195 空港
■空港■
「アンニフィルドったら、どうしたんでしょうか?」
ユティスが和人に尋ねた。
「シャンパンバーでさぁ、酔っ払って常務にシャンパンの口移しせがんで、それで終らなくて、キスマークつけちゃたのさ。1つや2つじゃなくて・・・」
「まぁ・・・。もっとですか?」
「うん。それに、本当は、もっといろいろせがんだらしい・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あらあら、アンニフィルドったら。うふふふ・・・」
ユティスは喜んでる様子だった。
「だから、常務は真紀さんから逃げてたんだよ。オレには海外出張だって、みんなに言ってくれだって。たまたま、偶然でパリ行きになったけど・・・」
「それくらいなら、わたくしがすぐに元通りにして差し上げたのに」
「ユティス、そんなことができるの?」
「リーエス。要は内出血を引かせればよろしいのでしょ?」
「ということかなぁ・・・?オレにはよくわかんないけど」
「簡単ですわ」
「今は、常務、飛行機の中だよ?」
「大丈夫です」
フランス航空機の中、俊介はアンデフロル・デュメーラと会話していた。
「アンディー、オレからも3人に伝えることがあるんだが・・・」
「リーエス、シュンスケ」
「きみ経由で、オレの中継ができるかな?」
「リーエス。早速、中継を開始します」
「じゃ、すぐ開始だ。アンデフロル・デュメーラ」
「リーエス。では、ハイパーライン経由で、SS・アンニフィルドとお繋ぎします」
「始まるわよ」
アンニフィルドが言った。
ぶわんっ。
家のリビングには、立体スクリーンに、機内の俊介の様子が映し出された。
「どうだ?」
「ほっ・・・。ちゃんと見えるわ。お隣の女性って、通路挟んだご年配じゃない?」
アンニフィルドは安堵の表情になった。
--- ^_^ わっはっは! ---
「なんのことだ?」
「ナナン。こっちのこと。そっちはどう?」
「よぉーく、見えるぜ、きみの立派な胸も」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ふうーん。地球人は、女性と話す時、相手の胸を見るんだ」
アンニフィルドは目を細めた。
「しょうがないだろ。オレはヘテロなんだから」
「顔を見て離しなさい。で、そっちの話しってのは?」
アンニフィルドはそのくらいでは怒らなかった。
「あ・・・」
「どうしたの、ユティス?」
アンニフィルドは、ユティスがなにかに気づいたことが、わかった。
「常務さん?」
「お、ユティスなんだい?」
「お首とホッペと鎖骨、その他2箇所のことですけど・・・」
「ん・・・?」
俊介はユティスの言ったことを確かめようとして、思い出した。
「あーーーっ。忘れてたぁ・・・」
「お消ししましょうか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「できるのか?」
「リーエス。全部しますか?」
「あ、ああ・・・」
「そうしてもらいなさいよ、俊介。花のパリで・・・」
真紀が言いかけて、アンニフィルドが制した。
「だ、ダメ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
くるっ。
みんなが一斉にアンニフィルドに注目した。
「だめだったら・・・」
「まぁ!」
「ふぅん、所有権の主張ねぇ・・・」
クリステアがにやにやし始めた。
「違うわよぉ。ただ・・・」
「ただ、なによ?」
「一つくらい残してくれてもいいじゃない」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そういうことか・・・」
スクリーンの向こうで俊介は頷いた。
「一つ残すのはいいそうよ」
クリステアが俊介に言った。
「揺れる女心は微妙ねぇ」
真紀が続いた。
「あ、あれ、ファーストキッスなんだからね。覚えてないけど・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「俊介とはでしょ?」
「な、なによぉ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「じゃ、常務さん、鎖骨の一つを残して、お消しします。よろしいですか?」
