198 社交
■社交■
セレアムの二人の周りは人だかりだった。
「すごいですね。みんなお二人目当てですよ」
黒磯が、パリ本社の取締役相手の対応から開放されて、二人のところに戻ってきた。
「二人じゃなくて、きみにだろ、アンニフィルド?」
「まぁ、光栄ですわ。で、黒磯さんはいいんですか、本社のメンバーにご挨拶しなくて?」
アンニフィルドが、黒磯を気遣った。
「こりゃ、どうも。もう、さんざんしましたよ、マドモアゼル」
「それは、失礼しました」
「注目の的ですね、アンニフィルドさん」
黒磯は俊介だけに聞こえるように言った。
「そりゃ、結構ですね」
「保証しますよ。お世辞抜きで、彼女は頭二つ抜けてます」
「ははは。とにかく背は高いですから」
(背が高くて、悪ぅござんしたね・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
俊介自身、上背が184センチあったが、ヒールを履いてドレスアップしたアンニフィルドは、彼より少し低いくらいだった。
(げ、聞こえてた・・・)
「そういう意味じゃなかったんですが・・・」
「しかし、さすがシャデル。こちらもとんでもない美女揃いですよ」
俊介はすかさずフォローしたが、時既に遅かった。
ぷぃ。
アンニフィルドは横を向いた。
(もう、俊介ったら、また、鼻の下伸ばして・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドは俊介から離れて、シャデルの重役たちの輪に参加した。
「おほほほ・・・」
「アンニフィルド、長いプラチナブロンドがステキだね。きみはデンマーク人かい、それともスウェーデン人?」
若い重役がアンニフィルドにアプローチしてきた。
「デンマーク?」
「違うの?」
「あは。ごめんなさい、そんな星、聞いたことないの」
--- ^_^ わっはっは! ---
「星?」
「え?ひょっとして、銀河だった?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ははは・・・。きみって面白いねぇ、アンニフィルド」
「よく、みんなから言われますわ」
「わかるよ。ユーモアのセンスが抜群だよ」
「あなたもよ」
「ヴなんて止めてくれよ。もう、知り合いなんだから。ぼくのことは、テュ、と言っていいよ、アンニフィルド。ぼくもきみをテュ、って呼んでいいかい?」
「あ・・・」
(テュってなぁに、アンデフロル・デュメーラ?)
(親しい間柄での二人称です。家族とか、恋人とかで使います)
アンニフィルドは、重役の美人秘書たちと、嬉しそうに話している俊介を見た。
「オレのことは、テュでいいよ、ジュヌビエーヴ」
「ウィ、シュンスケ。テュ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
(バカ。なんのために、わたしをパリに呼んだのよぉ!)
(シュンスケにお伝えしますか?)
(1億倍に増幅してね!)
--- ^_^ わっはっは! ---
「きみはとてもキレイだね、アンニフィルド」
「あ・・・」
「フランソワだよ」
「メルシー、フランソワ」
にこにこ・・・。
「まぁ、ムッシウ、コクブンジ!」
「シュンスケと呼んでください」
「じゃ、シュンスケ。あなたステキよぉ・・・」
「でへへへへ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
(シュンスケ、少し、よろしいですか?)
(ああ。どうしたんだい、アンディー?)
(SS・アンニフィルドを、お一人にすべきじゃないとお伝えしたいんですが)
「シュンスケ、あなた背が高いのね。なにかやってるの?」
「はぁ、小さな会社ではありますが、一応、重役を・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ノン、ノン。スポーツかなんか。うふふ」
(アンディー、なに言ってるんだ?オレが、いるじゃないか?)
(リーエス。しかし、SS・アンニフィルドの周りには、男性が沢山おいでです)
(ずいぶん、もてるじゃないか?)
(そして、あなたの周りには女性が)
(まずいかなぁ・・・、これ?)
(普通は、誤解されても仕方ない状況だと・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「スポーツねぇ・・・」
「ふふふ。わかりますわよ。そのスタイル・・・、バスケットボールでしょ?」
「ノン。違います」
(あはは・・・。アンディー、アンニフィルドのことが、心配なのか?)
(ナナン。わたしが心配しているのは、あなたの方です)
(え?)
--- ^_^ わっはっは! ---
(すぐに、SS・アンニフィルドの下にお戻りください)
(わ、わかったよぉ・・・)
「すいません、マダム・エ・マドモアゼル。ちょっと・・・」
「まぁ、残念。恋人の側がよろしいですか?ふふふ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「恋人じゃないんです」
俊介はアンニフィルドの側に戻った。
「ずいぶんもてるのね?」
「きみもね」
「わたし・・・、ここに必要なの?」
「もちろんさ。これで、プロジェクト認可、間違いなしだな」
むっかぁ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「そう。それはよかったわね」
(警告、警告、シュンスケに警告します!)
