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188 控室

■控室■




「こっちよ!」

ぐいっ。


「痛いです・・・」


どんどーん。

ぐいぐいっ・・・。


瀬令奈はユティスの腕をを引っ張り、控え室に連れ込んだ。


「入って!」


ばたむっ。

部屋にいたマネージャーは二人を見て仰天した。


「瀬令奈、それ・・・」

「うるさいわねぇ。いちいち口出さないで!」

「まずいっすよぉ・・・」


「さぁ。どうやって、わたしの前から消えたか言ってもらいましょう」

瀬令奈はユティスを瞬きもしないで見つめた。


ぱっぱっ。

ユティスは瀬令奈の手を外すと、不安そうにきいた。


「消えたって、なんのことでしょうか?」


「まぁ、可愛い顔して、憎たらしいこと言うのね!」


ばーーーん。

控え室のドアを勢いよく開けて、アンニフィルドが入ってきた。


「消えてなんかないわよ。どっかで現れるだけよ」

アンニフィルドが挑戦的に言った。


--- ^_^ わっはっは! ---


つん!

「あなたにはきいてないの、因幡のウサギちゃん」


ぴっきーーーん!

「なんですってぇ!」


「だめ!」

いきり立つアンニフィルドを、クリステアが抑えた。


どんっ。

「ユティス!」


どたばた・・・。

そこに和人が入って来た。


「ふん。金魚のウンチがやって来た・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


かちん。

「だれがウンチだってぇ?」


すたすた・・・。

アンニフィルドが瀬令奈に詰め寄った。


「おっと、それ以上近づかないでよ」

瀬令奈はユティスにマニキュアをかざした。


「あっ・・・」

「キレイなおべべに着いちゃったら、簡単には取れないわよ・・・」


「瀬令奈、あなったって人は・・・」

「それともこのお顔に着けた方が、いいかなぁ・・・」

瀬令奈はユティスの顔にマニキュアビンを近づけた。


つん・・・。

「あ・・・」

マニキュアの匂いがユティスの鼻を衝き、ユティスは頭にくらっときた。


「いけない。アンニフィルド。芳香族揮発油よ、神経に影響するわ・・・」

クリステアがアンニフィルドを制した。


瀬令奈は、いずれユティスが自分の人気を脅かす存在になる、と踏んでいた。


(つぶすなら、今しかないわ。さて、どうやってやろうかしら?)

にたにた・・・。


「そう言えば、あなたたち外国人よねぇ・・・。日本でショービジネスにちょっかい出したりしていいの?」


「なんのことだ?」

和人は瀬令奈を刺激しないように言った。


「とぼけないで!ちゃんと就労ビザが要るんでしょ?あるのかしらねぇ。それより、国籍はどこ?裏を取って、雑誌やタブロイド誌に売り込んだら盛り上がりそうね。もし、非合法でここにいるなら、即国外退去よ。刑事罰で前科になれば、2度と日本には入ってこれないわ。少なくとも人間ならね・・・」


「・・・」


(瀬令奈さん、わたくしが・・・)

(リーエス、ユティス)


エルフィア人たちは精神波を使い、無言で会話し合った


「でも、人間じゃないなら、ビザなんて関係ないかも・・・」


(瀬令奈は、わたしたちが地球人じゃないってこと、気づいてるみたいよ)


「どういうことだよ?」

和人は瀬令奈を見つめた。


「ふふふ。わかってるのよ。あなたたち、人間じゃないわね・・・」

瀬令奈は隠しているように笑った。


「人間ですわ。あなたのマネージャーさんと同じです」

ユティスは身をよじりながらそれに答えた。


「ふん。どうだか。動くと、これがべっとり着いちゃうわよ。早く、ビデオを回して!」

「あ、はい!」

瀬令奈はマネージャーに命令した。


「ドアに鍵なさい」

「はい」


かちっ。

マネージャーは中から鍵をかけた。


「ビデオを撮って、どうする気だ?」

和人は瀬令奈に一歩近づいた。


「知れたこと。あなたたちの正体を暴いてやるのよ」


「撮ってますよ、瀬令奈さん」


「ふふふ。OK。そういうことよ」


じーーー。

その手にはビデオカメラが握られて、撮影中だった。


「さあ、前みたく、わたしの前から消えてみなさいよ」

「さぁ、なんのこと?」


ぱちっ。

アンニフィルドが指を鳴らした。


「あなたたち、消えることができるんでしょ?」

「会っていたくないヤツからはね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「うるさいわね、ドデカ女!」

