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219 手合

■手合■




二宮はようやく退院した。そして、会社に行く前に道場の足利師範に挨拶にいった。


「やっぱ、ここだよなぁ、最初に来るんなら・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


きぃ・・・。

二宮は道場のドアを開けて中に入った。


「おーす」

「おう、二宮じゃないか」

早速、師範が出迎えた。


「おす、ご迷惑おかけしました」

「そんなこと気にするな。大丈夫か?」

師範は心配そうに二宮を見た。


「おす。ただ稽古は当分・・・」

「当たり前だ。体を直すのが先決だ。ちゃんと直らないうちには、絶対に無理をしてはいかん」

「オス、師範・・・」

思わず二宮は涙があふれそうになった。


「名誉の負傷だな。警察からコンビニ強盗を捕まえた感謝状が来ている」

「おす。切腹でも表彰ですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わははは、そのくらい冗談が言えるなら、まずまず順調に回復しているってことだ」

「おす。で、喜連川さんは・・・?」

にわかに師範の顔が曇った。


「それなんだが・・・、あれから、道場には姿を見せておらんのだ」

「喜連川さん、来てないんですか・・・?」

二宮は予想はしていたが、がっくりきた。


「ああ・・・」

「おす・・・」


「道場を止めてはおらんが・・・、脱会届けは受け取ってはおらん。おまえ、なにか知ってるだろう、二宮?」

「おす、実は、かくかくしかじか・・・、なんです」

二宮は、入院中にあったできごとを、師範に肝心なことは省略して報告した。


--- ^_^ わっはっは! ---


「喜連川は『カラテを辞める』・・・。そう言ったのか・・・」

「おす。自分がいけなかったんです」


「バカいえ。男女の関係には道場は関知せん。しかし、気になるな。二宮のことは安心したが、喜連川はな・・・。道場のホープだ。順調に成長してくれれば世界チャンプも夢ではないというのに・・・」


「おす。自分のせいで・・・」

「よせ。気にするな。今は、冷却期間をおこう。あれからカラテを追い出すことなどできんさ。いずれ必ず戻ってくる」


「おす。しかし、師範。どうしてそう言いきれるんですか?」

「会話だよ。言葉ではなく組み手を通してのな」


「組み手を通じての会話?」


「ああ。痛みも、辛さも、わかった同士の会話。表面だけなら、心は通わん。組み手はお互いの心を試し合い、騙し合い、そして最後には通わせる。一度これに気づいたら、損得勘定丸だしの薄っぺらな口先だけの付き合いなど、時間の無駄遣いに等しい。喜連川は、なにが欲しいか自分で知っているよ。なにが癒しかも。試合ではないかもしれんが、お互いを高めあってくれる組み手パートナーが、なんなのかを。その相手なら最後の最後まで信頼する。それがカラテであり、道場だ」


「おす・・・」


「二宮。おまえ、本当に喜連川にはあとほんの数ミリのところまで来ているんだぞ」

「おす・・・」

「オレは、知らん顔しているが、おまえらのことは、手に取るようにわかっているつもりだ・・・」

「おす・・・」


「うろたえてはダメだ。一度、見得を切ったんだからな」

「おす・・・」


「だが・・・、次に喜連川が来たときは・・・」

「おす・・・」


「受け入れてやれ・・・」

「おす・・・」


「上段蹴りを!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「し、師範!」

「わーっははは!悪い、悪い、許せ、二宮!」

二宮は嬉しかった。師範の冗談もわかっていた。これは、師範の最高のはげましの言葉だった。


「実はな、そんなことを話したいんじゃないんだ」

「おす」


「おまえには、特別に昇段審査のチャンスをやれそうだ。1年1回のチャンスではなく、本部承認を取ったぞ。次回の昇給審査で昇段審査も行う。それまでに、なにがなんでも体調を元通りにしろ。4ヶ月後だ。できるか?」


