180 招聘
■招聘■
ここは、アニメやフィギュアのファンのメッカ、アキバ・センターだった。今日は、イベント開催日で、それを期待したファンたちでごった返していた。
「はーい、ユティス人形あるわよ、おにーさん!」
「おっ可愛い、これください!」
「はーい、まいど!」
石橋はそれを包んだ。
「ねえ、アンニフィルドもクリステアもどう?そろえなくちゃ、価値ないわよお。ほーら!」
真紀がそこで付け加えた。
「ど、どうしようかなぁ・・・?」
一人の若者が躊躇していた。
「エルフィアのオフィシャルグッズよぉ。次はいつ入るかわかんないでぇす」
にっこり。
石橋は間髪入れずに微笑んだ。
「あは・・・。じゃぁ、まとめてください・・・」
(この娘も可愛いじゃないか・・・。でへ・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「はい、ありがとうございます」
「あつ、ほんとにサイン入りだ!」
「本人のサイン入り?」
「ホントだってば!」
たちまち彼は周囲の注目を集めてしまった。
「えっ、ほんと?」
「どれ、見せろよ!」
「あー!」
「どうぞ、わたくしたちのお人形、大事にしてくださいね」
ユティスは、そう言うとにっこり微笑み包みを丁寧に手渡した。
「げ、げっ。ほ、本人じゃないか!」
「うぁーーー!」
突然、ユティスたちが現れたので青年たちはびっくりした。
「わっ、やっぱし、本人じゃん!」
「はぁい!」
「あ、アンニフィルド!」
「すっげー、美人!スーパーモデルじゃないのか?」
「わたしも、ちゃんといるわよ!」
「ク、クリステアまで!」
「さぁ、さぁ、本人たちから、グッズの手渡し、一生もんの思い出よ!」
「ほらほら、サイン入りは各々限定20個、お一人様1セット限定よ。売り切れご免だわ!」
「わぁーーー!」
たちまち、セレアムの売り場は黒山の人だかりになった。
「オレもください!」
「オレも!」
真紀は先頭に立って売り子となった。
「和人、テーブルに追加を並べてね」
「リーエス、了解」
「えらい盛況だな?」
「はい、常務。企画は大当たりです」
「そっか。そいつはよかった。手伝うことあるか?」
「いえ。常務は、その辺でも散歩がてら、見回って他店の状況を」
「マーケティングか?」
「ええ」
「よかろう」
俊介は歩いていった。
「邪魔なのよ。邪魔・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あんな図体で前方を塞がれたら、お客さんが来れないでしょうが・・・」
真紀が石橋に言って笑った。
「あ、はい」
ホビーとオタクの街では、既に4人のグッズが出回っていた。思いっきり寸詰めの3等身の可愛いフィギュアは、特に人気が高かった。これは、石橋がデザインしたもので、女性ファンもついていた。
石橋は和人との心の葛藤をなんとか修復しようとしていた。
「和人さん、それ取ってください」
「はい。わかりました」
ユティスも石橋の気持ちをわかっていたので、石橋の前で和人に甘えないように気をつけていた。時には石橋が和人と一緒にいるのことを喜んだ。和人も石橋とは仲良くやっていた。石橋も、そんなユティスの気持ちをわかっていたのだ。
「ユティス、あんなにくっつかせといていいの?」
「リーエス」
「石橋も、ほんと、心が優しいのね」
クリステアが感心するように言った。
「素直なのよ。すべて善意に解釈してるんだわ」
アンニフィルドが応えた。
「普通なら、余裕こいているとかなんとかで、ユティスを逆恨みしまくってもいいところなのにね。小川なんたらっての覚えてるでしょ?」
「なんか野菜っぽい名前だったわね?」
「小川菜っ葉!じゃなかったかしら?」
