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177 新星

■新星■




(ユティス、今日という今日こそ、絶対に、あなたの正体を暴いてあげる。そして恥をかかせてあげるわ)

瀬令奈はにやりとほくそえんだ。


(あなたたちが、普通の人間じゃないってことは承知してるわ。もしユティスにピンチが訪れたら、絶対にそっちの2人が助けるわよね。ここにはTVも観客もたくさんいるわ。生中継で、正体がバレるってわけよね。あーーーっはっは)


瀬令奈は、ステージの前に、ユティスの手を握って進み出た。瀬令奈は、自分の右手で握ったユティスの左手を高々とあげ、観客に存在をアピールした。


「うわーっ!」


歓声が一段と大きくなった。SSの二人は、いつでもユティスを助けられるようスクランブル・モードに入った。


「危ない!この女、今やるわよ!」

アンニフィルドはクリステアに合図した。


「きゃあ!」


どんっ。

その途端、瀬令奈はつまづくふりをして、ユティスにもたれかかった。


「ああーーーっ!」

ユティスはバランスを失い、ステージ前方に倒れていった。ステージは観客から2m近く上にあった。ユティスは、声を出してステージから下に落ちていった。


ふわっ。


「はいっ!」

クリステアはユティスを空中にホールドした。


ぶわんっ。


間髪いれずに、アンニフィルドが、今や観客から見えていない和人をステージ下に転送した。観客の目はユティスに注いでいたので、和人がステージ下に現れても、誰も気づかなかった。


すうーーーっ。

不自然なほどゆっくり、ユティスが落ちっていった。聴衆の歓声は悲鳴に変わった。


「キャー、危ない!」


どさっ。


クリステアは、和人が転送されるのを認めると、ユティスの支えを開放した。ユティスが地面に落ちる寸前に、ステージ下で、仰向けになったまま和人がしっかりとユティスを抱きとめた。


がしっ。

和人はユティスを抱えたまま、ゆっくりと背中から地面に倒れた。


どたっ。

すべては、一瞬だった。


「ナイスキャッチ!」

「タッチダウン!」

アンニフィルドとクリステアは叫んだ。


「ユティス!」

「和人さん!」

自分を抱きとめたのが和人だとわかると、ユティスの顔がぱっと明るくなった。


ぎゅうっ。

ユティスは和人に腕を回し、しかっりとしがみついた。


がしっ!

和人は倒れたまま右手でガッツポーズを取った。


「わぁ!」

観客はどよめいた。


ぱちぱち・・・。

ユティスの無事を確認すると、観客から自然に拍手が沸き起こった。 


「おーっ、ユティスを抱きとめた幸運なヤツはだれだ?」


すぐにガードマンが駆けつけ、二人を助け起こした。

「大丈夫ですか?」

「ええ・・・」


ステージ上では瀬令奈が舌打ちした。

「ちっ・・・」


(失敗だわ。あの二人がなにをしたか、確かめられなかった・・・。それにしても、運のいいことね。観客の中に落ちるなんて・・・)


その時、瀬令奈は和人を認めた。

(なに?ユティスを抱きとめた男・・・、あれは確か・・・)


瀬令奈はステージを振り返った。そこにはSSの二人がユティスに駆け寄るとこだった。


(いつもユティスの側にいたあの男は・・・?) 

瀬令奈は和人を探した。


(いない・・・。やはり、あの男ね。いつ、あそこに移動したの?なぜあのタイミングにあそこにいれたの?やっぱり、あの二人がユティスを助けたんだ。ユティスが落ちてくるところをどうして知ったのかわからないけど、この男をあらかじめ移動させていたってわけね。カメラが撮っててくれてればいいんだけど・・・)