「おす!」

二宮は思わず泣きそうになるのを、必死でこらえた。


「師範・・・」

「気を抜くなよ」

「おす・・・」


「じゃあな」

「おす!」


ぺこり。

ぺこり。

師範に何度も頭を下げ、道場を後にした。




会社の話だと、イザベルは例のコンビニは止めてしまったらしい。


「店長さんから聞いたらしいのよ。もう来てないって」

茂木からはなしを聞いた二宮は、肩を落とした。


二宮とイザベルの接点はなくなっていた。


「後は、イザベルちゃんの学校だけか・・・。さすがに、理由もなく行けないよなぁ・・・」


二宮にとっては、腹の傷より心の傷の方がよほど痛かった。




退院してからは、二宮は自宅の1DKで養生していたが、仲間の誰かが毎日のように訪れたので、話題には事欠かなかった。


「よう。二宮、具合はどうだ?」

「ああ、常務。まぁ、なんとか普通に生活はできてます」


「普通にな・・・。特別はありそうにないのか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「特別?」

「ああ、特別だ・・・」


にや・・・。

俊介は笑った。


「おす。ははは・・・。ないっすねぇ・・・」

二宮は元気がなかった。


「よぃ、その特別を用意してやろう・・・」

「ええ?どういうことっすかぁ?」

「まぁ、いずれわかるさ。ふふふ」

俊介は含み笑いした。


「じゃ、オレは社に戻るから、ちゃんと養生しろよ」

「うーす・・・」




ある日ユティスと和人は、街でイザベルとばったり出会った。


「あ、ユティスさん・・・」

「あ、イザベルさん・・・」

「イザベルさん、その髪・・・」


イザベルは髪をばっさり切ってはじめはわからなかった。


「えへ。切っちゃった・・・」

「切っちゃったって・・・、なんで?」


「和人さん、女の子が大事な髪を切るってことは大変なことなんですのよ」

ユティスはそれを察していたが、和人にはわからなかった。


「就職活動ですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いやだ、まさかぁ!」


にこにこ・・・。

イザベルはをれを否定した。


ユティスは、笑顔の裏に潜む彼女の悲痛な思いに反応した。


「あの、お時間いただけますか?」

「今からですか?」

「はい。お茶でもいただきながら、いかがですか?」


ユティスの優しい笑顔に、胸がいっぱいになったイザベルは急に涙を流し始めた。


ぽたり・・・。


「イザベルさん・・・」

和人が言いかけて、ユティスはそれを制した。


「和人さん、ここはわたくしにお任せくださいますか?」

「リーエス。わかったよぉ。オレ、離れた席にいるから・・・」


「リーエス。やっぱり、和人さんは和人さんですわ」

「なに、それ?」




イザベルの話を一通り聞くと、ユティスは優しく微笑んだ。


「イザベルさん、あなたに落ち度なんかありませんわ。ご心配なさらないで。あのような状況で、だれも冷静でいれるはずがございません。それどころか二宮さんに輸血されて命をお救いされたことは、大変ご立派なことですわ」

「本当ですか・・・?」

「はい」


ぎゅ。

ユティスはイザベルを優しく彼女の両手を握った。


ぽわぁーん

イザベルは両手が温かくなっていた。


「二宮さんはお嫌いなのですか?」

ユティスは直球を投げた。


「い、いえ、決してそんな・・・」


「うふふ。もう心配なさらずに、二宮さんにお会いください」

「は、はい・・・」

ユティスに自分の気持ち聞いてもらって落ちつきを取り戻す。




次の日、1ヶ月半ぶりにイザベルは道場に現れた。ちょっと、師範に挨拶するだけのつもりだった。


「おす!」

「おす!」


そこに、夜7時より始まるビジネスマンクラスで、稽古はまだできないもの、道着を着て道場生の後ろで気合をかけている二宮がいた。


「4!」

「すいや!」

「5!」

「すいや!」

「6!」

「しいや!」


二宮は、イザベルの髪型が変っても、たちまち本人だと気づいた。


にこ・・・。

二宮は一瞬笑ったように見えたが、すぐに道場生に視線を戻し、気合をかけ続けた。


(二宮さん・・・)