(なんだよ、アンディー)
(SS・アンニフィルドの言わんとするところを誤解されています)
(なにがだよ?)
(SS・アンニフィルドは、あなたにとってどうなのかを聞いてるんです)
(オレにとって?)
(リーエス)
俊介はアンニフィルドを見つめた。
「なに?」
「そのなんだ・・・。きみがここにいてくれて、正直嬉しいよ」
「それで?」
「それでって・・・?」
「それだけなの?」
「へ?まだ、なにか言わなくちゃならないのか?」
きっ。
「・・・」
一人の若い男が二人の会話に入ってきた。
「アンニフィルド、ここにいたのか。探したよ」
にっこり。
「パルドン、ムッシウ。どなたでしたでしょうか?」
「ん、もう、切ないなぁ。ボク、ギョームだよ」
「ウィ、そうだったわ。業務さん、お仕事うまくいってます?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「業務じゃなくて、ギョーム」
「おほほ。失礼しましたわ、ギョームさん」
「さん付け?やだなぁ、気楽に呼んでよぉ、アンニフィルド」
(アンディー、だれだ、この馴れ馴れしいヤツ?)
(総支配人のご長男です)
(ええ?このいかにもスケベそうなヤツがシャデルの後取りかぁ・・・?)
(リーエス)
「今夜のパーティーくらいは、常務の側にいなくていいだろ?」
(なに言ってやがる、あん畜生・・・)
アンニフィルドは俊介の視線を感じて振り向いた。
「アンニ・・・」
べぇーーーっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドは俊介に舌を出すと、ギョームに向き直った。
(くっそう!)
(だから、先ほど、ご注意申しあげたはずです)
(もっと、早くに言ってくれよ、アンディー)
(どうするんですか、シュンスケ?)
(様子見だ・・・)
(リーエス)
にっこり。
アンニフィルドは、ギョームに微笑んだ。
「さ、なんのお話でしたかしら?」
「仕事の話しなんかいいからさぁ・・・」
すすっ。
ギョームは左手をアンニフィルドの腰に回した。
「パーティーなんか抜け出して、二人っきりで、ナイトクラブで飲み直ししないかい?」
ぴしっ。
「痛・・・」
「あら、どうかしまして?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あ、あの野郎・・・」
俊介は思わず口走った。
「だから、もっとロマンチックなところでさぁ・・・」
「なにをなさりたいの?」
「もっと、お互いを知り合わないかい?」
ギョームはアンニフィルドに手を伸ばした。
ささっ。
ぱっ。
「うわっ!」
アンニフィルドはギョームの目の前から後ろに瞬間移動した。
「くっくっくっ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
(もっと、脅かせようかなぁ・・・)
くるっ。
「なんだ、そこにいたのかい?」
すたすた。
ギョームは再びアンニフィルドに寄って来た。
ぱっ。
また、アンニフィルドは後ろに1メートル瞬間移動した。
「うわっ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぱっ。
「ボ、ボクは、夢を見てるんだろうか?」
ギョームは目をこすったり、頬をつねったりした。
「ムッシウ。シャンパンを召しあがり過ぎましたか?」
「ノ、ノ、ノン。たぶん・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
しかし、ギョームは首を傾げながらも、すぐに立ち直った。
「もっと静かなところで、しっぽりとさぁ・・・」
(こいつ、ひつこそうよ)
(リーエス。SS・アンニフィルド)
すぅ・・・。
ギョームは素早く顔を近づけた。
こちょこちょ・・・。
「うっ・・・」
その途端、アンニフィルドの精神波がギョームの鼻をくすぐった。
「どうかしまして?」
アンニフィルドは何食わぬ顔で言った。
ひくひく・・・。
「へっくしょい!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あ、いや。だからさぁ・・・」
ギョームは今度はアンニフィルドの肩に手を回した。
ぴしっ。
再び、アンニフィルドの手がギョームの手を払った。
「スケベ」
(ざまぁ、見ろ!)
--- ^_^ わっはっは! ---
「あはは。なんか誤解してるようだね。挨拶だよ。挨拶」
「とてもステキなご挨拶ですわね、殿方にとって」
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドはギョームと付かず離れず、ゆっくりと出口に向かった。
「どこに行くんだい?」
「お化粧を直しますの」
にたっ。
「そりゃ、都合いいや。実は、ボクも・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
(アンディー、業務野郎、なんて言ってる?)
(お二人で化粧室へ)
(なんだってぇ、ヤツめ!)
(シュンスケ、SS・アンニフィルドお一人でも、なんなくこの場を片付けられるとは思いますが、地球の男性としてそれでいいんですか?)
(とんでもない。格好付けるところは、オレに決めさせろ!)
