確認か?」
「そういうことだ」
「で、招聘とはどういうことだ?」
「あんたも、彼女たちの歌は知ってるだろう。わが国の指導的立場の人間が、ぜひ、生で聞きたがっているんだ。それに、子供たちもね」
「なるほど。だが、彼女たちは行かせないよ」
「そうできるかな?」
「なに?」
ばちばちっ。
二人の会話は静かながら全面対決の様相を呈してきた。
「ふっふ。こっちには、切り札がある。あんたらは、ユティスを失い、われわれは、代わりに得る」
「ユティスをか?」
「ふっふ・・・。それなら、もっといいな」
「どういうことだ?」
「悪い頭で考えるんだな。では・・・。あー、二宮は解放するよ。どうせ、会話もエルフィア人のセキュリティたちが、モニターしてるんだろ?」
「まさか」
「芝居が下手だな。心配するな。催眠や暗示はかけていない。もちろん化学物質も使ってはいない。では」
ぴつ。
リッキーはそこで電話を切った。
「元に戻れ、二宮」
ぱん。
リッキーが両手を合わせて音を出すと、二宮は正気に戻った。
「あ・・・」
「どうも、大変ためになるお話でしたよ、二宮さん」
リッキーは愛想の良い笑いを浮かべた。
「そ、そうっすか・・・。そりゃ、どうも・・・」
「あ、これは、お土産です」
ジェニーが薬草茶のパックを1箱渡した。
「会社の方と、お楽しみください」
「こりゃ、どうも、ありがとうございます」
「わが国とビジネスの計画が出ましたら、ご連絡してくださいよ」
「あ、はい。上に言っておきます」
「じゃ、また。そうそう、スマホをお忘れなく」
リッキーはテーブルのスマホを指差した。
「あ、どうも。じゃ、失礼します。おす」
--- ^_^ わっはっは! ---
二宮は両手で十字を切った。
(終ったわよ、アンデフロル・デュメーラ)
(リーエス、SS・クリステア。直ちに、エルフィアに記録を送ります)
(分析にかけるよう、エルドに言ってね)
(リーエス)
(さて、ジョバンニ。わたしたちも、デートする?)
(デートですか、マム?)
(リーエス。二宮のお守りだけど、あっちがカップルなのに、こっちは別々じゃ、やりにくいし、変だし、第一、味気ないでしょ?)
(リッキーのウォッチは?)
(彼女に頼むわ・・・。アンデフロル・デュメーラ?)
(リーエス。ウォッチの継続をします)
(頼むわよ)
ぱち。
クリステアはジョバンニに片目をつむった。
(ということ・・・)
(イエス・マム。お望み通りにします)
(よしよし。いい子ね)
(ちょっと、クリステア。まじめにやってよね)
アンニフィルドが会話に入ってきた。
(あーら、硬いこと言わないでよ。二宮のデート覗くほど、野暮じゃないわ。アンニフィルド、あなたも俊介とよろしくね。こっちは、野外で半日以上重労働してんだから、ここいらで、一息いれることにするわ)
(はいはい。どうぞ、ご堪能くださいだわ。あーーーん、俊介、わたしもデートしたい!)
--- ^_^ わっはっは! ---
そわそわそわ・・・。
二宮は、5時半から、イザベルを待っていた。
たったったった・・・。
はぁ、はぁ・・・。
「待ちました、二宮さん?」
「おす。いいや。ぜーんぜん、オレも、今、来たところだから」
「それ、すっごく待っていたって、ことですよね?」
にこっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「おす。時間通りですよ」
時計は6時5分だった。
「うふ。許容範囲でしたら、嬉しいです。お久しぶりです。先輩」
「イザベルちゃん、先輩はないだろ、先輩は?ここは、会社じゃないんだから」
「だったら、『おす』も止めてください。ここは、道場じゃないんですから」
「あははは」
「うふふふ」
「もう、着替えたんだ?」
「当ったり前です。あんな格好で、街中は歩けません」
--- ^_^ わっはっは! ---
「なんで?オレは歓迎だなぁ・・・。でへへ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「二宮さんは、わたしがみんなの視線で集中砲火になっても、構わないんですか?」
「それは、困る・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
にこっ。
「うふ。これから、どうします?」
「この時間じゃ、まず、夕飯かなぁ?」
「はい。お腹が空きました」
「おっし。なにを食べようか?」
「チョウザメのキャビアに、トリュフォに、からすみに、冬虫夏草、海燕の巣のスープ、くさやに、ドリアン。お飲み物は、ロイ・ルデレールのクリステア」
「はぁ・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ってのは、無理だと思いますんで、その辺の居酒屋に行きませんか?」
「OK。OK。それなら、まかしといて」
「どうします、マム?」
ジョバンニはクリステアを振り返った。
「行くに決まってるじゃない」
「居酒屋って言ってましたよ、マム」
「なんか、地球の珍味を食べに行くのかしら?」
「当たりませんかね?」
「ナナン。ない。ない。あなたを見れば、ばい菌も、ウィルスも、寄生虫も、みんな、たちどころに、逃げ出すわ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「お褒めいただき、ありがとうございます、マム」
「あ、わかった?あなた、日本食、食べたことある?」
「イエス、マム。納豆と、くさや、でしたら」
--- ^_^ わっはっは! ---
「くさや・・・?なにそれ?おいいしいの?」
「味は保証します。一度食べれば、忘れませんよ」
「じゃ、今度ね」
--- ^_^ わっはっは! ---
がらーーー。
「へい、らっしゃい。2名様、ご案内」
「らっしゃーーーい」
二宮とイザベルは、中央の席に着いた。そこは、目の前で、注文の品を、その場で料理してくれるのが見れるところだった。
じゅわっ!
