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178 未聞

■未聞■




ユティスやクリステアたちは、エルドに全てを報告した。エルドは、大方をユティスの自動モニタ連絡で、ほとんどを把握はしていたが、それを聞いて苦笑いした。


「しかし、なんともまぁ、ハチャメチャだなぁ・・・」

「あは。ホント、面白いわよ」

クリステアは陽気に答えた。


「こういうの、ユーモアがあるって言うんだそうよ、エルド」

「リーエス。委員会には、きみたちの新しい能力が開発されたと報告しておこうか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「やりすぎちゃったかしら?」

「いや、結構。こっちも楽しませてもらっているからね」


「あは。じゃ、うんと楽しんじゃうわ」


「大丈夫。なにが起ころうと、アンデフロル・デュメーラがいるから、いつでも、きみたちを収容可能だ。自由にやってもらって、大いに結構だね」

「リーエス。礼を言うわ」


「それにしても、一気にセレブのお仲間入りだな?」

「ホント。地球中で話題だそうよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わはは。これだけユティスたちが有名になれば、誰も簡単には手を出せまい」




ユティスたちはよくはやっていた。けれど、やり方としては滅茶苦茶だった。それで、エルフィア評議会のお偉方には物申す者も出た。


「まるで、お遊び。前代未聞ね!」

「まったく、滅茶苦茶じゃないか?」

「本当だわ」


「ユティスは、本当に大丈夫なのか?」

「面白そうじゃないか」


「あーあ。3人とも、任務を放ったらかして、なにをやってるんだね?」

「まぁ、あきれた・・・」

「秘密もなにもないのね、彼女たちには!」

「そうよ」

「あれじゃ、ど素人同然じゃないの!」


「けれど、ちゃんと現地の生情報を採集しているぞ」

「そうだ。その通り」


「やり方は、ともあれ、ちゃんと任務を遂行してるじゃないか?」

「どこが?」


「まあ、まあ、これはこれで、一つのショーとして見れば、いいんじゃないのかな」


「そういうことよ!」


「わたしは、ここが好きだね」

「わたしも、ここ、気に入りそうだわ」


「これが現地に合わせた最良の活動じゃないのかね?」

「リーエス。わたしは、賛成よ」


大抵のエルフィア人は面白がった。トルフォ以外は・・・。



かつかつかつ・・・。

ばーーーんっ。


「ブレスト!」

「リーエス、トルフォ?」


「ユティスたちが送ってきた、地球とやらの情報・・・。糞ったれ。思い出すだけで腹が煮えくり返りそうだ!」

トルフォは怒りで言葉につまった。


「なにがあったんですか?」

「なのがだと?あれがか?話にならん!」

「SSたちも一緒になって、人前で、歌など披露したことですか?」


「あの憎きウツノミヤ・カズトも一緒だ!」

「どうってことないでしょう。歌くらい?」


「なんだと、きさま!」

「それとも、どうにかできると?」

「ナナン、どうにもならんだろ!われわれは彼女の派遣を認めたんだ!」


ぎりぎりぎり・・・。


「なにが最良の考えだ!最悪ではないか、ブレスト!」

トルフォは歯軋りした。


「なにをそんなに腹を立ててるんですか?」

ブレストは冷静にトルフォを見つめた。


「あの、あの、ウツノミヤ・カズトのヤツが、ユティスを両腕で抱きかかえて・・・」

「ユティスも喜んだ?」


がしっ。


--- ^_^ わっはっは! ---


トルフォは両手を悔しげに打った。