イザベルはd相乗の後ろで師範と共に、道場生の稽古を見ていた。二宮は怪我のため、稽古では気合をかけるだけだったが、二宮がまぶしくてしょうがなかった。


「おら、気合。気合!」

「すいや!」


ばしっ。

びしっ。


イザベルは二宮を見ているのは楽しかった。


ちらり・・・。

どき・・・。


時折、二宮の視線を受けると、思わず視線をはずした。


どきどき・・・。

胸の動悸が激しくなった。


ぽっ。

自分でも顔が赤くなるのがわかった。


「整列してください!」

「おす」

やがて、今日の稽古が終わった。


「道場訓!」

「おす。一つ、われわれは・・・」

道場生たちが目の前の神前をに向かって道場訓をはじめた。


結局、二宮は稽古が終わるまで道場にいて、稽古を見学した。




「喜連川、戻って来いよ。また、一緒にやろうじゃないか?」

師範の足利がイザベルのところにやってきた。


「師範・・・」

「なにを遠慮してるんだ。みんな、待ってるんだぞ。おまえが戻ってくるのを」

「そうですか・・・」


「当たり前だ。ほら、ためらってないで、戻って来い」

師範が稽古に戻ってこいとイザベルに言った。


「二宮はな・・・。おっと、口止めされてたっけ・・・」

「二宮さんが?」


「知らん、知らん。おまえの復帰を一番待っとるなんて、口が裂けても言えん」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あは、あははは!」

イザベルはついに吹き出した。


「師範。ぜんぶしゃべってるじゃないですか!」

イザベルは師範の言葉に久々に笑った。


「聞く方が悪い」

「無茶苦茶な論理ですよ、師範!あはは・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わっはっは!」

師範も豪快に笑った。


「二宮さんが、ですよね・・・。わたしのこと・・・、一番、待ってるって・・・」


イザベルの独り言は二宮にも聞こえていた。二宮はそう言われても少し赤くなりはしたもの、前のように取り乱したりはしなかった。


(どういう形であれ、イザベルちゃんからキッスしてきたんだ。今度は、オレがきみを勇気付けてあげる番だ)


二宮はイザベルの前に来た。

「おまえも説得してくれんのか、二宮?」

「おす。それと・・・」


イザベルは、二宮の優しくも真剣な眼差しに動揺するが、決してカラテの稽古復帰への不安からではないことがわかっていた。


「おす、イザ・・・。じゃなくて、喜連川さん。師範から特別に昇段審査を許してもらいました。コンビニの件、あれは、本人の不注意には該当しないって・・・」


「そうだぞ、喜連川。二宮は、おまえを守って警察本署の表彰までもらったんだ。本人の不注意なら、規定通り、来年へ自動延期だが、今回はそうではない」


「だから、体が治り次第、昇段審査を・・・。ですから、3ヶ月後の昇段審査に組み手をお願いします・・・」

ぺこぉーーー。

二宮は深々とイザベルに頭を下げた。


「おす。わたしが・・・?」

「そりゃ、そうだ。10人組み手には、10人の黒帯を揃えにゃならん。喜連川が、欠けたら、10人にならんではないか。そうだろ?」


「お手柔らかに。ははは・・・」

二宮の笑顔は何か吹っ切れていた。


「バカモン!」

「へっ?」


「喜連川、手加減せんでいいぞ!この未熟者に、もう一度、左上段をお見舞いしてやれ」

「おす!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんなぁ・・・」

「あははは」

イザベルは、何か胸のつっかえが取れたような気がした。


(よかった。二宮さん、特別に昇段審査受けれるんだ。わたしのせいで、1年また延期になるかと思ってた・・・)




次の日、イザベルは道着を持ってやってきた。


(イザベル・・・)

(ユティスさんに、アンニフィルドさんに、クリステアさん・・・)