「やってくれ」
「リーエス」
にこっ。
こうして、俊介はパリを目前にして、無事キッスマークを消すことができたのであった。
「それで、俊介、いつ戻ってくるの?」
「いつなら、いいかな、アンニフィルド?」
「バカ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「アンニフィルドったら、すっかり、しおらしくなっちゃって。くっくっく・・・」
和人は可笑しくなって、一人笑いを堪えていた。
ぽかり。
「痛・・・」
クリステアが、和人の頭に拳骨を軽く落とした。
「真面目にやんなさい。アンニフィルドの将来がっかっかってるんだから」
「ホント、きみもアンニフィルドに似てきたぞ」
ぽかり。
「一緒にしないで」
「わかったよぉ・・・」
和人は不満げに承諾した。
「和人さん、クリステアの言うこと、お聞きになって」
「ユティスまで・・・。で、アンニフィルドの将来って?」
「黙って聞いてなさい」
こつん。
「痛・・・。またかよ?」
「お返事」
「リーエス」
「空港まで迎えに行こうか?」
アンニフィルドが俊介を見つめた。
「セーデージェー(CDG:シャルル・ド・ゴール空港)まで、一っ飛びってかぁ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「成田っ!」
「そっか。セーデージェー(CDG:シャルル・ド・ゴール空港)にいきなり現われたらヤバイからな」
「で?」
「明日の午後に経つよ。成田には明後日の朝だな」
「リーエス。待ってるわ」
「じゃあな。みんなも元気で」
「リーエス」
ぷっ。
「シュンスケとの交信を終了しました」
「ありがとう、アンデフロル・デュメーラ」
「パジューレ(どういたしまして)、シュンスケ」
「着陸までまだ、数時間あるな。オレはもう一眠りするぜ」
こうして、アンデフロル・デュメーラとアンニフィルドのハイパー通信を介しての俊介との会話は終った。
ぴんぽーん。
機内で、朝食を伝えるアナウンスが始まった。
「当機は、約1時間で、パリ、シャルル・ド・ゴール空港に到着いたします。お客様には朝食をご用意いたしますので、お座席のシートよりテーブルをお引き出しください」
からから・・・。
朝食を運ぶカートを押しながら、ミレーヌが俊介の横に来た。
かちゃかちゃ。
「お目覚めですか、常務さん?」
「あ、どうも」
「ご朝食です」
「ありがとう」
(俊介、聞こえてる?)
そこにアンニフィルドの精神体が現われた。
「ん?」
「どうかしました?」
「あ、いや、なんでもないです」
(だれよ、その美人?)
--- ^_^ わっはっは! ---
(フランス航空のアテンダントだ)
(いかすじゃない・・・)
(それが、たまげたことに、イザベルの姉貴なんだぜ)
(出任せ言って、美人を侍らせていい気なもんね?)
(でもな、オレの好みはきみだけど・・・)
(え・・・?)
(武士に二言はない!)
(ホントに?)
にこっ。
(但し、オレは武士じゃない)
びし!
アンニフィルドはサイコパワーで、俊介の頬をひっぱたいた。
「痛ぇ・・・」
「当然の結果ね」
--- ^_^ わっはっは! ---
ミレーヌがにっこり微笑んで、俊介に飲み物をきいてきた。
「コーヒーにしますか、それとも、紅茶?」
「コーヒーをお願いするよ」
「はい。わかりました」
ことっ。
ミレーヌは、カップにコーヒーを注ぐと、俊介のテーブルに置いた。
にこっ。
「ごゆっくり」
「ありがとう」
からから・・・。
ミレーヌはカートを引いて、後ろ向きにパントリーへ下がっていった。
(行ったぜ・・・)
(うん・・・。助けが要るなら、言ってね?)
(じゃ、早速、今夜な。シャデルのパーティーに)
(パーティー?)
(出席者はみんなカップルらしい。オレは一人で行く気はないぜ)
(わたしも、出なくちゃいけないの?)
(だったら、いいなぁ・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
(リーエス。わかったわ・・・)
(ええ?本気にしたのか?)
(冗談なの?)
