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185 奪取

■奪取■




(ここは、どこだろう・・・?)

和人の目の前には、シッピングマークが書かれた木箱がびっしりと積まれていた。


(どうやら、国際貨物の保税倉庫らしいぞ・・・)


和人は手足を縛られ、ユティスと背中合わせになっているのに気づいた。


(がんじがらめか。このままだと、薬でも盛られて、貨物の一つにぶち込まれ、Z国に連れ去られてしまうぞ・・・)


(和人さん?)

(ユティス、大丈夫?)

(リーエス。和人さんこそ、お怪我はございませんか?)


(アルダリーム(ありがとう)。オレは平気だ)

ユティスはあわてる様子もなくおとなしくしていた。


(大丈夫かい、ユティス?)

(リーエス。和人さんこそ、いかがですか?)

(オレもなんとかね)


(わたくしたちの様子は、アンデフロル・デュメーラがアンニフィルドとクリステアに通知済みです。お二人がすぐに助けに来てくださいます。ご安心ください)


(うん)

和人はSSの実力を知っていたので、まったく不安を感じなかった。


(アンニフィルド、クリステア、聞こえますか?)

ユティスは目を閉じて、二人に呼びかけた。


(聞こえるわよ。アンデフロル・デュメーラから全部教えてもらったわ)

クリステアがすぐに応えた。


(いったい、どこで、一休みしてるの?)


--- ^_^ わっはっは! ---


(よくわかりませんが、荷物がそこら中に積まれた、どこかとても大きなお部屋の中です)


(たぶん、倉庫だろうね)

和人も会話に参加した。


(あらあら、二人して仲良くくっついちゃって。でも、これじゃキッスどころか、手も握れそうにないわね)


--- ^_^ わっはっは! ---


アンニフィルドが、会話に参加した。


(バカいうなよ。後ろ手に縛られちゃって、痛くて、身動きすらとれないんだから)

(トイレに行きたいからって、縄を解いてもらえないの?)

(もうやったよ、その手は)

(どうせ、ミエミエの嘘っぽい言い方したんでしょう?和人、お芝居、下手ピーそうだもんねぇ)


--- ^_^ わっはっは! ---


(あのねぇ・・・)

(見張りは何人?)

(二人だ。一人は表にいる。中は一人)

(たった、それだけ?なめたマネしてくれるわねぇ・・・)


(コンタクティー・カズトの予想に、間違いありません)

アンデフロル・デュメーラがすぐに答えた。


(ありがとう、アンデフロル・デュメーラ)


(でも武器を持ってるかもしれないから・・・)

(どんな?)

(銃だよ)


(ああ、あの鉄の筒の中から鉛球を火薬で飛ばす、原始的で無粋なヤツね)

クリステアが答えた。


(んなこと言ったって、死ぬんだぞ、当たったら)

和人はなにを言うかと驚いた。


(あなたにはわかんないでしょうけど、あたしたち自分の周りの時空をちょいと曲げたりできるのよね。20、30メートルってとこかな)


(で?)

(飛んでくる鉛球が時空に沿って、あたしたちを避けてくれるってわけ)

(それ、当たらないってこと?)

(ぜんぜーん、レーザーだって曲がるんだから、鉛球なんてちょろいものね。もう、準備万端だわ)


二人には地球でいう武器弾薬は必要なかった。第一そんなもの持てば、逆に意識がそっちにいって、防御も攻撃の制限されてしまうのだ。限定的とはいえ、時空を自在にコントロールできる人間に勝てるわけがない。エルフィアのSSたちは、水のように、空気のように、どんな状況でも、徒手空拳対で応できることを求められた。SSたちはそう訓練されていた。特に超A級ともなると、打つ手はいくらでもあった。


(その辺の倉庫って、やたらとあるんだけど、アンンデフロル・デュメーラ、あなた特定できないの?)

アンニフィルドがきいてきた。


(今やってます)

(ユティス、そこの地球上の座標わかる?)

(リーエス。やってみます)

ユティスと和人は囚われの海辺の倉庫の位置を探った。


(アンデフロル・デュメーラ、シグナルを発信しました。わたくしたちの位置がわかりますか?)

(リーエス。只今、信号を受けました。SS・クリステア、SS・アンニフィルドにお伝えします)

(お願いしますわ)

(リーエス。エージェント、ユティス)


アンニフィルドたちに知らせれば、すぐに助けてくれるだろう。和人はスマホのGPSデータを確認した。


(第3埠頭の右から2番目です)

アンデフロル・デュメーラが、ユティスに変わって、SSの二人に報告した。

(リーエス。ありがとう。アンデフロル・デュメーラ。確認したわ)

アンニフィルドから応答があった。


(女の子と一緒のかくれんぼ、随分と好きなのね、和人)


--- ^_^ わっはっは! ---


クリステアも二人の位置が確認できたので、安心して冗談を飛ばした。


(冗談はいいから、はやく出してくれよ)

(いまさら焦ってもしょうがないじゃない。子分たちにも連絡しないとね)

(子分って?)


