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168 輸血

■輸血■




救急車はが去っていくのを見届けた和人に、俊介が現実問題をぶつけた。


「行っちゃったか・・・。」

「で、ここの店番、だれがすんだ?」

俊介はそこにいる人間を見回した。


「イザベルさん以外に、お店に一人もいないなんて、変ですよね」

ユティスが辺りを確認した。


「出払っているんじゃないか。和人、ユティス」

「はい」

「え、オレですか?」


「オレは会社を空けるわけにいかないし、石橋はひっくり返ってるし、残りといえば、和人とユティスしかいないじゃないか」


「こちらの二宮さんを刺した犯人さんは、どうするのですか?」

「犯人にさん付けは、いらんだろ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「警察に引き渡す・・・。一応、強盗傷害凶悪事件だからなぁ、事件報奨金出るかなぁ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「感謝状じゃないですか、せいぜい出て・・・?」

「それなら、おまえにやる」

「へ?」


--- ^_^ わっはっは! ---



ユティスが、血だらけの床を見たて、掃除道具の倉庫の方を見た。


「ユティス、止めた方がいい。警察の現場検証前になにかするのは、捜査の障害になる」

「はい。わかりました」

ユティスは素直に従った。


「着任早々、とんでもない事件に巻き込まれちゃったね、ユティス・・・」

「リーエス。でも、二宮さん、容態が心配ですわ・・・」

「地球はカテゴリー1だね、やっぱ・・・」

「・・・」


ぷるぷる・・・。

ユティスは悲しげに首を振った。



うーーー、うーーー。


その時サイレンの音が響いてきた。


うーーー。

き、きーーっ。

ばたむ。

ばたむ。


だっだっだ・・・。


「やっときたぜ、ポリさんたち」

警官が神妙な顔で店に入ってきた。


「110番通報はここですね?宇都宮さんは?」

「オレです」


「現場検証します。ここにいる方は、終わるまで離れないでください。それから、なにも触らないように。目撃者はいますか?」


「いえ、目撃者は女性店員です。われわれは、悲鳴を聞きつけて飛び込んだんですが、既に犯人の一人は逃げていて、もう一人はのびています」

「わかりました。で、その目撃者の女性はどこに?」


「ケガ人と同じ血液型ということで、緊急手術で輸血のため病院へ同行しました」

「病院名は?」

「そこまでは・・・」

「とりあえず、大山中央病院に行かれるとか、おっしゃってましたわ」

「はぁ。それはどうも、ありがとうございます・・・」


警官は、ユティスに見とれてしまった。


(すっごく可愛い娘ちゃんじゃんか・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


もう独りの警官は、二宮の横蹴りを喰らって5メートル吹っ飛んで、商品棚の下でのびていた。


「課長、こっちの容疑者は深手を負っているようです」

「口はきけるか?」


「ううっ。痛ぇよぉ。助けてくれぇ。痛っ、息ができねぇ。アバラが。ウッ」


「また、気を失ったな」

「肋骨を2、3本折っていますよ・・・」


それを確認すると、その警官は無線機を持ってあたりの状況を調べながら、本署に報告し始めた。



ぽわーっ。


その時ユティスの右手にピンクがかった白い光がうっすらと集まり始めた。


「ユティス。だめだ。彼らは警察だよ。きみの力を見せてはいけない。彼らに任せよう」

和人はことが面倒になることを恐れた。


「でも・・・」

ユティスはそう言うと、警官と容疑者の間に入った。


「和人さん、あのお二人から、わたくしとこの方が見えないような位置に移動してくださいますか?」


和人はユティスがほっとけないことを知って、内心喜んだ。


「わかった・・・。やっぱり、ほっとけないよね。ユティスらしいや・・・。あは」

和人は犯人と警官の間に入り、ユティスの応急治療が見えないようにした。


「小声でしますわ」

「リーエス」


「すべてを愛でる善なるものよ。我願う。我が掌より出でたる精神よ、汝の胸の傷ついたる骨を元に戻し、癒し給え」


ぽわ~~ん。

ユティスは男の胸に右手をかざした。




警官は、パトカーが停まってなにごとかと騒ぎ始めた野次馬の方に気を取られていた。


「こちら4号車。只今現場に到着。コンビニ強盗事件です。容疑者は2人、1人は男性客ともみ合い、男性客はナイフで刺さされ重症。容疑者も男性客より蹴られてアバラを骨折、重症。なお、容疑者は失神のため、事情聴取は現状不可。もう1人の方は逃亡中。目撃者は襲われた女性店員1人。現在、大山中央病院に搬送中の被害者の緊急輸血のため同行。現場には騒ぎを聞きつけた近所の人間4名(男性2人、女性2人)のみ。こちらは犯行当時の様子は未確認」