「なんですって?この、ヒステリック、カラック(アホ)」


「サカリのついたドデカ・雌ウサギ!」

瀬令奈は、再びアンニフィルドのプラチナブロンドとピンクの目を揶揄った。


「言ったわねぇ・・・。許さないわよ・・・」


ぼきぼき・・・。


「いけません」

「だめ、アンニフィルド。のしちゃうのはまずいわ」

ユティスとクリステアが、すぐさま合図した。


「そうだよ。アンニフィルド、手加減しろよ」

「リーエス。わかったわ、和人」

瀬令奈は人気絶頂のセレブだ。暴力沙汰は絶対に避けねばならなかった。


「そう言えば、染みみたいなあなたはだれなの?」

瀬令奈は和人に視線を移した。


「染みだって?」

「そうよ。ユティスの染み」


むっかぁ・・・。

「オレは、オレさ」

和人は瀬令奈に反抗した。


「ふん、まさか、これがあなたの彼氏・・・?きゃははは!」

瀬令奈は、ユティスを見て、笑いを抑えられなくなり、震えた手がマニキュアビンをこぼしそうになった。


「さえない男。あははは・・・」

「な、なんだとぉ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ナナン!違います!和人さんは、天の川銀河一ステキな方です。エルフィアの国賓で、とても大切な方ですわ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


ユティスが珍しく強い口調で抗議した。


「天の川銀河?エルフィア?国賓?なに言ってるの?」

「事実ですわ・・・」


「事実ですって?あははは。あなた、ひょっとして電波?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「電磁波を出しているというのなら、赤外線を含め、多少は出していますわ。あなたは、お出ししてないんですか?」


「電磁波?赤外線?」

「出てそうにないわねぇ」

「絶対温度0度なんじゃない?」


アンニフィルドとクリステアがユティスに加勢した。


--- ^_^ わっはっは! ---


そして、間髪入れずに、クリステアとアンニフィルドが追加した。


「参考にまでに言っとくけど、宇宙で一番冷たい温度が、絶対0度よ」

「究極の冷血女ってことね」


「な、なんですって?」


(ユティス。あなたの精神波で、外の人間に、この部屋の異常を感づかせることはできる?)

(リーエス。やってみます)


ユティスはアンニフィルドとクリステアを見た。


(リーエス。わかったわ)

SSの二人はうなずいた。


(和人さん、耳をお押さえになって)

(リーエス)

(1、2、の3!)


「きゃあーーーっ!助けてぇーーーっ!」

3人の娘たちはありったけの大声で悲鳴をあげた。


きーーーん。

きーーーん。

きーーーん!


「ぎゃあーーーっ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


耳元のユティスの悲鳴は、ジェット機並みの威力だった。



瀬令奈とマネージャーは、思わず耳を押さえてひるんだ。


ぽーーーん・・・。

瀬令奈のマニキュアビンはひっくり返って、瀬令奈の服にぶちまけられた。


べとぉ・・・。

「きゃあーーーっ!」


瀬令奈は、服はおろかべっとり顔に着いたマニキュアに、パニックになった。


(もう一度!)

(リーエス!)


「きゃーーーあっ!」

和人は3人の会話がわかっていて、準備をしていたが、キンキンと耳鳴りがした。


きーーーん!

きーーーん!


(どこから出るんだよぉ、あの超音波は?)


ぱりんっ!

ぱりんっ!

ぱり、ぱり、ぱりん・・・。


突然、化粧台の鏡が3人の悲鳴に共鳴して割れた。


「すっげぇ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---




「中で、悲鳴がしたぞ・・・」

たまたま、外を通りかかったボーイがそれに気がついた。


どんどんっ!