「なんだと、ブレスト!ユティスは・・・、ユティスは、わたしの腕に、納まるはずだったのだぞ!」


「そう申されても。少々、我慢いただくしかないと思いますが・・・」


(本人の魅力でしょうが、結局・・・。ふっふっふ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


ブレストは含み笑いをした。


「ならん!阻止しろ。なんとしても、ユティスを地球から戻せ!」

「しかし、一旦、派遣を認めたわけですから、そうそう戻す理由があるとは思えません。ここは、わたしが舞いにお話したように時を待っていただかないと・・・」


「黙れ!一刻の猶予もならん。すぐに計画を実行しろ。できぬとは言わせん!人が要るなら言え!なにか、策を出せ!すぐにだ!」


「ふふ。わかりました。わたしに別の当てがあります・・・」

勿体をつけてブレストは答えた。


「当たり前だ。さっさと策を実行しろ!」

「リーエス」


かつかつ・・・。

ブレストはトルフォから去った。




エルフィアの文明促進推進委員会の会議では、地球の科学技術面ついても話されていた。


「まったく、この地球という世界は、どうなってるんだ?」

「化学燃焼エンジンとはいえ、自分の惑星を飛び出し、太陽系内を行き来しようというテクノロジーを持っているくせに、一方じゃ、未だに、狩猟と焼畑農業をやっている」


「これで、カテゴリー2に入ったと言えるんですか?」

「そうですとも。わたくしは、カテゴリー2判定は、やはり時期尚早だと思いますわ」


「うーーーむ。しかし、最先端テクノロジーは、カテゴリー3への扉に手をかけそうな勢いじゃないのか?」

「おっしゃる通りです。理論物理学はたった数十年で長足の進歩を遂げています」


「見てください。先端地域ばかりか、科学がそこまで進んでいないにも係わらず、大方の地域においては、先端地域の支援で原子核エネルギーを取り出すことが既に日常的になっています」


「武器に転用もしているところも多くありますね」

一人が核エネルギー利用のもう一面を強調した。


「リーエス。あなたのおっしゃる通り、技術面打破カテゴリー2どとしても、精神的にはカテゴリー1的な状態であることを無視すると、大変なことになります。それらの地域は地球の将来を握っているんですから」


「なるほど・・・」


「ユティスのいる日本という地域はどうなの?」

「ナナン。核エネルギーの取り扱いはこの星の最先端にありますが、一応、武器への転用は行なってません」


「これは驚き」

「それは、自らの意思ですか?」


「実は、日本という地域は、数十年前まではカテゴリー1の大変危険な地域でした。戦争により過去2度に亘り、熱核爆弾の犠牲を多数出しています」


「なんという・・・」


「リーエス。何十万という人間が放射線に焼かれ死んだのです。広島と長崎という都市がそれです」


「おぞましい・・・。自星の中でそのような・・・」

「だから、ぎりぎりのところでミューレスのようになってないのですよ」


「なにゆえ?」


「熱核爆弾の惨事ですよ。これを制御することがいかに必要かということを、身に沁みて感じているからです。特に広島には原子爆弾の記憶を留め、地球中の人々にその悲惨さと無意味さを実感してもらうべく、立派な記念館があります。各地域の歴代首脳もここを訪れた人は、その悲惨さを繰り返すまいと、意思を固めるそうですよ」


「それが果たしている役割は大きいな・・・」

「ええ。ここが存在する意味は大変大きいです。それに、ここでは核爆弾を使用した人間個人を責めてはいません。あくまで事実の展示を行い。訪れた人に地球人類の将来をどうするのかを感じてもらうようにしているのです」


