234 BS
■BS■
「やっと、アンニフィルドから開放されたぜ・・・」
二宮はラブリー・エンタープライズから国際展示場へ移動した。
ざわざわ。
がやがや。
「当社では・・・」
「アンケートにお答えいただきますと、もれなく、ドリンク券をお渡ししています」
コンパニオンは際どいコスチュームに包まれて、通りがかりの来場者に、アンケートを必死で依頼していた。
ちらっ。
ちらっ。
見て見ぬ振りをして、来場者の大半を占める男性たちは、彼女たちを盗み見をした。
--- ^_^ わっはっは! ---
ざわざわ。
どんっ!
ぷにゅぅ。
「きゃあ!失礼しました!」
ロングヘアを結ったミニスカートのコンパニオンが、すぐに謝った。
(お・・・、お尻に、ぶつかっちゃった・・・。ラッキー!)
--- ^_^ わっはっは! ---
コンパニオンのコスチュームが気になった男は、頭を下げた。
(ちょっと、なにやってんだか、二宮・・・)
クリステアは、二宮の後ろをずっと着いていたが、あまりに、二宮がコンパニオンに気を取られているのにあきれ返った。
(さっさと、Z国のブースに行きなさい!)
「まぁ、二宮さん・・・」
「ええ?」
にこっ。
(イ、イザベル・・・ちゃん・・・か・・・。今、なんか、クリステアに怒鳴られたような機がしたんだけど・・・)
二宮は驚いた。
「お久しぶりです」
そして二宮は喜んだ。
「お・・・す」
さっ。
二宮はバッグを持ったまま、思わず胸元で十字を切った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「まぁ。止めてください。道場じゃないんだから。あはは」
「うひょう!こんなところで会うなんて、なぁーーーんてラッキー!」
「二宮さん。鼻の下、床に届きそうなくらい、伸びてますよ」
「いやぁ、イザベルちゃんのためなら、床に穴でも明けるくらい伸ばします」
--- ^_^ わっはっは! ---
(こらこら、二宮。油売ってないで、Z国のブースでしょ!)
クリステアは、再び、二宮に喝を入れた。
(バカ二宮!)
ぴきん。
(痛・・・)
「ん・・・?」
「どうされました?」
「いや、なんでもない。あははは」
--- ^_^ わっはっは! ---
(しっかし、目のやり場に困っちゃうなぁ・・・)
「あはは・・・」
じーーーっ。
二宮の視線はイザベルの頭からつま先までスキャンしていった。
どっきん!
「エッチ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぷん。
「そんなの着てる方が悪いの」
「はい?」
(オレといる時だかにしてくんないかなぁ・・・)
二宮はイザベルの姿を他人に見られるのが急に嫌になった。
--- ^_^ わっはっは! ---
いらいらーーー。
(地球の男ってのは、ああいうのがいいんだ・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
クリステアは、イザベルのミニスカートにコメントした。
(SS・クリステア。二宮さんは、典型的な地球の男性です。これくらいは、大目に見ないと、いらいらしっ放しになりますよ)
(どうも、アンデフロル・デュメーラ)
(只今、会場で、リッキー・Jを捕捉しました)
(でかしたわ。で、どこにいるの?)
(Z国ブースです。来場客と話していますね)
(ここから、どのくらい離れてる?)
(歩いて2、3分でしょうか)
(リーエス。変ったところはない?)
(一見、そう見えます)
(一見?)
(リーエス。リッキー・Jは、相当、疲れているようです)
(夜中、忙しかったんじゃない、女の子たちと?)
--- ^_^ わっはっは! ---
(本当ですか?)
(たぶん・・・。Z国には、美人が多いらしいわよ)
(エルフィアよりかですか?)
