192 受領
■受領■
るるるるーーー。
「はい。国分寺です」
「夜分、失礼します。シャデルの黒磯ですが・・・」
「まぁ、シャデルの黒磯さん・・・」
(こんな真夜中にデートのお誘い?まさかね・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「真紀さんですかぁ・・・。まことに申し訳ないんですが、常務さんと、どうしても連絡したいんですが・・・」
(ほっ・・・。違ったみたい・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「お仕事ですか?」
「そうなんです。何度かおかけしたんですが、携帯にも出られないし・・・」
「まぁ、それは失礼しました。弟は、今日、携帯をお家に忘れてたんです」
「あ、そうでしたか。どうりで・・・」
「あのぉ・・・」
「常務さん、お帰りになってないんですか?」
「そうなんです。なんの連絡もないんで、わたしにはわかりかねます」
「困りましたねぇ・・・」
「明日の朝一番じゃだめなんですか?」
「そうするしかないでしょうね・・・」
はっ。
(例の契約の件だわ、きっと・・・。どうしよう・・・)
「あの、今日じゃないとダメとか・・・?」
「いや、しょうがないです。フランスのグローバル本社への連絡を入れないといけないんですが、もう時間が・・・」
(まずいわぁ・・・。もし、この仕事をフイにしたら、わたしのせいにされちゃう・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「別のところを当たってみるしか・・・」
(見積のことね。俊介、確か、部屋のPCに入れてると言ってたような・・・)
「待って、待ってください。たぶん、お見積書ならあります」
「そうですか」
「今必要ですか?」
「ええ。もし、社長さんがしていただけるなら、わたしは、天国にも昇る気分です」
「昇天?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「え?いや、勘違いされちゃ困ります。まいったなぁ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「うふ。わかりました。探しますわ」
「あ。メールで結構ですんで」
「で、おいくらを提示してたのかしら?」
「3000万です」
「わかりました」
「すみません。真紀さんにまで、ご迷惑をおかけして・・・」
「とんでもない。すぐ出せますから」
「お待ちしてます」
すたすた・・・。
「まったく、春日ちゃんには、まいったぜ・・・」
俊介はアンニフィルドを見返りながら、ゆっくりとレジに向かった。
「国分寺さん、お帰りですか?」
「ああ、マスター。今日は、おしまいにするよ」
マスターはソファーにもたれかかってるアンニフィルドに目をやった。
「どちらをですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「両方だ。締めてくれ」
俊介はマスターにカードを渡した。
「これを、マスターカードって言う。なんちっち」
「なんか寒くないですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「マスター、ジョークに乗ってくんないのぉ?」
「わかりました。今後、なお一層努力いたします」
--- ^_^ わっはっは! ---
「領収書は?」
「会社名で」
「了解です」
かたかた。
ぱちぱち。
じ、じ、じーーー。
レジから伝票が出て、マスターは俊介にそれを渡した。
「どうも」
「お連れは、大丈夫ですか?」
「眠っちまった。それっ」
俊介はソファーからアンニフィルドを拾い出し、両腕の中に抱えた。
突然、アンデフロル・デュメーラが俊介に話しかけてきた。
(シュンスケ、お二人をお家までお送りしますか?)
(お、アンディー、暇なのか?)
(みなさんのご活躍に比べれば、わたしなんかは、休暇をいただいてるようなものです)
--- ^_^ わっはっは! ---
(さすが、エストロ5級母船のCPUだ。やることが速い)
(パジューレ(どういたしまして)。お褒めに預かり光栄です。で、どうしますか?)
(あーーー、そうだなぁ・・・)
よいしょっと・・・。
俊介はアンニフィルドを両手で抱え上げ、一瞬考えた。
ぷにゅぅ・・・。
ぽよぉーん・・・。
「ありゃ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぼよよーーーん・・・。
「おり?」
アンニフィルドの柔らかい身体が、俊介に感触と温もりを伝えた。
ぷよよぉーん。
「うほっ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
(あーーー、アンディー、やっぱり、車で帰ることにするよ)
--- ^_^ わっはっは! ---
(わざわざ、時間とお金まで使ってまでですか?)