「4号車了解」



どたどたどたぁ・・・。

一人の男が走って店に入ってきた。


「はぁ、はぁ・・・」

男は状況を把握するなり、警官に言った。


「わたしの店に強盗が入ったのですか?」

「あなたは?」

「この店の店長です。ちょっと、銀行まで行っている間に、大変なことになってしてしまって、申し訳ありません」

ぺこり・・・。


「あなたが悪いわけではないでしょう」

「喜連川くんは、大丈夫なんでしょうか・・・?」


「目撃者の女性店員のことですか?」

「そうです。喜連川イザベルという専門学校生です」

「ハーフっぽい名前ですね?」

「ええ、母方がフランス人でして・・・」

「なるほど・・・。可愛いですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「え?」


「いや、なんでもありません・・・。彼女は、被害者の輸血で同行を依頼されて、救急車で大山中央病院へ行きました」

「そうですか・・・」


「店長さん、しばらく現場を検証で、あなたも含めて事情聴取したいのですが、その間、お店は閉めていただけますでしょうか?」

「はい」


既に店の周りは野次馬でいっぱいになっていた。


「はい、どいてください」

警官たちはコンビニの前にロープを張って、野次馬が入れないようにした。


「それと、防犯用ビデオがありましたら、ご提供くださいますか。逃げた容疑者の特定をしなければなりません。それも見させてください」

「どうぞ、ご覧ください」


現場検証していた警官が首を傾げた。


「ここで、女性店員が容疑者の1人に脅された。それを助けようと男性客が駆けつけたところへ後ろから、もう1人の容疑者が男子客を刺した。最初の血が付いているのがレジ手前1メートル、被害者が倒れたところは、それから3メートル。刺した容疑者がこの棚の下でノビていて、棚の飲み物も散らかって・・・」


「てことは・・・。おいおい、ウソだろっ?ありえん。二宮のヤツ、腹にナイフ刺したまんまで、あいつを5~6メートルも蹴り飛ばしたってことかぁ?」

それを聞いた俊介は仰天した。


「そういうことになります」

「信じられん。スーパーマンか・・・。二宮、ヤツは人間じゃない」


「先輩、イザベルさんを、必死で守ろうとしたんですよ」

和人が言った。


「はい。ご自分のことは、考えることもしなかったと思いますわ」

ユティスもフォローした。


「先輩・・・」

「和人さん?」


「もし、これがきみに起こったなら・・・、オレには、できるかな?」

「わたくしのことで?」

「リーエス・・・」


「いいんですよ、和人さん。ご無理を、していただかなくて」


「それでは、男の誇りってもんが・・・。トルフォにも言った手前があるから・・・。『自分の命を懸けても愛してるっていえるんですよね?』」

和人はそれを思い出していた。


「いいえ、今のままで、和人さんは十分ステキです・・・」

「ユティス・・・」

「和人さん・・・」


「おい、そこ。二人の世界作るなよ。強盗傷害事件の現場だぞぉ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


俊介は天井を仰いだ。




「オフィサー!」

ずるずる・・・。


クリステアとアンニフィルドが、もう一人の強盗を引きずって店に入ってきた。


「探してるんでしょ、この人?掴まえちゃったわ」


--- ^_^ わっはっは! ---


和人と国分寺は見合った。


「あーーー・・・」

「きみたち、素手で、刃渡り20センチのナイフを、もろともせずにか・・・」

国分寺は目を丸くしてアンニフィルドを見つめた。


「えへ。ちょろいもんよ。アンデフロル・デュメーラがアイツを補足してたから」

「ふふ、アンニフィルドったら。みなさん、びっくりしてらっしゃるわ」


「そりゃ、たまげるわな」

「あの・・・」


どっきん・・・。

警官は二人のSSの美しさに目を丸くした。


(いいスタイルしてるなぁ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「二人がかりとはいえ、女手で凶悪強盗犯をのしちまうなんて・・・」

