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191 夜更

■夜更■




ぴっぴっぴ。

ぽーーーーん。


にっこり。

「はい、11時経過でぇーーーす」

クリステアが、嬉しそうに宣言した。


「うふふふ。和人さんが、一番最初にハズレ決定ですわ」

「アンニフィルドぉ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あははは」

「うふふふ」


ぱちぱちぱち・・・。


「そんなに、みんなして喜ばなくてもいいじゃないかぁ・・・」

「だって、可笑しいんですもの」

ユティスは笑った。


「はいはい、わかりましたよ。オレのハズレね」

「でも、11時半までは、和人さんにも、まだチャンスはありますわ」


「ユティスと30分の争いか・・・」

「ナナン。ダメ、ダメ。通り過ぎちゃった人は、失格よ」

クリステアが判定を下した。


「じゃ、オレが掃除当番決定なのかぁ?」

「そういうこと」


--- ^_^ わっはっは! ---


「えーーー。1ヶ月もぉ?」


「約束でしょ?」

「そんなぁ・・・」


「それにしても、遅いですわね・・・?」

ユティスは時計を見た。


「だから、言ったじゃない」

「男と女、大人の二人?」

「ロマンチックですわぁ」


「だから、違うってば。エロエロチックなの」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ふーーーん。相当欲求不満みたいだわねぇ、和人?」

「な、なに言ってるんだよ、クリステア」


「アンニフィルドが帰ってくるまで、ユティスと一緒にお風呂でも入ってれば?」

「それは名案ですわ。和人さん、お背中、お流ししましょうか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「だーーーっ、ユティスまで!真紀さんが言ってたじゃないか、寮則その3だか、その4だか、とにかく『混浴禁止』。冗談キツイぞぉ!」


和人は必死で二人の提案をはねつけた。




くぃ。

しゅわぁ・・・。


シャンパンバーの中で、アンニフィルドを眠らせたまま、俊介は一人グラスを傾けていた。


(くっそう、アンニフィルドが一人で眠りこけちゃったのはしょうがないとして、それにしてもえらく退屈だなぁ・・・)


すたすた。

「お連れの方、お酒は弱いんですか?」


「あ、春日ちゃん・・・」


店のカウンターにいる女性バーテンダーの春日が、暇になった時、見かねて俊介のところに来た。


「退屈なら、もう一杯お注ぎする間、少しお話のお相手さしあげてもいいですよ」

「お、それなら、お願い」


俊介は、これ以上、アンニフィルドを二人きりになっていたら、なにをするか自分でも責任持てなかった。


しゅわぁ・・・。

春日は、俊介のグラスにロイ・ルデレールを注ぎ足した。


しゅわ、しゅわぁ、しゅわぁあ・・・。

ロイ・ルデレールのクリステアの細かい泡が弾けていった。


「いいねぇ、天使の拍手・・・」

「どういたしまして」


「春日ちゃんみたいな美人が隣に来てくれるなんて、結構なことだよなぁ・・・」

「やだぁ。もう乗り換えですか?」

「乗り換え?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わたしは、お連れさんみたく美人じゃないです」

「いやいや、春日ちゃん、美人だよ。その笑顔、最高さ」


「またまたぁ。みんなに同じこと言ってんでしょ?」

「そんなことないよ。男には言わないし、ちゃんと主語は変えてるよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ぷふっ。あはははは。国分寺さんらしいわぁ!」

「だろ?」


「あははは。自分言って、どうするんですか?」

「わははは。それもそうだ」


「あははは。あのね、お友達の知り合いの男性に、知り合った女の人には、みんな洋子って言う人がいるのよ」

春日はいかにも可笑しそうに話した。


「ないだい、それ?」

「バーとかスナックとかで、知り合った女の人は、とにかく洋子なのよ」


「女の子はみんな洋子?」


「そう。奥さんが聞くでしょ?『あなた、だれと飲んでたの?』。『ああ、バーのママ、洋子ちゃんだよ』。だって、お店もあれこれと違うでしょ?でも、『洋子ちゃんなんだよ』、だって・・・」


「わははは。どんなに酔っ払ってても、絶対に間違えないよな!」


「そう。だから、どこのお店に行っても、そこでどんな女の子に会っても、『洋子』だから、みんな、その人の言うことを本気にしないんですって。たとえ本当に浮気だとしても・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あっはっは!そういつは、とんでもない天才だぞぉ!」