(知らないわよ。こういうのは、地球人の趣味の問題だから)
--- ^_^ わっはっは! ---
ぱっぱ・・・。
イザベルはミニスカートを気にしながら言った。
「コンパニオンの制服です」
「イカシてるじゃない」
にっこり。
「それはどうも。可愛いのいいんですが、少しだけ丈が・・・」
「長過ぎるんですね?」
ぱんっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
イザベルは軽く二宮の頬を打った。
「もう、エッチなんだから!」
「いてぇ・・・」
「うふ。ちょうど休憩時間なんで、休憩コーナーに行きませんか?」
「一緒に?」
にこっ。
「お一人の方が、いいんですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「とんでもない!」
「じゃ、行きましょ」
ささっ。
イザベルは、コスチュームの上にセーターを一枚羽織って、二宮を休憩コーナーに案内した。
Z国外商部主催、Z国コーナーでは、安い労働賃金で作った様々な工業製品やパーツが並び、日本企業の来場者たちに、活発な宣伝活動が展開されていた。
「わが国では、低コストでパーツを調達できるだけでなく、世界トップクラスの加工精度で、貴社のビジネスをサポートしております」
Z国商社の重役たちの間で、リッキー・Jは、この数日続いている夢に、納得できる回答を得ようと、無駄な努力をしていた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「・・・というわけで、あなたの国には、どんな会社があるんですか?」
「あ・・・、え・・・?」
来場者の質問で、リッキーは現実に引き戻された。
「おい。リッキー、大丈夫か?」
Z国大使館の商務部長が、リッキーを心配そうに、覗き込んだ。
「いや。失礼しました。この人ごみと暑さで、ちょっと、ぼうっとして・・・」
リッキーはハンカチで額の汗を拭いた。
「そうですね。今日は、特に込んでます」
来場者が答えた。
「ええ。それに、各ブースでフルボリュームで、呼び込みしたり、説明したりしてるもので、よく聞こえてなくて・・・。慣れてないんですよ・・・」
「お国は、こんなに騒がしくないんですね?」
「ええ・・・」
すすっ。
「リッキー。わたしが代わろう。きみは、ちょっと、向こうで休んでいたまえ」
「わかりました、部長・・・。では、失礼いたします」
ささっ。
リッキーは、会場の休憩コーナーを目指して、歩き始めた。
「えー、その業種でしたら・・・」
リッキーの後を部長が続けた。
(SS・クリステア、リッキー・Jが移動します)
(どっち?)
(休憩コーナーの様子です)
(リーエス。わかったわ)
(ウォッチします)
(お願い)
(リーエス)
(二宮も移動を始めたわ)
(リーエス。二人とも、休憩コーナーに向かっています)
(ってことは、リッキーと鉢合わせじゃない?)
(そういうことになります)
(気をつけて、アンデフロル・デュメーラ)
(リーエス)
「今日は、情報収集のお仕事なんですか?」
様々なコスチュームのコンパニオンたちが、並んで歩くイザベルと二宮の側を、次々に通り過ぎた。
「おす・・・」
きょろきょろ・・・。
二宮は、彼女たちのぴちっとしたコスチュームとミニスカートに、目を奪われていた。
「ひゃあ・・・。すっげーーー・・・」
「うふ。なるほど。いい報告書になると、いいですね?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「え?違う、違う。オレは、イザベルちゃんだけっすよぉ」
「あー、また、調子いいんだから。それに、その道場言葉。もう、いい加減に、止めてください。こんなところにまで・・・」
「あ、う・・・、はい」
「あははは」
「で、どうしたの、こんなところで・・・?バイト?」
「そんなところです。友達が、軽くていいバイトだからって」
「でも、大変なんでしょ?いろいろ教育受けてさ。企業の宣伝文句とか、スカートの押さえ方とか・・・」
「はい?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「いや、とにかく沢山、覚えなきゃならないから・・・」
「まぁ。それに、わたしは外の客引きアンケートだけですから」
じろじろ・・・。
周りの視線がイザベルに集まった。
「なら、もう、すごい人物をキャッチできたんじゃない?」
「ええ?」
にこっ。
「オレ、オレ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ぷふぁ!おっかしい、二宮さん!相変わらずですね」
(バカ二宮。こんなところで、女の子を口説き始めちゃって・・・)
(仕方ないですよ。地球流、男性のたしなみのようですから)
--- ^_^ わっはっは! ---
(あ、そう・・・?わたしには、だれも、そうしないわよ)
(SS・クリステアは、SS・フェリシアスがおいでです。男性というものは、そういうことは、すぐに察する能力があるんですよ。地球人男性は特に)
--- ^_^ わっはっは! ---
(売約済みってこと、地球風に言うと?)
(リーエス)
(なんか、今一つ、納得できないような感じがするんだけど・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
二宮とイザベルの二人は休憩ゾーンに来た。
「何か飲む?」
「じゃ、ジュース」
「了解っす」
「ジュース2つ」
「はい。800円です」
(くーーー。くっそ高ぇーーーっ)
--- ^_^ わっはっは! ---
二宮は臨時売店でジュースを2つ買って、イザベルのもとに戻った。
「そこ。そこに座りましょう」
イザベルは二人が座れるイスを見つけた。
「オレがしますよ」
「いえ」
イザベルが、前かがみになって椅子を引き寄せると、コスチューム越にイザベルの身体の線がくっきり出た。
(ありゃ、パンツラインが見えない・・・。ノーパン?まっさか・・・。Tバックかなぁ・・・?)