ユティスをサポートして、和人は何事もなかったようにステージに戻った。


「お帰りなさい」

「ただいま」


ぱち。

アンニフィルドは和人にウインクをした。


瀬令奈は慇懃にユティスに謝り、気遣うふりをした。

「本当にごめんなさい!大丈夫?」


「はい」

「あなた、よく助けてくれたわね!」

いかにもわざとらしく瀬令奈は和人に礼を言った。


「どうも・・・」


ささっ。

和人は礼を言ったが、ユティスと瀬令奈の間にさっと入り、瀬令奈がユティスに手を出せないようにした。ユティスは観客にも無事であることを告げ礼をした。


「あ、あのぉ・・・」

一人の少女が花束を持ってステージに近づくと、ユティスは上がってくるように合図した。


「どうぞ、おあがりください」

「これ・・・」

「まぁ、すてき。どうも、ありがとうございます」


彼女がユティスに花束を渡すと、ユティスは少女の背丈に合わせるようにひざを折り優雅に受け取った。


ぱちぱち・・・。


観客は大いにわき、拍手を送った。ユティスは少女の手を取り両足を交差させ、二人で観客に礼をした。それにあわせたSS2人と和人も礼をした。そばでは瀬令奈が、表情一つ変えずに、ユティスを見つめていた。


(見てなさい、このままじゃ終わらせないから!)




「瀬令奈!」

「なによ、ジョージ?」

きっ!

瀬令奈は烏山を睨みつけた。


「わざとやったな?」

「偶然に決きまってるじゃない。バカ言わないで」

瀬令奈は空とぼけた。


「わかってるんだぞ・・・」

「躓いただけじゃない。大袈裟よ」


「きみは、ユティスを憎んでる・・・」

「なに言ってるのよ?あの女が悪いんじゃない?」


(ボロを出したな。自分がユティスを意識していることを暴露いて・・・)


「彼女がなにをしたと言うんだ?」

「わたしの邪魔よ。今日だってあなたが仕組んだんでしょ?」


「ふざけたこと言うな」

「しらを切ってるのは、あなたよ、ジョージ!」


「とにかく、このつけは高くつくぞ・・・」

「ふん!」


「観衆を見ろよ。だれもお前なんか見ちゃいない・・・」

「ふ、ふざけないで!」


「いったって正気だよ、オレは」




「はぁーい、ありがとうございました。エルフィアのみなさんでしたぁ!」

ホストが、ユティスたちのグループ名を勝手に告げた。


「オレたち、エルフィアって名前にしたんだっけ?」

「あら、そう?」

「いいんじゃない?」

「だって、オレ、地球人だよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あは。どうせそのうち義理のエルフィア人になるんじゃない?」

アンニフィルドはユティスにウィンクした。


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ、アンニフィルド・・・」

「そ、そうだよ。なに言ってるんだよぉ・・・」

かくして、ユティスたちは、エルフィアというグループ名になっていた。


「そろそろ引き際ね」

クリステアが目配せした。


「リーエス。瀬令奈に前座のお礼しとかなきゃ」


--- ^_^ わっはっは! ---


アンニフィルドは了解すると、瀬令奈にウインクした。


ぱち。

その途端、瀬令奈はつまづいた。


つん・・・。

「はいっ?」


がっくん。

どかどかっ。


「きゃあーーーっ!」

今度は本当だった。


どたどた・・・。

バランスをくずすと瀬令奈はもんどりうって、ステージからパンツ丸見え状態でぶざまに転げ落ちた。


「うぉーーー!」


--- ^_^ わっはっは! ---


ずっでーーーん。

観客は、このハプニングに大いにどよめいた。


「瀬令奈のパンツ見たぞ!」


ぱしゃ、ぱしゃっ。

あちこちでシャッター音がした。


1時間もたたないうちに、瀬令奈の写真がネットをにぎわすのは目に見えていた。これはアンニフィルドの計算ずくであった。そして、これまたアンニフィルドの計算どおり、一人の体格のよいがっしりした男が、台になって瀬令奈を受け止めた。


にんまり・・・。

ぎゅ。

ぷにゅ・・・。

彼はガードマンの一人で、瀬令奈をしっかりと抱きしめ、夢心地の表情をした。


「プレゼントへのお礼よ」

「あらあら、なんてお熱いこと!」


--- ^_^ わっはっは! ---


アンニフィルドもしてやったりの表情で言った。だが、瀬令奈にとって、抱きとめた男は、まったく好みのタイプではなかった。


「い、いつまで触ってるの!」


しゅん・・・。

瀬令奈は、スカートを整えながら、男を睨みつけたので、ガードマンは、たちまちシュンとなった。


「助けてもらったというのに、最初の言葉がそれ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「お礼も言わないなんて。なんて恩知らずだこと。失礼な人ね」