(リーエス)
--- ^_^ わっはっは! ---
つかつか・・・。
ぐいっ。
「ちょっと来い」
「痛・・・」
シュンスケはギョームの手を掴んだ。
「きみ、失礼な。彼女になにをするんだ?」
「どっちが失礼だ?」
ぐいぐい。
(アンディー、会場の注目を外させてくれ)
(リーエス)
すたすた。
にこりともしないで、俊介はジュリアンの腕を掴んでレストランの外に連れ出した。
ぐぃ。
アンデフロル・デュメーラの視界バリアで、それを見られたものはいなかった。
「なにをする!」
「黙れ、このスケこまし!総支配人の息子か娘か知らないが、つけ上がりやがって。今の様子も会話もすべてビデオに撮ってあるからな。重役連中に知れたら、どういうことになるか・・・、教えてやろうか?」
「ははは。ビデオカメラで撮影しただって?どこにあるんだよぉ?」
「3万キロ上空さ」
「へ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「やってくれ、アンディー」
「リーエス、シュンスケ」
「だ、だれだ?」
突然、女性の声がギョームの頭に響いた。
ぱっ。
じーーー。
アンデフロル・デュメーラは、ギョームの目の前に立体映像を再現した。
「あわわ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「来なよ・・・」
ぐいぐい。
現役ではないといえ、俊介は、スポーツで一番激しいコンタクトをするというアメフトのQBを何年かやっていて、筋トレは今でも続けていた。その俊介に腕を掴まれ、ギョームはそれを解くことができなかった。
さっさっさ・・・。
「どこに連れて行くの俊介?」
アンニフィルドは、小走りで後を追いかけた。
「どうするつもり?ギョームは、総支配人の長男よぉ」
すたすた。
「俊介・・・」
「こっちだ」
さぁーーーっ。
にこりともしないで、俊介はギョームの腕を掴んで、レストランの外に連れ出した。
「こら、失敬じゃないか?」
ぎりりっ。
「黙れ、この女たらし。オレの女に手を出すんじゃねぇ・・・」
俊介はギョームを睨みつけた。
「馬鹿。ボ、ボクをだれだと思ってる?父はシャデル本社の総支配人だぞ!」
ぐいっ。
「叫んでみろよ。やってみろよ。オレが、おまえを放り出してやる、地球の外へ・・・」
びゅーーーんっ
--- ^_^ わっはっは! ---
アンデフロル・デュメーラの立体映像は、ギョームがロケットよろしく大気圏を突破して、宇宙空間に飛び出していく様を表した。
「ひぃーーー!」
「パパやママに言いつけるならしてみろ。おまえの行為をここでシャデルのみんなに放映してやる」
「し、しないよ」
「誓え。そして謝罪しろ」
「ち、誓って、もうしないよ。アントワネット、許してくれ!」
「アンニフィルドだ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「アンニフィルド、許してくれ!」
「もう、戻してあげて」
アンニフィルドが俊介に言った。
「おうらよ!」
ばさ、ばさっ。
ギョームは、俊介の両腕を振り解くと、パーティー会場に逃げ戻った。
(完璧です、シュンスケ)
(ありがとよ、アンデフロル・デュメーラ。ちっとは点数かせげたかな?)
(どういたしまして。10点です)
がくっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
(たった、10点かよ・・・?)
(なにを言ってるんですか?10点は、満点のことですよ、シュンスケ)
(わははは。そうか、エルフィアのテストは10点満点なんだな!)
(リーエス)
「アンニフィルド、ケガはないか?」
「ナナン、ないわ・・・」
アンニフィルドは俊介の側に来た。
「俊介・・・」
「な、なんだよ?」
「ありがと・・・。お礼を言うわ」
(アンニフィルドの機嫌が直りました)
--- ^_^ わっはっは! ---
(そ、そっかぁ・・・)
「きみはSSだったんだよなぁ。オレより遥かに強いんだ。忘れてたぜ・・・」
「ううん・・・」
アンニフィルドの唇が近づき、シュスケの唇に触れそうになった。
かぁ・・・。
「へっくしょい!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「きゃ!」
「悪い・・・」
ぷいっ。
「知らない!」
「ムッシウ、クロイソ、どこで見つけたんですか?」
「なにをです?」
「アンニフィルドさんですよ」
「見つけたと申しましても・・・」
「ボン・ソワレ」
にこっ。
「ボン・ソワレ、マドモアゼル。コマン・ヴァ・テュ?」
「ごきげんよう、今日はどうも」
「日本支社も素晴らしい人材をお持ちだ」
「あはは・・・」
「アンニフィルドさん、日本で燻っていないで、パリに来ませんか?」
「ムッシウ・・・?」
「アンリです」
「そう、アンリさん。あなたもヘルメット、お似合いですわ」
--- ^_^ わっはっは! ---
きっ!
「ま、ヘルメットだなんて、失礼しちゃうわ」
アンリの妻が文句を言った。
「帽子っていうんだよ。マドモアゼル」
一人の紳士が、アンニフィルドの間違いを優しく訂正した。
「メルシー、ムッシウ」