230 尻尾
■尻尾■
「エルド、ちょっと・・・」
「なんだね、フェリシアス?」
「地球の支援に反対する連中ですが・・・」
「気になることでも?」
「リーエス。アンデフロル・デュメーラが、その精神波を探知しています」
「アンデフロル・デュメーラが?彼女は、地球にいるんだろ?」
「リーエス。それが、探知したわけです」
「ということは・・・」
「エルフィアから、地球向けの超時空通信が、密かに行なわれているということです」
「ユティスたちではないのか?」
「ナナン。それなら、アンデフロル・デュメーラが、わざわざ報告してきやしません」
「なるほど・・・。そうであれば・・・、きみの意見は?」
「リーエス」
フェリシアスは頷いた。
「もう、大方、予測がついてるんだろ?」
「リーエス。あのZ国のエスパー、リッキー・Jに、ほぼ間違いと思います」
「ユティスを拉致しようとしてる輩だな?」
「リーエス。彼らはユティスの入手を決して諦めていません。そして、われわれのテクノロジーの独占を企んでいます」
「どうして、そうだと予想できるんだね?」
「アンデフロル・デュメーラは、リッキー・Jの精神波を、捉えています。彼には、エルフィアからのコンタクトが、幾度となく試みられています」
「試み?」
「リーエス。まだ、完全にコンタクトに成功しいるわけではない、ということです」
「そうか・・・」
「それに、アンデフロル・デュメーラでも、通信内容をはっきり把握できません」
「暗号通信なのか?」
「リーエス。何回も、同じリクエストをしているようにも見受けられます」
「やはり、コンタクトには成功してはいない、ということだな?」
「リーエス。警戒体制を引き上げるよう、地球のSSたちに指示しますか?」
「ああ。直ちに、指示を与えてくれ給え」
「リーエス。クリステアには、アンデフロル・デュメーラからも通知があったはずです」
「うむ。これで、反対派の尻尾を捕まえられはいいんだが・・・」
「因みに、通信内容は、解析中ですが、難航しています」
「かなり慎重になっているな・・・」
「リーエス。それに、エルフィアからの通信は、アンデフロル・デュメーラが、やっと探知できる程度の出力です」
「ふっふ。出力が弱いか・・・。怪しさ100%だな・・・」
「リーエス。まったく、その通りです」
「逆に、アンデフロル・デュメーラの警戒網にひっかかったという訳か?」
「リーエス。通信先が、リッキー・Jで、出力もあそこまで弱くなければ、彼女も、あなたか、メローズか、わたしか、いずれかの通信だと判断しているはずです」
「いかにも、極秘で通信しているぞ、という感じだな?」
「リーエス」
「それに、フェリシアス・・・」
「リーエス?」
「トルフォとブレストを、マークしてくれ給え」
「リーエス」
「どうも、視察から戻ってきて以来、やたらと愛想がいい。ユティスのことなど、忘れてしまったようにね」
「特に、トルフォですね?」
「リーエス。彼は、感情が表に出る。なにか企んでることに、間違いない・・・」
「リーエス」
「う・・・」
リッキー・Jは突然その眠りから覚めた。
どき、どき、どき・・・。
心臓が、早鐘のように、激しく打って、額には汗をかいていた。
(はっ。夢か・・・)
リッキー・Jは、それを確かめるように、周囲の音と匂いに注意した。
(誰かが、侵入しているわけではないな・・・)
リッキー・Jは、ゆっくりと寝床から身体を起こすと、右手で、頭をさすった。
(しかし、なんだったんだ、あれは・・・?鮮明に覚えている)
ベッドの横にある置時計は、午前4時を指していた。
(4時・・・。起きるには、少々早すぎるが、ここでもう一度寝るわけにはいかんな)
がばっ。
リッキー・Jは、毛布を跳ね除けると、ベッドから抜け出すと、洗面所に向
かった。
ざざーーーっ。
「ふぅ・・・」
ほわーん・・・。
リッキー・Jは、顔を荒い、鏡を覗き込むやいなや、後ろを振り替えった。
さっ!
