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204 検査

■検査■




「SS・アンニフィルド、ご要望のSS用スーツです」

「ありがとう」


「男性用も容易しましたので、ご確認ください」

「リーエス」

アンニフィルドはそれを俊介の身体に合わすようにかざした。


「うーん。いい具合だわ。ぴったりね」

「これを着るのかい?」

俊介はエルフィアの男性用SSスーツを眺めて言った。


「リーエス。エルドには言っておいたの。あなたをSSに推薦するって」


「なんで、オレが?」

「リーエス。本気よ。あなた、筋がいいもの。沈着冷静で、頭もいいし、運動神経もいい。そして、度胸もあるわ。女には弱いけど」


--- ^_^ わっっはっは! ---


「それは正常な男の証だ!」


「それでね、地球の予備調査の間は、わたしたちの補佐をお願いしたいの」

「でも、オレにはきみらのような超能力なんてないよ」


「ナナン。頭脳が活性化してないだけ。アンデフロル・デュメーラが助けてくれるわ」

「アンディーにそんな能力があるのか?」


「リーエス。教育プログラムを用意してもらうことにしたの。とにかく、それは、データクリスタルの件が落着してからよ」

「わかった」

二人は用意したスーツに着替えた。


「そろそろ、朝食でもどう?」

「お、いいねぇ。オレは、コーヒーにトーストで十分だけどな」


「わたしは、クロワッサンがいいわ」

「決まりだ」




「似合うかい?」

「リーエス。とっても、ステキよ」

二人は、ホテルのロビー横の大きなカフェで、コーヒーを飲んでいた。


「今日ね?」

「ああ・・・」


今日は政府の振込みが確認できたら、オークション主催者の金庫で、クリスタル・ボールの受け取りをする日だった。


「ねぇ、どうして、最後までしなかったの?」


にこっ。

アンニフィルドは、それでも十分に満足していた。


どきっ。

「そ、その・・・。きみが、あまりにも美しくて、大切に思えたから・・・」

「あは。あなたの口からそんな言葉が出るなんて」


でれでれ・・・。

「そ、そうだな・・・」


「ありがとう。素直に嬉しいわ・・・」

「きみは、どう思った?」

「わたし?」

「そう」


「わたしは・・・、わたしは、もう、あなたのものだもの・・・」

「あはは・・。マジかよ?」

「ええ。でも、男ってアレを我慢するって、身体に良くないんじゃないの?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「かもな・・・」

二人はそのスーツのおかげで周りの注目を集めていた。


ちらっ。

「みんなが見てるぜ・・・」

「いいじゃない。注目されていれば、変な連中も容易には近づけないわ」


「そうだな・・・」


(SS・アンニフィルド、シュンスケ、お二人に近づく不審人物が2人います)


「ナナン。違うようよ・・・」

アンデフロール・デュメーラから警告が来た。


(アルダリーム、アンデフロル・デュメーラ)

(パジューレ、SS・アンニフィルド)


「来なすったな・・・」

「そのようね」


(アンディー、もし、ヤツラが銃を持ってるなら・・・)

(リーエス、発火装置の安全装置をロックさせます)

(ありがとよ)

(パジューレ(どういたしまして))




クリスタルボールの受け渡しが、オークション主催者の銀行地下金庫行なわれていた。


「あなたは?」

「国分寺だ」


「ムッシウ・コクブンジ・・・」

係員は慎重に俊介の名前を確認した。


「クリスタルボールの落札者ですね?」

「ウィ」


「ムッシウ・コクブンジ、フェリシタシオン(国分寺さん、おめでとうございます)。全額入金の確認が取れております。身分証明を拝見させていただきますか?」


「ヴォアラ(どうぞ)」

すっ。

俊介はパスポートを係員に提示した。


「ボン(けっこうです)」

係員は重々しい金属の扉の電子ロックを外し金庫を開けると、俊介を中に案内した。


「連れの同席もよろしいですか?」


にこっ。

アンニフィルドが微笑んだ。


「お身内であれば構いませんが、ヴォトル・ファム(奥様で)?」

「あーーー・・・」


ちらり。

俊介はアンニフィルドを見た。


にこっ。

こっくん・・・。


「あー、籍は入れてないんだが、そういうことだ」

「ヴォトル・フィオンセ(婚約者でいらっしゃる)?」

「ウィ。ウィ」




「セ・プル・ヴ(これがあなた様のものです)」

係員はジュラルミンケースを取り出すと、俊介の目の前に置き、キーロックを外した。


ぱかっ。

クリスタルボールは、オークションのオフィシャルカタログにあるとおりの直径20センチの美しいものだった。台座がアルミのような不思議な金属でできており、見たこともない文字でなにか書かれていた。