(だからだよ。わはは)
(リーエス。なるほど、了解しました、シュンスケ)
--- ^_^ わっはっは! ---
「マスター?」
「はい。タクシーをお呼びしましょう」
マスターは電話に手をかけた。
「頼むよ」
エルフィア大使館では、ユティスたち3人がアンニフィルドの帰りを、今や遅しとばかり、待ち続けていた。
「1時よ・・・」
「眠いですわ・・・」
「オレも・・・」
「オレもきみたちもシャワーで汗流したから、もう、いいかい?」
マジャマ姿の和人はクリステアを眠そうに見た。
「ふぁあ・・・」
「わたしの時刻には、まだ1時間あるけど?」
「いいよ。クリステア、きみに任せる。オレの負けは決まってるし、もうダメ・・・」
「わたくしも、クリステアにお任せしますわ」
ユティスもパジャマ姿だった。
「でも、アンニフィルドが帰っても、二人が確認できないじゃない?」
「もう、お任せだよ」
「そうですわ。わたくしも、お掃除当番なしが決定しましたし」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あなたたち、結構、薄情ね・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「でも、この時間になっても、帰んない方が悪い」
「リーエス。わたくし、もう寝ます。ね、和人さん?」
にこっ。
「え?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「どうぞ、どうぞ。お二人で、一緒にロマンチックな夢でも見てなさい」
「違う。違う。違うってば、クリステア。ユティスは2階、オレ1階」
「部屋の割り振りはそうだけど、どこで一緒に寝ようが構わないわよ、うるさくしなきゃ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「うるさくって・・・」
「まぁ!」
「イビキのことよ、イビキ。なに勘違いしてるのよ、あなたたち」
かぁーーーっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
ぶろろろろ。
「ちぇ、結局2時かよ。往きはよいよい、帰りは重い・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
俊介はアンニフィルドを抱えて、タクシーで和人たちがいる会社の寮に向かっていた。
るるるる・・・。
俊介のスマホが鳴った。
「ああ、姉貴?」
「ああ、俊介、やっと繋がったわ・・・」
「なんだよ?」
「シャデルの黒磯さんから、急ぎの電話があったの」
「黒磯さんから?」
「ええ、そうよ」
「例の見積の催促かな・・・?」
「ビンゴ。3000万で決めてきたんでしょ?すぐに欲しいって。パリのグローバル本社に出すんだって」
「あのなぁ、パリのグローバル本社ってのは、フランス語の文書しか受け付けないんだぜ」
「そうなの?」
「当たり前だ。だから、翻訳する時間をくれって、今朝方、申し入れしたばっかだぜ」
「ええ?」
「黒磯さんだって了解してるはずだぞ?」
「いつまでって言ったの?」
「明後日の午前中」
「明後日?でも、黒磯さんは、今欲しいって・・・」
「知らんよ、そんなことぉ・・・」
「でも、わたし受けたわよ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「だーーー。なに、余計なことをしてんだよぉ!」
「だって・・・」
「だってじゃないぜ。こちとら、つぶれたアンニフィルドを抱えて・・・」
「あー、いけないんだ。女の子、つぶしちゃったの?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「違う!ジャンプの連続で疲れてたんだ!グラスを一杯やっただけだせ」
「そんなに飲ませたのぉ・・・。グラスをいっぱいにねぇ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「だー、いっぱいが違う!一口、二口やっただけだって」
「へぇ、やったんだぁ・・・。一口、二口。ぺろ、ぺろって・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「スケベな言い方すんなよ姉貴!イケズ後家になっても知らんぞぉ!」
「まぁ、酷い。それが実の姉に対する言い方?」
「実の弟には、どう言ったっていいのかよぉ?」
「はいはい。で、見積どうするの?」
「どうしてもってんなら、姉貴が、グ-グレで翻訳して出してくれよ」
「えー、わたしがぁ?」
「しょうがねぇだろ。姉貴が約束したんだから」
「そんなぁ!」
「いいから、やってくれよ。オレはアンニフィルドを送っていくから、後1時間やそこらかかるぞ。ファイルを翻訳して出せば、後は黒磯さんのところがやってくれるよ。一人や二人、フランス語の優秀なスッタフがいるだろ?」
「だって・・・」
「オレの約束は明後日だ」
「ん、、もう!わっかたわよ。どうなっても知らないから」
「それが、社長の言う言葉か?」
「実質、社長はあなたでしょ?」
「しーーーっ」
「どうしたのよ?」
「アンニフィルドが起きてしまう」
「は、はーーーん。眠ってる間になんかしようって魂胆ね?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「バカ言うなよ。オレはだな・・・」
「でも、キッスくらいしたんでしょ?」
「うっ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「その微妙な沈黙、図星ね?」
「うるさいなぁ。オレは、彼女を寮まで届ける最中なんだよぉ」
「いいわ。ゆっくり帰ってらっしゃい。後はわたしがやるから」
ぴっ。
「姉貴!」
ぴんぽーん。
ぴんぽーん。
ぴんぽーん。