「そう。それ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「アンニフィルドさぁ、心が広すぎるのもよくないわよ」
「和人も石橋も、とてもカテゴリー2の住人とは思えないわ」
石橋は対面商売に目覚めていた。自分の企画したグッズが売れていくのは快感だった。石橋は目を輝かせた。
「今のうちに稼ぎまくんなくちゃ」
和人と並んで売り子は、石橋にとって最近にはない幸せは時間だった。
「ずいぶんと張り切っているわねぇ、石橋」
「はい。真紀さん。どうせ来月にはニセモノがX国や、Y国や、Z国なんかで出回ってくるんだから。著作権超フリーのやり放題には、先手を取らなきゃ。オリジナルとクオリティで徹底的に差をつけてあげます」
「和人さん、こっちも手伝ってくださぁい」
石橋は和人に微笑んだ。
「リーエス」
「はーい、お兄さん。これ、どうですか。わたしのデザインです。本人たちの直筆サイン入り、超限定版でーす。シリアルナンバー入りで、各々20体限定。超レアものですよ。いかがですかぁ?」
「その調子よ。石橋、よーし、売りまくるわよぉ!」
「はい」
「本人たちも今日は来てまーす!」
「あは、なんて可愛いの。ホンモノはもっと色っぽくて可愛いけどね!」
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドは、自分の3等身フィギュアを手にとってごきげんだった。ユティスもクリステアも、まるで天使のようだった。
「こうして、みんな並んでいると、まるで天使だわ!」
クールなクリステアも思わず笑みをこぼした。
「送っちゃいましょうよ、エルドに!」
「それは名案ですわ!」
ユティスはアンデフロル・デュメーラを呼んだ。
「アンデフロル・デュメーラ?お答えください」
「リーエス。ユティス」
エストロ5級の母船はたちまち返事をした。
「このお人形たちを、エルドにお届けくださいますか?」
「リーエス。テーブルに並んでいる4体でよろしいのですね?」
「はい。それです」
「リーエス、ユティス。エルドにお届けします」
「パジューレ」
すると、テーブルの4体のフィギュアが、柔らかい白い光に包まれたかと思うと、一瞬で消え去った。
ぴかぁ・・・っ。
ぱぁーーーっ。
ぱっ!
「わっ。き、消えた!」
「げげぇ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
なにしろアキバのど真ん中であった。その一部始終を目撃した、何十人というファンたちは一瞬声を失った。
「ユティス・・・」
和人はユティスを見つめて苦笑いをした。
「いけませんでしたか?」
「ちょっと、みんなには、刺激が強すぎたかも・・・」
和人は、取り巻きのファンたちを見回して、次に起こることを心配した。
「なにが起こったんだ?」
「フィギュアが消えた・・・」
「突然光が出て、消えたぞ!」
「エルフィア・・・って、ホントに、エルフィア人なのか・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「う、宇宙人ってことかぁ?」
「失礼ね。怪物みたいな呼び方しないでよ。生まれはエルフィアだけど、あなたたち地球人と変わんないわよぉ」
アンニフィルドがちょっと拗ねたように言った。
「そうだよ。オレたちと同じじゃんか!」
「うぉーっ。オレ、アンニフィルド!」
「オレは、ユティス!」
「なに言ってんだよぉ!クリステアに決まってるだろ!」
次の瞬間、エルフィア人たちは、ファンにもみくちゃになった。
「きゃあ!」
ぷにょぉーーーん。
「人形にしちゃ、随分リアルだなぁ・・・」
「どこ触ってるのよぉ!」
ぱっこぉーーーん!