アンニフィルドは、瀬令奈に駄目押しした。そして、ガードマンへは目一杯の微笑みを送った。


「あら、ステキ!男らしくて頼りがいのある方!」


ぽーーーっ。

ガードマンはたちまち立ち直り、首まで真っ赤になった。


--- ^_^ わっはっは! --- 


「おーーーっと、瀬令奈ちゃん。なにか、ピンク色のものが、見えちゃったけど・・・、大丈夫かぁーーー?」


--- ^_^ わっはっは! ---


ワイヤレスマイクは、瀬令奈とアンニフィルドの会話の一部始終を会場中に伝えた。


--- ^_^ わっはっは! ---


観客は、このハプニングに大喜びだった。


「今日の主役、あなたに返してあげるわね。夕刊のタブロイド版だけど」


ちゅ。

アンニフィルドが、瀬令奈に投げキッスを送った。


「さぁ、撤収よ。アンデフロル・デュメーラ、手伝って」

「リーエス、SS・クリステア。みなさんの車まで、道をお開けします」


アンデフロル・デュメーラの声が、クリステアにすぐに答えた。

クリステアが、3人を引き連れステージを降りると、一台のワゴンに向かって走り出した。


「通してくださぁーーーい」


「エルフィア!」

「きゃあ、こっち向いてぇ!」

「はい。はい」


にこっ。

「エルフィア!」


観客は彼女たちを取り囲んだが、4人はスルスルと抜けていく。


「ご覧いただき、ありがとうございます」


にこっ。

クリステアが微笑むと、なんだか4人に触る寸前に、観客は触ってはいけないという神聖な気持ちに強く支配された。


「おお、天使だ・・・」


「みなさん、失礼しまぁす」


「こっちだ、みんな!」

「俊介!」

4人は、ワゴンで駆けつけた俊介に、荒々しく連れ出された。


「もみくちゃだな」

「リーエス」


この脱出劇も国分寺姉弟の演出だった。


「さぁ、みんな、ワゴンに乗って」

真紀が4人を先導した。


「あそこにワゴンを止めてるの」

「リーエス」



「俊介・・・」

アンニフィルドが、ふと横に目をやると、国分寺俊介の横顔がすぐそばにあった。


「ユティスと和人は奥座席に乗れ」

「リーエス、常務さん」

「こっちだよ。よいしょっと・・・」


ユティスと和人はワゴンに納まった。


「次は、きみだ、クリステア」

「リーエス」

クリステアもワゴンに乗った。


後はアンニフィルドと真紀だけだった。


「アンニフィルド?」


「あ・・・、うん・・・」

アンニフィルドは、国分寺の口ひげをたくわえてワイルドで端正な横顔に、釘付けになった。


きらっ。

俊介の鷹のような目は極めて明るい茶色でとても印象的だった。


(やっぱり、最初でエルフィで見たとおりね・・・。思い違いじゃないわ。はじめは冗談のつもりだったけ・・・)


ふらーーー。


--- ^_^ わっはっは! ---


アンニフィルドはふらっと俊介に近づいた。


ささっ。

「やっぱり、きみは助手席に来いよ!」


ぐぃっ。

「あっ!」


俊介はアンニフィルドの視線に気づくとニヤっと笑い、真紀にウィンクをして、助手席にアンニフィルドを座らせた。


すとん。


「はい、はい。わたしは後ろでいいわよ」

真紀は助手席をアンニフィルドに譲った。


「みんな、シートベルト締めろよ」

「リーエス」

「はぁい」

「リーエス」

「はい」


ぶろろろろ・・・。

俊介はワゴンをスタートさせた。



ぶろろろろ・・・。

走るワゴンの中で、俊介は余りに静かなアンニフィルドが心配になった。


「アンニフィルド?どうかしたのか・・・?」


ちらり。

「え?あ、なんでもない・・・」


横目に俊介を見つめてるのがバレて、アンニフィルドは赤面した。

かぁーーー。


「いやぁ、最高だったよ」

「な、なにが?」

「きみたちに決まってるじゃないか」


(俊介・・・)


