017 周辺
「はぁい、アンニフィルドです。地球人も超巨大望遠鏡を持ってるのね。百数十億光年先の宇宙誕生時の様子を探るためらしんだけど、観測条件の良い一年を通じて晴れてて町の光にも邪魔されないところに作ってるって聞いてるわ。それで覗けばエルフィアも見えるかしら?」
■周辺■
俊介は、時の内閣総理大臣藤岡龍之介の特別顧問、大田原太郎の孫だった。大田原は現政府の影の官房長官であり黒幕的存在だった。
「俊介、おまえか?」
「ああ。じいさん。一大事だぞ。うちで預かっているじいさんのハイパートランスポンダーが作動した・・・」
「なに?」
大田原は声がひっくり返りそうになった。
「うちの人間が、PCでハイパートランスポンダーを介して、異星人とコンタクトしたみたいなんだ」
「おまえの会社の人間がか?」
「そうだ」
「なんと・・・」
大田原は考え深げに頷いた。
「しかし、残念だがセレアムではないらしい」
俊介は続けた。
「そうか・・・。詳しく聞かせてくれ、俊介」
「ああ、そう言うと思っていたよ」
「電話ではなんだな・・・」
「わかった。じいさん、どこで落ち合おうか?」
「いつものホテルのロビーで」
「ああ。すぐ行く」
「今なら、わたしも抜け出せそうだ」
「じゃ、待ってるからな」
「ああ」
ホテルのロビーで国分寺俊介と大田原太郎は会った。
「じいさん、地球に来た時のことをもう一度聞かせてくれ」
俊介は、なぜハイパートランスポンダーが今になって突然動いたのか、知りたかった。
「ああ。ハイパートランスポンダー、あれは母星のセレアムとの連絡用だった。われわれは、地球から何千万光年もはなれたセレアムから何十年も前に地球を調査に来ていた。しかし、調査団は地球周辺で事故に合い、わたし一人だけがかろうじて助かった。そして、この地球に残ったんだ」
「それで?」
俊介は目を閉じて、その状況を思い浮かべようとした。
「宇宙機の設備はほとんどすべて使い物にならないくらい破壊された。だが、ハイパートランスポンダーだけは無傷だった。しかし、わたしが母星のセレアムを呼ぼうとしても反応しなかったんだ」
「どうしてだい?」
「わからん。外見上は一切の傷はなかった」
「機能チェックはしたのか?」
「ああ。異常はなかった」
「ソフトウェアは?」
「それも異常はなかった」
「なのに動かなかった。ということはだ・・・」
俊介の目が鋭くなった。
「認証でなんらかの不具合が出たか、高次元における時空の状態に何か大きな変化があったか、そのどちらかではないかとしか考えられない」
大田原はその時の状況を思い出し、噛み締めるように言った。
「いずれにせよ、宇宙船がない以上じいさんは地球に一人残らざるを得なかった。そうだろ?」
「そうだ・・・」
大田原は頷くとさらに続けた。
「わたしには、地球は一部の権力者や富裕層が極限まで自分たちの我儘を認めさせ、戦争やテロリズムに明け暮れる、とても荒んだ世界に思えた。と同時に、自らそれを乗り越えようとする人たちがいて、その動きがだんだん強く広がってきていることも見てきた」
「それで?」
「わたしは、そのまま日本に住み、完全に日本社会に同化していた。わたしを助けてくれた日本女性と結婚し、娘も生まれた。彼女も成長し成人し、そして結婚して、おまえたち二卵性双生児の真紀と俊介も生まれた、というわけだ」
大田原は俊介を遠い目で見た。
「その間、ハイパートランスポンダーは一度も反応しなかったのか?」
「ああ。チェックプログラムは正常を示していた。だが、なにも受信しないし、こちらからも発信できなかった。もちろん、ログなど残っておらん」
「わからんな・・・。物理的に故障してないとすれば、後は設定パラメータか・・・」
「いや、それも出発時に確認していた」
大田原はそれを否定した。
「そうなると、アクセス・パスワードのようなものしかないぞ・・・」
「もし、それなら、どうして今頃作動したんだ?」
大田原は俊介を見ると、手を顎にやった。
「作動パスワードを入れた人間がいるということじゃないのか?」