--- ^_^ わっはっは! ---
(だって、こっちは1万キロも離れてんだぜ・・・)
(アンデフロル・デュメーラがいるもの。そんなの距離のうちに入らないわ・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「あーあ、連絡終了よ」
にこにこ・・・。
「あ、アンニフィルド、機嫌直ったみたい」
--- ^_^ わっはっは! ---
「時間通りか・・・」
俊介は、シャルル・ド・ゴール空港に着くと、30分後に到着予定の黒磯を待つため、ゆっくりと入国審査を済ませ、税関を抜けたところで、黒磯を待った。
ころころ・・・。
きょろきょろ・・・。
俊介は、手荷物をカートに載せて、俊介を探している黒磯と秘書を見つけた。
「黒磯さん、ここです!」
俊介が大きく手を振ると、黒磯も俊介を見つけた。
すたすた・・・。
「ああ、国分寺さん!本当に来てくださったんですね?」
「ええ。来ましたよ」
二人は握手した。
「ありがとうございます。本当に恩に着ます」
黒磯は感動と安堵に声を震わせた。
「こちらは、秘書の粟野です」
「粟野と申します。どうぞよろしく」
ぺこり。
「はじめまして、国分寺です」
ぺこっ。
「どうでした、フライトは?」
「なかなか快適でしたよ」
「それは良かった」
「で、シャデルの本社へは?」
「外で、リムジンを待たせてあります」
「では、急ぎましょう。1時間くらいしか余裕がありません」
「どうも、気をお使いいただきまして」
「それより、プレゼンの段取りはどうします」
「リムジンの中でお話します」
「わかりました」
「ボン・ジュール、マドモアゼル」
「ボン・ジュール、セルジュ」
リムジンのドライバーは秘書と抱擁すると、次に黒磯と抱擁した。
「ボン・ジュール、ムッシウ・クロイソ!」
「ボン・ジュール、セルジュ!」
「ボン・ジュール。ムッシウ」
リムジンのドライバーは俊介と抱擁すると、三人の荷物をトランクに積み込んだ。
「よっこらせ・・・」
どこんっ。
ばたんっ。
「ボンジュール・セルジュ」
「ボンジュール、ムッシウ」
「さ、時間がありません。すぐにまいりましょう。アロン・ズィー」
リムジンの後部に俊介を真ん中にして、三人が座席に納まった。
ばたんっ。
ぶろろろろーーー。
二人を乗せたリムジンは、パリのシャデル本社に向けて、快調に飛ばしていった。
「早速ですが、役員会での段取りです」
黒磯の秘書がPCを立ち上げると、その説明を始めた。
「国分寺さん、まず、フランス語についてですが、会話はどの程度おわかりですか?必要であれば、わたしが通訳いたします」
「そうですねぇ・・・、バーで冗談を飛ばす程度でしょうか」
「女の子にですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「男性にもです」
「わかりました。基本、わたくしが通訳いたします」
「よろしくお願いします」
「では、プレゼン内容ですが、黒磯がホストで進めます。コンセプトの質問で、技術的な回答が必要な場合、国分寺さんにお願いいたします」
「了解しました。それと、スライドを一応最後まで通して眺めたいな」
「わかりました。スライドは30ページ余りありますが、質問があれば、その都度おっしゃっていただいて結構です」
「はい。お願いします」
リムジンの中では、俊介の段取り確認が始まった。
「・・・というわけです」
「というと、本当にパーティーもあるんですか?」
「そうです。7時半から、本社最上階レストランで、幹部以上が夫婦で出席します」
「なるほど、同伴女性か・・・」
「わたしは秘書の粟野がいますが、国分寺さんは、お一人ですよね?」
(ち、一人で悪かったな)
--- ^_^ わっはっは! ---
「それは、困ったなぁ・・・。冗談だとばかり思っていました」
「大丈夫ですよ。本社の誰かに頼んでみましょう」
「いや、結構です。たぶん、大丈夫です」
黒磯が気を利かせたが、俊介はやんわりと断った。
(アンニフィルド?聞いてるかい?)
「いいんですか?」
(・・・)
(おり?)
「恐らく・・・」
(・・・)
(アンニフィルドぉ・・・?)
(・・・)
「当てがおありなんですか?」
「あ、はい・・・」
(おい。起きてくれ、アンニフィルド!)
--- ^_^ わっはっは! ---
(起きろってば!)
(ん、もう、この深夜になによぉ?)
(やっと通じた)
(うるさいわねぇ、さっきから、なあに?)
(ピンチなんだ)
(ピンチ?そっちとは8時間ずれてるんだから、もう少し考えてよ!)
--- ^_^ わっはっは! ---
「国分寺さん、パリジェンヌのお知り合いとは、隅に置けませんねぇ?」
「あーーー。というより、来てもらうんですよ。日本から・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「日本から?」
黒磯と粟野は顔を見合わせた。
「あははは・・・」
「ご冗談を?」
「間に合いっこないですよぉ?」
「たぶん平気です。起こしましたから・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---