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212 星人

「はぁい。アンニフィルドよ。とうとう、セレアムの社員さんたちにわたしたち正体を明かさなくちゃいけなくなったの。わたしたちが地球人じゃないってわかって、きっとショックだったに違いないわね。なんで、地球人よりキレイなのって?あははは。そんなの、その人の価値観じゃないの?要は好きな人がいて、お互い好き合ってるかどうかよ。人は自分を好いてくれる人には惹かれていくもの。好きな人がいないってのは、大問題だわ・・・」

■星人■




事務所に入った賊について、和人の出番が来た。


「和人も一仕事お願いね」

クリステアが言った。


「なにをすればいいんだい?」

「警察に駐車違反の通報ですわ」

ユティスがにっこり笑った。


「そういうことなら、お易いご用」

「地球の警察は、気絶した相手を取り押さえるのは、得意そうだもんね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「アンニフィルド、それは言いすぎですわ」

「ごめん。あは」

アンニフィルドは和人にウィンクした。




和人は110番通報をすることにした。


「どうして、最寄の交番にかけないのですか?」

石橋が和人にきいた。


「110番なら自治体の警察本部に直接繋がるから、必ずメモされるし、本部から指示がかかるんですよ。だから、最寄の署は必ず来るし、ちゃんと取り調べもしてくれるんです」