「まさか・・・。それがおまえの事務所の人間だというのか?」
「ふふふ・・・」
俊介は自分の考えに確証を持ち、自然に笑みがこぼれてきた。
「そのログからは、いつから反応があったんだ・・・?」
大田原はゆっくりと質問に切り替えた。
「もう数ヶ月、いや半年以上前からだ」
俊介は思い出すように答えた。
「それ以前には気づかなかったのか?」
「ああ。何十年も反応がなかったんだぜ。まさかと思うじゃないか」
「そうだな。おまえを責めてはおらん。それどころか感謝している」
「よせやい、じいさん」
「あれは故障しているとばかり思っていた・・・」
「それについてはオレもそうさ」
「セレアムと連絡が取れるかもしれんな・・・」
大田原は結論を言った。
「ああ・・・」
「それで、俊介・・・」
大田原は逸る気持ちを押さえて、順を追って俊介に確認しようとした。
「で、俊介、おまえの事務所の若者のPCに反応したということ・・・、それは今でも進行形なのか・・・?」
「もちろん」
「信じられん・・・」
「だが、事実はそうだ。どうやら相当な高文明世界とコンタクトしたらしい」
「たまげたな・・・」
「しかしだ・・・。残念ながら、セレアムではない」
俊介は眉を上げた。
「なぜわかる?」
「なぁに、コンタクトした人間がだれだか知っているし、その内容もある程度掴んでいるからな」
「それは驚いたな・・・」
「まぁ、聞けよ、じいさん」
俊介は続けた。
「ウチに宇都宮和人という2年目の男がいる。そいつが、どこか知らんが、文明促進支援を無償でしている世界と通信したんだ」
「どこだ?」
「エルフィア」
ぴくっ。
「エルフィアだと・・・?」
大田原は一瞬身体を震わせた。
「ああ・・・」
「数ヶ月も前から・・・。とても信じられん・・・」
「いや、通信が双方向になったのはここ数日だ。それまでは、宇都宮和人は発信しかしていない。それもほんの一瞬だけな」
「どうしてわかった?」
「それが、ここにきて通信時間が驚異的に延びている・・・」
「では、エルフィアが彼の発信をキャッチして、応えてきたということなのか?」
「恐らく・・・」
「それにしても、いったい、どうしてなんだ?」
大田原にはさっぱり合点がいかなかった。
「じいさんは心当たりないのか?」
「わたしには、ありすぎて、わからんよ・・・。この宇宙には無数の高文明世界があるんだ。程度はあれ、みな、そこそこ、他世界を支援している」
「ふむ。じいさんの言うとおりだ。それにしても、文明促進支援とやらを、無償で提供するような奇特な世界が本当にあるとはねぇ・・・」
にっ。
俊介は薄笑いを浮かべた。
「理解できんか?」
「頭じゃわかるさ・・・。ただ、地球の感覚では現実的じゃない」
「はっはっは。おまえは、完璧に地球人じゃな。宇宙じゃ、地球人の方が変わり者だよ」
大田原は愉快そうに笑った。
「オレたちゃ、変人ってわけだ」
「わたしを入れてもらっては困るな」
「なに言ってる。じいさんだって生粋のセレアム系地球人だよ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わっはっは。好きなように呼んでくれ」
「それで、そのエルフィア、じいさんは知ってるのか?」
「うむ。エルフィア。それは何万年も前から文明を開化させたいにしえの世界だ。わたしも名前は知っているが、行ったことも知人もおらん。セレアムも1万年以上も前にエルフィアの支援を受けたと聞いている」
「ほんとか?本当にセレアムも、エルフィアの支援を受けたのか?」
「ああ、そうだ。もし、コンタクトしたのが本当にエルフィアだったら、今の地球のやっかいな問題を解決することを、本気で支援してくれるかもしれん」
「そりゃ、大変なことだぜ・・・」
「ありえんことではない。本当にエルフィアなら、冗談とかではないと思うぞ」
「そんな大それたことを。まったくの無償でか?」
「そうだ・・・。だから、わたしがなそうとしてなかなかできなかった地球人の文明支援を、エルフィアならやってくれるかもしれん」
