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「はぁい。アンニフィルドです。これで、第3部の終了よ。ユティスが地球に現れて和人との恋もミッションの予備調査も進み始めたわ。二宮とイザベルの関係も目が離せないし。んんっ・・・!わたしと俊介も展開がありそうだし。石橋もどうなるのか。第4部もよろしくね」

■PW■




ばたん。

ぶるるーーーん。


俊介は車のエンジンをスタートさせた。


ぶろろろーーー。


「彼女たち寮則守ってくれるかしら?」

真紀は心配そうに言った。


「ゴミや掃除や光熱費の節約、勧誘拒絶は大丈夫だろうと思うが・・・」

俊介は他は保証するつもりはなかった。


「ちゃんとチェックに行ったほうがいいんじゃない?」

「ええ?冗談じゃない。和人にまかせろよ。あいつ、心配するほど軟弱じゃないぜ。それにエルフィア大使館だぞ?治外法権だ」

「会社の借り上げ寮です」


「寮長はしっかりしてるってば」

「でも、3対1よ」

「うらやましいじゃないか・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「バカ!ちゃんと聞きなさい!」

「はいよ」


「問題はユティスよねぇ・・・。普段はいいんだけど、二人にした途端、はたから見てもどきどきって感じでさぁ。もっともっと和人に甘えたがってる。バカップルにならなきゃいいけど・・・」

「こうなったら、もう行くとこまで行くしかないぞ、あの二人」


「はー、なんと言ったらいいのかしらねぇ・・・?」

「ご婚約おめでとうだろ?あの二人は、早く結婚させた方が絶対にいい」


「そっかぁ。そうなると・・・。石橋、ごめんね・・・」

「石橋か・・・。まぁ、とりあえず、地球のことは安泰だな」


「またそんなこと言ってる。俊介、地球のことより、二人自身のことの方がよほど大切なのよ。石橋のこともあるけど、わたし、あの二人好きよ。とてもいいカップル。幸せになって欲しいわ」


「男と女の間柄だ。所詮、当人同士でないとな・・・」

「複雑な気分ね・・・」


「ああ」

「ええ」


ぶろろろ・・・・。


二人は自分たちのマンションへの帰り道を急いだ。


「俊介・・・?」

「なんだよ、姉貴?」


「どころで、あなた、アンニフィルドをどう思う?」


俊介はあの素晴らしいプロポーションに、流れるようなプラチナブロンドと陽気に輝くピンクの瞳を思い返した。


「どう思うって・・・、ま、えらく美人だってことは、認めるよ」


「まんざらでもないんでしょ?」

「そうだな。しっかし、ユティスにしろ、クリステアにしろ、アンニフィルドにしろ、なんだって、エルフィア人てのはああ美人揃いなんだ?」


にやにやっ・・・。

「ふーん・・・。認めるのね?」

真紀は俊介を見てにやりとした。


「なんだよ、姉貴?言いたいことがあるんなら、さっさと言えよ」

「それじゃ、言うわ。あなたが、和人みたくなるのも、時間の問題かなって・・・」

「オレがバカップル・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そりゃ、どういう意味だ?」

「素直になんなさいよ。あなた、アンニフィルドに一目惚れしてるんでしょ。わたしの目は誤魔化せないわよ」


どきっ!


俊介は一瞬うろたえた。


「バカップル2号・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「な、なんだってぇ・・・?」


「だめよ。わかるんだから、隠しても」

「うるさい。小姑め!」


「ひどいこと言うわね。俊介、あなたもいい歳なんだから、いつまでもわたしと一緒に暮らしてていいの?そろそろ、まじめに所帯を持つこと考えなさい。相手がアンニフィルドなら、わたしも安心よ。女の子のお尻追い掛け回す癖も直してくれるわ。浮気なんか絶対にできないでしょうからね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なに言ってやがる。その言葉、そっくり返すぜ、姉貴に。シャデルの黒磯さんとは進んでるんじゃないのか?」

「いいえ。進めていません」


--- ^_^ わっはっは! ---


「進めろよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あなたこそ、進めなさいよ。ほんとに素直じゃないんだから。さっさと認めなさい。アンニフィルドが好きになったって」


「やなこった」


(特に姉貴の前ではな。これ以上、弱みを握られてたまるか!)


--- ^_^ わっはっは! ---


俊介は最後の言葉を頭の中でつぶやいた。


(くっそぉ。なんて感の鋭い女だ。いつから気づいてたんだ?) 


