233 γ版
■γ版■
二宮はラブリー・エンタープライズ社に、アンニフィルドを連れて訪問することになった。
ちらっ。
「へへ。アンニフィルドと一緒かぁ・・・」
(悪くないねぇ・・・。こうして見ると、アンニフィルドも、ものすごく美人だぜ。なんだって、こんな美人揃いなんだぁ、エルフィア人って・・・?)
じーーーいっ。
ぞくっ。
「な、なによ、二宮・・・。気持ち悪い・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あー、ひでぇーーー。オレのこと、変体扱いしてる」
「触ったりしたら、ぶっ殺すわよぉ!」
「しない、しない。オレにはイザベルちゃんがいるからねぇ・・・」
「ふん。わたしだって、俊介だけだからね!」
「へ?」
(しまった。また、言っちゃったぁ・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「常務だって?いつから、そんな関係に?」
「うるさいわねぇ。なんでもないったら!」
「あ、そ。ホンじゃまぁ、アンニフィルドはお借りします、常務殿、っと」
「貸されてません!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「なんだよ、じゃけん過ぎるんじゃないかぁ?」
「このくらいが普通です」
「おーお。やってる。やってる」
「あははは」
「ユティスさぁ、どう思う?よく、アンニフィルドが二宮のお供を承知したわよねぇ?」
「はい、岡本さん。彼女は、根はとても優しいですから」
「そうなの?」
「はい。戦闘の時は、いつも相手が苦しまないようにしてさしあげますわ」
「そうそう」
クリステアも頷いた。
ぎょっ。
「殺すってことぉ?」
たらぁ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「ナナン。意識を飛ばしてさしあげるだけですわ」
「あの世へ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あっはっは・・・」
クリステアは笑った。
「まぁ、岡本さん、ひどいですわ。エルフィア人は人を殺すことは決してありません。相手を気絶させて、戦闘能力を奪うだけです」
にこっ。
「危険を回避するなら、それで十分よ」
クリステアが付け加えた。
ほっ。
「よかった・・・」
(人殺しといつもそばにいるなんて、冗談じゃない・・・)
「でもね、時には失敗することもあるけど・・・」
クリステアが補足した。
--- ^_^ わっはっは! ---
「やっぱり、殺すんじゃない!」
「ふふふ。その時は、逃げるんです」
「俊介のところにね」
「あははは」
--- ^_^ わっはっは! ---
クリステアの合いの手に、ついに和人も爆笑した。
「その辺にしておいた方がいいと思うよ」
「リーエス」
「あはは。ひょとして、ジョーク言ってた?」
岡本も可笑しそうにきいた。
「うふ。おわかりになりますか?」
「もう、ユティスったら・・・。和人、この二人になんか言ってやってよ」
「きみたちのジョークも、磨きがかかってきたね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「どうも、ありがとうございます」
「光栄だわ」
にこっ。
ユティスとクリステアは微笑んだ。
「こら、和人。褒めてるだけじゃない、それ」
「岡本さんは厳しすぎるんです」
「一応、チーフ・エンジニアだからねぇ」
「立派ですわぁ」
「ありがとう」
二宮にくっついて仕事に出かけたアンニフィルドは、行き先の状況が気になっていた。
「で、さぁ、ラブリー・エンタープライズって、なにしてるところ?」
「そうだなぁ、一言で言うと、萌えキャラ販売業かな・・・」
「燃えねぇ・・・。ぼうって燃え上がる熱血スポーツ、ド根性もの?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「もえ違いだな。この場合は、もえはもえでも、燃えじゃなくて、萌え」
「モエ?シャンパンの高級ブランド?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「違うな。萌え。要は、可愛い女の子キャラのゲームだとかアニメだとか、フィギュアだとかを製造販売してるってとこっすよ」
二宮がアンニフィルドに答えた。
「だれが買うの?」
「主には独身男だと思うよ。それに若い女の子なんかもいるかな・・・」
「女の子も?」
「そうさ。最近は増えてるらしい」
「それのどこが面白いの?」
「さぁ。動くわけではないし、しゃべるわけでもないし・・・」
「そうよね。実物じゃなきゃ、楽しくないんじゃない?」
「そうでもないかもよぉ・・・。うひひ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「なによ、また?」
「あのさ、アンニフィルド・・・」
「はい?」
「もし、常務の人形があったらどうする?」
「俊介の人形?」
「そう・・・」
にんまり・・・。
「頬ずりしちゃうかも・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「だろ?」
「リーエス・・・」
はっ!