「サインもらえるかな?」

俊介はアンニフィルドに言った。


「サイン?」

「そう。見えないところに」

「え?エッチ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぱしっ。


「そこなら、キスマークでもいいぜ」

明らかに、国分寺はエルフィアの男性とは異なるタイプだった。


「バ、バカ・・・」

かぁーーーっ。


「・・・」

アンニフィルドは、まるで恋をした少女のように黙りこくった。


「おいおい、アンニフィルド。どうしたと言うんだ?きみが静かだと気味が悪いよ」

「あ、うん・・・」


(わたし、本気で俊介のこと好きになってる。まるで小娘になったような気分・・・)

アンニフィルドは自分の気持ちをはっきりと意識した。


「よし、掴まってろ」


ぶろろろーーー。

アンニフィルドは、国分寺のシフトレバーに置かれた左手を見つめた。


ぶろろーーー。


そうっ。

スピードに合わせて、的確にギヤチェンジをする国分寺の左手に、思わず右手を重ねた。


ぴとっ。

「おっ?」

俊介はアンニフィルドに目をやった。


ふっ。

アンニフィルドは、真っ赤になって、あわてて目を伏せた。


「キッスするなら、車が止まってる時にしてくれよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


国分寺はにやりとウインクをすると、アンニフィルドだけに聞こえるように囁いた。


ちくっ。

アンニフィルドは、国分寺の左手をつねった。


「スケベ・・・」

「痛てぇな」


「ちゃんと前を見て運転しなさいよ」

「わかったよぉ。ちぇ・・・」


ちゅ。

俊介が視線を前に戻した瞬間、アンニフィルドは、俊介の頬にキスをした。


「あっ!」


俊介は、思わず目いっぱいブレーキを踏みそうになった。


きーーー・・・。

ごつん。


「痛っ!」


「こら、俊介、ちゃんと運転してよ!」

真紀が後部座席で文句を言った。


「へいへい・・・」

「アンニフィルド、ちゃんと俊介を見張っててね」

「あ、うん。リーエス・・・」


にやり。


「真紀さん、それ、逆効果だわよ」

クリステアが、真っ赤になったアンニフィルドを見つめて言った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「うふふふ。そうかも・・・」

「あははは」

クリステアとユティスは声を立てて笑った。


「どういうことだよ、ユティス?」

事情がわからない和人は一人首を捻っていた。


「なんでもありませんわ」

「そうそう、なんでもないわよ、和人」


「ちぇ・・・」


「あははは」

「ふふふふ」


ぶろろろ・・・。



「今度止まった時には、唇にだぞ・・・」

俊介は後部座席の笑いが終らないうちに、アンニフィルドに囁いた。


「いいわよ・・・」

アンニフィルドは、俊介に聞こえるだけの声で俊介を誘った。


「はーっ、事故っちまうところだったぜ!」

俊介は、アンニフィルドのために照れ隠しで、後部座席に十分聞こえるように言った。




「あっはっは」

「うふふふ」


後部座席では、クリステア、ユティス、和人、そして真紀の4人が、さっきのショーの話で盛り上がっていた。そういうわけで、前の二人の最後のやり取りを目撃した者は皆無だった。




「けっさくだったわよ。瀬令奈がひっくり返った時、パンツ丸見えでさ」

真紀が言った。


「よかったわよねぇ。瀬令奈、一応、パンツはいてて」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぱちっ。

クリステアが、和人を見てウィンクした。


「パ、パンツって・・・」


「そうそう。でなきゃ、大変なことになるところだったわ」

「えーっ、はかないってことあるのか?」

和人は真っ赤になった。


「あるわよぉ~~~」

アンニフィルドが、和人に流し目を送った。


ごっくん。


--- ^_^ わっはっは! ---


「エルフィア女性もそうなの?」


「悪い?」

クリステアもクスクス笑いながら、和人にかまをかけた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ボディコンで、パンツのラインが見えるとカッコ悪いでしょ?」