「お確かめになりますか?」

「ウィ。ビアン・シュル(ええ、もちろん)」

俊介は、腰を屈めて、クリスタルボールをよく眺めた。




「エルフィア文字だわ・・・」

アンニフィルドが俊介に囁いた。


「エルフィア文字か・・・。なら本物だな?」

「リーエス」


「なんて、書いてあるんだ?」

「超銀河ナビゲーター、セレアム第2421033版。あと・・・」


「後、なんだ?」

「トアロに捧ぐ。エメリア・オータワラー。署名ね・・・」


「トアロ?じいさんの名前じゃないか・・・。それに、エメリアってのは、じいさんの姉、オレの大叔母さんの名だ。どういうことだ・・・?」


「わたしにはわからないわよ。ただ言えるのは、エメリアからトアロに贈られたってこと。よほど親しい、というより愛してなきゃ、こんな大切なものを贈ったりはしないわ」


「じいさん知ってたのか?」

「リーエス。当然でしょ。だから、なんとかして取り戻そうとしたんじゃないの?」

「そういうことか・・・」




(SS・アンニフィルド、シュンスケ。トアロ・オータワラーのお探しのものと認定します。現物とこちらで用意した替え玉を交換しますので、そろそろケースを閉じてください)

(リーエス。シュンスケ、いくわよぉ)


(お、おう・・・。アンディー。蓋をしたままで交換できるのか?)

(リーエス。すでにコピー品を用意できています)


(早ぇ・・・)

(パジューレ(どういたしまして))




そこに係員が最終確認を入れた。


「ご確認の上、納得いただけましたか?」

「あ、ウィ」


ぱち。

かちり。

係員はクリスタルボールの入ったアルミケースを閉じ、再びロックをかけた。


「では、お引渡しです。とても重いですから、ご注意下さい」

「ウィ・・・」

係員はケースを両手で抱えると、丁寧に俊介に手渡した。



ひゅん・・・。


(ありゃ、軽いぞ・・・。アンディーのヤツ早速交換してるんだな・・・)

(こら、安心しないで!俊介、来るわよ!)

(来るって・・・?)



ずしーーーん!

「おーーーう!」

一気に15キロ近くケースは重くなった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「おおお、おおお・・・・」

ぐらり・・・。

俊介はそのずしりとくる重さに思わず唸った。


「大丈夫ですか?」

「大丈夫です・・・」



(SS・アンニフィルド、シュンスケ、クリスタルボールの回収を完了しました)

アンンデフロル・デュメーラから首尾よくことを済ませたことの報告が来た。

(アルダリーム(ありがとう))

(パジューレ(どういたしまして))

(OKだ)




「日本までのお帰り、ご無事をお祈り申しあげます」


にこにこ・・・。

ぎゅ。

係員は満面笑顔で、俊介と握手した。


「またのお会いできる機会に・・・」


ちゅ。

係員とアンニフィルドは頬を触れ合わせた。




俊介とアンニフィルドは、東京行きのフランス航空に登場するため、シャルル・ド・ゴール空港にいた。CDG(シャルル・ド・ゴール空港)のフランス航空カウンターでは、俊介の手荷物が計られていた。