「だれだ!」
しかし、そこにはだれもいなかった。
しーーーん。
しかし、リッキー・Jはなおも慎重に確かめ、本当にだれもいないことを確認して、頭を振った。
ぷるぷる・・・。
「くっそう・・・。またしても、幻影か・・・。昨日と同じだ・・・」
「またしても、失敗です」
「どうしたんだ、シェルダブロウ?」
ブレストは、地球のZ国の諜報員かつエスパー、リッキー・Jとのコンタクトに、四苦八苦しているシェルダブロウを、不満そうに見つめた。
「彼は、わたしのコンタクトを、拒否しようとています」
「どういうことだ?」
「コントクトをし易い、睡眠中を狙って、彼の無意識下に、潜り込んだのですが、わたしの語りかけを拒否しているんです。アプローチの度に、意識が戻ってしまい、コンタクトが中断してしまいます」
「なんだって?」
「このままでは、トルフォの親書が届けられません」
「そんなバカな。メッセージを、いったい、どこまで、伝えたのだ?」
「まだまだ、序の口に過ぎません」
「突破しろ」
「リーエス。やっています。しかし、相当な力です・・・」
「おまえは、その筋の専門家なんではないのか?」
「リーエス。もちろんそうですが、彼も強力なエスパーなんです。並みの人間とは桁外れの意志力を持っています。なまじ力あるから、見知らぬものからのコンタクトを察知し、本能的に避けようとしてるんですよ」
「そんな泣き言は、聞くに値しないな。さっさと、メッセージを届けろ」
「リーエス・・・。しかし、これ以上通信感度を上げたら、委員会の連中に、気づかれてしまいます」
「エルドか?」
「リーエス。リッキー・Jとは、まだ、ハイパー通信ラインができてないんですよ」
「言い訳は聞きたくない。いいか。これは、計画の極めて重大なステップだ。失敗は許させん。おまえもSSの仮復帰がかっかているだろう?」
「リーエス・・・」
「なんとか、対応するんだ。考えろ!時間はないぞ」
「リーエス」
「ヤツの起きてる時間には、できないのか?」
「夢でもはじかれてるんですよ?昼間の意識下では、なおさらのこと・・・」
「やったわけでは、あるまい?時間はないんだ。今日中に、ヤツに親書を届けろ!」
「リーエス・・・」
こんこん。
「どーぞ」
クリステアが会議室に入ってきた。
「お、クリステア」
会議室で俊介はコーヒーをすすっていた。
「会社役員ってのは、暇なのね?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「バカ言うない。シャデルの企画を練ってたんだぞ」
ぼりぼり・・・。
俊介はノートになにやら書き付けたメモを見て、頭を掻いた。
「パリとか行くのに、計画が必要なの?」
「当たり前だ。きみらを密入国させる訳にはいかんだろ?」
「あら。面倒くさいのね。アンデフロル・デュメーラに頼んで・・・」
「しゅん、なんてやってバレてみろ、瞬時に、国際問題になっちまう」
--- ^_^ わっはっは! ---
「で、ご用は?」
「国際展示場で、Z国の外商部が出し物をしてるわよ」
「国際展示場・・・?なんで、きみが、そんなこと知ってるんだ?」
「知らないの?地球人のくせに」
--- ^_^ わっはっは! ---
「はいはい。わかったよ。で・・・?」
「連中の日本おける、具体的な行動を探んなくていいの?」
「大ぴらなことは、できんだろ?」
「甘いわね。リッキーがそこに現われてるわよ」
「なのに、自分から、わざわざ捕まりに行くのかよ?」
「そうね。地球人には、非常識かも。でも、これを聞いたら、考えも変わるかもよ」
「もったいぶるなよ」
にこ。
「エルフィアから連絡を受けたわ」
「なにを・・・?」
「またまた、性懲りもなく、ユティスを拉致する計画が進んでるって」
「なんだ、そんなこと、わかってることじゃないか」
「ナナン。首謀はZ国ではないわ。彼らは、人形よ」
「ええ?だれかが、後ろでヤツらを操っているっていうのか?」
「リーエス。トルフォと、その一味・・・」
「和人が、コテンパンにしたというエルフィア人か?」
「残念ながらね・・・。だけど、これは事実。トルフォは、委員会の理事で実力者よ。そして、ユティスをどんなことをしても、連れ合いにしたがっている。絶対に諦めてないわ」
「あーあ。もてない男は、野暮で空気が読めないよなぁ。結果、恥の上塗り。信用失墜。地球でも、エルフィアでも、同じなんだなぁ・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ナナン。トルフォは、5回、連れ合いを変えてるわ」
「ほーーーう。金だけは、持ってるって訳だ。まいったねぇ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「エルフィアに、お金は必要ないわ」