「痛ぇ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぐいぐい・・・。
「押しちゃダメ。押しちゃダメって言ってるでしょ?」
「うぉー!」
「待って!待ちなさいってば!」
ファンはアンニフィルドの注意を完全に無視した。
「サインくれぇ!」
「オレもだ!」
「ユティス!」
にこにこ・・・。
「リーエス。みなさぁーん、並んでくださいねぇ」
さささぁ・・・。
「これはなんて書いてあるんですか?」
「大好きなファンのみなさまへ、ですよ」
「おおお、やったぁ、ユティスのサイン、ゲットだぁ!」
「オレは、クリステア!」
「アンニフィルド、サインくれよぉ!」
「栗酢手亜でいい?」
「かっ、かっこいい・・・!」
「きゃ!押さないでよ!」
「オレが先だよ!」
「なに言ってる、オレこそ先だ!」
「んん?」
「エルド。わたくしです。アンデフロル・デュメーラ。エストロ5級母船です。ただ今、地球上空に待機しております。ユティスたち地球にいる3人から、お届け物があります」
アンデフロル・デュメーラの声がエルドに届いた。
「贈り物?そうか、どれどれ」
エルドのデスクの上が白く光ると、すぐに形になった。エルフィア人形が4体現れた。
「ユティスにクリステアにアンニフィルド・・・、和人のもあるじゃないか!」
「可愛いですね」
エルドの秘書メロ-ズが言った。
「まったくだ。で、アンデフロル・デュメーラ、どうしてこのようなものを?」
「メッセージがありますが読みあげますか?」
アンデフロル・デュメーラが答えた。
「リーエス。頼むよ」
「わたくしたち、地球でコーラスグループとして有名になってしまいました。なんと、グループ名は『エルフィア』なんですのよ。お世話になっている国分寺さんたちが、こんなにも可愛いわたくしたちの人形を作ってくれましたわ。エルフィア風にお机に飾っておいてください。ユティス、アンニフィルド、クリステアより愛をこめて・・・。エルドへ」
アンデフロル・デュメーラは、ユティスの口調そのままに、それを読み上げた。
「わっはっは」
「ふふふ」
「このメッセージは絶対にユティスだな。はっはっは。楽しんでいるようだ、3人とも。さっそくエルフィア風にテーブルに並べておこう」
「エルフィア風か・・・。では、地球風にするとどうなるのかな?」
「壁に釘で刺して飾るとか、首に紐を巻いて吊り下げて飾るとかじゃないですか・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「いかにも、カテゴリー1風だな・・・」
「恐ろしいことです・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「今のコメントを、ユティスにお伝えしますか?」
「ああ。アンデフロル・デュメーラ、ぜひ、頼むよ」
「リーエス、エルド」
エルドは執務室の自分のテーブルに4体をエルフィア風に並べた。
大田原はユティスたちの身柄の安全を確保するため、ようやく日本国籍取得を認めさせた。パスポートとIDも発行され、とりあえずエルフィア人たちは日本国籍となった。
一方、官邸では一通の手紙への対応で首相が苦りきっていた。
ぱさっ。
外務大臣は藤岡の前でそれを机の上に置いた。
「なんだ、これは・・・?」
「堂々、正面切って、エルフィア出身の3人と言ってあります」
「日本国籍を持っていることを、表面上、認めた上でか・・・?」
「そうです」
「それで、Z国が、ユティスたちを、招聘するだとぉ?」
「文化大使として、子供たちにコーラスを・・・、ということで」
「国賓待遇でか・・・?」
「そうです」
「それに、招聘状の案内書きに、意味不明の文が追伸としてありまして、首をひねっております・・・」
ぱさ・・・。
「これか・・・」
「そうです」
「こうまく指示。かぐや姫に浦島が近寄ると、舌切りスズメがどんぶらこ。カルデイラ方程式に宇宙項を代入のうえ、それを二重積分。メッセージしかと承りました。ユティスさまに、くれぐれもよろしく、お伝えくださいませ・・・。か・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「極めて重要で大切なことだ・・・」
藤岡はそれを手にして見つめた。
「なんのことでしょう?」
「わからん・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
首相は眉間に皺を寄せた。
「重要なことらしいな・・・」
「まったく、案内状や招聘状じゃなくて、日本への挑戦状なんじゃないですか?これが解けなかったら、エルフィア人から手を引けというような・・・」
「まさかぁ・・・。至急、暗号解読班に回してくれたまえ」
「了解しました」
「それにユティスにも見せた方がいいかもしれん」
「わかりました」
--- ^_^ わっはっは! ---