「でしょぉ?だれが聞いても、奥さんが、問い詰めても、とにかく『洋子』なんだって!」


「わははは。オレもそのアイデア使わせてもらうぞぉ!」

俊介は大笑いした。


「ダメです。真紀さんには、バレますよ」

「姉貴?そんなの関係ないよ。でも、アンニ・・・」


「なんです?」

「なんでもない・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---




ぴっぴっぴ。

ぽーーーん。


「12時か・・・。遅いわね、俊介・・・。本当に、アンニフィルドと朝帰りのつもりかしら・・・?」


真紀は一人マンションで弟の帰りを待っていた。


「そうだ、和人にきいてみよう」


真紀はスマホを取り出した。


るるるる・・・。

るるるる・・・。


「はい。宇都宮です」

「和人?」


「あ、真紀さん。どうしたんですか、こんな夜更けに?」

「大丈夫だとは思うんだけど、アンニフィルド、帰ってる?」


「いいえ。まだですけど。常務、ひょっとして・・・」

「そうなの。帰ってないのよ」

「やっぱり・・・」


「じゃ、二人して帰ってないのね?」

「そういうことになりますね。おかげで、1ヶ月寮のお掃除当番を言い付かりました」


「お掃除当番?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そう・・・」


「すいません。お役に立てなくて・・・」

「いいのよ、子供じゃないんだから。わかった。わたしは寝るわ。おやすみ」


「はい、おやすみなさい」


ぷっ。

和人はスマホを置いた。


「だれよ?」

「真紀さん」


「てことは、二人は俊介のマンションにもいないってことよねぇ・・・」

「鋭いなぁ、クリステア・・・」


「だって、わかるじゃない。いい年して一緒に住んじゃって、危ない姉弟なんでしょ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんなことないと思うけど・・・」


「常務さんとアンニフィルド、まだ、ロイ・ルデレールなんでしょうか?」

ユティスがきいた。


「でも、そろそろ閉店時刻だよ・・・」


「12時でおしまいなんでしょうか?」

「いや、シャンパンバーはお客接待はしないんで、風営法には引っかからないとは思うけど、まぁ、よくて12時じゃないかなぁ・・・」

和人は持論を披露した。


「風営法?」

「なんの法律ですか?」


「一言じゃ、難しいなぁ・・・。バー、スナック、ディスコもそうなのかなぁ・・・。特殊ヘルスに特殊浴場・・・。そういった、深夜0時以降営業しているお店やなんらかの性的なサービスを提供するお店を、取り締まる法律。てのが一番近いかなぁ・・・」


「男性同士のサービスをですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なんで、そうなるんだよぉ、ユティス?」


「あら。組み合わせは、一つじゃないのよぉ」

にたら・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「だーーー。クリステア、きみはもっと清楚かと思ったけど、全然違うんだね?」

「それをよぉく知ってるあなたも、全然、違うのねぇ?スケベ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「オレは、まだ・・・。とにかく、オレになんの関係もない!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あーーーあ、風営法期限の12時を越えてしまいましたわ・・・」


「これで、ユティスも失格だな」

「リーエス。残念です」


「あは。残るは、わたしだけか・・・」

にこっ。

クリステアが微笑んだ。


「もし、的中したら、なんかご褒美はないんですか?」

「あ、それいい。罰だけじゃ、つまんないわ」

「きみら、また、なにか良からぬ思いつきをしただろ?」


「いい考えがあります」

「ユティス、それよ!」


「これ以上、オレに不幸をもたらせないでくれぇーーー!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「幸福よぉ」




シャンパンバーのロイ・ルデレールのカウンターには、常連客のシャデル日本支配人の黒磯が、やはり、ロイ・ルデレールのクリステアを飲んでいた。


「マスター・・・」

「はい、黒磯さん」


「国分寺さん、いきなりなんだよね?」

「さっき、ふっと美女といきなり現われたということですか?」


「うん。ボクはそう見えなかったな。目の錯覚じゃないんですか?」

「いえ。確かに、いきなりでした・・・」


「それより、国分寺さんの連れの方ですよ・・・」

「背の高い、プラチナブロンドの美女?」

「そうそう」


「お知り合いで?」

「うん。今日、そうなるつもり」


--- ^_^ わっはっは! ---


「冗談です」

「黒磯さんがそんな風におっしゃったのなら、みんな本気だと思いますよ」

「ははは」


「それはさて置き、彼女、どこのモデルなんでしょうかねぇ・・・?」

黒磯はマスターに尋ねた。


「さぁ、わたしにはさっぱりですが・・・。やっぱり、そうですか?」

「どっかで見たというわけじゃないんだけど、そういう匂いがするんですよね」


「さすが、黒磯さん」

「後でさ、ちょこっと聞いといてよ」

「わかりました」


「じゃ、ボクは、これで」

「お帰りですか?」


「国分寺さんが、ここにいるってことは、お家には真紀さんお一人かと・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「夜這いですか?」