「じゃ、なんだい?その女性たちが惹かれたってのは?」
「わからないわ。わたしのタイプじゃないから」
--- ^_^ わっはっは! ---
「結構。蓼食う虫も好き好きってか・・・。で、なにが、言いたいんだ?」
「トルフォが、リッキーにアプローチしている風なの・・・」
がたっ。
「なんだってぇ・・・?」
俊介は驚いてPCの手を止め、クリステアを見つめた。
「エルフィアのコンタクティーは和人じゃないのか?」
「リーエス。和人以外にコンタクティーはいないわ。だから、もし、そうなら、明らかに違法行為よ」
「本当なのか?」
「リーエス。これが事実なら、聞き捨てならないわよね?」
「当たり前だ。なんで、エルフィアの委員会の理事が・・・?」
「少なくとも、エルドや委員会全体の意思じゃないわ。トルフォたち反対派一味の単独行動ね。それを確かめ、立件したいの」
「しかし、それは、きみらの仕事だろ?」
「リーエス。わたしたちの問題よ。でも、地球人も関係してるわ。協力しない?」
「どうするっていうんだ?」
「わたしたちが、知りたいのは、リッキーにコンタクトをしてるエルフィア人を明らかにし、その証拠を握ること。エルドや理事の大半は、トルフォの扱いに手を焼いてるのよ」
「任務か?」
「リーエス」
「トルフォを更迭する確実な証拠が、必要なんだな?」
「リーエス。なるべく穏便に進めたいんだけど・・・」
「オレたちは、どうすればいいんだ?」
「それで、あいつらのリッキーへの通信波を捕捉し、内容を押さえたいの。そのためには、リッキーに隙を与えて、ガードを下げさせること。国際展示場なら、怪しまれずに近づけるし、二宮なら、和人ほどユティスに密着してないし、適任だわ」
「きみは?」
「二宮の後に、気づかれないように、くっ着いて行くわ」
「気づかれないようにって言ったって、その格好じゃあなぁ・・・。見つけてくれって、言ってるようなもんじゃないか・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「悪い?」
「わかったってば。で?」
「だから、二宮を派遣してくれない。二宮なら、あいつらも、ユティスの情報を間接的に得ようとして近づいてくるわ」
「要は、二宮を囮に提供しろと?」
「表現が好戦的ね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「だって、オレの部下だぞ。心配じゃないか?」
「保証する。危険はないわ。わたしが変装して、彼をウォッチする。それに、アンデフロル・デュメーラに、全体監視を依頼する。不測時には、即、引き上げてくれるわ」
「即、引き上げって、目の前から、しゅうって消えるってことだろ?」
「いけない?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「だから、人ごみで、そんなことしたら、大騒ぎになるって・・・」
「人ごみだからいいのよ。日本人って、他人には、まったく関心ないもの。調査済みだわ。どうせ一瞬のこと。隣は、なにをする人ぞ、でしょ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「場合によるぞ・・・」
「それに、アンニフィルドは、ユティスと和人につけるわね。あ、そして、ジョバンニにも手伝ってもらうよう依頼したわ」
「へ・・・。なんだ。なにからなにまで、すべて手配済みかよ」
「リーエス」
「じゃ、依頼じゃなく、指令じゃないか?経営者はオレの方だぞ。従業員くん」
--- ^_^ わっはっは! ---
「従業員じゃなくて、業務委託先でしょ?いやなら、いいわよ」
「わかったよぉ。明日は、二宮を出す」
にこ。
「ありがとう。彼には、ちょっと教育させていただくわね」
「教育・・・?」
「ちょっとしたものよ。難しくはないわ」
「まさか、愛の手ほどきじゃないだろうな?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「バカ。もしも、催眠をかけられて、尋問にかっかた時の、受け答えよ」
「そっか」
ちゅ。
クリステアは、腰をかがめると、優しく俊介の頬に軽くキッスした。
がたっ!
「だーーーっ。事務所ですんなよ。アンニフィルドが見てるじゃないか?」
にっこり。
「彼女には、了解済みよ。唇以外ってことで・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「うほっ。結構。結構」
ぱちっ。
クリステアは、片目をつむり、俊介の鋭くも妙に愛嬌のある目に、クリステ
アは、納得した。
「なるほど。アンニフィルドが、夢中になる訳だわ・・・」