「それで、これはいつ打診された?」
「先ほど・・・」
「うむ・・・。寝耳に水か・・・」
「ユティスを行かせるんですか?」
「とんでもない。危険すぎる」
「向こうは、正式な外交ルートを通じています。正面切って、断れますかねぇ・・・」
「即答は危険だな。彼らの真の意図を探るんだ」
「そうですね」
「Z国は、ユティスを拉致してまで、その超ハイテクノロジーを欲しがっているんだ。もちろん、軍事目的でな・・・」
「わかりました。返答は、保留しましょう。その間に、こちらの手の内を悟られないように、情報収集します」
「うむ。大田原に相談だ。彼には、いい知恵があるだろう・・・」
「首相」
「ご足労、ありがとう。大田原さん」
「Z国が、エルフィア人を、歌手として、招聘しようとしているのは、本当ですか?」
大田原は驚いたように言った。
「その通りなんだ。それも国賓級のVIP待遇出だ」
「というと?」
「パスポートもビザも、オールフリーということだよ。当然、滞在中のすべては、向こうで負担する」
「拉致することを諦めて、次なる確保手段を算段しているとか?」
「うーーーむ。理解ができん。なにがあっても、欲しいものは、手段を選ばず、奪いにかかるZ国がだ・・・」
「それが、正式に招聘するということは、エルフィア人がわが国の国籍を取得していることを認めたということのみならず、正規に彼女たちを扱うことを、表明したと?」
「大田原さん、あなたは、本気で、そう思っとるかね?」
「確かに、臭いますな・・・」
「どんな裏があるやも知れん」
「それで、Z国への返答は?」
「向こうの意図も確認できんのに、すぐにはできんだろう?」
「そうですな・・・」
大田原は少し考え込んだ。
「なにか、思うところでも?」
「その・・・、彼らは、本当に、ユティスたちの拉致を、諦めたんでしょうか?」
大田原は独り言のように言った。
「招聘が実現すれば、拉致する意味がなくなるんではないのか?」
「問題は、ユティスをZ国に連れてくることではない、ということです」
「ええ?どうして?それこそが、やつらの目的だろう?」
「いいえ。そこから先こそが、重要なんでは?彼らは、あくまで、エルフィア人の科学技術を盗みたいんです」
「だが、文化交流と称して、招聘すれば、それも可能なんではないか?」
「いや、それでは、決して聞き出すこともできんでしょう」
「なぜ?」
「エルフィアの文明促進支援は、答えを与えることではないからです」
「答えを教えないだと?それじゃ、文明促進支援にはならんだろう?」
大田原は落ち着いて答えた。
「自覚させることです。カテゴリー2ですべきこと。カテゴリー3へ進むにあたって、すべきこと。この精神的な準備のない、カテゴリー1的で、欲望に囚われたままのところに、なにかしらの技術を教えたところで、己が欲望に利用し、それを増大するだけです」
「そして、次はさらなるものをよこせと・・・」
「そういうことです」
「ふむ。Z国そのまんまだな・・・」
「ですから、彼らが、いかなる手段を講じようが、自律的な精神の成長のない状態ままでは、エルフィアが援助を申し出ることは、絶対にありえません」
「では、今回の招聘はいったいどういうことだ?」
「もっと、姑息な裏がありそうだということです・・・」
「なるほど・・・」
「首相、すぐに合衆国とご協議下さい。Z国の情報や分析は日本の比ではありません。きっと、いい知恵が出るでしょう」
「大田原さん、わたしはあなた自身の意見が欲しいんだが・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「申しあげた通りです。日本単独では、決してなさらぬ方が、よろしいかと。それで、エルフィア人にも、プラスの印象をお与えになりましょう」
「わかった・・・。あなたの言う通りにしよう」
「真紀、俊介。エルフィア人たちは、身の上はともかく、この際、その姿は、はっきり知らしめた方が、いいと思う」
「おじいさまも、そう考えるのね?」
「なんだ。おまえたちも同意見なのか」
「そうだぜ」
「できるだけ、世界のメジャーなネットメディアに出してくれ」
「了解。情報の出所は、オレたちだけだから、なんだって自由にできるぞ」
「そうね。ちょっとずつ情報を出して、じらせて、一気にネットの話題を独占するってのはどう?」
「悪くないぜ。少なくとも、日本語の他に、英語、西語、仏語くらいは用意してもらうことになるな」
「彼女たちが、世界中で有名になればなるほど、Z国や、他の連中は手を出しにくくなる」
「世界の大衆が、ユティスたちを守ってくれるってわけか」
「そういうことよ」
「そうなれば、いかにZ国であろうが、ユティスになにかを内緒ですることなど、そうそうできなくなる」
大田原には、それが狙いであった。マスメディアとインターネットのソーシャルメディアは彼らの武器であり盾であった。
「和人に連絡するわ」
