173 要員
「はぁい。アンニフィルドでっす。第4部のはじまり、はじまり。ここからは、わたしたちSSの活躍がぐんと増えてくるわよ。Z国ったら、なにがなんでもユティスを手に入れようとやっきだし、ユティスも地球のリーダーたちに注目を受けてるようだし。さて、みんなの恋の行方も気になるし、さぁてさて、どうなるか・・・」
■要員■
ぴんぽーん。
「誰か来たわ」
「オレが出る」
「はい、なんでしょうか」
和人は玄関から外に出て門まで行った。
「ハロー、ミスタ・カズト」
ぎくっ・・・。
ダークスーツ姿に固めたサングラスの2人の大柄な男に、和人はびっくりした。
ささっ。
さっ。
二人は和人にIDカードを見せた。
「合衆国国務省外交保安局のシークレット・サービスです。わたしはジョーンズ。こちらはジョバンニ」
「ジョバンニだ。エルフィア人の警護に関する日本国政府との協定で着任した」
「よろしく」
ぱっ。
ぱっ。
二人は帽子を一瞬上げた。
「あ、あのう、どういうことで・・・?」
「エルフィア人の大使、他2人と、宇都宮さん、あなたの専属セキュリティガードです」
「はぁ・・・」
和人は状況を理解していなかった。
「和人、入れてあげたら?外で話はよくないわ」
アンニフィルドがドアを開けて、頭を覗かせて後ろから言った。
「OK。どうぞ。お話を聞きましょう」
「サンクス」
「そういや、オレが、なんで二人の会話がわかるんだろう?英語だなんて、ぜんぜん意識しないや・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
和人はからきしダメな英会話が問題なくできるのに、自分でびっくりした。
「ハイパー・ラーニングのおかげじゃない」
アンニフィルドが淡々と言った。
「なるほど」
「入ってよ」
和人の前でアンニフィルドがドアを開けっ放しにした。
「失礼する」
かつん。
かつん。
「上がっていいわよ」
「サンクス」
ジョーンズとジョバンニは、サングラスをとり玄関で靴を脱いだ。
「う・・・」
アンニフィルドのピンクの目とプラチナブロンドに、二人は目を奪われた。
「いらっしゃい」
クリステアとユティスも出てきて、アンニフィルドの後ろに立った。
「ハロー、マドモアゼル・・・」
二人の前にはエルフィア人の3人の美女が並んだ。
「そちらのレディーたちは?」
「わたしたちが、エルフィア人よ」
「あんたたちがか・・・」
ジョバンニが言った。
「お気に召さない?」
3人とも個性的な格好をしているが、どう見ても、地球人にしか見えなかった。
「い、いや・・・」
しかし、その美しさに二人は感嘆した。
「あー・・・。みなさん、お美しいですね」
にたり。
ジョーンズは急に表情をくずした。
「まったくだ。ハリウッドから来たと言ってもおかしくない」
ジョバンニは表情一つ変えず相槌を打った。
「ありがとうございます」
「お褒めに預かり、光栄だわ」
「どうも」
二人は家に上がり、和人の案内でリビングに当された。
「それに、完璧なセキュリティですね。家には近寄ることもできませんでした」
ジョーンズが言った。
「あなたたち、この家のセキュリティがわかったの?」
アンニフィルドがジョーンズとジョバンニにきいた。
「イエス、マム」
「オレが、チャイムを押して、門を開け玄関に向けて一歩進もうとしたら・・・」
「回れ右して、元の通りに戻った・・・」
クリステアが愉快そうに言った。
「ああ。そのとおりだ。ジョーンズのやつがこっちを向いて、いきなりオレの目の前にいたんだ」
「危うく、ジョバンニにファーストキッスを奪われるところだったぜ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あはは。ジョーンズ、あなたユーモアがあるわ」
ぱちっ。
アンニフィルドは、ジョーンズに片目をつむった。
「ああ。オレも一瞬びびった」
ジョバンニがにっと笑った。
「なんの魔法だ?」
「忍法、見返り美人の術よ。聞かなかったの、ボスから?」
アンニフィルドは二人にウィンクした。
「知らんな。あんたたち、忍者の免許を持っているのか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「忍者?」
(SSクリステア、SSアンニフィルド。忍者とは、マジック、武道、心理操作、そのたのあらゆる科学知識を用いて、敵の情報を掴んだ、地球の封建時代のスパイです。女性の忍者は、くのいちと呼ばれています)
「アルダリーム。アンデフロル・デュメーラ」
(パジューレ)
