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184 拉致

■拉致■



「C班、搬出開始」

「了解」

「了解」

「了解」




「大丈夫か?」

オフィシャルスタッフのジャージ姿の男たちが、スタンドの下で人の山を掻き分けていた。


「痛い!」

「助けてぇ!」


人々は口々に助けを求めた。



そのうち2人が素早くユティスと数とに近寄った。


「大丈夫ですか?さぁ、こちらへ」

「あどうも・・・。う・・・」

「きゃ・・・」


スタッフはエーテルを滲みこませたハンカチを二人の鼻と口に押し付けると、その腹をしたたか打った。


「ぐっ・・・」

腹を打たれたハンドで、和人は一気に息を吸い、ハンカチのエーテルを胸いっぱいに吸い込み、意識を失った。


「あっ・・・」

そして、和人の脇では、ユティスが同じようにして意識を失った。


スタッフは、クリステアをその場に残し、ユティスと和人を担架にに載せると、階段を上り出口から消えていった。




石橋を迎えに行っていたアンニフィルドは、この数分のできごとがわからなかった。アンデフロル・デュメーラの警告で、はじめて知ったのだった。


「SS・アンニフィルド、頭脳波攻撃です。SS・クリステアが十名により集中攻撃を受けています」

「なんですって?」


「お急ぎください」

「そんなこといっても、石橋をどうすれば・・・」

「ご一緒に!」


「そんなこと言っても、この人ごみよ?」

「お急ぎください」

アンデフロル・デュメーラの口調は、一刻も争うような勢いだった。


「リーエス」



「アンニフィルド!」

アンニフィルドを見つけて、石橋は安心したように彼女にしがみついた。


「SS・アンニフィルド、エージェント・ユティスとコンタクティー・カズトの頭脳波が消えました。失神している模様です」

「待ってよ、どういうことぉ?」


「早く、お急ぎください」


「アンデフロル・デュメーラ、あなたが、ユティスとカズトを回収して。ユティスの位置ビーコンでわかるんでしょ?」

「リーエス、通常であればです。エージェントユティスは緊急信号を発信していません」


「はぁ?どういうこと、位置がわからないって言うの?」

「ナナン。わかりません・・・」


「アンニフィルド、どうかしたの?」

石橋が心配そうにアンニフィルドを見つめた。


「ん、もう!石橋、いらっしゃい!」

「あ、はい・・・」


「目をつむって。今すぐ!」

「あ、はい」


ぽわぁん。

その直後、アンニフィルドと石橋は白い光に包まれ、200メートルほど瞬間移動した。




「きゃあ!」

「き、消えたぁ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


アンニフィルドの周りにいた観客は、そのすべてを目撃し、ショック状態だった。


「女の子が・・・、女の子2人が光に包まれて、消えた・・・」




ジョバンニは目の前でアンニフィルドと石橋が蒸発したので、目を白黒させて、クリステアに精神波で打診した。


「マム!そっちにアンニフィルドと石橋が行きました」

「・・・」


しかし、クリステアの反応がなかった。


「マム!」

「・・・」


やはり、応えは帰ってこなかった。


ぴっ。

ジョバンニはスマホに似た無線機でジョーンズを呼び出した。


るるる・・・。

るるる・・・。


ジョーンズから応答はなかった。


「ジョーンズ!。返事をしろ、ジョーンズ!」

「・・・」


ジョバンニは、その時になって、はじめて深刻な事態を迎えつたることを知った。


「こうしちゃ、いられねぇ・・・」


たったった・・・。

ジョバンニは、今来た道を戻り、200メートル前方で、何百人が崩れ落ち一塊になっているのを見た。


「どけぇ!どいてくれぇ!」

だっ、だっ・・・。


「なんてこったぁ・・・」

そして、ジョバンニは、人を掻き分けそこに急いだ。


「下敷きになっちまったというのかぁ?」




ぶわぁん!