「あ、あなたは、どうなのよぉ?イザベル人形?」
「いいねぇ。いいねぇ!」
「いやらしいことするつもりじゃないでしょうね?」
「イザベルちゃんにサインもらってだねぇ、それから・・・」
「なんだ。あなたも同じじゃない」
「ま、人それぞれだし。とにかく、日本の産業にとっちゃ、有難いことだよ」
「それで、ラブリーでのわたしたちのお仕事ってのは、なんなの?」
「マーケティングに関する相談だとからしんだけど、それをこれから聞くことになってるんだ」
「打ち合わせで、わたしはなにをすればいいの?」
「とりあえず、そばで聞いててよ。インフラやマシンの話しになったら、助けてくれればいいから」
「でも、システムのエンジニア担当といっても、地球のマシンの内容は、よくわからないわよ。とにかく、何万年か前のテクノロジーでしょ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「地球の技術をバカにしたな?」
「してないわ。あなたの脳ミソがもっと遅れてるだけよ?」
「わかった。わかった。じゃ、いくぜ」
二宮はラブリー・エンタープライズの入っているビルのエレベータに向かっていった。
ラブリーでは早速ビジネスの会話が始まった。
「じゃ、なに、この恋愛シミュレーション・ゲームのトキメキ度を数値化して、モニターして欲しいてことっすかぁ・・・?」
にこっ。
ラブリー・エンタープライズの女性経営企画部長は、にっこり笑った。
「はい、そうなんです。どこのシーンでどうトキメいたか、客観的な数値を得たいんです。それを、いろんなアイテムに応用して、今後のマーケティングに利用していきたんです」
「はぁ・・・。トキメキ度ですよねぇ・・・」
「とりあえず、トキメキとはどんな心理状況かってことじゃないかしら?」
アンニフィルドが口添えした。
「しかし、キャラのデザインで、プレーヤーの好みは大きく違ってますよぉ?」
「それも、分析したいです」
「どうやって、収集するわけですか?」
「できれば、プレイ中に、プレーヤーのアクションをファジー分析できるような仕組みを作れればいいなぁと・・・」
「それ、相当難しいわ。出会いとか、シチュエーションを、どうパラメータ化するのか、基準がはっきり決められないです。どういうキャラ、外見、性格、声、行動。こういうものもパラメータにする必要があるし、プレーヤ自身、どんな人間かってことも、パラメータしないと。その相関関係を見つけるわけでしょうから・・・?」
「そうですね。とても鋭い、ご指摘だと思います」
「それに、男性と、女性じゃ、感じ方はまったく違いうし・・・」
「そうだよなぁ・・・」
「あのぉ、今回のターゲットは、ハイティーン以上、R30くらいまでの男性なんです」
「男性?」
アンニフィルドは二宮を見つめた。
「3人は、いるわよね?」
「ええーーーっ、マジっすかぁ?」
「それ、わたしも、やっていいのかしら?」
「ええ。どうぞ。アンニフィルドさんが、女性の立場でご意見をいただければ、登場ヒロインたちの行動の不自然さを少しでも減らせられますから。大歓迎ですわ」
「あは。面白そう」
「それで、セレアムさんには、マーケティングのアイデアを出して欲しいんです」
「できそう、二宮?」
「うーーーん、アイデアはあるんですが、実行に移せるか・・・」
二宮は考え込んだ。
「すごいですわ、そんなにすぐ出てくるなんて、さすが二宮さん」
企画部長は目を輝かせた。
「ははは。そうでもないです」
「いやぁ、わたしも見直したわよ、二宮」
「それほどでも・・・」
「では、今回のガンマ版をお持ちしますので、もう少々、お待ちくださいますか?」
「はい」
すくっ。
かちゃ。
経営企画部長は、応接室を出ていき、二人が部屋に残った。
「で、どうしようっていうのよ、二宮?」
「本件、全面的に和人に預けるってのは、どう?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「最低・・・」
「気に入らなかった?」
「それが、あなたのアイデアってわけね?」
「あははは。名案だろっ?」
ぱこんっ。
「一瞬でも、感心したわたしがバカだったわ」
アンニフィルドがそっぽを向いた。
「痛ってなぁ・・・。なにすんだよぉ・・・」
「カラテやってんだったら、上段受けくらいしなさいよぉ」
にたぁっ。
「本気で受けたら、おまえの腕折れてるぜ」
にこっ。
「ほう。やる気ね?」
しゅしゅっ。
「これが冗談受けです」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そっちも受けになってない。あなた、完璧にオヤジだわ」
「でもなぁ・・・。弱った。弱った・・・」
「あなたの仕事でしょ?自分で知恵出しなさいよ」
「仕事は、チームでするものだろ?」
「あなたのチームに参加する人がいればね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ひっでぇなぁ・・・」
「わたしは、臨時の代役。今日の午前中までの約束だからね。午後は、あなた一人で国際展示場に行ってくるのよ」
「わかってますって・・・。ぶちぶち・・・」
「なんか言ったぁ?」
「いいえ。なんにも」
「きっといいことがあるわよ」
「当てになんのか?」
「あら、失礼ねぇ。わたしは近未来のことなら感がよく当たるのよぉ。だから、わたしがあるといったら、なくてもあるの」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ホントかい?もし、本当になかったら?」
「もし、あったら?」
「オレへの回答が先」
「しょうがない。次の仕事をあげるわ」
「へ・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「じゃ、あったら・・・?」
「わたしの仕事引き受けてもらうわ」
「ちぇ、結局、アンニフィルドの仕事の手伝いかよぉ?」
「光栄に思いなさい。賭けを始めたのは、あなたでしょ?地球じゃ、働かざる男、食うべからず、女娶るべからず、子作るべからずってね?」
「ホントかよ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あら、違ったかしら?」
(くっそう・・・。アンニフィルドのやつ、いつか、絶対ぎゃふん、って言わせてやる!)