「アル・ドリーム・アンダー・フロム・トレーラ(アルがトレーラーから降りてきて、下で夢を見る)・・・?なんだ、そりゃ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「気にしなくていいわ」
「ここには、だれかまだいるってことらしい・・・」
ジョーンズが二階に通じる階段を見上げた。
「だれもいないわ。なんなら確かめる?」
「いや、それは、オレたちの範疇じゃない」
「で?」
「だが、そういうセキュリティ・システムがあることは・・・」
「一応、聞かされてはいたが、理解できなかった。実際に経験するまではな」
ジョーンズがにやりとして言った。
「あは。いいのよ。普通じゃ経験しないもの」
アンニフィルドが二人を見て笑った。
「さて、おれたちが来たのは承知のこととして、そこのお嬢さん2人・・・」
ジョバンニはアンニフィルドとクリステアをじっと見つめた。
「おれたちと同じセキュリティ要員らいしが、女の分際で地球人を甘く見ちゃいないか・・・?」
「なんのことかしら?」
クリステアはジョバンニに向き直ると、その目を真っ直ぐに見て静かに言った。
ちゃ。
いきなりジョバンニは銃を取り出し、クリステアの眉間に向けようとした。
じゅわっ!
「うわ。あっちっち!」
ぶらぶらっ!
ぼてっ!
その瞬間、ジョバンニは銃を払い落とした。銃の握りは、一瞬で赤熱していた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「ちくしょう!なにしやがった?」
ぶらぶらっ。
「ふーーーっ」
ジョバンニは右手を振りながら、クリステアを睨みつけた。
「そっちこそ、なんのつもり?人の家にあげてもらったというのに、随分とご挨拶じゃない?」
「う・・・」
「いきなり、数8年前の原始的の武器をレディーに向けるなんて、無粋も甚だしいわ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「くう・・・」
クリステアは顔色一つ変えず続けた。
「エルフィア式は・・・、こうよ」
つかつか・・・。
ちゅっ。
クリステアは流し目を送ると、ジョバンニの首筋に唇を這わせキスをした。
びびびっ・・・。
ぞくっ。
「うわっ!」
ぶるんっ。
ジョバンニは、全身に電撃が走るのを感じて、身を震わした。
--- ^_^ わっはっは! ---
「ふふふ・・・」
クリステアは半ば閉じた艶っぽい目で、ジョバンニを見つめた。
(ちくしょう、いい女だぜ!)
「よろしく。クリステアよ・・・」
つつーーーっ。
クリステアは右手をジョバンニの胸に這わせ、耳元で囁いた。
「あっ・・・」
ぴた!
同時に、クリステアの左手はジョバンニの急所をいつでも潰せるように、彼の股間で構えた。ジョバンニもそれがわかり、彼は動くのを止めた。
「こっちの銃も、一瞬でお熱くしてあげようか?火を吹くくらい・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わっはっは!」
ジョーンズは大笑いした。
「うっ・・・」
たらーーー。
しかし、ジョバンニは、体中から冷や汗を噴き出していた。
ぱちぱちぱち・・・。
「気に入った!クリステア、きみは、確かに、ただ者じゃない」
ジョーンズは手を叩いた。
「びびっちゃってるじゃない。手をどけてあげれば?」
アンニフィルドがクリステアに言った。
「いいわよ、坊や・・・」
クリステアはゆっくりと左手を離した。しかし、ジョバンニの目から一瞬も目をそらすことはしなかった。
さっ。
ぱしっ。
次の瞬間、クリステアは床の銃を文字通り右手に吸い上げると、ジョバンニの後ろに回り、その銃で、彼の背中を突いた。
つんっ。
「うっ・・・」
ジョバンニが微動だにできないほど、一瞬のできごとだった。
「じょ、冗談だよ・・・」
かちっ。
ジョバンニの耳元で銃の安全装置が解除された音がした。
「今度したら、本国とやらに強制送還よ。木箱のファーストクラスでね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わ、わかった。オレが悪かった・・・。ちょっと試しただけだ・・・」
「二言は、ないわね?」
「ない!」
「じゃ、仲直り・・・」
ちゅ。
クリステアは後ろからジョバンニの首に再びキスをした。
ぶるっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「くっ・・・」
ジョバンニは、再び電撃にも似たショックを感じた。