アンニフィルドは石橋を抱えたまま、クリステアの前にジャンプした。


「わぁ!」

「きゃあ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


ここでもいきなり空中から姿を現した二人に、周りの観客は度肝を抜かれた。


「なによ、失礼ねぇ。人の顔見るなり、いきなり悲鳴上げるなんて」


--- ^_^ わっはっは! ---


アンニフィルドは文句を言った。


「きゃ!」

石橋もわけがわからないといった様子で、一変した風景に怯えた。



「ユティス!」

アンニフィルドは、ユティスの奈を呼んだが、観客の怒号や悲鳴で、まったく聞くことができなかった。


「ユティス!」

今度は精神波でも同時に叫んでみたが、やはり反応はなかった。


「ジョーンズ!」

アンニフィルドは、ジョーンズを見つけた。


「石橋、ここを動かないで!」

「はい・・・」

石橋はびっくりして、その惨劇を見つめていた。


たったった・・・。


「ジョーンズ!」

「おう。アンニフィルドか?」


ずずぅーーーん。

ずりずる・・・。

ジョーンズは頭を振ると、その巨体をゆっくりと起こした。


「怪我してるの?」

「いや、打ち身だけだ。くっそう・・・」


「どうしたの?なにがあったの?」


ゆさゆさ・・・。

アンニフィルドはジョーンズをゆすった。。


「上から将棋倒しで人が落ちてきた。巻き込まれたんだ・・・」

「ユティスは、どこ?」

アンニフィルドは必死でユティスの姿を探した。


「わからん・・・。大丈夫だといいんだが、くそぉ、オレとしたことが・・・」


「ユティス!」

ジョーンズも大後を出したが、ユティスからの応答はなかった。




「スタンドの正面左に、片割れのSSが戻ってきたぞ・・・」

「ええ・・・?いつ戻ってきたんだ・・・?」

「さぁな、大方、瞬間移動でもしたんじゃないかぁ?」


にやり・・・。

男は不適な笑いを浮かべると、無線機でさらなる指示を出した。


「ターゲット、ホワイトブロンド。照射開始」

「了解」

「了解」


ぶぅーーーんっ。




かーーーっ。

「きゃあ、熱い!」

アンニフィルドは全身強烈な熱波を当てられた気がした。


「どうした、アンニフィルド!」

ジョーンズはそう言って、アンニフィルドに手をかけた。


「熱い!」




「B班、頭脳波攻撃開始」

「了解」

「了解」

「了解」


「ファイアーッ!」

「了解」

「了解」

「了解」


先ほど、クリステアをターゲットにした攻撃が、今度はクリステアに襲いかかった。


きーーーんっ!

「痛い!」


アンニフィルドはものすごい音量の超音波が脳全体を震えさせているように感じた。



たったった・・・。

そこの日本の警護官たちが、やっとたどり着いた。


「大丈夫っすかぁ、お嬢さん?」

「うっ!」

アンニフィルドは、頭を抱えそこにうずくまった。




「照射停止」

「了解」

「了解」


ぴっ。


「オレだ・・・」

「二人を救急病院に向け搬出完了です」

「よし。よくやった」


「すぐに出よう」

「了解」


ぴっ。


「うまくいったのか?」

「ああ・・・。ふっふ。当たり前だ。引き上げよう・・・」

謎の一団は静かにスタジアムを後にした。




ぴーーー。ぴーーー。


審判団は、協議し、とりあえず両チームの選手たちを自陣に引き上げるよう合図した。今や、サッカーの試合どころではなくなっていた。


「これは大変なことになりました。前半37分頃、正面スタンドの右側の7ゾーンで起きた将棋倒しに、何百人もの観客が巻き込まれました。試合はそれで、完全に中断しています!」