「じゃあ、最寄の署に連絡したら、来てくれないんですか?」

石橋は信じられないというような表情になった。


「いい加減にされる場合もあるって、知人が言ってましたよ」


「ふぅーーーん。じゃあ、わたしも110番しようかなぁ・・・」

「え?石橋さん、なにか盗まれたんですか?」


「はい・・・。わたしのハートです・・・」

ぽっ・・・。


「ええ?」

どき・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「和人さん・・・?」

「あ、はい・・・」


「110番通報、しちゃっていいですか?」

「な、なにをでしょうか?」


「ハート泥棒・・・」

「いい?」


--- ^_^ わっはっは! ---


にっこり。

「冗談ですよぉ。もう、和人さんのばかぁ・・・!」


「あ、は・・・。あははは・・・。ですよねぇ・・・」




「さっさと、通報してよね、和人ぉ?」

クリステアが和人に催促した。


「リーエス」

和人はスマホを取り出した。




「ええ、株式会社セレアムです。うちの前に違法駐車されちゃって・・・。ええ、至急取り締まりを・・・。あ、はい。レッカー車で強制撤去ですか?よろしくお願いします」


和人は、電話で事務所の表で眠りこけて、違法駐車している2人組みのことを告げた。




「ちょっとぉ!」

「なんなのよ、あいつら?」

岡本と茂木が和人に詰め寄った。


「あなたたち、なにしたの?」

茂木が和人とエルフィア娘たちを交互に見つめた。


「そうよ。説明しなさいよぉ!」

もう大丈夫だとわかると、和人の事務所は大騒ぎになった。


「どうやって、クリステアとアンニフィルド、ユティス、和人・・・?」

「あななたち、突然現れたかと思うと、2人の賊をあっという間に無力したのよ」


「それだけじゃない・・・」

「そうよ。賊が、かき消すように消えてしまったわ・・・」

事務所はおさまりが着かなくなった。


「ど、どいうことなの?」

「説明してよ」

「そうよ。そうそう」


「アンニフィルド、クリステア。それに、ユティス。あなたたち、なにもの?」

「和人、あなた、全部知ってるんでしょ?」

「さぁ、わたしたちが納得できるように、ちゃんと説明して」

茂木がさっきのショックから立ち直って、和人を問い詰めた。


「あー、それは、そのぉ・・・。あははは」

和人はハンカチで額の汗を拭いて、愛想笑いをした。


「わたくしが、ご説明申しあげます」


すぅ。

その時、ユティスがゆっくりと前に進み出た。


「ユティス・・・」

「あなたたち、いったい、なにものなの?」


「その前に、お約束してください」

ユティスは微笑を引っ込めた。


「なにを、今さら・・・」

茂木はツンとした。


「申し訳ございません・・・」


ユティスはアンニフィルドとクリステアを伴い、株式会社セレアムの社員たちに向き合った。


「みなさんには、真実を申しあげます・・・」


ユティスのこの一言は、みんなの待っていた言葉であった。そして、社員たちは3人に注目した。



「ただ、お約束していただきたいのです。わたくしのお話は、今は、ここだけにしていただけますか?わたしたち3人だけではなく、申し訳ございませんが、会社のみなさんにも、ご迷惑がかかってしまいますので・・・」


ユティスは、一言一言ゆっくりとかみ締めるように話し、みんなを見回した。


「・・・」

しばらく、緊張の下に沈黙が訪れた。


「ふぅ・・・。わたしは、構わないけど・・・」

ようやく、茂木が大きく息をつきながら答えた。


「茂木さんが、いいって言うのなら・・・」

「いいわ」

「わたしもいいわ。約束する」

「もう、係わってしまったんですものね」


「リーエス」

にこっ。

やっと、ユティスはにっこり微笑んだ。

「みなさん、本当にありがとうございます」


「ショックで、ひっくり返らないようにね」

アンニフィルドも付け加えた。


「心の準備はいい?」

クリステアが真顔で みんなを見回したので、事務所に一瞬で沈黙が訪れた。


しーーーん。

「では、みなさん、目をお閉じになって」

ユティスが依頼すると、一同は素直に目を閉じた。


ユティスは事務所の人間の頭脳波をスキャンした。


「完了しましたわ」

ユティスはアンニフィルドたちに告げた。


「さぁ、いくわよ」

クリステアが言った。




ユティスは大きく両手を広げ、優しさに満ちた笑みを湛えた。


「お察しされた方もいらっしゃることかと思いますが、わたくしたち3名は異国の人間というわけではありますう。いいえ、それどころか地球の人間でさえありません。地球と天の川銀河を離れること5400万光年、地球の方のおっしゃる乙女座銀河団のNGC4535銀河、エルフィアからまいりました」


ぴきーーーん。


事務所の人間の脳裏に、ユティスの送り出した映像が、鮮明に映しだされた。


「はあ・・・!」

「あう・・・っ!」

事務所は、悲鳴にも似た感嘆の声に包まれた。


ずでーーーん!

一つのきれいにS字型をした棒渦状銀河が映し出された。


「これは・・・?」


「エルフィア銀河です。直径約10万光年の棒渦状銀河で、天の川銀河とほぼ同じ大きさをしています。エルフィア銀河には、明るくて大きな腕が2本あり、そこから、細い腕が何本か分かれています」


「すごい・・・」


ユティスは続けた。


「エルフィア銀河の第一大渦状腕のほど近く、バルジの中心から約22000光年離れたところに、エルフィアがあります」

ユティスが説明すると、エルフィアの位置らしい星域がアップになった。


「エルフィアの主星は、太陽と同じスペクトルG型で、光度もほぼ同じです。惑星は12個あり、エルフィアは、内側から4番目になります」


「うわぁーーー」

その映像に一同は、思わず声を上げた。


「エルフィアは、約5万年前には宇宙に出ていました」


「信じられない・・・」


「そして、これが、そちらの天の川銀河の本当の姿です。地球はここです」

次に、ユティスの映し出した天の川銀河のイメージに、一同は再び圧倒された。


「わたくしたち、エルフィアからは、天の川銀河はこのように見えていますわ」


「す・・・、すごい・・・」

さらに、ユティスは続けた。


「わたくしたちは、この大宇宙にある文明世界のさらなる文明促進支援を、無償で行なっています。争いごとは好みません。この度、地球とはご縁があって、文明促進支援をするため、予備調査でまいりました」