ばらばら・・・。
ジョバンニに返された銃は弾がすべて抜かれた。
「銃刀法違反よ。地球の法律を知らないの?」
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドがジョバンニに言った。
「地球の法律じゃなくて、日本だろうが!オレの国では合法だ。こいつはダミーだ。よく見てくれ。第一、こんな家の中でぶっ放せるか」
ジョバンニはクリステアに抗議した。
「知ってるわ」
「それに、政府間協議で、今回の任務では銃の携行を特別許可されている」
ささっ。
「これを見てくれ」
ジョバンニは一枚の紙を取り出した。
ひらひら。
「政府間協議って、エルフィアは無視ってこと?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「いや・・・」
ジョバンニはクリステアの目の前にそれを広げた。
ぴしっ。
「鼻紙には興味ないわよ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「銃所時の許可証だ!」
ジョバンニが噛み付くように言った。
「あ、そう・・・」
「くっくっく・・・」
ジョーンズはおかしさを堪えながら、ジョバンニをフォローした。
「ジョバンニのやつ悪気はないんだ。マニュアルに従っただけだ。許してやってくれ。それに実弾は入れてない」
「へぇ・・・。無用心ね・・・。さっき言ったのは冗談じゃないわよ」
クリステアが何事もなかったかのように言った。
「で、こちらの美しいお嬢さん、お名前は?」
ジョーンズがアンニフィルドを見た。
「アンニフィルドよ。あなたは、そっちよりユーモアがありそうね」
アンニフィルドはジョバンニに目配せした。
「ありがとう、アンニフィルド」
ジョーンズは右手を差し出した。
「なんなの、それ?」
「握手だよ。オレの手にはなにもない。きみらに敵意はないということさ」
「ふうん。で、どうするの?」
「なぁに、気持ちを込めて握り返してくれりゃ、それでいいのさ」
ジョーンズは、アンニフィルドの右手を痛くならない程度に、しっかり握り締めた。
ぎゅ。
「死んだ魚みたいなのは、ご免こうむるな」
「じゃあ、これでいいの?」
ぎゅうっ。
そして、アンニフィルドはその手をそっと握り返した。
「痛てててて!」
ジョーンズはたちまち顔をしかめた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「わかった。わかった。わかったってば!」
アンニフィルドは残念そうに微笑んだ。
「ふぅ。まったくなんて馬鹿力だ。手加減してくれよ。あんたはロボットか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あなたが、弱すぎるのよぉ」
--- ^_^ わっはっは! ---
(くっそう。握力80キロのオレでも、握り返せなかったぞ)
ぶらぶらぶらっ!
ジョーンズは手を振った。
「あは。わたしには実力テストしてくれないの?」
「不要だ。握手で十分だ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「仲良くやろうじゃないか」
ジョーンズが苦笑いした。
「いいわよ」
「で、そちらのお嬢さんが、エルフィア大使のミス・ユティスか?」
ジョバンニは射るような目でユティスを捕らえた。
「はい。わたくしです」
にこっ。
「そっちのお兄さんは、貿易商人の宇宙屋カルトか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「違う!宇都宮和人。地球人だ!商人でも教祖でもない!」
「そうか。失礼した、宇都宮和人」
「よろしく」
「自己紹介は終わりだ。われわれは、どんな状況にあっても、どんなことをしてでも、きみたちを守り抜く覚悟だ。それが任務だからな。必要あれば、遠慮なく言ってくれ。この日本では、われわれ二人を中心に常に何人かが警護についている。今、この瞬間にもだ。それから、もし、きみたちが日本を離れるようなことになっても、われわれの仲間が地球上のどんなところにおいてもきみたちを警護する。Z国の中を移動中であってもな」
「すごいな・・・」
和人はびっくりした。
「なんで、あなたたちに、そうする必要があるの?」
クリステアがきいた。
「そういう任務だからだ」
「なるほど・・・。質問はなしね?」
「イエス、マム。ノー・クエッスション」