そこにはユティスたちがいた。


じぃ・・・。

アンニフィルドとクリステアは道着を着ていて、イザベルを見つめていた。



師範はイザベルに目配せした。


「おす」

イザベルは着替えると二人と向き合った。


「おす」

「おす」


師範は特別にこの二人を1日入門させたのだ。


「喜連川、この二人は、一日特別入門だ」

「おす。組み手の相手ですか?」

「ああ。いっちょ、もんでやれ」


「おす」

イザベルは二人と順番に手合わせをした。



「組み手、はじめい!」


「おす」

「おす」


しぃや!

さっ。


クリステアはイザベルの上段をやすやすかわした。


(え?)

イザベルは驚いた。


「しぃや!」

イザベルは突きを出した瞬間に、クリステアにあっという間に回り込まれ、逆に上段を叩き込まれてしまった。


びしっ。

「うっ・・・」

試合ではないので倒すほど強いわけではなかったが、イザベルはショックを受けた。


そこにクリステアが言った。

「目が覚めた?」


さっ。

ぴたっ。

そして、また一気に間合いを詰められ、中段突きを寸止めされてしまった。


「う・・・」

喰らえば一撃だった。


「止めい!」


「おす」

「おす」



「次、組み手、はじめい!」


「おす」

「おす」


「しいや!」

すかっ。


「はいやぁ!」

すかっ。


アンニフィルドには、それこそ一発もかすりもしなかった。


「えいや!」


すっ。

突きも蹴りもすべて見切られた。


びしっ。


「あ!」


ずっでーーーん。


「えいや!」

ぴた。

あげく下段でひっくり返されて、とどめの突きを水月に寸止めされた。


(アンニフィルドさん、クリステアさん、この二人は何者なの?)


さ。

アンニフィルドはイザベルの手を取り立ち上がらせた。


「黒帯といっても、案外弱いのね」


(うっ・・・。仮にも、全日本準優勝のわたしを・・・)


ばちっ。

イザベルのスイッチが入った。


きらり・・・。

イザベルの負けん気が復活し、目に輝きが戻った。


「おす」

だが、以前と違うところがあった。


「カラテは武道でしょ?」

「スポーツではないわ」


「おす。それはわかってます」


「しあいに勝てても、実戦で使えないなら、稽古する意味はないわよ」

クリステアがイザベルに言った。


「実戦・・・」

イザベルはあのコンビニで起きた強盗事件を思い出した。


ぶるっ・・・。

「震えたわね・・・。でも、それを克服しなきゃ。あなた自身で」


「おす。カラテは武道です。精神修養をするものです。その稽古風景にわたしは魅入られたんです。だから、カラテを始めました」

イザベルは気負うことなく言った。


「よくやったわ、イザベル。あたしたち相手で、あそこまでできたら、将来楽しみね」


(おいおい。白帯締めて、黒帯によう言うわ・・・)


師範はそれを感心して見ていた。


--- ^_^ わっはっは! ---


師範の足利は、そう思いはしたもの、SSたちの底知れぬ実力に感服していた。


「二人とも、どこでカラテをしてたんだ?」

「SSですからね。毎日猛特訓よ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「SS?」

「セキュリティ・サポートのことよ」

「セキュリティ・・・、サポート・・・?」

「VIPの警護ってとこね」


「はぁ・・・。プロ・・・、だったんだ・・・」

イザbルが二人を尊敬の念を込めて見つめた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「そう、いうこと」