「信じられん・・・。だが、じいさんの使命は、オレの使命でもある・・・」
「うむ・・・」
大田原は俊介の言葉に感慨深げに頷いた。
「俊介、その宇都宮和人という人間、今はどうしている?」
「うちの事務所で働いている」
「だれか、他に気づいた人間は?」
大田原は眉を上げた。
「オレと、姉貴と、そして、社員の二宮祐樹と石橋可憐だ」
俊介は声を低くした。
「政府は?いや、外国はどうだ?」
「わからん。待てよ・・・。こいつは大したことになったぞ」
俊介は心配そうに考え込んだ。
「ああ。おまえの想像通りだ。今すぐにでも宇都宮和人を保護しないと、エルフィアの情報はおろか彼の身の安全すら脅かされかねない」
「言えてるぜ。本人から情報を取ろう。和人は、オレがしっかりマークする」
「頼むぞ。わたしは、大至急、政府として彼を保護することに手を打とう。それから、連絡はいつでもいいからしてくれ。時間は気にしなくていい」
「内密にな」
「うむ」
大田原は自分の執務室に戻っていた。
かつん、かつん・・・。
ペンで机を小突く大田原は俊介の報告で幾分気分が高揚していた。
「エルフィア。エルフィアがこの地球にアクセスしている・・・」
ぽと・・・。
大田原のペンがその手から滑り落ちた。
ぴ、ぴ、ぴ・・・。
かちゃ。
るるるーーー。
「もしもし。すばる天文台です」
「大田原太郎です。娘夫婦と会話したいんですが、国分寺天奈か新次郎はおりますかな?」
「あ。大田原さんですか。失礼しました」
「きみ、かしこまらんでいいよ」
「しかし、内閣特別顧問にはいつもお世話になってますし・・・」
「はっは。娘たちはいるかね?」
「はい。只今、データ分析室で観測データの解析をしています。繋ぎますか?」
「すまない。よろしくお願いしたい」
「かしこまりました」
俊介と真紀師弟の母親の国分寺天奈と、父親の国分寺新次郎は、天文学者であり、日本政府の文科省特命の下、ハワイ島の海抜4000メートルのマウナケア山頂にある直径8メートルの超大型反射鏡望遠鏡『すばる望遠鏡』を使って、宇宙の果てを日夜探査していた。
かちゃ。
「わたしだ、天奈」
「お父さま。どうしたのですか?」
天奈は父親の大田原太郎の特徴を受け継いで彫が深く、一見、日本人には見えない風貌をしたいた。
「なに、日本が午後なら、ハワイは夜に入ったばかり。やっとおまえたちも仕事に入れるというわけで、ちょいとな・・・」
「まぁ。天文台は昼間はなにもしてないとお思いですの?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「はっは。これはすまなかった。データ分析でもしとるのか?」
「そうよ。で、なに、ご用は?」
天奈は父親が、無理難題を吹っかけてくるのではと予想した。
「実は、俊介のところに預けてあるハイパートランスポンダーが作動した。そして、エルフィアという系外世界と超時空通信を始めたらしい」
「え、あれがですか?」
「そうだ。やはり故障などしておらんかった・・・」
「それは良かったですわね」
「うむ。それでだ。エルフィアというのは、何万年も前から宇宙に乗り出しているいにしえの世界で、セレアムの文明支援をしたこともある超高文明世界だ。おまえもわたしから聞いたことあるだろう?」
「はい。でも、なぜそのようなところと・・・」
天奈には理解ができなかった。
「結論から言おう。ことのいきさつはともあれ、わたしはセレアムに連絡が再開できるようになるかもしれん」
「お父さま・・・!」
天奈はそこから連想できることに驚愕した。
「それで、おまえたちにお願いがあるんだが・・・」
「はい。わたしにできることであれば・・・」
「すばる望遠鏡を銀河探査に使うことはできるか?」
「あれを私的に利用するおつもりですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「いや、政府特別プロジェクトにだよ」
「政府の・・・?」
「可能かな?」
「ええ、そういうことでしたら・・・。ものすごくタイトなスケジュールですので、どの程度で割り込ませることができるかわかりませんが・・・」