テレビカメラはもう、選手たちを映してはいなかった。


「ああ。今、オフィシャスの救急スタッフが、人の塊を一人一人用心して解しています」




「俊介!」

マンションでサッカー中継を見ていた真紀は、双子の弟を呼んだ。


すたすた・・・。


「どうしたんだよ、年頃過ぎの娘が大声なんか出して」

「年頃過ぎとはなによぉ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「一応、娘といったんだぞぉ?」

「うるさい、バカ!それより、今日ユティスたちが行った試合、大変なことになってるわよ・・・」


「ん・・・?」

俊介はそれを見て一瞬で状況を把握した。


「観客の将棋倒しだ・・・」

「ええ。それに起こった場所よ、問題は・・・」

真紀は、テレビに映ったゾーン7付近の出入り口を指した。


「やばい。ユティスと和人の席じゃないか・・・」

俊介は鳥肌が立つ思いだった。


「連絡してみる!」

そう言うと、俊介はすぐに和人のスマホに電話を入れた。


るるるる・・・。

るるるる・・・。


「くっそう、通じん!」

「出ないの?」

「出ん。なにもなきゃあいいが・・・」

俊介は顎に手をやった。


「行こうよ、俊介!」

「スタジアムか?」

「そうよ。わたし、悪い予感がする・・・」

「わかった」



謎の一団は静かにスタジアムを後にした。




「くぅ・・・」

アンニフィルドは、突如として止んだ頭の痛みと熱さに、やっと一息をついた。


「クリステア?」

アンニフィルドの右前方10段目あたりにショートヘアの酢肩を見つけた。


とんとん・・・。

人とベンチを避けながら、アンニフィルドはクリステアに近づいた。


「大丈夫?」

ぺちぺち・・・・

アンニフィルドは、気を失っているクリステアの頬を軽き叩き、彼女が正常であることを確認した。


「ア、アンニフィルド・・・」

「どうしたって言うの?」


「ユティスは?」

「いない。やられちゃた・・・」


「興奮して総立ちになった観客の一団に、上から将棋倒しが起きたのよ。すぐにアンデフロル・デュメーラから警告が来たんだけど、まったく間に合わなかったわ。そしてすぐにわたしは強烈な酢通を感じて・・・。考えるどころか、きっと悲鳴をあげてたかも・・・」


「それ、急にじーーーんと熱くて、きーーーんときて・・・」

「リーエス。それよ。それ。アンニフィルド、あなたもされたの」

「リーエス。ここに戻ってすぐに、体中が強烈な熱波を浴びてるような感覚だったわ」


そこに、血相を変えて、ジョバンニが走るようにしてやってきた。




「マム。ヨー・オーライ?」

ジョバンニはクリステアを見つめ大声で叫んだ。


「わたしはね・・・。ぬかったわ・・・」

その言葉で、ジョバンニはユティスが拉致されたことを知った。


「Z国ですか?」

「わからない。でも、重要参考人には違いないわ」


むくぅ・・・。

ジョーンズも、そこからほどなく離れたところで、身を起こした。


「ちくしょう、ぬかったぜぇ・・・」

「そうね」


「あれは、マイクロ波と精神波による同時攻撃だったに違いないわ」

クリステアが、みんなに言った。


「どうする?」

「アンデフロル・デュメーラにユティスの救難信号の識別をしてもらいましょう?」

「それはやってみた・・・。応えはナナンよ」


「稼動状態の設定に入れてなかったのかしら・・・?」

「そうだ・・・」

ジョーンズが3人を見た。


「なにか、アイデアでもあるの?

「ああ。和人のスマホを追うんだ。スマホは常にGPSに自分の位置情報を伝えている。それをよりユティスと位置を確認できるんんじゃないのか?」

ジョーンズはSSたちを見た。


「一理あるわね・・・」

「アンデフロル・デュメーラ?」

「リーエス。SS・クリステア」


「ユティスと和人は常に行動を共にしているから、和人の位置がわかれば、どこに向かっていれば、ユティスの位置も特定できるわよね?」

「リーエス。SS・クリステア」


「今すぐ、追っかけて欲しいの」

「リーエス。お二人とも、申し訳ございません」


「いいのよ、アンデフロル・デュメーラ。一瞬の隙を突かれた、わたしたちのミスよ」

「でも、予想が不完全、かつ警告が間に合いませんでした」


「過去のデータが、まったく適用しなかったんだから、仕方ないわよ」

「しかし、SS・クリステア、確率的には十分予想できたはずでした」

「いいのよ。だれでも100%完璧にはなりえないわ」


「そうそう。地球人は、わたしたちが思ったより、遥かに手強いってことよ。あ、悪い人間だけだけどね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ご配慮感謝します」


「ユティスたちを運び出したのは。オフィシャルのスタッフのジャージを着た連中だ」

ジョーンズが言った。


「その後、すぐに救急スタッフが担架を運び込んで・・・」

「ユティスを連れ出したのね?」


「よく、暴れなかったわね、ユティス」

「やつら、ハンカチをユティスの口に押し当てていた」

「エーテルで失神させたのか・・・」




「向こうも相当作戦を考えているわね・・・。マイクロ波兵器とエスパー10人みんなのシンクロ攻撃を、仕掛けてくるとはね・・・」


「みなさん、お怪我は?」

「大丈夫よ、アンデフロル・デュメーラ」


「油断したわね・・・」

アンニフィルドはクリステアを助け起こした。


「リーエス・・・。今後は、エスパー10人以上がシンクロをかけた場合の集中砲火に対する訓練が、ぜひとも必要だわ・・・」

「地球人、侮れないわね・・・」


「SSアンニフィルド、SS・フェリシアスに、あなたの忠告の連絡を入れますか?」

「ありがとう、アンデフロル・デュメーラ」


「ナナン。わたしから報告するわ」

「リーエス。SS・クリステア」


SSたちは、敵にまんまとユティスと数とを奪われたことを知ったが、落ち込んではしなかった。

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