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208 首脳

■首脳資格




「鉛含有のただのガラス玉ではないか。これがクリスタルボールだとぉ?」

男は分析器の結果に腹を立てた


「これのどこに超高度文明の情報がある?ええ?」

「しかし、異星人のしろものです。電磁波による検査だけではわかりません」

もう一人の男は信じられないような表情で、相手と台座を見た。


「それに、この台座を見ろ。なんと書いてあるか読むがいい!」

「そんな、馬鹿なぁ・・・。製造元:イミテーションInc.メイド・イン・Z・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「これが、異星製のテクノロジーの産物か?」

「なにかの間違いです」


「おちょくられよって・・・」

「しかし、確かにオークション主催者の金庫から取り出したものです。側でわが国のエージェントが確認しており、ケースに入れてからは、空港までだれも一度も開けていません・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「馬鹿者めが!リッキーを呼べ!」

「は、はい、只今・・・!」




「リッキー、サッカースタジアムの確保失敗といい、クリスタルボール交換の失敗といい、、ユティスの本国招聘といい、いったいどう言い訳するつもりだ」

男はいきり立っていた。


「それについては、エルフィアの人セキュリティ・スペッシャリストの2名は、オレ以上のエスパーだと言ったはずだ。スタジアムでのユティスの確保は成功したんだ。それをみすみす逃がしたのは、われわれ、国家危機管理情報部の人間ではない。それに、クリスタルボールの奪取作戦について、CDGの検査官のミスは、そちらの責任だ。ユティスの招聘についても、あれは、わが国がユティスを確保するための日本を含めた諸国へのカモフラージュ。時間稼ぎだ。目的は十二分に達成できている。ユティスを確保できたのは、そのためだぞ。忘れたのか?」


リッキーは不満を男にぶつけた。


ばん!

「しかし、総指揮はおまえではないか!」


「いい加減にしてくれ。その指揮に口を出し続けて計画を変更し、裏で邪魔をしているのはどこのどいつだ。オレの言ったように手配すれば、こんなことは起きてなかったはずだ。手柄を独り占めにしようと、いち早く上に報告しただろう。挙句、作戦を台無しにして、責任をオレになすり付けようなどお見通しだぜ。このキツネ野郎、面の皮をひん剥いてやる」


リッキーは、本国から来て間もないこの男がすべてを掌握しようとこそこそ動くのが、鼻持ちならなかった。


「なんだとぉ、いい気になりおって。鉱山行きになってから吠え面かくなよ」

「ごちゃごちゃ人の批判ばかりして、頭の一つ、腕の一つもないくせに。他人の褌で相撲を取るとは、大したもんだ。いつからわが国はこういう能無しが威張り散らせる民主国家になったんだ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「国家を愚弄するとは、覚悟ができているんだろうな、リッキー?」

「そっくりお返しするぜ」

リッキーは男を睨みつけた。


「いいか、今度オレの邪魔をしたら、きさまこそ鉱山送りにしてやる」

リッキーは踵を返すと、部屋から出ていった。




エルフィアでは、サッカースタジアムでのユティスと和人の拉致事件が取り沙汰されていた。


「アンニフィルドとクリステアがいて、どう言うことかね、フェリシアス?」

「そうですとも。わざわざ最高理事直下のSSを二人付けたというのに、これではまったく効果がないではありませんか」


「しかし、あの二人がいたからこそ無事に取り戻せたのも事実。地球人のSSたちも非常に協力してくれている」

エルドは苦境に立たされていた。


「そうですとも。あの二人は冷静に行動してくれたわ」


「どうだか。わたしには、ユティスたちが拉致された時点で、もう職務怠慢といわざるを得ない」

ベルザスは地球支援反対派だった。


「それは言いすぎです」


「ナナン。今回は極めてラッキーだったのだ。SSたちの能力を拉致した一団、なんて言ったかな・・・」

「Z国です」

「リーエス。そのZ国が、二人の命を盾に、エルフィアの科学技術をよこせと言ってきたであろうことは、用意に想像できる」


「もし、ユティスの命に係わることになれば、即時地球からの引き上げ、時空封鎖を実行せねばならん」


「みなさん。もう少し冷静になってくださらんか」

エルドは一同を見渡した。


「確かに、ユティスと和人は一瞬とはいえ、拉致されましたが、日本国内で留っている。それに、今回の一件で、地球文明の闇の部分も相当明らかになったと思うが、それが今後の予備調査に反映されれば、逆に、この美しくも過酷な地球と言う世界を救えるかもしれん。わたしは、地球がミューレスのような結末を迎えることは望まない」