「いいわ、今は、そういうことにしておいてあげる」

「人の恋路に姉貴の許可が要るか!」


「アンニフィルドも、あなたのこと、まんざらじゃないと思うんだけどなぁ・・・」


(ホ、ホントか?さっきの会話、全部本音だったというのか?)


--- ^_^ わっはっは! ---


真紀は助手席から横目で俊介を見た。


「ん、ん、んー」

俊介は咳払いして前方を見つめたままだった。    


「にやけてるわよ、俊介・・・」

「うるさい!」




その1日前のことだった。アンニフィルドは家のセキュリティに不満だった。


「ねえ、クリステア。どう思う、この家?」

「後ろから前から、どうぞお入りくださいって感じね」

「変な言い方しないでよ。いやらしいわね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「だって、無防備なんだもの」

クリステアは事実を指摘した。


「でしょ。エルフィアならいざしらず、カテゴリー2になりたての地球じゃ、不安だわ。特にZ国。2度拉致に失敗してるけど、これで終わりにするわけがないわ」


「アンニフィルド、あなた、時空パスワードかけちゃったら?」

「リーエス。わたしも、そう思うの。アンデフロル・デュメーラに手伝ってもらえば、簡単にできるじゃない」

「リーエス。膳は急げだわ」


「アンデフロル・デュメーラ。聞いた?」

「リーエス。時空パスワードとは、とても良い考えです」


「みんなを招集するわね」

「お願い、クリステア」

それで、ユティス、そして和人を外に連れ出した。


「あのね。この家、ちょっとばかしセキュリティに不安だから、クリステアと相談してもう少しがっちり守ろうと思うの」


「リーエス。アンデフロル・デュメーラに頼んで、時空パスワードを設定するのですね?」

「リーエス」


「なんだよ、それ?」

和人が質問した。


「時空パスワードを設定すると、パスワードを言わないと絶対に中に入れなくなるの」


「だれも?」

「リーエス」


「入ろうとしてもね、自動的に反転して、入ったところから出てきちゃうの」

「へぇ、それはすごいじゃないか。家だけ別時空にあるって感じなんだね?」

「そう解釈して結構よ」


「難攻不落の要塞並みになるわけだ」

「リーエス。説明は、もういい?」

「リーエス」


「ユティスは、あなたはそっちの角に位置して」

「リーエス」


「和人は、そっちよ」

「リーエス。これでいい?」

「いいわよ」


「クリステアは、わたしの反対側」

「リーエス」


「わたしは、ここね」

「よぉし、これで、準備万端だわ」


4人で家の四方を囲み、時空バリアを張る準備が整った。


「アンデフロル・デュメーラ。準備OKよ」

「リーエス。SS、アンニフィルド。いつでもパスワードをおっしゃってください」


「じゃあ、お家にパスワードを設定するから、各人唱えてね」

「まず、わたしから、いくわ」


「クリステア、パスワード」

「XXXXXXXXXXX」

「設定完了」


「ユティス、パスワード」

「CCCCCCCCCCC」

「設定完了」


「アンニフィルド、パスワード」

「ZZZZZZZZZZZZ」

「設定完了」


「和人、パスワード」

「えっ、なに?そのパスワードって?」

「設定完了」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ちょっと待ってくれよ。今のがパスワード?」

「そうよ」

「ええーーー?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「やり直してくれないかな。いくらなんでも、それはかんべんしてよ」

和人はアンニフィルドに訂正を要求した。


「しょうがないわね、あなただけもう一度するわ。今度はちゃんとしてよね」


にっこり。

「和人さん、大丈夫ですか?」

和人はユティスににっこりと微笑みかけられた。


「ああ・・・」

「和人、パスワード」

「ユティス、大好き、愛してる」


和人は小声で思わずそれを口にした。


「設定完了」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ほっ・・・」


「和人・・・?」

「しっ、聞こえちゃうじゃないか、ユティスに」


--- ^_^ わっはっは! ---


「バレバレよ。ほら、ユティスの笑顔を、ご覧なさい」


にこにこにこにこ。

ユティスは満面笑顔で和人を見つめていた。


「あーあ。やっぱり、最高に照れちゃうのを選んじゃったわね、和人」

アンニフィルドが両手を広げた。


「いい?毎回言うのよ、それ。ユティスと一緒に帰る時も、あなたの家族とかお友達とか来た時も、ずっと、毎回、この世の滅びるまで」

クリステアが付け加えた。


「えっ、そうなの?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「当たり前じゃない」

アンニフィルドが指を真っ直ぐ立てた。


「もう1回?」

「だめ、却下。続けて2回のパスワード変更はできないの。最低半年後ね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんなぁ・・・。アンデフロル・デュメーラ、助けてよ」