真紀が和人に意味深な眼差しを送った。


「そ、そんなものなの?」

「だから、はくにしても、たいていTバック。はかない女の子もいるわね」

アンニフィルドは当然という顔をした。


「ええっ、地球に来て、まだそんなに経ってないというのに・・・・」


「なんなのよ?」

「いったい、どっからそんな情報仕入れたんだよ・・・」


「研究熱心と言ってもらいたいわ」


--- ^_^わっはっは! ---


「クリステ、ずいぶんと逸れてないか、本題から?」


「そうそう。瀬令奈も人気を維持するのに大変なのよ」

「あはは」


「いいじゃない。人気者は、サービス精神旺盛でなくちゃね」


「あははは」

「うふふ」


クリステアが言うと4人は大笑いした。


「ごめんなさい、瀬令奈さん。でもおかしいの、ふふふ」

ユティスも笑っていた。




ワゴン車は街を抜け、高速道路を走り抜けていった。道中、国分寺が4人に話しかけた。


「いや、今日は狙い通りだ。よかったぜ、みんな」

「ありがとう」


「瀬令奈め、なにかやってくるとは思っていたが、あれは相当危険だったな。もし、きみたちSSがいなかったら、ユティスは怪我だけじゃすまなかった。瀬令奈は業務上過失傷害に問われるところだったぞ」


「それをいうなら、障害未遂でしょ。明らかに、その意思を持ってやったんだから」

真紀が言った。


「アンニフィルドか?和人をテレポったの?」

「あ・・・うん・・・」


「まさにドンピシャのタイミングだったよ」

和人も同意した。


「アルダリーム(ありがとう)、アンニフィルド」

「・・・」


「アンニフィルド?」

「あ、えっ・・・。そ、そうね。パジューレ(どういたしまして)」


アンニフィルドは、助手席から国分寺をチラチラ見ては、適当に相槌を打ってはいたが、心ここにあらずで、ほとんど耳に入らなかった。


(いったい、どうしたっていうの?わたしったら・・・)


つんつん・・・。

クリステアが上の空のアンニフィルドの肩をつついた。


「大丈夫?」

「リ、リーエス・・・」

俊介も、運転の合間に、アンニフィルドをちらちら見ていた。


アンニフィルドは、ほとんど沈黙していた。


「アンニフィルド、手・・・」

「え?」


「手をどけろよ。注目されてる・・・」

みんなの視線を感じて、俊介はそっと手をほどこうとした。


ぴと。

しかし、アンニフィルドは、右手をシフトレバーを握る俊介の左手にしっかりと重ねた。


「いや・・・」

ぎゅ。


「あ・・・」

真紀もユティスもクリステアも、すぐにそれに気づいた。三人は目を合わせると、にっこりうなずいた。


「アンニフィルド、大丈夫ですか?」

ユティスが言った。


「あはは・・・、何でもない・・・」

「うふふふ。ウソおっしゃい?」

真紀が優しく言った。


「の、わけないか・・・。はぁ・・・」

アンニフィルドは、ユティスとクリステア、そして真紀がお見通しなのを知って、あっさり白旗をあげた。


(SSとあろうものが、こうも簡単に男に心をわしづかみされちゃうなんて。自分でもびっくりだわ。あーあ、ユティスとクリステアには、しっかり弱みを握られちゃったなぁ)


「はぁ・・・」

アンニフィルドは、大きくため息をついた。


「どうしたの、アンニフィルド、妙に静かだけど?」


--- ^_^ わっはっは! ---


ようやくアンニフィルドの様子に気づいた和人が言った。


「ほっといてあげなさいよ」

クリステアが言った。


「そうよ、和人」

真紀も言った。


「な、なんだよ、みんなして!」

和人だけは、まったく理解していなかった。


「大丈夫なのかい?」


「別に・・・なんでもないわ・・・。はぁ・・・」

アンニフィルドが、再びため息まじりに言った。

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