「なに言ってんですか、マスター。ボクは正統派です。ますお電話を」


「夜中ですよ」

「ええ。良い仲ですから」

「よなか、ですよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


マスターは訂正を忘れなかった。




「で、国分寺さん、正直に言ってくださいね?」

「なんですか?春日ちゃん、今日はなんか怪しいぞぉ・・・」


「うふ。そちらの方は、外国の方みたいですけど・・・」

「まぁな」


「キレイなお人。背が高くてスマートで、お似合いですわよ」

「そ、そっかぁ・・・」


でれでれ・・・


--- ^_^ わっはっは! ---


「どこでお知り合いに?」

「どこって、そのぉ、向こうが勝手に来たって言うか、現われたって言うか・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ふぅん、押しかけですか?国分寺さん、やっぱり、すみにおけませんわね?」

「なに言ってるんだよぉ・・・」


「で、本当はどこで、お知り合いに?」

「どこって・・・。なんで、きみに言わなきゃなんないんだよぉ?」


にこっ。

「素直じゃないですわね。どこで・・・?」

春日の微笑みに俊介は不覚を取った。


「その、うちの会社の新人なんだ、彼女」

「へぇ。会社の新人の女性と、常務さんが夜のおデート。それに、シャンパンの口移しのサービス?」


どきっ!


--- ^_^ わっはっは! ---


「あ、見てたなぁ?」

「見えてたんです」


「ありゃ、違うんだ。ものの弾みってもんで・・・。その、わかるだろ?」

「わかりませぇーーーん」


--- ^_^ わっはっは! ---




二宮は、行きつけのレンタルビデオ・ショップで、いつものコーナーにいた。


(さすが、深夜となると、ナニ目当ての男どもばっかだなぁ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


二宮は、店のオススメDVDのポスターに釘付けになった。


(おおーーーっ、この女優、すっげぇ可愛いじゃん!どこだ?どこにある?)


--- ^_^ わっはっは! ---


二宮はポスターのすぐ横を探した。


すうっ。

ひょいっ。


目ぼしいビデオをチェックしていた二宮の前に、一人の太目の眼鏡の男が現われて、二宮のお目当てのDVDをかっさらっていった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あ、それ・・・」


ぺこり。

「いいっすか?」


「あ・・・。ど、どうぞ・・・」

二宮はとっさに答えた。


「どうも」

男は一礼したが、ものはそのままさっさとレジまで持っていった。


--- ^_^ わっはっは! ---


(く、くっそう・・・)


二宮は地団太を踏んで、その女優の出演作品を探したが、デビュー直後か作品は一つきりで、願いは適わなかった。


(へん。いいってことよ。1週間楽しみが伸びたを思えば・・・。うっしっし・・・)


二宮はこれしきではへこたれなかった。


--- ^_^ わっはっは!---


(しょうがない。なにか他のものにすっかぁ)

二宮は適当にDVDを何本か見繕って、ナニのコーナーの暖簾をくぐった。


ひょい・・・。


「あ、二宮さん・・・」


(げげげ、やばぁ・・・。イザベルちゃん・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「お、おす・・・」

「きゃっ・・・」

ちらり。


「18禁コーナーって・・・」


かぁ・・・。

イザベルは二宮の出てきた暖簾を見て、すぐに真っ赤になった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「イ、イザベ、いや、喜連川さんこそ、なんで、ここに・・・?」


「わたし?ち、違います。通りかかっただけです」

イザベルのバスケットには、ロマンスらしきDVDが何枚か入っていた。


「それは?」

「きゃあ!」


「二宮さん・・・」

「喜連川さん、自分は・・・」


「し、失礼します!」


たったった・・・。

イザベルは、足早にレジに向かった。


(やべぇ・・・。ホンマにやべぇところ見られちゃった・・・)




「お願いします」

「はい。毎度、ご利用ありがとうございます」


レジ係は二宮のDVD2枚を確認すると、淡々と精算処理に取り掛かった。


(くっそう、これというのも、和人の野郎が電話に出ないからだぞ)


「女共とハーレム作りやがって、このオレ様は無視かよぉ・・・」


「ハーレムですか?」

「あ、いや、そのぉ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「これは、そんなタイトルじゃないんですけど・・・」

「あ、いいんです。それで」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうですか。レンタル期間は、1週間でよろしいですか?」

「え?」


「本日のご利用は、400円です」

「あ、すいません。400円ですね?」

「はい。400円です」


ささっ。

二宮は財布を取り出すと、レジに代金を支払った。


「しかし、なんだって、和人の野郎ばかりいい目に合うんだ?」

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