クリステアはそれには答えずに、ジョバンニを呼び出した。



「坊や、そろそろ起きなさい。お仕事よ」

ぴくっ。

ジョバンニは、頭をかばった。


「坊や?」

「お返事は、ジョバンニ?」

「クリステア・・・?イ、イエス、マム」

ジョバンニはすぐに状況を探った。


「ユティスたちは海岸埠頭の保税倉庫よ。わたしたちは一足に行くから、あなたたちは、警察を連れて、追ってきなさい」

「イエス・マム」


「Z国の連中をまくから、後はよろしくね」

「イエス、マム」


「大丈夫か、ジョーンズ?」

ジョバンニがジョーンズを見た。


「ああ・・・」


ずしっ。

「糞ったれ。重てぇヤツだぜ、まったく・・・」


「はは。そりゃそうさ。おまえとはモノが違うからな」


--- ^_^ わっはっは! ---


「やつら、どこに向かったんだろう?」

ジョバンニが言った。


「海岸埠頭の保税倉庫らしい。クリステアたちは先に行った」

「了解だ」


「この渋滞の道で後をつけるのは容易じゃないぞ・・・」

ジョバンニは無表情に言った。


「基地のヘリを呼ぼう」

ジョーンズが言った。


「ああ」




和人とユティスは、背中合わせに縛られて座らされていた。見張りがじっと二人を監視していた。


(ユティス、投影して!)

(リーエス)

「ん、なんだ?」


ユティスは、見張りに奥で人の声がしたように幻影を見せたので、彼はそっちを振り返った。


(今だ、アンニフィルド!)

(リーエス。アンデフロル・デュメーラ、お願い)

(リーエス。SS・アンニフィルド)

SS二人は、アンデフロル・デュメーラの転送で、保税倉庫へジャンプした。


ふわんっ。

音一つ立てないで、SSの二人はZ国の見張りの数十センチ手前に現れた。


ゆらぁ・・・。

(ん?なんだ?)


見張りは、微妙な空気の揺らぎを感じて、さっと振り返り、目の前のSSを見て、腰を抜かした。


「はぁーい」

「うわーーーっ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


さっ。

クリステアが、すぐさま手を前に差し出すと、見張りは声が出せなくなった。


「あぐっ、あぐっ・・・」


見張りは、空気を求めて手で中をかきだした。アンニフィルドが、見張りから銃を回収した。


「お友達、返してもらうわね、タダで」


--- ^_^ わっはっは! ---


ばさっ、ばさっ。


クリステアは、サイコパワーであっというまに縄を解いた。ユティスと和人は自由になった。


「せっかく、縄があるんだからもったいないわよ」


クリステアが、腕を一振りすると、逆に縄は見張りを縛りあげた。見張りはあまりのことに驚き、恐怖のどん底に叩き込まれていた。


--- ^_^ わっはっは! --- 


(ば、化けものか、こいつら、どっから現れた?なにもの?なんで、このオレがやすやすと、立場を逆転されたんだ?)

しかし、彼が叫ぼうにも声が出なかった。


「現実を受け入れた方がよくない?」

さらにアンニフィルドは、見張りの眉間に手をかざした。見張りはあっという間に気を失い、頭を垂れた。


「今の記憶を消しちゃったからね」

「表にも一人いますわ」


ユティスが言った。クリステアが表に出ると、女が一人、クリステアにぴたりと銃口を合わせた。


ぱっ。

「止まりなさい!」


すたすた・・・。

クリステアは、それを無視して、女の方に向かって歩いた。


ちゅぃーーーんっ!

女は威嚇のためクリステアの足元を狙った。


さっ。

その瞬間、クリステアは10メートル以上の距離を一瞬で詰めた。


ぐりっ。

女が声をあげるひまもなく、クリステアは女の右手を捩じ上げ、銃を奪い取った。


「人に試す前に、自分で試してみたら」

「うっ」


ぴたっ。

かちっ。

クリステアは安全装置を外すと、銃口を女のこめかみに押し付けた。


「ばんっ!」


どたっ。

クリステアの声に、女は恐怖で失神した。


--- ^_^ わっはっは! ---


「たわいもないわね」


「さてと、あなたもいやーな記憶を消してあげるわね。素手の女に一瞬でやられたとあっては、プライドがゆるさないでしょ。なぁーんて、アンニフィルドって、優しいんでしょう。ねぇ、クリステア?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はい、はい。お優しいことで」

アンニフィルドは女の記憶を消した。


(SS・クリステア、SS・アンニフィルド、Z国の追っ手が迫っています)

(リーエス、忠告ありがとう、アンデフロル・デュメーラ)

(どういたしまして。どういたしましょう?)


ぶろろろーーー。


(燃料の電子制御をいじれる?)


クリステアがアンデフロル・デュメーラに確認した。


(やってみます)

(えーと、それにブレーキ利かなくしてくれる?それとハンドルは左に固定)

(リーエス)

(以上、倉庫の50メートル手前で、同時にしてくれる?)