「文明促進支援ですって?」

「なんのために・・・?」


「この宇宙を愛で満たすためです。これが、わたくしたち人類が、すべてを愛でる善なるものから与えられた使命であり、自らの希望です」


「大宇宙を愛で満たす?」

「なぜ?」

「どうして?」

「なぜなの?」

社員たちの疑問は尽きなかった。


「大宇宙は創造の過程にあります。そして、創造は、愛のみがそれを可能にします。他のいかなるものも、破壊こそすれど、創造はもたらせません」


「どういうこと?」

岡本が疑問を呈した。


「種を超えて、この大宇宙に普遍的愛を育ませられる存在は人類です。人類が世に出て、初めてそれが可能になりました」

「信じられないわ・・・」


「それに、あなたたちが、宇宙人だなんて・・・」


「にわかには、信じれないのもご無理ありませんが、それが事実なのです。今、こうしてみなさんが、わたくしの送ったイメージを、同時にご覧になられている。それが証拠です」


「わたしの声も聞こえるかしら?」

アンニフィルドが割り込んだ。


「わたしも」

クリステアも後を追った。


「すごいわ!」

「ステキ!」


事務所の人間は驚きをすぐに克服した。


ぱちぱち・・・。

拍手が自然に起こった。


「ありがとう。本当のことを言ってくれて・・・」

セレアムの社員たちの間は、今や、感動の嵐だった。


「一応、オレも割り込めるんだけど・・・。いいでしょうか・・・?」

和人がみんなの思念に入った。


「あーっ、和人、なんで、あなたが出てくるのよ。ムードぶち壊しだわ!」

茂木が文句を言った。


「オレ、一応、できるんですよ。そのハイパー通信ってやつ」


「あなたが、なんで割り込めるか、まったく理解できないけど、地球人は引っ込んでなさい!」

「そう、そう、和人、引っ込めぇ!」

あっというまに、事務所の人間たちは、エルフィア娘たちを受け入れていた。


「みなさん、ありがとうございます・・・」

ユティスは、事務所に受け入れられたことに感動して、涙していた。


「あのぉ・・・、ほんとに、いいんですの・・・?」

ユティスは震える声で、目を潤ませた。


「ええ。今まで、もやっとしてたことが、すっかりクリアになって気持ちも良くなったわ。本当のことを話してくれて、ありがとう、ユティス」

茂木が言った。


「実は、なんかわだかまりってもんが、あったのよねぇ。でも、それも昨日の話。わたしたち、当てにしていいわよ」

茂木の言葉が本心だとわかっていたので、エルフィアの3人は、感動していた。


「わたくしたちを・・・、受け入れてくださるのですね?」

ユティスは震え声になった。


「同じ株式会社セレアムの人間じゃないの」


「・・・」

「・・・」

「・・・」


エルフィア人の3人は声が出なくなった。


「因みにさぁ、いままで事務所で、二宮や和人が、見えない第三者と話しているようなことが何度もあったけど、それって、やっぱりあなたたちのせい?」


「はい・・・」

ユティスがやっとのことで答えた。


「あの時は、精神体でこちらにお邪魔していましたの・・・」

ユティスは胸がいっぱいで、今にも泣き出しそうだった。


「わかったわ。信じる。信じるわよ。光栄よ。ねぇ、みんな!」

事務所のボス的存在の茂木の言葉に、一同異議はなかった。


「和人?」

「はい、なんでしょうか・・・」


「やっと得心がいったわ。あなたの心の、精神体の恋人がいたってこと。そして、それがユティスだってこと。そして、彼女が実在してたんだってこと。目の前にいて、触れることができるってことも・・・」