「ぎゃふん」
「え?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あはは。あなたの声、丸聞こえなんだけど」
「くっそう」
「はい、これです」
経営企画部長は数ページの企画書を二宮に渡した。
「これは、オンラインゲームです。ベータ版の前、ガンマ版をウェブ上に秘密裏に作成してあります。これは、、ゲームの参加IDとパスワードですので、絶対失くさないでください。また、他人に渡さないでください。パスワードは、英数字16桁ですが、その都度独自ロジックでカオス処理していますので、まず、成りすましは絶対にできません」
「カオス処理?」
二宮が、アンニフィルドを見た。
「数学用語よ。簡単に言えば、乱数。擬似ノイズを発生させるアルゴリズムを利用してるの」
「さすがセレアムさんのエンジニアさんね」
経営企画部長はアンニフィルドを褒めた。
「へぇ、アンニフィルドよく知ってるなぁ・・・」
二宮は感心したように言った。
「常識よ。常識」
「それで?」
「それで、ゲームを細かくチェックしながら、どこで、どう感じたか、心理パラメータを取りながら、プレーしていただきたいんです」
「サンプル・モニターは?」
「多ければ多いほどよろしんですが、何しろガンマ版のシークレット製品ですから、そういうわけにもいかないんです。こちらの希望としては、最低3名は・・・」
「3名ですかぁ・・・」
「期間は?」
「1ヶ月以内でお願いしたいです」
「1ヶ月かぁ・・・」
「トキメキ度チェックの仕様は、1週間程度で提出してもらえますか?」
「1週間かぁ・・・」
二宮は考えてるように、眉間に皴を入れ、書類を眺めていた。
つんつん・・・。
「ちょっと、二宮、あなた、少しは考えてるの?」
アンニフィルドが小声で二宮を突っついた。
「もち。いつ和人に下請け出そうかって・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「・・・」
「ダメかなぁ?」
ぐいっ。
アンニフィルドは、二宮のネクタイを引っ張った
「後で話があるわ。逃げるんじゃないわよ」
「へ?」
ぱーーーんっ。
「タッチよ」
アンニフィルドはクリステアと手のひらを叩いた。
「お疲れさま。疲れたでしょ?」
「リーエス。一週間は寝ていたいわぁ・・・」
「どうしたんだい、アンニフィルド?」
和人がアンニフィルドを気遣った。
「二宮って、歩く出鱈目ね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「歩く出鱈目?」
「あはははは。ぴったりだわ!」
クリステアが笑いこけた。
「アンニフィルド、クリステア、それは、あんまりと言うものですわ」
ユティスが二宮の弁護に回った。
「ユティス、あなたは、アイツと半日一緒に仕事してないから、そう言えるのよ」
「そんなに酷かったの?」
「そうよ。揚げ足取りばかりで、ちっとも真面目じゃないの。あーあ、午後は頼むわよぉ、クリステア」
「まさか、わたしとジョバンニが付いてるって、二宮に言ってないでしょうね?」
「言うわけないわよ。言う気もしない。言っても、きっと理解しない」
--- ^_^ わっはっは! ---
「大物なんですわ、二宮さんて」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あはは、そう。大物よ、アイツは。なんに対しても動じないでしょうねぇ。和人、あなたも、いい先輩持ったわぁ・・・」
「皮肉ですか、それ?」
和人がクリステアを見た。
「本気よ、カテゴリー2でいながら、わしたちにまったく物怖じしないで、ジョークが言えるなんて、いい心臓してるわ」
「やっぱり、二宮さんて、すごいんですのね・・・」
「リーエス、ユティス。なにしろ、トルフォをやり込める指南を和人に授けたんだもんねぇ」
ぱちっ。
アンニフィルドが和人にウィンクした。
「思い出させないでよ、アンニフィルド」
和人がアンニフィルドに言った。
「あら、どうして?」
「それを思い出す度、先輩に一生の恩を着せらちゃいそうだよ・・・」
「あはは。それなら、和人は二宮の頼みを無条件で聞きそうだわ」
「なんですか、それ?」
「そうだよ。勿体ぶってないで、言えよ」
和人はアンニフィルドに抗議した。
「後で、聞きなさい、二宮に」
「怪しげなことじゃないだろうね?」
「大丈夫。警察にお世話になるようなことじゃないから」
「わかってますよ。問題は内容です」
「一応、企業秘密らしいから、話し役は二宮ね」