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210 金座

■金座■




その日、ユティスたちは金座に出かけた。シャデルのプロモーションビデオを撮影するためだった。


「早朝より、昼間の方がよかったですね」

シャデル日本支配人の黒磯が、真紀の側で遠慮がちに言った。


「あは・・・。そ、そうですねぇ・・・」

真紀は黒磯からアプローチを掛けられていることを百も承知だった。


(ビジネスとはいえ・・・、勘弁してほしいんだけど・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「一応、警察の交通規制もありますから、撮影には支障ないでしょうけど・・・」

「いい天気になって幸いでした。そろそろ、モデルさんの準備も整ったでしょうから、撮影にはいります」

「は、はい」


黒磯は、キャンピングカーのようなバスのような車の中で準備をしているスタッフのところに、準備完了の確認に行った。




「はぁい、三人とも最後の確認をするわねぇ」


3人のチーフ・コスメ・コーディネーターはイケメン風の男性で、見てくれも細身の引き締まってファッショナブルだった。その腕は超一流で、セレブたちにも名の知れた売れっ子だったが、ただ、完全にお姉さま言葉であった。


「あーら、3人ともすっごくステキに仕上がったわぁ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「アンニフィルドちゃん、ちゃんと横を向いてくれる?」

「リーエス。こう?」


「ええ。そうよ・・・。うん・・・、いいわよぉ。あなたのプラチナブロンドとピンクの瞳が生えるようなカラーにしたからね」

「どうも」


「よし。いいわ。次は、クリステアちゃんよ。はぁい、横向いてぇ」

「リーエス」


さささっ。

チーフ・コスメ・コーディーネーターは、クロステアの髪を整えた。


「あなたはショートヘアだから、耳は隠してもいいんじゃない」

「こんな感じ?」

「そうそう。目より上に髪を盛ったから可愛さが強調されてて、ステキよぉ」

「ありがとう」


「はぁ、最後はユティスちゃんね。はぁい、横よぉ」

「リーエス」

「うーーーん、いいわねぇ。完璧、パッフェよぉ」



(この人、すっごくお化粧とか、ドレスのコーディネートはスゴイんでしょうけど、あの言葉をどうにかしてもらえないかしら・・・?)


--- ^_^ わっはっは! ---


アンニフィルドは精神波会話で他の二人と会話した。


(リーエス。この顔、この容姿で、『なのよぉ』とか『あーら』とか『だわぁ』ってのはないわよねぇ・・・)

クリステアも頷いた。


(ギャップ大きすぎだわ)

(ちゃん付けで呼ばれるのもねぇ。ユティスちゃん・・・)

SSの二人は179センチあるのに加え、5センチのヒールサンダルを履いていたから、女性にしては飛びぬけて高くなっていた。


にっこり。

(そうでしょうか。わたくしは特に気になりませんわ)


(ユティス、あなた変・・・)

(そうなんですか?)



「さぁ、いくわよぉ!。みんな、出てらっしゃい」


ぷしぃ・・・。


車のドアが開くと、エルフィア娘たちが白を基調にしたシャデル春夏最新デザインのドレスを纏って、足元に気をつけながらゆっくりと現われてきた。


「おお・・・」

黒磯は一目で、自分の選択が正しかったことを確認し、大いに喜んだ。




わいわい・・・。

がやがや・・・。

ぞろぞろ・・・。


金座の大通りは、3人を見ようと今や黒山の人だかりができていた。


「ねぇ、ねぇ、どこのモデルさん?」

「きれーーーい!」

「すっごく可愛い!」


「あーーー、エルフィア人だぁ!」

だれかが、3人娘を指して叫んだ。


「どこどこぉ?」

「そこよ、そこ!」


「あ、ホントだぁ!」

「なんでも5400万年先から来たんだって」


--- ^_^ わっはっは! ---


「違うわよぉ。5400万光年先よぉ」

「ええ、うっそぉ?」

「ホントだってば。本人たちが言ってたんだから」

「それで5400万光年先って、ローマくらいかしら?」

「マドリッドくらいは、あるんじゃないの?」


--- ^_^ わっはっは! ---




「ジョバンニ、人ごみに紛れたら、またスタジアムのように仕掛けられるぞ・・・」

「ああ。あんたは、右に回ってくれ。オレは左横から、野次馬をチェックする」

「OK」

ダークスーツにサングラスの合衆国SSたちは、エルフィア娘たちを囲む野次馬たちに目を光らせた。




ぴっ。

「こちら三蔵。かぐや姫たちの警備中です」

「ご苦労」


「金座でビデオの撮影に入ります。野次馬の数が半端じゃないんですが、これだけ目立てば、Zのヤツラがなにかしようなんてできそうにないですね」

「了解。引き続き観察をしたまえ」


「了解」

日本の警護官たちも私服に身を包み、ユティスたちを遠巻きに囲んでいる人だかりに注意を注いだ。




「さぁ、テイク1だ」

撮影監督が合図を出した。


アシスタントが右手の指を一つずつ折って行った。

1、1、スタート。


アンニフィルドがさっそうと金座大通りを歩いて笑顔を振りまいた。輝く長いホワイトブロンドを首の後ろで白いシュシュで留めたスーパーモデル。金座の着物客はみんなそう思っていた。