「あは。道場じゃ、絶対見れないなぁ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「なにがです?」
「でへへへ。今日は、有難いもんを拝ませてもらいました」
「またぁ。うふふ」
「ホント。最近、時間帯が違うから、道場じゃめったに会わないし、元気?」
「ええ。二宮さん来る前までは」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ええーーーっ?それ、ひどいじゃないか?」
「ウソです。二宮さんに会って、もっと元気になっちゃいました!」
「ホ、ホント・・・?」
「はい」
にこっ。
(SS・クリステア、このまま、リッキー・Jと二宮さんが、出会うのを見ますか?)
(リーエス、アンデフロル・デュメーラ。。様子見にしましょうよ。こんな人ごみじゃ、いくらリッキーだって、なにもできやしないわ)
(リーエス)
「ふぅ・・・」
どさっ。
リッキーが、休憩コーナーに来ると、簡易チェアに腰を落とした。
(あれ・・・)
二人隔てた隣に見たことのある顔があった。
(コンパニオンと話しているあの男、確か・・・)
ぷるぷる。
ぼうっとなった頭を振って、リッキーは、男を見つめた。
(思い出した・・・。宇都宮和人の会社の同僚だ・・・)
その時、また、リッキーの目にあの幻影が映った。
ぼわぁーーー。
「うっ・・・。まただ・・・。今度は、昼間にか・・・」
がた・・・。
ぐるぐる・・・。
リッキーはそれに抵抗しようとして、目が回ってきた。
「うう・・・。くっそう・・・」
リッキーは、それに抵抗しようとして、意識をさらに強くした。
「リッキー・J・・・」
「だれだ・・・?」
頭の中のそれは、はっきりと答えた。
「リッキー・J。われらは、エルフィア文明促進支援委員会なり・・・」
リッキーの頭の中でその言葉は爆発した。
アンデフロル・デュメーラからすぐに知らせが来た。
(SS・クリステア。来ました。リッキー・J宛のエルフィアからの通信です)
(今?)
クリステアは気を引き締めた。
(リッキーは?)
(通信を拒んでいます)
(どういうこと?)
(彼は、エルフィアからの通信かどうかを疑っています)
(なるほど・・・。本当に、疑り深いわね、地球人は・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
(会話を聞き取れる?)
(リーエス。リッキーの声は、はっきりわかります。それに信号も)
(出力を上げたのね?)
(リーエス。ウォッチします)
(全会話を記録しておいて)
(リーエス)
「われらは、エルフィア文明促進委員会なり。おまえの精神ガードを外せ」
「う・・・。エルフィアだと・・・?」
「おまえに重要なメッセージがある。われらに警戒は不要だ。われらは、おまえに精神的なダメージを与えることも、おまえの頭の中身のスキャンも、一切するつもりはない」
リッキーは信じられないというようにそれに尋ねた。
「用件は・・・?」
「おまえに、伝えねばならないことがある。精神ガードをはずせ。このままでは、伝えられない」
「なぜ、オレに・・・?」
「宇都宮和人なら、それは、過去のもだ。われらのエージェントも変更された」
「エージェントの変更・・・?どういうことだ?」
「こちらの問題とだけ、言っておこう。現エージェントには支障がある」
「支障?」
「察しの通りだ」
「わ、わかった・・・」
(これは、願ってもないチャンスではないか・・・。エルフィアから、直接にオレに連絡が来るとはな・・・。地球には、こんな猿芝居をするヤツなどいない。仮にも、エスパーのオレの精神ガードを強制的に押し広げようなど、そんな大それた輩が、ここに、いるはずもない・・・)
「要求通り、ガードを外す。用件を聞こう・・・」
(リッキーが、ガードを外すようです)
(わかったわ。だれが、リッキーにコンタクトしてるかわかる?)
(だめです。エルフィア側の話し手は、名前や内容までわかりません)
(ガードしてるのね?)
(リーエス)
(リッキー・Jの頭脳波を把握して、それを利用して機密通信しているようです)
(いいわ。とにかく、リッキーの方だけでもいいから、記録はすべてして)
(リーエス)