「それを是非お願いしたい」
天奈は父の声の調子で、それがいかに重要なことかが容易に窺えた。
「でも系外銀河と言っても、どこをどう探査するのですか?」
「エルフィアはな、恐らく、この天の川銀河にはない」
「それは驚くに値しません。お父さまのセレアムも、天の川銀河ではないんですから・・・」
「ハイパートランスポンダーは最大半径3億光年をカバーする。つまり、この天の川銀河を中心にして、半径3億光年内のすべての銀河に通信が可能だ。エルフィアはその範囲内に存在する。要は10万光年以上の大型銀河の銀河カタログを作成する必要があるんだ。いずれ、エルフィアの座標がわかるだろう。そうしたら、彼らに依頼してセレアムの座標判明にも協力してもらえる」
ふぅ・・・。
大田原は大きく息をついた。
「わかりました。お父さまはセレアムにお戻りになりたいのですね?」
天奈は父親の気持ちを察した。
「一度くらいはな。だが、戻ったまま、そこに住み続けるつもりはない。わたしはもう地球人なんだから・・・」
「ふふ。了解しましたわ。で、いつから?」
天奈は笑った。
「すぐにでもだ。10万光年以上の銀河はもれなくその形状、座標、その他詳細な情報をまとめておいて欲しい。とくに形状は、判別する決定的な要素だから、早めに取り掛かってくれて、早すぎるということはない」
「それを個々に撮影するんですね?」
「そうだ。やってくれるかい?」
「もちろん」
「では」
「はい。おやすみなさい、お父さま」
ぴっ。
大田原は電話を終えると、ソファーに背中を預け、静かに目を閉じた。
俊介が事務所に戻ると、姉の真紀が寄ってきた。
「俊介、ちょっと。どうだったのよ・・・?」
「エルフィアのことがわかったぜ」
「わぉ!本当?」
「しっ!声が高い」
「あ、ごめん」
「ああ。和人のヤツ、間違いない。アクセス先はエルフィアだ」
「やっぱりね・・・」
こっくり・・・。
「なんだ、驚かないのか?」
俊介はがっかりしたように双子の姉を見た。
「あることを思い出したのよ。いにしえの超高文明世界。おじいさまから、聞いたことがあるわ。確かエルフィアという名前だったわ」
「そうだよ。それそれ。オレは知らなかった。さっきじいさんから聞いたばかりだ」
「あなたは、忘れただけね。随分と小さな時に聞いた話だもの」
「そんな幼い頃のことなんて、覚えてないぜ」
「そうね。あなたには覚えなくちゃいけないことが、他にもたくさんあったから・・・」
にんまり・・・。
「なんだ、それ?」
「女の子の口説き方」
--- ^_^ わっはっは! ---
「姉貴!」
「ふふふ。とにかく、エルフィアってことは確実になったと思うわ」
「和人にコンタクトしている超高文明世界の代表とやらの名前もわかった。二宮が言ってたとおりだ。ユティス」
「ユティス・・・」
真紀はその名前を噛み締めるようにゆっくりと口にした。
「柔らかくて、きれいな響きね。きっと優しい天使みたいな人物じゃないかしら・・・」
「ああ。どうやら若い娘らしい。和人の夢を利用して現れたんだ。その方がアクセスし易くなるからな」
「ええ、確かにそうだわ」
「二宮は、彼女のことを地縛霊だと思ってるようだが・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ふふふ。二宮らしいわね」
「まったくだ」
「ユティス・・・。なるほどね・・・」
こくん・・・。
真紀はひとりで頷いた。
「一人で納得するなよ」
「ふふ。和人は『ユティス』と日本語で綴ったから、5文字以下になったのよ。本当は、アルファベットでしなきゃいけなかったんだわ。ぴったり6文字になるわよ」
「どう書くんだ?」
「ジュリエット、ユニフォーム、タンゴ、インディア、タンゴ、ホテルよ」
「なんだ、そりゃ?」
「受け取るほうがスペルを誤らないように表す地球標準コードよ。綴りは、JUTITHじゃないかしら?」
さらさら・・・。
真紀はメモ紙にそれを書いた。
「不思議だわ・・・」