「ユティスはそこを調査したのかね?」

「ナナン。これからです」


--- ^_^ わっはっは! ---


「では、この情報はいかにしてもたらされたのかね?」

「宇都宮和人です」


「そういうことか・・・。ユティスにも確認させるべきだな」

その理事は納得した。


「それが功を奏したのか、維持管理が大変なためか、とにかく熱核爆弾の最大保有地域同士では、これらを削減する動きがあります」


「しかし、カテゴリー1にいながら核兵器を保有している地域があることもお忘れなく」


「リーエス。しかし、地球の全面戦争を回避している重要な要素であるなら、いずれ、そういった地域にも広がるのでは?」

「ナナン。そういった一部の地域は歴史的にいつも不安定でした。今後のことは楽観できません」


「とはいえ、今のところは、地球人はそういうことに気づいて修正する努力をしているわけだ」

「リーエス」


「それが、ミューレスのようにはならないということで?」

「リーエス」


「一方、彼らは、熱核爆弾が平和維持に対する必要悪であるとも思っています」


「必要悪?」

「それゆえ、削減には部分的です。完全に捨て去る気はないようです」


「で、日本における核エネルギーの武器転用は、今後もないと予想されるのでしょうか?」

「ナナン。指導者たちのみながみな、そういう訳でもない様子です」


「では、武器転用も頭にあると?」

「強硬論者もいるようだし、ないとは言えないでしょうな・・・」


「確かに、こうしてみると、ミューレスよりは一歩先の考えをしているようだ」

「同意するわ」




「それはそうと、地球の住人は、異世界人に対して、反応がはっきり分かれているな?」

「そうです。こちらはどうお考えで?」


「リーエス。一つは、よくある拒否」

「だが、もう一つは、歓迎」


「ナナン。歓迎ではない。まだ容認だ」


「そうだ。それが一番言い当てている。なんか異星人を当たり前のように受け入れているが、宗教的に崇めることもしていない」


「尊敬はしている様子だが、ただただ、当たり前に接しているのだ」

「これがカテゴリー1だったら、われわれを神と崇め、まともにわれわれの意図を理解できないはずだ」


「同じ人間として、尊敬をしているという感じだな」

「リーエス」


「エルフィアが文明支援をコンタクトしようとする世界に対し、トップ・アプローチしても、すぐにエルフィアの支援を受け入れてくれることは稀なのだぞ」


「うむ。まったく地球というところは、最初に民衆レベルでエルフィアを注目し、あっけなく受け入れてくれてるようだ」


「こんなことは今までになかった。地球人とは実にエネルギッシュで、まったく面白い人間のようだぞ」


反対派までも興味深々でユティスたちを見守ることにした。


「意図せずとも、予想を超えて、委員会は地球に関心を強くしましたね?」

「うむ。喜ぶべきことだな」


エルドは支援派はいうに及ばず、反対派にまで点数を稼いだ。




ところが、一旦、地球の多様な言語になると、皆信じられない様子だった。


「地球語だとわれわれが思っていたウツノミア・カズトの話す言葉は、日本という一部地域でしか使われていないローカル言語だぞ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あきれ返るな、そんな重要な情報がなぜ、取れなかったんだろう?」


「地球で一番通用しているのはカタコト英語らしい」

「カタコト英語?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「英語の数あるバージョンをそう呼んでいるらしい」

「英語自体にすら、いくつも種類があるというのか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「リーエス。日本語も例外ではないらしいですね」

「栃木弁、茨城弁、横浜弁、青森弁、福島弁、新潟弁、関西弁に九州弁に・・・」

「もう、十分だ。列挙しなくていい。二の句がつげんわい・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「文字は基本26文字のアルファベットという表音文字だな」

「それはエルフィア文字にかなり近いわ」


「リーエス。日本や一部の地域で使用されている漢字は、地球レベルでは極めてマイナーな文字ということですね?」


「リーエス。アンニフィルドたちはハイパーラーニングで覚えたとはいえ、非常に苦労していた様子です」

「そうだろうな・・・。わたしならご免こうむる」


--- ^_^ わっはっは! ---


「日本語、英語以外にも、地球規模で通用している言語があるとか、ユティスの調査報告にあったが・・・?」

「リーエス。ポルトガル語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語、アラビア語、中国語、ヒンズー語、等々です」