エルドは心底そう思っていたし、それを防ぐ手段があるなら、すべて実行するつもりだった。


「エルド、あなたのその崇高な精神は、娘後のユティスにも脈々と受け継がれています。姉のナタリスもそうであったように。わたしも、地球と言う星が宇宙の塵になることは望んでいませんわ」


「では、地球の派遣チームへの強化案は、委員会として了承すると?」

エルドは最大の関心事に対して、一同に確認をさせた。


「リーエス。いいでしょう。ただし、もし、拉致に類する行為を地球時人自身が防ぐことができないとしたら、早急な対処をするよう提案します」


「リーエス。賛成する」

「わたしも・・・」

「異議なし」


「アルダリーム(ありがとう)、みんな」

エルドは一同に頭を下げ、礼を言った。


「地球人自身が、Z国のような連中に、なんとしてもそうさせないように働きかけねばなるまい。エルフィアいくらそうしても、彼ら自身がその努力をしないというなら、それはカテゴリー1である証明だ」


「わかりました。みなさん。超A級SS・フェリシアスとA級SS・キャムリエルを緊急時の待機スタッフとしてリザーブしたいが、承認いただけますかな?」

エルドの要請に、一同は全員一致で答えた。


「ところで、トルフォは欠席か?」

「諸世界への視察に出かけています」

「慰問か?」


「それもあるでしょうが、大体は彼自身の個人的なスケジュールですよ」

「要は諸星漫遊というわけだな?」

「現地の悪性ウィルスを採集して回ってくるんじゃあるまいね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうなれば、エルフィアには戻らせん」

「いかにも。まぁ、彼がいない分、委員会もスムーズに進むと言うものです」


「ほほほ。違いありませんわ。この場にいなくて幸いです。『だから、言わんこっちゃない。ユティスの回収だ』と騒ぎ立てるに決まっています」


「それで、彼の戻りは?」

「知るもんですか。永久にお戻りくださらないなら、お祝いしますのに」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それは、ちょっと言いすぎだな、ミクセラーナ」

エルドがミクセラーナに自制を要求した。


「そうだとも、大体、視察を彼に行かせることになったのは、ここにいる全員が拒んだからに他ならない。トルフォが自分自身の用事を優先することは、そのための交換条件だったではないか?」


「みなさんのおっしゃるとおりだったわ・・・」

ミクセラーナはエルドを心配そうに見た。


「議長、トルフォから連絡があったら、訪問先を明らかにするよう伝えてくれたまえ」


「リ-エス。当然のことだ」

議長はエルドに頷いた。



「さて、本題に入ろう。地球の予備調査は、多少の問題はあるがあるが、まずまずだ。それで、状況は第三段階に入りつつある」

「ふむ・・・」


「ユティスからの報告によると、ユティスたちは地球の民衆に受け入れられているらしい。マスメディアやインターネットという双方向通信網では、すでにアイドル、セレブ扱いされているとか・・・」

「なんと・・・」


「いかにも、指導者たちは異世界の人間を表面上は否定して、自らの権力維持に勤めるのが常なのに、Z国はユティスを自国に歌手として招聘したと言うではないか?」


「ユティスをエルフィア人として公言した上でかね?」

「ナナン。一応、ウツノミア・カズトを同じ日本の民衆としてです」


「ユティスたちは既に日本の市民権を得ております」

「しかし、招聘は断られたと聞いておりますわ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「地球人というのは、おかしな連中ですなぁ・・・」


「それでだ、みなさん。地球の指導的立場にあるカテゴリー2の主要地域の首脳が、ユティスたちに本気でアプローチを試みようとしている」


「それは、本当ですか?」


「リーエス。日本と合衆国の首脳会談が行なわれた時、これが話題に上ったとのことだ。詳細については、いずれ報告がくるだろうが、これは新たな段階に、つまり第3段階を迎えつつあるということだ」


「なるほど・・・。彼らは正面切って、われわれ、エルフィアを迎える用意があるということですな・・・?」


「リーエス。コンタクティーのみにアプローチする第一段階、コンタクティーの家族友人へのアプローチする第二段階を経て、その世界の指導者たちへのアプローチする第三段階だ。地球は予備調査で、既に第三段階に入った・・・」