「本件、処理済みにて、却下いたします」


「うぁーーー」


「とっさの時って、人間、深層心理で思ってることを口にするのよね。和人、いいじゃないの。それくらい毎日、毎回、ユティスに思いを伝えないと、愛想つかされちゃうわよ。女ってのは、大好きな人から、毎日、愛の言葉を言ってもらえることが、一番幸せなんだから」


「かんべんだよぉ・・・。アンニフィルドってばぁ・・・」

「うふふ。和人さん、わたくしのも似たようなものですわ」


どきっ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「本当?」

「はい」


「えへへ」

びろぉーーーん。


「和人、鼻の下のびてる」


--- ^_^ わっはっは! ---


「どんなの?」

「秘密です」


--- ^_^ わっはっは! ---




これで、4人の他は、通常空間上存在しないことになった。目には見えても、そこを通ろうとしても、くるりと身体が反転することになる。4人以外には、その時空が存在しないのだった。目には見えども触れることはできない。4LDKのまるまる一軒が後ろに消えてしまうのだ。4人以外の人間は。ただ塀と郵便受けだけに触れることができた。


「いい?たとえ和人でも、パスワードを唱えないとその他の人と同じだからね」

アンニフィルドは念を押した。


「やってみてよ、和人」

「リーエス」


すっ。

和人は試しにパスワードを唱えないで門から入ろうとした。


くるり。

一歩踏み出した途端に、身体が反転し、元の位置に戻ってしまった。


「あれっ?」

「というわけよ。絶対に家には侵入できないようになってるの」

アンニフィルドはデモンストレーションを終えた。


「家のどこからしても同じよ」

「空からも?」


「リーエス」


言ってる先に、カラスが屋根のパラボラアンテナに止まろうとした。


くるん。

「くわぁ!くわぁ!・・・」

つるつるつる・・・。


カラスは反転し、仰向けになり、家を包む弧を描くようにして、地面に滑り落ちるようにして落下した。


つるつる・・・。

どさっ。


「くわぁ!」

カラスはすぐに起き上がると、飛び去っていった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「てな具合よ」

アンニフィルドは得意満面に言った。


「あははは」

「うふふふ」


「アンデフロル・デュメーラ、設定ありがとうございます」

「どういたしまして。エージェント・ユティス」

ユティスが礼を言うと、すぐさま答えが返ってきた。


「わたくしは、先に参ります。CCCCCCCCCCC」

ユティスは家に入っていった。


「ほら、和人は、どうしたの?」

「早く、パスワード。確かめないの?」

アンニフィルドとクリステアは和人を急かせた。


「あーーー」

「和人ってば、早くパスワードを唱えなさいよ!」

アンニフィルドが鋭く言った。


「う、うん・・・」

「もう、男らしくないわねぇ・・・」

クリステアはあきれ顔だった。


「わかったよぉ!ユティス大好き愛してる!」

今度は門の前でパスワードを囁いた。


--- ^_^ わっはっは! ---


すっ。

「あ、入れた・・・」


入ると普通に玄関にたどり着いた。


ちゃ。

和人はドアにキーを入れ開けた。


かちゃ。

玄関ではユティスがにこにこ顔で出迎えていた。


「もう一度、パスワードをおっしゃってくださいますか?」

ユティスは両手を広げて通せんぼをした。


「えーっ、ここにもあるの?」

「リーエス」


「ここで?冗談だろう?」

「だーめ。さぁ、パスワード言ってくださいな、和人さん」


「ユティス・・・てる」

「聞こえないわよ、和人」

クリステアが楽しそうにウィンクした。


「ちゃんと言わないと、通してもらえないわよ」

アンニフィルドも参加した。


「そ、そんなぁ。かんべんしてよ」

「つまんな~~~い」

「つまんなーーーい」

「つまんなーい、ですわ」


「わかりました!」


和人はユティスを想いを込めて見つめた。


(ユティス大好き愛してる!)


和人は頭の中で叫んだ。ハイパーラインでユティスの頭の中でそれば爆発した。


「ああ、和人さん!」


ぎゅっ。

ユティスは広げていた両手を前に差し出し、和人を抱きしめた。


「な、なあに、ユティスってば」

「パスワード、言ったわけね?」


クリステアが二人を見つめた。


「あーーーっ、ハイパーラインか・・・。聞き逃しちゃった」


アンニフィルドが残念そうに笑った。


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