「大丈夫ですか?」

ボーイは大声を出した。


かちゃ、かちゃ・・・。

「だめだ。鍵がかっかってる・・・」


ボーイはフロントに合鍵を取りに行こうと走った。

たったった・・・。


「おい、危ないな。どうしたんだ?」

フロア・マネージャーは、慌てて走ってくるボーイを捕まえた。


「部屋の中で、人が閉じ込められたらしいんです」

ボーイは、レセプション会場脇のVIP控え室を指差した。


「あそこは、小川瀬令奈様の控え室だぞ?」

「そうです。そこから、悲鳴が・・・」


「開かないのか?」

「はい。鍵が内側からかかっていて」


「わかった。きみは、鍵を取りに行き給え」

「はい」


今や、会場は何事かとざわめいていた。




「今だ!」

「リーエス!」


ユティスは3人の方に走って、瀬令奈から逃れた。


「そこを、おどきなさい!」


ドアの前で耳を押さえた烏山の脇を、あっという間に移動したクリステアは、ジャンプして全体重を乗せ、強烈な横蹴りをドアに見舞った。


「はぁーーーっ!」


ばーーーんっ!

派手な音が響いてドアの鍵はあっけなく吹っ飛んだ。


「今よ」

4人は外に出ると、急いでホテルの地上階に向かった。


「上に行くんだ!」

「リーエス!」


たったった・・・。

「だ、大丈夫ですか、お客様?」


ちょうどフロア・マネージャーがこちらに駆け出してくるところだった。


「ドア、開いたんですね。よかった・・・」

「壊れちゃった。ごめんなさいね」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぱちっ。

アンニフィルドはすれ違いざまに、フロア・マネージャーにウィンクをした。


「あ、は、はい・・・」


フロア・マネージャーは、クリステアが蹴って壊れて吹き飛んだドアを信じられないように見つめた。


「どうなってんだ?蝶番が吹き飛んでる・・・」

彼は走り去っていく4人を後ろから見つめた。


「普通、ぶつかったくらいじゃ、壊れるようなもんじゃないぞ、これ・・・」

--- ^_^ わっはっは! ---




瀬令奈のプロデューサー、烏山ジョージもレセプション会場にいた。


「何事だ?」


烏山が、瀬令奈の控え室の方に目をやると、ユティスたちが、走ってエスカレーターに向かっているところだった。


たったった・・・。


(ユティスだ・・・)

烏山はユティスにすぐに気づいた。


だだっ。

「ユティス!ちょっと!待ってくれぇ。話があるんだ!」


たったったった・・・。

烏山は大声で叫び、急いで走って追っかけていった。


「ユティス、待ってくれぇ!」


(ちくしょう。ここで、ユティスたちを見失うと、他のヤツラに出し抜かれかねないぞ)


烏山はユティスを自分が見つけ出したと自負していた。


(やっと見つけたんだ・・・)




「おおっ?」

スーパーモデルばりの3人のエルフィア人に皆が注目した。


「あそこ、送迎用の車乗り場だっ!」

「リーエス、和人さん!」


「乗るわよ」


たったった・・・。

「あ、いらっしゃい・・・」


ばたむ。


アンニフィルドたちは当然のような顔をして、ロビーの外にいたワゴンに乗り込んだ。


ぶろろろ・・・。

烏山の目の前でワゴンは走り出した。


「やって」

「え、はい、女神さま・・・」

「え?」


--- ^_^ わっはっは! ---


すべてがあっという間のでき事だった。




フロア・マネージャーが瀬令奈の控え室に入ると、瀬令奈とマネージャーが泡を吹いて倒れていた。


「どうしたっていうんだ・・・」

「う・・・ん・・・」


「あ、小川様・・・!」

彼はわけがわからなかった。


「どうしたんだ?」

そこに烏山ジョージが駆けつけた。


「あ、烏山様。お二人が倒れてたんです。4人が出られた後」

烏山が控え室に入ると二人は倒れていた。


「瀬令奈!大丈夫か?」


烏山が瀬令奈を抱き起こそうとすると、マニキュアがべっとりと着いているのを見つけた。


(マニキュアだと?なんで、顔に・・・。服ににも着いてるぞ・・・)


「救急車を手配しますか?」

フロア・マネージャーは烏山を見た。


「いや、すぐに気がつくだろう」


しかし、烏山は、ユティスたちの様子から、これは瀬令奈の自業自得だと直感していた。


(事件にすると、逆に瀬令奈の墓穴掘ることになるな・・・)


「救急車も警察もいらん」

「は・・・、はい」


フロア・マネージャーは、今度は瀬令奈のマネージャーに目をやった。


「すまないが、そっちを看てくれないか?」

「はい」


ごとっ。

烏山の足に、瀬令奈のマネージャーが手を離したビデオカメラが触れた。


じーーー。

ビデオカメラはまだ回っていた。


(なんだ、これ?マネージャーのヤツ、ビデオを撮っていたのか?)