「うっるさいなぁ。やっと寝付いたというのにいったい何時だと思ってんだ?」
和人はチャイムで眠りを無理矢理覚まされた。
ぴんぽーん。
「わかったよ。くっそ、2時半じゃないか」
かちゃ。
「だぁれ?」
とんとんとん・・・。
二階から目をこすりながら、クリステアが降りてきた。
「だぁー、クリステア、なんだよ、その格好!パジャマじゃなかったのか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ふぁーーー。いいじゃない。気が変ったの」
スケスケのネグリジェで、クリステアはあくびをした。
「どなたですの?」
ユティスも目を覚ました。
「あーっ、ユティスまで・・・」
「こっちの方が、可愛いくて・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わぁ!」
ユティスも、ネグリジェのまま、和人の目の前に現れた。
ぴん、ぽーーーん。
「はいはい。どなたですか?」
「宅配夜行便です。夜分どうも。深夜の時間指定なもんで・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「深夜指定だってぇ。だれだよ、そんなことすんのは?」
「早く出てよ、和人!」
クリステアが和人をせかした。
「はいはい・・・」
かちゃ。
たったった・・・。
和人はドアを開け門まで出て行った。
「よぉ、深夜特急便だ。受け取りのハンコをくれ」
「じ、常務!」
俊介はタクシーの後部座席を指差した。
「生モノの受け取り印くれ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あー、アンニフィルド・・・!」
「一人でつぶれちまったんだ」
俊介はアンニフィルドをタクシーから抱き起こすと、そのまま、和人に渡した。
「ほらよ・・・」
「はい。よっこらしょっと・・・」
アンニフィルドは死んだように眠っていて、静かな寝息以外、声一つもらさなかった。
「あれ、あんまり重くないんだ・・・」
「誤解すんなよな、和人。オレ、なにもしてないぞ。店に入って、乾杯した後グラス1杯飲んだだけだ。いや、一口、二口。いや、これもダメだ。突っ込まれそうだ。90cc。そう。半合だ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そうですか?」
和人は疑いの眼差しで俊介を見た。
「信じてないな?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「可哀相に疲れ切ってたんだよ。そのまま、店で眠り込んで、起きないもんだから・・・」
「なにも起きないから、なにか起こそうとしたんですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「アホ!オレがそんなことする輩に見えるか?」
「じゃ、そういうことに・・・」
「なにが、そういうことだ。まぁ、しょうがなく、今までいたわけだよ。さすがに閉店時間になっちまったら、連れて帰るしかないだろ。オレはアンニフィルドと違って、テレポテーションなんてできないんでね」
(シュンスケ、事実を相当省略してますね。わたしが、お二人をお送りすることを提案したしましたが、あなたがお断りされて・・・)
(黙れ、アンディー!)
--- ^_^ わっはっは! ---
(アメリカンフットボールのお話に端を発して・・・)
(こら、アンディー。シャンパンの件は、黙ってろ)
--- ^_^ わっはっは! ---
(リーエス)
「ったく・・・」
「こうして見ると、すごくキレイで可愛らしいな・・・」
俊介は、思わず独り言を言った。
「だろ、だろ?」
俊介はそれに頷いた。
「あれ、常務、首・・・?」
「なんだ?」
「あーあ、頬も・・・」
(まさか・・・)
俊介はしまったという顔になった。
(シュンスケ、真実が露呈したようですね?)
--- ^_^ わっはっは! ---
(うるさい。余計なことを言うんじゃない、アンディー)
「暗くてよくわかんなかったけれど、常務、キスマークだらけじゃないですか。アンニフィルドですか?」
「他にだれがいる?オレが男にさせる訳ないだろうが!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ちょっと、待て。そ、そんなにしっかりついてるのか?」
「はい。唇の後だって、はっきりわかります。しかも、1つや2つじゃないですよ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「マジか?」
「はい。マジイです・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「やられた・・・」
「本当は、連れ込み喫茶にでも、入ってたんでしょう?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「バ、バカ言え!オレがそんな不真面目に見えるか?」
「説得力ありませんね、常務。それ、1日、2日じゃ消えませんよ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ま、待て、和人。本件は黙ってろ。だれにも言うなよ!」
あたふた。
俊介は大いにあわてた。
「そうだ!オレ、海外出張ということにしてくれ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「海外出張?」
「こんなんで、会社のみんなの前に出られるか、バカもん。アメリカでもフランスでも適当に言っといてくれ。うちにも戻れないぞ。姉貴に見つかったら、一生言われ続けられるぜ」
「常務!」
「じゃあな。秘密だぞ!」
「リー・・・エス・・・」
俊介はタクシーに乗って闇の中に消えていった。