エルドの一言は一見喜ばしいことのように思えたが、ある意味極めて危険な段階を迎えつつあることを意味していた。


「もし、その指導者たちへのアプローチが失敗すれば・・・?」


「考えたくはないが、最悪の場合、エルフィアの文明を盗もうとするか、拒否しようとするか、そのどちらかになるな」

エルドは重々しく言った。


「そうなった場合、われわれ、エルフィアはどうするおつもりですか?」

ロンバルディーナが不安そうにエルドを見た。


にっこり。

エルドは微笑むと、静かに語った。


「そうはしたくない。そうではありませんか?」


「・・・」

「・・・」


一同は、しばらく沈黙したまま、お互いを見つめあった。


「リーエス。そうはしたくないのです、エルド」

「わたしも、そうしたくはありません」


ミクセラーナとロンバルディーナが、まず沈黙からの口火を切った。


「ああ、そうだとも。そうはさせない」

「慎重に方策を考え、ユティスと話そう」

「リーエス。そうしよう」


委員会は、エルドの意見にほとんど全員が賛成した。




首相官邸では藤岡が青くなっていた。


「首相。エルフィア人の件で、合衆国大統領です」

「うむ。まったく、どこで嗅ぎつけおったんだ。日本国籍付与の件、超極秘事項ではなかったのか・・・」


「CIAにかかったら、秘密なんて半日も持ちませんよ。彼らに冗談は通じません。可能性のあるものは、とことん理詰めと現地調査で調べます。既に、本人たちにコンタクトしてない方が不思議なくらいです」


「そうか。で、どう出てくるんだろう?」

「恐らくは、裏取引・・・」

「またか・・・」




「ハロー、大統領」

「ハロー、ミスタ藤岡。手短に本音で話そうじゃないかね」

「願ったりですな」


「アルファ星のスーパーノバ化で、エネルギー本流を逸らせていただいた件は感謝いたします」

大統領が口火を切った。


「いや、まぁ・・・」


「ただ、地球全体の危機に際して、エルフィア人へ独断で依頼されたのはよしとして、同盟国として、情報開示をタイミングよくしていただけなかったようですな。エータ星では、こちらは最大限に日本への情報開示を同時で行なったというのに・・・」

大統領は恩着せがましく言った。


「な、なにをお望みかな?」

「ズバリ。エルフィア人たちの国籍付与。隠そうとなさらなくても、われわれは知っていますよ」


「うっ・・・」

藤岡は言葉に詰まった。


「それで・・・」

藤岡は変にごまかすのは得策でないと判断した。


「あなたは、彼女らに日本国籍を与えたと」

大統領はずばり核心を突いた。


「左様」


「彼女たちを、独占するおつもりで・・・」


(やっぱり、そうきたか・・・)


「いや、身柄の保証と保護です。地球では彼女たちは無国籍で通すことは難しいでしょう。Z国やテロリストからの法的保護が必要です」


「なるほど、われわれは意見の一致をみましたな」

「どういうことで?」


「わたしも既に国務省に指示を出しました」

「なにをですかな?」


「3人に合衆国国籍を与え、彼女たちの身元を保証し、合衆国内移動を自由にする。もちろん、同時に超VIP指定を行った。大統領のスペッシャル・サービス並、第1級セキュリティつきでね。日本でのセキュリティは、現在この外交保安局のカバーで既にしておりますが、コンタクティーのミスタ・ウツノミアや他もカバーできますが。お望みで?」


「な、なんですと?いや、必要ない!」

藤岡は即座に言った。


「いや、別に費用を負担してくれなど、みみっちいことは言いませんよ。実は、もう手配しておりましてね。今頃は、ミスタ・ウツノミヤの周辺もシークレット・サービスが、しっかりとガードを固めていますよ」


「なんと、勝手なことを!日本国内ですぞ!」

藤岡は大統領がどんなに素早く意思決定したか、思い知らされていた。


「よろしいですか。彼女たちは、既に、わが国の市民なんです。合衆国民の身の安全を守るのは、大統領として当然の義務でしょう。あなた方も、自国民の外国での身の安全を守るでしょう?お国のパスポートにも、外務省や大使に対して、そう指示する記載がされてるんじゃありませんか?」


大統領は余裕綽々に喋った。


(うっ、なんということ。合衆国はわが国の遥か先を見据えて、行動に出ていたんだ・・・)


そういう藤岡の気持ちは、明らかに口調に現れていた。


「なるほど・・・。あなたの国では、まだいろいろと手続きがお済ではない?」

大統領にはそれがお見通しだった。


「そ、それは・・・」

「そちらの官僚は、職務に忠実で、多分に慎重ですからな」


--- ^_^ わっはっは! ---


(うっ。痛いところを突きおって・・・」)


「別に、日本国籍をお与えになったこと自体、わが国の法律に抵触するわけではありませんよ。どこかの国みたく、20歳になったら、国籍を選び、どちらかを捨てろ、なんて、前時代錯誤なことも要求しませんから。今時、合衆国もヨーロッパでもそうですが、二重国籍なんて別に珍しいことではないでしょう。なにか問題でも?」


(くっそう、本当に、痛いところを突いてきおったわい・・・)


藤岡は苦虫をつぶしたような表情になった。

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