「エルフィアに来たら、SSの資格テストを受けてみない?」

「エルフィア・・・?テスト・・・?」


「そのうちわかるわよ」

にっこり。

アンニフィルドもクリステアもイザベルを讃えた。


「もう大丈夫ね」

「明日も、ちゃんと稽古に出てくるでしょ?」

にこ。

クリステアがイザベルに微笑んだ。


「ええ、たぶん・・・」

「お二人ともありがとうございます」

イザベルは二人に感謝した。


「あのぉ、それで、ここには、もう、来ないんですか?」

「そんなことないと思うけど・・・」

イザベルは二人にまた相手をしてほしかった。


「いつでも、お相手するわよ」

二人は請け負った。




「うほ!なんということだ。えらいもの掘り出しちまった!しかも、二人同時に・・・」

師範はこのタナボタに喜びを隠せなかった。


「いやぁ、きみたち、すごいね。あの、ぜひ、うちに入門、いや内弟子になってはくれまいか。給料も出すよ。ねぇ、きみたち・・・」


「どうする、クリステア?」

「ムリじゃない?ユティスと和人を守るのが、わたしたちのミッションだもの」


「断わるべきね」

「リーエス」


「と、いうことで、申し訳ないけど、カラテに専念するわけにはいかないのよ、師範さん」


「そんなこと、言わんで。今日にでも、本部に黒帯申請もするから。な!」

「たまに遊びに来るから、その時、みんなの稽古をお相手するわ」

「そんな、けちくさいこと言わんで。な、な、な!」


アンニフィルドとクリステアに足利師範の入門の説得が続いた。


「どうみても、きみたち二人は、世界選手権で、優勝を争うレベルの実力を持っている。オレにはわかるんだ。ホント、稽古料はいらん。内弟子だ」




「二宮、おまえの入院中に母親がいる時に言ったが、イザベルは絶対にウチに来させろ。今日付けで、おまえを新人採用専任に任命する」

「うす。しかし、新人採用専任って、なにすんですかぁ?」


した。二宮は驚くが、イザベルは以前会社訪問に来たし、和人と同じIT専門学校を来春卒業することは事実だった。イザベルは会社訪問以来、特にイザベルの反応は悪いわけではなかった。しかし、どうしてもイザベルが欲しい理由があった。


「二宮、このままではユティスたちのサイトがパンクする。特にフランス語サイトはこれかた充実していかねばならんが、スタッフがいない。わかってるよな?」

「うーす」


「イザベルは母親がフランス人だったから、フランス語サイトは彼女に任せたいんだ。かった。フランスには日本のコンテンツの熱狂的なファンがたくさんいる」

「うす」


「ライセンスもへったくれもないアジアでビジネスするより、まずしっかりしたライセンスがあるヨーロッパで、ビジネスを育てたい。それにはフランス語だけでなく、文化や人脈までに通じた身近なスタッフをぜひとも必要としているんだ。イザベルの姉はフランス航空のアテンダントだし、これはどう見ても、イザベルは採らねばなるまい。だろ?」


「うす。オレには理由は一つでいいすけど・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わははは。なるほどな」

俊介は笑って答えた。


「イザベルがウチに来るとおまえも仕事が楽しくならないか?」

「そりゃ、そうっすけど・・・」


「なにがなんでも、イザベルを口説け。いいか、女ってのは好きになるか、嫌いになるかの、どっちしかないと思って当たれよ。恋人にするつもりで口説け」


「あの、一応、そのつもりなんですが・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「おーそうだったな。悪い、悪い」




(考えようによっては、四六時中、イザベルちゃんと、どうやったらデートできるかだけを考えればいいってことだよなぁ)


--- ^_^ わっはっは! ---


(まいったなぁ。お袋、二人で帰ってこいって言うし・・・。常務、まさかオレたちの媒酌人になることを考えてたりして・・・。まいった。まいった・・・)


でれでれでれーーー。

にたにたにたーーー。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ほれ、また二宮のヤツ、一人でニタニタ妄想してるわよ」

「ほんと」


「また、なんかあったのよ」


「うるせーつーの!聞こえてるぜ、お嬢さん方」

「馬耳東風だわ」


「へっ、今日から、オレはイザベルちゃんをくどきまくるぞ!」


「俊介も、二宮に、まったくなんて役を回すのよ。よりによって、イザベル特命リクルート係りだなんて」


女性たちは先が見えてるようで、うんざりした顔だった。

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