お嬢さん二人について、あんたたちの実力がおれたち以上だってことはわかった。だが、決して油断しないで欲しい。ここは地球だ。エルフィアじゃない。騙し、盗み、殺し、買収、それに、テロリズム、ありとあらゆる災いごとが日常的に起きている」
「ここは、日本だよ。どこかの国と一緒にしないでくれよ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「こりゃ、失礼」
さっ。
ジョーンズは、和人に向けて、帽子を少し上げた。
「Z国といえば、そんなやつの最高の見本がそろった展覧会場だ。ここは、われわれと協調して、ことを進めてもらえれば、大変助かる・・・」
「いいでしょう」
クリステアが言った。
「お仕事はその辺にして、コーヒーでも、お召し上がりになります?」
「仕事は、仕事です」
--- ^_^ わっはっは! ---
「休憩も必要ですわ」
ユティスの優しい声が場を和やかにした。
にこっ。
「ああ、オレは、いただこう・・・」
ジョーンズはユティスに応えた。
「アンニフィルドもいかが?ブルーマウンテンですのよ」
「うわぉ!」
ユティスは早速みんなにコーヒーを出した。
「Z国の動きは、われわれが常にモニターをしている。しかし、局所的な動きは、どうしても、情報が遅れがちだ。最新の情報を入手したら、必ず伝えて欲しい。両国政府で共有し、直ちに対応する。これは協調任務だから」
「両国協調ねぇ・・・。エルフィアはのけもの?」
「とんでもない。あんたたちは日本として見ている。それに、エルフィアにも伝えなくてはならん政府はあるんだろう?」
「あるわよ」
「オレたちがそれを無視することはない」
「ありがとう。じゃ3者共有ということね」
「ああ」
「で、手に入れたら、その情報をだれに伝えましょうか?」
ユティスがきいた。
「おたくの政府でも、われわれでも、関係者ならだれにでも。情報のネットワークは既にしっかりできている」
「さしあたって、最新情報は、Z国の通商部が10人増強されたことだ。すべて、リッキー・Jと同様な特殊能力者とみて、さしつかえないだろう。みんな、くれぐれも油断なきよう」
「リーエス」
「リーエス?」
「どういう意味かな?」
「了解。アイアイサーってこと」
和人が言った。
「なるほど。では、直ちに、われわれも任務に戻る」
「任務に戻るって、わたしたちを守るんでょ?」
「そうだ」
「どこに戻るのよ?ここにいるのよ全員・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
クリステアがあきれたような顔をした。
「OK。お嬢さん」
ジョーンズは顎に手をやって、上を向いた。
「腹が減っている。昼飯でもくわせてくれ。ビールがあればなお結構か」
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドはジョーンズの考えが聞こえた通りに言った。
「わっわ!」
考えを読まれてジョーンズは仰天した。
「あったったっと。なんでわかった?」
「あなたが大声で叫んだからよ」
アンニフィルドは涼しい顔をした。
「オレは、一言も言ってないぞ」
「口ではね」
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドはジョーンズにウィンクした。
「それでしたら、昨日の残りですけど、カレーはいかがですか?」
ユティスがにこやかに言った。
「あー、それ、いい。一晩置いたから、ちょうどいい味になってるわよぉ」
アンニフィルドも楽しそうに言った。
「でも、ビールが・・・」
「買ってくるよ。おれ」
ユティスの気遣いに応えて、和人が買出しに行こうとした。
「い、いや、いいんだ。気を使わなくて・・・」
ジョーンズは自分の顔の前で手を振った。
「いいったら。バドでいいかい?」
「十分だ」
「おれが一緒に行く」
ジョバンニが和人の前にぬっと立ち、にこりともせず断固として言った。
「すぐそこだよ。コンビニ」
「そうか。一応、ここから出るわけだ。おまえも含めてここの全員を守るのがオレのミッションだ」
クリステアはジョバンニのプロ精神を見て取った。
「いいから、一緒に行ってらっしゃい。それも、彼の仕事なんだから」
にこっ。
クリステアはジョバンニを見ながらにっこり微笑んだ。
「そうだ・・・。ん、んっ・・・」
さっ。
ジョバンニはクリステアに見つめられ、すぐにサングラスをかけた。
「行くぞ」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
3人娘は手を振ってコーラスした。