さー、さー・・・。

そして、彼女は立ち止まると、ゆっくりローアングルのカメラに振り向き、覗き込むようにして、えも言われぬ笑顔をこぼした。


にっこり・・・。

「みんな、オシャレしてる?」

アンニフィルドはそういうと、前から来たショートヘアのクリステアと片手を合わせて、軽くパチンとやった。


「キレイになりましょ!」

クリステアは、ウィンクすると、アンニフィルドと二人で並んで歩いた。

さっさっさ・・・。


そして、中央の奥からダークブロンドのポニーテールを揺らして、美しくも愛らしいユティスが現れると、二人は彼女を迎えるように左右から対称的にユティスを振り向き、片手をあげた。そこに合流したユティスは、両手で二人と軽くパチンとやった。


「女性は、いつだってステキになれますわ!」

さっさっさ・・・・。

3人は一緒に並んで金座をリズミカルに歩いていった。



3人はそれぞれ微妙にリズムを変えて歩きながら、ゆっくりとカメラの方に振り向くと、信じられないくらいの素晴らしい笑顔なった。


にっこり・・・。

「トゥ・レ・ジュール。アヴェック・シャデル」


かち。

「はい。テイク・ワン、終了!」


ディレクターの指示が飛び、カメラが止まった。



「いいねぇ。いいねぇ」

ディレクターは3人を褒めちぎった。


「あの、扇風機係りさん!」

ディレクターは、直径1メートル以上はある扇風機の係りを呼んだ。


「はい!」


「もう少しドレスがひらひらするように風を当ててくれないか。今のままでは、ドレスの素材感が硬いような印象を受ける」

「了解です」

ぺこ。

扇風機係りは頭を下げた。


大型扇風機はカメラと一緒に台車に乗せられ、台車はレールの上を、3人を追いながら移動できた。



「テイク・ツー、いくよぉ!」


4、3、2、1、スタート。

アシスタントの合図でカメラが回り始めた。



「なんか、本物のモデルみたいだ・・・」

和人はその様子を見ながら呟いた。


「はまってるよなぁ・・・」

俊介も感心したように3人を見つめていた。


「あまりにもね。本当にキレイ・・・」

大型扇風機でふわふわ舞う白いドレスを纏った3人は、天使さながら舞うように歩いた。


「これが放映されたら、3人には決定的だな」

「ええ。セレブの仲間入りよ。もう、Z国もどうにもできなくなるわ」

「本当にそうなるんでしょうか?」

和人は心配そうに、国分寺姉弟にきいた。


「和人の言うとおりだな。所詮テロリスト国家だ。なにをしてくるかわからん」

「そうなの?もう、何回も失敗してるわ。いくらなんでも、堂々、工作することはできないんじゃないの?」

真紀は俊介と和人に反対した。


「いや、甘いな、姉貴。表立って政府抗議ができない以上、それこそあらゆる手を使ってくるんじゃないか?」

「そうなの・・・。しつこい奴等ね。はぁ・・・、カテゴリー1か・・・」

「はい。真紀さん、世界的にちゃんと表明できない以上、オレも常務と同じ考えです」

和人は3人を眼で追いながら、真紀に言った。




撮影は3時間に及び、3人が解放されたのは既にお昼をとうに過ぎていた。


「いやぁ、国分寺あん、本当に助かりましたよ」

シャデルの黒磯支配人は、俊介に礼を言いながら、真紀をちらちら見るのを忘れなかった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「礼なら、あの3人に言ってください。わたしはなにもしてないんだから」