じゅ、じゅーーーっ!
「うぁ・・・。目の前で、焼くんですね」
「そうだよ。面白いかい?」
「ええ。ここを選んで、正解ですね?」
「そりゃそうさ。君が選んだ男もね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「うふふ。なんでしょう?」
「おす。そういうことです」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ま、いいから、なににする?」
「じゃあ、二宮さんに、お任せします」
「そうこなくっちゃなぁ」
どーーーん。
「オレはイザベルちゃんで、イザベルちゃんはオレ」
「え?」
「・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「・・・」
「あはは。冗談っすよぉ・・・」
「あはは。はい」
二宮はシーフードの塩焼きを、いくつかオーダーした。
「へーい。2名様、ご案内」
さっ。
ぱっ。
ささっ。
クリステアとジョバンニが居酒屋に入ると、一斉に、店員と客が振り向いた。
「でっけぇ・・・」
「だれだ、あの外人・・・?」
「女の方は、すっげぇ、美人じゃん・・・」
「ガールフレンドじゃない?」
「あ、知ってるぞ、オレ。格闘競技のさ・・・。なんだっけ・・・」
「明日の晩にある異種格闘女性トーナメント、レジーナ?」
「そうそう」
「違うよ。思い出した。ラトアニアのクリス・ジニンスカヤ・・・」
「ウソ?」
「いや、そうに違いない。隣は、恐らく護衛だ」
「注目を浴びてるようです、マム」
「のようね・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
がらっ。
「おや、もしやと思ってつけてたら、やっぱり、クリスじゃないか?」
つかつか・・・。
「クリス、なぜ、すぐ電話をよこさなかった?」
一人の外国人がドアを開けて、ジョバンニとクリステアに近づいてきた。
「だれよ、こいつ?」
「データベースにありません」
「知らないってことね?」
クリステアは両手を広げて、肩をすくめた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「あんたたち、ラトアニア人だろ?」
外国人の男が怪訝そうに言った。
「はぁ?」
「なに言ってるのかしら?」
「だれかと間違えてるようです、マム」
「とにかく、クリス、きみを探してたんだぞ。予定時刻になっても連絡は来ないし、こっちの身にもなってくれよ。今晩は試合の前夜祭だろ?そろそろ、出かける準備しなくていいのか?」
「だれ、あなた?」
クリステアは男に静かに言った。
「なに、言ってるんだ?日本での試合に備えて、こっちできみの世話をすることになった、セコンドのセルジだよ」
「セルジ・・・?聞いてないわね」
セルジは憤懣やるかたないといった表情で、両手を打った。
ばんっ。
「頼むぜ・・・。だから、言ったんだ、オレの顔写真くらい、先に紹介してくれって」
「なんのことですかねぇ、マム?」
くすっ。
「格闘技の試合だって。面白そうじゃない・・・。乗ってみる?」
クリステアはジョバンニを振り返った。
「マム。よけいな考えは、持たない方が・・・」
「対戦相手は?」
「トーナメント表では、最初の対戦相手は、Z国、ジェニー・Mだ」
はっ。
「マム・・・」
二人は見合った。
「ふっふ。これは、本当に、面白いことになりそうよ」
「オレは、お勧めしませんが・・・」
「セルジ、説明してくれない?その試合とか、前夜祭とか・・・」
「だから、きみは晩餐会に・・・」
「ダメです、マム」
「気が変ったわ。いいでしょ?ね、ジョバンニ?」
にこっ。
「仕方ありません。イエス・マム」
「いい子だこと」
ちゅ。
クリステアは、ジョバンニの頬にキッスした。
3人は店を出た。
「あれ、あの外国人女、クリステアに似てるような気がするけど・・・」
二宮は、彼女の隣にいるサングラスをかけた大柄なダークスーツの男に、肩をすくめた。
「男連れか・・・。じゃ、違うな」
--- ^_^ わっはっは! ---
「二宮さん、お知り合いなの?」
「いや、人違い。うちに入った新人でさぁ、システム部にクリステアって娘がいるんだけど、彼女かと思ったんだ」