「なにがぁ?」
「ユティスの語源よ。『ユティスィール』というのは、古代セレアム語ね。お祈りに出てくる言葉と一緒よ・・・」
「まっさか。祈りの言葉?姉貴、そんなことまで知ってるのか?」
「あなたは、古代セレアム語の勉強をサボってたからよ」
「だって、古文なんてつまんないじゃないか。地球人のだれに使うと言うんだ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
姉の真紀と違い、俊介はセレアム語の勉強にはさっぱり身が入らなかった。
「いい。愛するっていうのがそれよ。スペルは『JUTITHIR』よ。『JUTITH』はその過去分詞。受身形だから『愛されしもの』って意味ね。さしずめ、地球語なら『愛ちゃん』ってとこかしら」
「それは日本語だろ?」
「そうとも言うわね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「しかし、なんだって古代セレアム語なんだ?」
「あーあ。ホント、あなったて、セレアム語に興味ないのね」
「それで女の子を口説けるかぁ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「古代セレアム語は、セレアムに大宇宙が開かれた時、多くの言葉をそれに合わせたのよ。いわば超銀河間共通語ともいえるわ」
「エルフィア語もそうだというのか?」
「もしそういうことなら、可能性は多少はあるでしょうね」
「まいったぜ・・・」
「とにかく、和人は『ユティス』という文字をどこかでアルファベットに変換させたのよ。和人が毎回打たなかったのに、ハイパートランスポンダーにアクセスできたのは、PC内のレジーム機能があるからじゃないかしら」
こくん・・・。
「姉貴の言う通りかもな。和人はそれを覚えていなかった」
「それが真相じゃない?」
「実にわかり易い解説をありがとう。つまり、『ユティス』ってのは、名前からして、すっごく可愛い娘ちゃんってわけだ」
「ええ」
「どんな人間なんだろう?」
俊介は興味津々だった。
「聞いてみましょうよ、和人に直接」
「ああ」
「そうなると、あたしたちのこと説明しないわけいかないわ。秘密もね・・・」
真紀は覚悟を決めるような視線を俊介に送った。
「エルフィアやユティスの存在を知ってることか?」
「そう。それに、和人がユティスとコンタクトしている事実を認めていること。それよりなにより、わたしたちのおじいさまがセレアム人で、わたしたちがその血を引くってことをだわ」
「だが、姉貴、一度口にしたら最後、後には戻れんぞ・・・」
「わかってるわ。でも・・・」
「もし本当にエルフィアだとしたら、あいつを孤立させる訳にはいかんしな・・・」
「そうよ」
俊介も覚悟を決めた。
「これで、やるべきことが山積みになったわね?」
真紀の言葉に俊介は頷いた。
「オレが思うに、そのユティスというエージェントが和人の元にやって来るのはほぼ間違いない。いきなり現れでもしてみろ、地球は大騒ぎじゃ済まないぞ。和人は、超高文明世界との唯一のコンタクティーとして、世界中の権力者たちに狙われる。日本にとっても、ユティスいきなり現れでもしたら、即、不法入国者ということになる。エルフィア人の価値を知らない役人連中は、彼女が消えようが、どこに行こうが、どうだっていい・・・」
「日本政府は放っておくというの?」
真紀は信じられないという顔をした。
「だからなんだ。その間、彼女が一度でも外国の諜報員にさらわれでもしたら、取り返すことなどまず絶対にできない。特にZ国とかに存在を知られでもするとな・・・」
「まぁ、大変・・・!」
「そうなる前に、ユティスと和人を守る体制を作っておかねばならないんだ」
「大変なことだわ。すぐに、おじいさまに連絡をしなきゃ・・・」
「ああ。すぐにする」
「それで、俊介、あなたはユティスがいつ現れると思うの?」
「わからん。だが、そう遠い未来ではないと思う・・・」
そう言って俊介は遠い目をした。
--- ^_^ わっはっは! ---