「ははは・・・。これだけでも8つもあるぞ。それ以外に、まだいったい幾つあるというんだ?」

「さぁ、隣の村同士ですら通じないという地域もあるようです・・・」


「家族同士でも通じないとか?」

「リーエス。若者の言葉を親たちが理解できない場合もあるそうです」


--- ^_^ わっはっは! ---


「お話しにならんな・・・」

「まったく。これで、どうやって知識の伝達や共有をすると言うのでしょう?」


「それが理由かどうかわかりませんが、地球は一つの政府の下に、まったく統一してないことも事実です」


「いくら自星を脱出する実力があるといっても、それが数ある地域の一部でしかないんじゃ、とてもカテゴリー2には該当しないな」


「カテゴリー1に戻すべきじゃないのか?」

「政府が統一するのに何百年かかることやら」


「しかし、その間に、その一部の地域では、テクノロジーはとんでもなく発達する」

「だめだ。グレンデル。武器への応用をされれば・・・、危険すぎる」




一方、ユティスたちを懸命に守ろうとする和人と国分寺たちへは、惜しみない賛辞が送られた。特に野外ステージの1件は彼らを喜ばせた。


小川瀬令奈がステージでひっくり返った時は、みなが笑った。


すってーーーん。

ぴらぁ・・・。


--- ^_^ わっはっは1 ---


「あははは」

「うふふふ」


「これは、愉快だわい。わっはっは」

「まぁ、いやらしい」


「すまない。わたしも一応男性であるかに・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ウツノミア・カズトは本当によくユティスをサポートしているな?」

「リーエス。それに彼の仲間の国分寺姉弟もです」


「例の4分の1セレアム人だという双子かね?」

「リーエス」


「なんだか、わたくしもわくわくしてきましたよ」

「同感だ」

「次の展開が楽しみだな」

「リーエス」




地球では、世界中がユティスと3人の話で持ちきりだった。今やどの国も完全にユティスたちを秘密裏に囲うことはできない状況になった。



国分寺は、大田原と合意したとおり、ユティスたちに、真実を少しずつ混ぜて話すよう指示していた。周りが勝手に伝説をでっちあげていくから、民衆はなにが本当でなにがデマなのか、区別がつかなくなっていった。


テレビはそれを加速していった。これが、彼女たちにある種のミステリアスな魅力を引き出し、民衆の心をとらえた。


しかも、彼女たちは、自分たちがNGC4535の惑星エルフィアから来た、と真実を言っていたことが否定されなかった。5400万光年の彼方の銀河から来たなんてスゴイと、かえって大いにうけてしまっていた。




Z国大使館の日本通商部では、例によって、数人だけで、秘密会議が開かれていた。


「ふっふ。エルフィア人も有名になったもんだな・・・」

「石橋可憐のアップロードした動画が火をつけ、ようやくここまでこぎつけたな・・・」


「リッキー、そろそろ頃合ではないのか?」


「そうだな。文化教育長官から、3人のエルフィア人に招聘を出すよう依頼してくれ」

「了解だ」


「文化教育長官のコメントも用意しよう」


「ああ。子供たちに夢を与えるという意図を絶対に崩さないようにな」

「わかっている。国営放送で取り上げることにしてある。わが国の民衆は、諸手を挙げて、彼女たちを国賓級のVIPとして迎えるわけだ」


「それを、海外にも情報提供するんだ」

「国営放送で流せば、嫌でも世界中が目にするさ」


「時間の勝負だぞ。わかってるのか?」

「ああ。エルフィア人の確保は、その後、速やかに実行する」

「なるほど・・・」


「これによって、各国へは、わが国がエルフィア人失踪に関して、なに一つ絡んでないことを、大々的に宣伝できるわけだ」

「ふふふ・・・」


「手筈は計画通りに。あくまで、日本政府が招聘に対してコメントを出す前に、すべてを速やかに行なうことが肝心だ」


「万が一、招聘を拒否する日本首脳のコメントが数日のうちに発表されたらどうする?」


「その後に、確保を実行すれば、逆に、わが国の画策だと、知らせるようなもんだ。これだけは避けねばならない」


「了解だ。日本政府が、返答に汲々するような条件を別途用意する」

「とにかく意味不明の文を入れろ。われわれも首を傾げるくらいのな」

「ええ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「やつら、頭が悪けりゃ無視するだろうが、中途半端に頭が良ければ、勝手に悩んでくれるさ。こっちはその時間が稼げればいい」

「なるほど、了解した。われわれにも意味不明の文を入れよう」


--- ^_^ わっはっは! ---


「指示した通りにだぞ。準備にぬかりはないな?」

「わかっている」


「招聘を公にしたら、すぐに行動を起こす」

「了解した」


Z国の計画はこうして進められた。

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