「ユティスさんのお友達?」
「そ、そう。格闘技は抜群らしんだが、やってるとこ見たことないし」
「そなことないです。わたしはコテンパンにされました」
「ええ、イザベルちゃんを?」
「はい。後、アンニフィルドさんも。お二人プロのSSなんですって」
「そう言ってたよな。そう言えば・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「でも、とっても美人・・・」
「なに言ってんだよ。イザベルちゃんの方が、キレイで、可愛いに決まってる」
きっぱり。
「え?」
でれーーー。
--- ^_^ わっはっは! ---
「そんなことよりさ、なんか頼もうよ、イザベルちゃん」
「おす。そうですね」
「あ、おす、言った!」
「うふふ。二宮さんのマネです」
--- ^_^ わっはっは! ---
(アンデフロル・デュメーラ?)
(リーエス、SS・クリステア。ご用ですか?)
(リーエス。ちょっと寄り道することにしたわ。二宮たちのウォッチを継続してくれる?)
(リーエス)
「セルジ、異種格闘技トーナメントってなに?」
「クリス、まじで言ってるのかい?」
「そう。まじ。でも、面白そうだわね」
「きみがユーモアの持ち主ってことは知ってるけど、この期に及んで、とぼけるのは勘弁してくれよ。試合は明日の晩。2時間後には前夜祭なんだぜ?」
「わかったわ。もっと、聞かせてよ?」
「いいけど・・・」
るるるーーー。
「あ、ちょっと待ってくれ、クリス・・・」
セルジは携帯電話を取り出した。
「もしもし、セルジです。あー、それでしたら、本人と、今、会ってますよ」
「本人?どういうことだ?」
「だから、クリスとボディーガードと、会ってるところだって、言ったんですよ」
「そんな、ばかな。クリスは、成田空港の医務室で足止めだ」
「ええ、成田?そんなバカなぁ・・・」
「そっちこそ、ボケてんじゃねぇのか?」
「そんなわけ・・・」
「とにかく、クリスは成田にいる!」
「にしても、彼女が医務室ってのは、どういうことで・・・?試合は明晩ですよ。大丈夫なんですか?」
「左の手首をくじいたんだ。あれほど言っておいたのに、階段で足を踏み外し、左手をついた瞬間にやったらしい」
「まさか、戦えないだなんて言わないでしょうね?」
「ああ。お察しの通りだよ」
「ジョークは勘弁してください」
「冗談なんかで、これが言えるか。とりあえず、東京には予定通り来させようと思う。だが、このままじゃ、試合には出られん」
「ホテルへの到着は?」
「これからホテル直行のリムジンに乗るとか言ってたから、早くて1時間後だな」
「ホテルはベネチアン・ベルメール東京ですか?」
「そうだ。じゃ、クリスの世話は頼むぞ」
「待ってくださいよ。じゃ、ここにいる二人は?」
「知るか。別人じゃないのか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「でも、確かに本人ですよ・・・」
「そんなことはない。クリスは成田だ」
「ええ?」
セルジは、クリステアを見た。
「どう見ても、クリスだぞ・・・」
「どうかしたか、セルジ?」
「ちょっと待て、確かめる」
セルジはクリステアをまじまじと見つめた。
「きみは・・・、そのぉ、クリスなのか・・・?」
「ええ。クリスは、クリスだけど?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「おい、やっぱり、ここにいるのはクリスじゃないか。顔、形、背格好、どれをとってみても、クリスだ!」
「セルジ、フルネームえお聞いてみろ。クリスはクリスチナだぞ」
「わかった・・・」
セルジはクリステアを見つめた。
「きみの名前はクリスだけど・・・」
「でも、ちゃんと最後まで言ってよね、クリステアって」
「クリステア・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「おい、セルジ?」
「あ、はい。どうなんだ・・・」
「クリスはクリスでも、クリステア・・・だそうです」
「クリステア?そんなの知るもんか。本名はクリスチナだ」
ぷち。
--- ^_^ わっはっは! ---