「ところで、アンニフィルド、きみのパスポートはあるのかい?」

「ええ。これのこと?」

アンニフィルドがパスポートを見せた。


「これな・・・」

ぺらぺら・・・。


「日本人、アンニフィルド・・・。日本出国とフランス入国のスタンプは・・・。ちゃんとあるな。よし、いいだろう」

「大丈夫?」

「だめだったら、隣を空けとくから、後で飛び乗って来いよ」

「あは。そうするわ!」


--- ^_^ わっはっは!---


「ムッシウ・コクブンジ、ビジネスクラスはお手荷物2つまで航空運賃込みになります。アルミケースの中身はなんですか?」


「魔法のクルスタルボールさ。まぁ、美術品だね。フランス政府の持ち出し許可もあるぜ。これだ」

俊介はフランス政府発行の美術品持ち出し許可証を見せた。


「けっこうです。出国は問題ありませんが、重量がありますので、お座席の下にお起きすることになります。ご了解いただけますね?」

「ウィ、マダム」


ぴぴぴ・・・。

さっ。


「お早めに出国手続きをお済ませください。出発ゲートはF48です」

「メルシー、マダム」

「モン・プレジール」


カウンターの女性は2人分のボーディグパスを発行すると、次の顧客に向いた。



「よし、出国審査に行こう」

「リーエス」


「ところで、アンニフィルド、きみのパスポートはそれかい?」

「ええ。これのこと?」

アンニフィルドがパスポートを見せた。




「来たぞ・・・」

「了解。二人を確認」


「あのアルミケースが物だ。オフィシャルの事前情報どおりか?」

「見たところ同じだ」


「よし、やつらがX線検査機にきた時が勝負だ。検査官を入れ替える」

「了解」




俊介たちは出国ゲートをなんなく通り過ぎると、金属検査機とX線検査機の前に立った。


「なによ、これ?」

「電磁高周波を使った金属検査機さ。危険物を隠し持ってないか検査するんだよ」


「ふうん・・・。で、荷物をへんな箱にベルトで運んでるけど、あっちはなぁに?」

「あれはX線検査機、手荷物の中身をX線を当てて画像を見てるんだよ。爆発物や危険物を持ち込んでないかね」


「あっきれたぁ・・・。乗客だっていうのに、わたしたち、まったく信用されてないのね・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「地球の権力者ってのは、だれも信用しないさ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「今まで、それで、ひどいテロにあってるからね。仕方ないさ。空中で乗ってる飛行機を乗っ取ったり、爆発したり、墜落させたり。世界中で、そんなことが何回も起きているんだ。自分の乗ってる飛行機がそういう目に合わないようにっていうんなら、それくらいは我慢してもいい。そういうことだ」


どこ。

かち。

ぱかっ。


俊介はそう言うと、クリスタルボールを入れたアルミケースを空け、検査官に目視検査をさせた後、そのままX線検査BOKへと流れていくのを見つめた。


「カテゴリー1的解決方法ね・・・」

「なんとでも言ってくれ。いいから、さっさと、きみも荷物をベルトに置けよ」


ぱさっ。

アンニフィルドは俊介に倣ってバックを置いた。


「マダム?」

「な、なに?」

「ベルトを外してください」

検査官がアンニフィルドにベルトを外すように指示した。


「ベルト?ここでスカートを脱げっていうの?」

「お、いいねぇ・・・」


ごっくん。

ベルトを外した俊介は、生唾を飲み込んだ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんなもの着けてないわよ」


ぱっ。

アンニフィルドは上着をまくって、お腹と臍を検査官に見せた。


ごっくん・・・。

「いいです・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いいですよ。お通りください・・・」


ちらぁ・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


検査官は横目でアンニフィルドの後姿を一瞥して無表情に言うと、次の乗客にベルトを取るよう指示した。




「二人はX線検査を過ぎたぞ・・・」


ぴっ。

手元の青ランプが点灯した。


「成功だ。クリスタルボールと台座を入れ替えた」

「よし、国分寺の様子は?」

「今、ケースの中を確認し、蓋をしました。気づいていません」


「入れ替え成功だ」

「了解」


「クリスタルボールはそのまま、Z国営航空のクルーに渡せ」

「了解」




「ボン・ジュール」

「ボン・ジュール」


わいわい・・・。

がやがや・・・。


出国審査ゲートのクルー専用レーンにZ国営航空のキャビンクルーたちがぞろぞろ入ってきて、簡単な検査を受けて、さっさと出発ゲートに向かった。


「例の物を・・・」

「了解」


そのうちの一人が、検査を終えた丈夫な皮製バッグを受け取ったが、その中にクリスタルボールが入っているのを知っているものはいなかった。




俊介とアンニフィルドが出発ゲートに着いた。


「フランス航空東京行き275便は、まもなく搭乗のご案内です。最初に、ファーストクラス、続いてビジネスクラスのお客様から、ご登場いただきます・・・・」


「なんてことぉ・・・。すごいわぁ・・・」

「人の多さに、びっくりしたのかい?」

「ナナン。こんな旧式の時空移動機なのに、美しいんだもの・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「旧式、旧式って言うなよ。地球じゃ、最新鋭のエアバス380だぜぇ」

「エロブス380人?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ふざけてるだろ?」

「ナナン。あれに乗るの?」

アンニフィルドは窓の外の巨大なジェット機を見て言った。


「そうだよ。オレたちはあれのビジネスクラスだ」


「あは。飛行機って好きよ。あの、すぅーーーと、上下に適当に揺れる感覚・・・。いいわぁ・・・」

「オレは、苦手なんだけどなぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「もったいないわ」


「はぁ?」

「だって、お酒を飲まなくても酔えるんだもの・・・」


「アンニフィルド、きみって人間は・・・」

「なぁに?」


「やっぱり変だ・・・」

「そう?」


「普通、地球人は飛行機が揺れると、恐がるんだぜ」

「あの感覚を楽しめないのね。可愛そう・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はい、はい」


「フランス航空275便のご搭乗を案内します・・・」


「ほれ、乗るぞ」

「リーエス。行きましょ」

二人は一緒に搭乗ゲートに向かった。


すたすた・・・。

ぱちっ。


「はい、どうぞ」

「パジューレ」

「?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あは。メルシー」

アンニフィルドは言い直した。


「ド・リアン」


ゲートでチケットを入れて、二人はA380の機内に入った。

「ビジネスクラスのお客様ですね。お二階になりますので、どうぞ、こちらへ」


アテンダンドの案内で、まるでホテルのようなビジネスクラスのキャビンへと二人は二階席に向かった。

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