「本人たちの事前了解は、取る必要があるからな」
「和人、わたしよ」
「あ、真紀社長。なんでしょうか?」
「ユティスたちのネット公開の件だけど、おじいさまも同じ意見よ」
「じゃ、ホームページやら、なんやら、作成するわけですね?」
「そうよ。それで、一応、彼女たちには、その旨、了解を取りたいんだけど・・・」
「それは心配いりません。3人とも、乗り気ですよ」
「それは都合いいわ」
「ねぇ、俊介。ネットに出すのはいいんだけど。各国の言葉で同時発信するつもり?」
「いや。五月雨でも構わないさ。どっかでホットになって、それを嗅ぎつけて、またほかのところでホットになる。そうやって、世界中を駆け巡らせるってのが、最も効果があがると思うぜ」
「謎が謎を生むってことね?」
「狙いはそれだ。謎の美女3人・・・、足すことの付き人一人」
「オレですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「それ、一理あるわ。で、最初はやはり日本語でするんでしょ?」
「そうだ。次は、英語かな」
「英語は、石橋か、岡本ね」
「ああ。人選については姉貴にまかせるよ」
「OK]
わずか2日で、国分寺姉弟は会社にユティスに関するあらゆるタイプのサイトを、日本語、英語、フランス語、スペイン語他、6ヶ国語に及んで同時に立ち上げた。
「できたわ!」
「よくやったわね、みんな!」
真紀はチームのみんなに感謝し、労った。
失われし銀河。エルフィア銀河こと、NGC4535を地球人はそう呼んでいた。『失われし銀河の天使たち、エルフィア』(和人もいつのまにか入れられていた)。アトランティスや超古代文明を暗示するような、謎めいたキャッチフレーズは大いに当たった。国分寺姉弟の開いたエルフィア・オフィシャルサイトは一気にアクセスが集中した。ちまたには、エルフィア便乗グッズが出回り、国分寺たちはにわかに忙しくなった。マスメディアも情報源を、国分寺たちに頼るしかなかった。
「これで、やっとスタートラインについたな」
俊介はにんまりした。
「ええ、やっとね」
これこそ計画のスタートだった。
一段落すると、俊介はエルフィア娘たちに確認した。
「きみたちは、日本語は事前学習してきているようだけど、英語は?」
「英語?」
「なぁに、それ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「なんで?」
「日本語って地球標準語なんじゃないの?」
「まさか!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「だって和人は、標準語だったいってたじゃない?」
「あれは標準の日本語ってこと。日本語にもいろいろ方言があって、東京中心の言葉を、日本の標準にしたんだ。普通、それを標準語っていうんだけど・・・」
「えーーー!」
「ひょっとして日本語も、さらにいくつか分かれてるの?」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぷるぷるぷる。
「頭が変になりそう・・・」
「地球は一つなのに言葉はたくさんあるのね!」
「とんでもなく変じゃない、それ?」
エルフィア娘たちはまったく理解できない様子だった。
「とにかく、地球には、200近くの国がいっぱいあって、それぞれ独立して国を治めていて、言葉も文字も違うのよ・・・」
「こと言語に関して言えば、地球って、カテゴリー2にも程遠いわ」
クリステアは思いっきりあきれ顔をしていた。
「ひょっとして、地球人てのは、いろんな世界から来た人たちの混血じゃない?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「とにかく、不便じゃない?」
「いや、わかんなくていいんだ。地球人ってのは秘密が多くてな。特に男女間には・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「とにかく英語は地球の準共通語になっているから、今週中にマスターしておいて欲しい」
英語に関して、近い将来合衆国との交渉でひつようになることは目に見えていた。大田原は俊介に念を押していた。
「ハイパー学習なら2日もかからんだろう。俊介、例のマシンは?」
「事務所のシステム室にスタンバイしてある。後はわけのわからんエネルギーをアンディーが120%充填するだけだ」
「それは、置いているというんじゃないのか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
3人のエルフィア娘は英語に加え、フランス語、北京語、スペイン語、アラビア語、ドイツ語、そしてロシア語もついでにマスターした。ついでに和人も詰め込んだが、エルフィア人たちまで脳が活性化してないので、英語とフランス語あたりでパンクした。