「いえ、いえ。国分寺さんがいらっしゃらなかったら、この撮影は実現しませんでしたからね。本当に感謝いたします」

「とにかくよかったですわ」

真紀も話を合わせた。


「それで・・・」

黒磯は真紀を気にしながら続けた。


「あははは。お食事を用意しておりますので、どうでしょうか?」

黒磯は大そう上機嫌で、俊介に、セレアム一行の食事を誘った。


「お昼ですか?」

「はい」


「3人に聞いてみないとね・・・」

黒磯に見つめられて、真紀はエルフィア娘の方に視線を移した。


「おう、そうか、そういうことか」


--- ^_^ わっはっは! ---


にたり・・・。

俊介が真紀の言わんとするところを察した時だった。


「オレ、聞いてきます」

和人とがそう言った。


「いえ、いえ。わたしが行ってまいります」

すたすた・・・。

そう言うと、黒磯はエルフィア娘のところに歩いていった。


「こら・・・」

ちくっ。

和人は真紀に背中をつねられた。


「痛・・・。なにすんですか、真紀さん・・・」

「ばか和人」


--- ^_^ わっはっは! ---


真紀は黒磯に聞かれないようにして、和人に囁いた。


「え?」

「鈍い野郎だな、和人は・・・」

俊介のにたにたした笑いの意味がわからず、和人は面食らった。




(アンニフィルド、食事は断ってくれ)

俊介はハイパーラインで、アンニフィルドに通報した。


(な、なによ、いきなり?)

(とにかく、食事は断ってくれ、姉貴のためだ)

(真紀さんのため・・・?)


アンニフィルドはわけがわからず、遠めに俊介をみつめた。




「いやぁ、みなさん、なんて素晴らしい。押しも押されぬスーパーモデルですよ!」

そこに愛想よく、黒磯がやってきて、3人に声をかけた。


「はい、ありがとうございます、黒磯さん」

にこっ。

ユティスは笑顔でそれに答えた。


「それで、みなさん。そろそろ昼食をと思いまして、ご用意させていただいてるんですが、一緒にどうでしょうか?」



(ふうん、そういうことね、俊介・・・)

(そういうことだ、アンニフィルド)

(わかったわ。みんなに伝える)

(頼んだぞ)




(ユティス、クリステア、お昼のお食事はシャデルではしないわよ。いい?)

(ええ?なんですの、突然・・・)

(危険が迫ってるって言うの?)


(リーエス)

(Z国?)

(ナナン。黒磯さん)


--- ^_^ わっはっは! ---


(真紀さんたら、あまり黒磯さんとお近づきしたくないらしいわ・・・)

(そうなんですか・・・?)

(ふぅーーーん。なるほど・・・。了解、さっさと断りましょう)


(アルダリーム、クリステア)

(パジューレ)




「ということで、いかがですか?」

黒磯はもうOKをもらったも同然と思っていたが、そこにアンニフィルドが答えた。


「大変光栄なことで感謝申しあげます。けど・・・」

「けど・・・?」

黒磯は微妙に話が反対側にいく気がして、不安そうに聞き返した。


「わたくしたちも、次の仕事があるんで、このへんで失礼したいんですけど」

アンニフィルドはクリステアとユティスにウィンクした。


「はい。次のお仕事が・・・」

「真紀さん、早くぅ!」



(ジョバンニ、あなたの車を今すぐ横に付けて!)

(イエス、マム)

クリステアはジョバンニに依頼した。



クリステアはあたふたと急いで真紀のところに駆けていった。


「あの・・・」

黒磯はそれを目で追った。


「そう、そうっだったわね。次の仕事、次の仕事・・・。えー、次はどこだったかしら、俊介?」

真紀は俊介に振った。


「ええ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「次か・・・?次は・・・。おい和人、次はどこになってた?」

「ええ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「次?大田原さんに電話するとか言ってませんでしたっけ・・・?」

「おお、そうだった。じいさんに会うんだった」

俊介はアンニフィルドに聞こえるよう、大声で叫んだ。




「あは。みんなで大田原さんにところに行かなくちゃいけないんですよねぇ」

アンニフィルドは黒磯に言った。


「大田原さんというと、大田原太郎内閣特別顧問のことですか・・・?」

黒磯は目をぱちくりさせた。


「ええ。そいうことなんですの」

にこっ。

ユティスは微笑んで答えた。


「は、はぁ・・・」




ぶっぶぅーーー。

ばたむ。


黒塗りの大型リムジンから、ダークスーツの黒目がねが降りてきた。


「お迎えにきました」

ジョバンニは黒磯に丁寧に礼をしたが、それは有無を言わせぬ主張であった。


「さぁ、みんな乗ってくれ」

俊介はエルフィア娘たちと、和人、真紀、を乗せた。


「あの、国分寺さん・・・」

「黒磯さん、申し訳ない。彼女たちは、どうしても外せないんで、また今度ということでよろしくお願いしますよ。そのかわり、わたしがお食事をご一緒に」


「あ、国分寺さんがですか・・・」

黒磯の言葉には、打って変って力がなくなっていた。


--- ^_^ わっはっは! ---




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