(リーエス、SS・クリステア)

「さてと、お仲間が来る前に、おいとましなきゃ」


保税倉庫の向こうから、1台の黒塗りのセダンが猛スピードでこちらに向かってきた。


「お急ぎのようです。制限速度を無視されてますわ」


--- ^_^ わっはっは! ---


ユティスがニコニコしながら言った。


「こっちも急いでよ!」

和人が神経質に言った。


「男らしくないわねぇ。情けない声出さないでよ。ユティスだって、1000年の恋も冷めちゃうわよ」

「まぁ、1000年の恋だなんて・・・わたくし、そんな歳ではないです。クリステア」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はいはい。真面目に取らないで。冗談よ。冗談」


「それにしても、子分たち遅いじゃない?」

アンニフィルドは辺りの様子を気にしながら、クリステアに言った。


「そのうち来るわよ。Z国のお客さんの接待は、あいつらにまかせましょう」

「わかったわ」


「しかし、ここから足を使って脱出するのって超面倒ね」

アンニフィルドはクリステアと目配せした。


「リーエス」

「よし。ジャンプよ」




アンデフロル・デュメーラはユティスを拉致した一団の車の電子制御システムにアクセスした。


(これね・・・。燃料噴射開放)


すこん。

「うわぁ!」


ぶろろろーーー。


--- ^_^ わっはっは! ---


(速度制御装置無効)


すこん。

すこん。


「ど、どうした?」

「ブ、ブレーキが利かないんだよぉ!」


「バカ野郎!なにをやってる?さっさと、キーを抜け!」

助手席の男はそう叫ぶと、サイドブレーキを思いっきり引っ張った。


き、きーーーっ。

(エンジン点火装置固定)


「ダメだ」


がちがちがち・・・。


「糞ったれ。キーが回らん!」


(方向舵、左取り舵いっぱい)

ぐりん。


--- ^_^ わっはっは! ---


き、き、きーーー。

「うぁあーーー!」


がしっ。

「ハンドルが勝手に回りやがる!」


ぐるりんっ。

ききぃーーー。

ぐるぐる。


黒塗りのセダンは、ユティスたちの捕らえられていた倉庫の50メートル手前で大きく左にスピンした。


(搭乗者保護確保)


「うぁーーーっ!」


ぼかぁーーーん。

セダンは、スピンしながら倉庫に横からぶつかり、止まった。


「ぐぇ・・・」

ぽかり!


「のびてるんじゃない!降りろ!」


ばた。

ばた。

だっだっだ・・・。


二人はセダンから降りると、一目散に保税倉庫の入り口に向かって端っていった。


「はぁーーーい、足遅いわね、あなたたち」


--- ^_^ わっはっは! ---




「あんまり遊んでられないわよ、アンニフィルド」

「ええ。ちょっと待って」


「なに?」

「なんか聞こえる・・・」


「オパール105、ヘッディング、スリー・フォー・ゼロ(オパール航空105便、340度に方向をセットせよ)。メインテイン、シックス・タウザンド(高度6000フィートを維持せよ)」

「ラジャー(了解)。オパール105、ヘッディング、スリー・フォー・ゼロ(オパール航空105便、340度に方向セット)。メインテイン、シックス・タウザンド(高度6000フィートを維持)」


突然、アンニフィルドに、国内線の旅客機と管制塔の交信が聞こえてきた。


「どこから聞こえるのかと思ったら、あそこかぁ・・・」


ふと見上げると、アンニフィルドは自分のはるか頭上に一機の旅客機を認めた。


「なるほど、大気圏内を移動する輸送機ね」

「リーエス。なんて言ったのかしら?」


「軍事用の暗号文じゃないかしら」


--- ^_^ わっはっは! ---


空港とは反対の方向に飛んでいたから、街から離れていっているのだった。


「あそこまで、どれくらいあると思う?」

アンニフィルドは空を見上げた。


「高度2000m、ここからだと、距離4000mってとこね」

「余裕だわ」


「4人一緒だと目立つわよ」

「構わないわ。あいつらの目の前で消えてあげましょ」


「手伝って、クリステア」

「リーエス」


「なにしてんだよ?」

和人がSSの二人を見つめた。


「避難は、お空で優雅にいきましょう」

「そうしましょう、和人さん」

「ま、ユティスがそう言うんだったら・・・」


アンニフィルドは空を見上げた。

「そう言うことで、アンデフロル・デュメーラ、転送をお願い」


「リーエス、SS・アンニフィルド。転送先は、上空2000mの大気圏内を亜音速で移動中の輸送機でよろしいですか?」

「リーエス」


「機内の席はほとんど埋まってますよ、SS・アンニフィルド」

「しょうがないわね。3、4人外に出てもらって、席を空けてくれるように言ってよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんなことしたら、死んじゃうじゃないか!」

和人が血相変えて言った。


「あはは。冗談よ、冗談」


「空いてる席に、適当に送って」

「リーエス、SS・アンニフィルド」


SSの二人は、アンデフロル・デュメーラの助けで、自分たちも含めて4人をすぐに転送した。


ぶわんっ。

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