ぴっ、ぴ、ぴっ。

じーーー。


烏山は、ビデオカメラの録画を中止すると、それを再生し真相を知った。


かちゃ。

ぴっ。


「こ、これは・・・。瀬令奈のヤツ、なんてことしてくれたんだ・・・」


烏山は、瀬令奈とマネージャーが、ユティスたちを監禁したことがわかった。


「だれかを呼ばなくてよかった・・・」


ビデオは、クリステアがものすごい速さでドアに向かってくるところで終わっていた。


「しかし、このユティスの連れの女、なんというスピードだ・・・。これでドアを蹴破ったと言うのか・・・?」


烏山はドアが壊れた入り口に目をやった。

「信じられん・・・」


そして、映像の入ったスティックを抜いて、ポケットに入れた。




「お客様、大丈夫でございますか?」

「なんでもないわ・・・。ただ、耳鳴りがするの」


--- ^_^ わっはっは! ---


瀬令奈はホテルの救急員に言った。


「う、うー・・・」

マネージャーも気がついた。


「お客様・・・」

「大丈夫です」

「そうですか」


ホテルの救急員は二人の脈を取ったり呼吸を計ったりした。


「ドアが壊れてますね?」

救急隊の一人が気づいた。


(監禁がマスコミにばれるとマズイな。立派な犯罪だぞ・・・)


「なんでもありませんよ。どうも、お騒がせしました」

「ドアが急に開かなくなったんだよ。それで、みんなで・・・」

「そうそう、そうなのよ。突き破ったって訳」


「・・・」

救急員は出口の蝶番に目をやった。


「重機でも使ったのですか?」

「そうそう。確か日本製じゃなかったわ」


--- ^_^ あっはっは! ---


「一応、病院で診てもらわなくていいんですか?」

「必要ないわ」


ぷるぷる・・・。

頭を振って瀬令奈が言った。


「本当に、結構ですので、どうぞ、お引き取りください」

「そうですか?」

ホテルの救急員はお互いに見合った。


「では、われわれは戻ります」

「ええ。ご苦労だったわね」

「失礼します」




「ふん!」

瀬令奈の機嫌が悪いわけを、マネージャーは知っていた。


「仕方ないですよ・・・」

「せっかく捕まえたというのに!」


きーーー!


瀬令奈はまたもや、ユティスに逃げられてしまい、憎々しげにマネージャーに当り散らした。


「なぜ、あいつらを逃がしたのよ!」

「あのキックを、正面から受けろって言うんですか、瀬令奈さん?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あなたのガタイなら平気なんじゃないの?」

「冗談じゃない。死んでしまいますよ。無茶苦茶です。オレだって命は惜しいですからね。未婚のまま死にたかありません!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あなた、マネージャーなんでしょ!逆らうと首にするわよ」

「そ、それは・・・」

瀬令奈は契約をちらつかせた。


「で、撮るものは撮ったんでしょうね?」

瀬令奈はマネージャーのビデオを見た。


「ええ、もちろん」

マネージャーはそれを再生モードにした。


ぴ、ぴぴっ。

じーーー。


「あれ?」

「どうしたのよ?」


「SDカードが入ってない・・・?}

「ええ?どういうこと?入れてなかったって言うの?」


「いや、確かに・・・」

「ん、もう、バカ!」


「いえ、確かに入れたんですよ・・・」

「じゃ、あるわけでしょ?ないんなら、入れなかったのよ!」


「そ、そんなぁ。オレ、確かに入れたんですよ。信じて下さいよぉ」

「ええ。信じてあげるわ。あなたが大間抜けだってこと」


--- ^_^ わっはっは! ---

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