茂木は優しい眼差しになった。


「こ、恋人って・・・」

和人はごまかそうとした。


「石橋、もう、未練ないわよね!」

岡本が石橋を決断させるように言った。


「たぶん・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「和人もよ。さっさと認めなさい」

岡本は今度は和人を振り返った。


「んなこと言われても・・・」


「あーら、女神さま宣誓しといて、今さら否定するなんて、男らしくないわねぇ」

間髪入れずアンニフィルドが追い討ちをかけた。


「石橋には悪いけど、あたしたち知ってるのよ。和人には、絶対に恋人がいるってこと」

「ユティスっていう名前のね」


「エルフィア人か・・・。それにしても、あなたたち、桁外れの美人よね」

今さらながら茂木は感心した。


「あの、他のお二人はともかく、わたくしは、ごくごく平均的なのですが・・・」


ユティスはそう言うと、みんな首を振って否定した。


ぷるぷるぷる。

「とんでもない」

「絶対に、平均だなんてありえない」


「事務所のみなさんも、とても美しい方ばかり」

ユティスは本当にそう思っていた。


「それこそ冗談でしょ」


「そんなことないわ」

アンニフィルドが言った。


「俊介はね、社員は美人しか取らないんですって。わたし、聞いたわよ、本人から直接・・・」


「えーーーっ!」

事務所は大騒ぎになった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ちょっと、なんなのよ、アンニフィルド!」


「アンニフィルド、あなた、仮にも社員なんでしょ?常務取締役を呼び捨てにしていいと思ってるの?」


「そうよ。しかも、ファーストネームで!」

「どういう関係?」


「えへ・・・。どういうってもねぇ。岡本や茂木だって、思いっきりファーストネームを呼び捨てしてるじゃないのぉ・・・」


「わたしたちは学生時代の同級だからいいの!」


「いい機会だから、この際すべて白状なさいよ、アンニフィルド」

クリステアがクールに言った。


「うふ。ただならぬ関係ってわけですわ」

ユティスも微笑んだ。


「あーーーん、わたし、常務を密かに狙ってたのにぃ!」

「こら、アンニフィルド、どこまでいったのよぉ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


事務所は3人がエルフィア人だなんて、どうでもよかった。3人の娘が会社に入ってきた。それが事実だった。そして、その一人、アンニフィルドが、俊介のなんなのかが大問題だった。


「まさか、もう、自分のものにしちゃったとかじゃ、ないでしょうね?」

「わたしのものにするって、どういうことぉ?」


「きゃあ、ひどーーーい!」

「なに言ってんのよ、みんな」


「本当のことを言いなさいよ!」


「キッス・・・て」

アンニフィルドが言いかけて、岡本が悲鳴をあげた。


「きゃーーー、どこにしたのよぉ。いやらしい!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なんでもないわよぉ。たかだか首にキスマークつけたくらいで、騒がないでよ」


「きゃあ!」

「キスマーク?」

「なんでもなくないじゃない!」


--- ^_^ わっはっは! ---


アンニフィルドの一言で、すべてが知れ渡った。


「じゃ、それなのね?常務が絆創膏を貼ってたっての?」

「そうよ。そうよ。あの絆創膏の意味、そういうことだったのね」

「あなた、常務のなんなのよ?」


つんつん・・・。

「収拾つかなくなっちゃった。どうすんのよ、アンニフィルド?」

クリステアが言った。


「あははは、笑って許してもらうってのは・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「絶対にないわ!」

事務所の女性たちが、コーラスした。


「みんなを、敵に回したみたい」

アンニフィルドはおどけてみせた。


「さぁ、白状なさい、アンニフィルド!」

茂木が詰め寄った。


「なにもないってば!」

「ウソおっしゃい!」


「和人ぉ!」

「オレには、どうしようもないじゃないか。本人に確認してよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「薄情者!」


「さぁ、さぁ、アンニフィルド。全部ゲロしなさいよ!」

「きゃぁ!俊介ぇーーー!」


「俊介なら、客先に出かけたわよ」

真紀は結果を予測していた。


「う、裏切り者ぉーーー!」


アンニフィルドは、その後みんなにもにくちゃにされた。

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