俊介はアンニフィルドを見て身をすくめた。

「女がか弱いなんて、だれが言ったんだ?」


「絶対に怒らせないようにしなきゃ・・・」

和人が添えた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あははは・・・」

和人と俊介は、互いに見合って笑いを引きつらせた。


「市民のみなさん・・・、ご、ご協力ありがとうございます・・・」

警官たちも口をあんぐり開けて、SS二人と強盗犯を代わる代わる見た。


「事務所に戻るわよ」

「じゃあね」

SS二人は店を出ようとした。


がたっ。


「お嬢さんたち、ち、ちょっと待ってください!」

警官は二人を呼び止めた。


「事情聴取させてくださいよ」

「あー、面倒なのやーよ」


「そんなこと言っても、容疑者を捕まえたんですから・・・」

「説明ならするわ。どう?」


アンニフィルドは警官の頭脳波動数を把握すると、一部始終をイメージ転送した。


ぱっぱっぱ・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「・・・というわけよ。全部伝えたわ。後の報告書とやらは、お好きに」

「あわわわ・・・」

アンニフィルドの画像データを直接頭脳に送られた警官は、腰を抜かした。


「どうした?」


ぱくぱくぱく・・・。

イメージ転送された警官は事情がわかったもの、あまりのことに口をパクパクさせて、声を出すことができなかった。


「アンニフィルド、やってくれたよ・・・」

和人はユティスを向いて言った。


「相手は警官だよ。どうしよう・・・?」

「どうしようもないですわ」


にこ・・・。

ユティスは苦笑いで答えた。


「ご理解いただいたんですもの。よしとしませんか?」

「そっかぁ。そうだね。あはは・・・」


和人の笑いはなおも引きつっていた。




救急車は二宮とイザベルを乗せて、大山中央病院の救急非常口に着いた。


がたん。

がらがら・・・。


台車に乗ったまま、二宮はただちに緊急手術室に向かった。


「あなたが、ケガ人の輸血を?」

「はい、B型のRhマイナスです」


「よかった。ありがとうございます。この型は、ストックが非常に少ないんです。さっそく、オペ室にご同行いただけますか?えーっと、あなたは・・・」


病院の男性医師は、マスクの下からも、イザベルの美しさに驚いている様子がわかった。


「喜連川です。日本人です」

「わかりました。では・・・、こちらへ」

「はい」


すたすたすた・・・。




手術室では、二宮のオペがすぐに始まった。


「新たな出血は、ありません」

「おかしい・・・。血が完全に止まっている」


「先生?」

「傷口を診る。支持を」

「はい」


「ゆっくり、動脈に気をつけて・・・」

しかし、外科医は首を傾げた。


「どういうことだ・・・?」

「どうしました、先生?」


「その・・・。既にナイフが刺さっていた箇所は、完全に止血されているだけじゃない。既に傷口が塞がりつつある・・・。異常な程の回復力だ。さっぱり、わけがわからん・・・」

外科医は明らかに驚いていた。


「大丈夫ですか?」

「ああ。患者は大丈夫だ。それより、ボクの方が・・・、理解できん・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


傷口の殺菌消毒を」

「はい」


さっさ。

「縫合」


「はい・・・」

外科医は二宮の傷口を縫合した。


「ガーゼ」

「はい」


「包帯」

「はい」


「終わりだ・・・・」

外科医は汗を拭いてもらうと、看護婦たちに言った。


「しかし、患者が、カラテかなんかで鍛えていなきゃ、危なかった」

「筋肉が守ってくれましたね・・・」


「うむ。筋肉の筋に沿ってナイフが入ったんだ。ほんの数ミリだった。少しでもそれていたら、こんなレベルじゃ済まなかった・・・」


「先生・・・?」

「大丈夫だ。こんな事例は見たことないし、聞いたこともない・・・」

再び、外科医は首を傾げた。


「抗生剤点滴を。そして患者を病室へ。麻酔が切れたら、目を覚ますかもしれん。痛がるようだったら、すぐコールだ」

「わかりました」




二宮の手術台の隣で、輸血用の血液を供給していたイザベルも、ゆっくりと身を起こした。


「喜連川さん、でしたね?」

「ええ」


「ご協力感謝します。おかげで、なんとかなりました」

「先生、二宮さん、助かったんですか?」


「ええ、助かりましたよ。ご安心ください」


「ううっ・・。よかった・・・」

イザベルは、今になってようやく事態が飲み込めてきた。


「あなたの血液がなかったら、こんなにすぐには、オペもできなかったでしょう。ありがとうございます、喜連川さん」

「いえ、わたしは、ただ・・・」


「あなたは大丈夫ですか。400cc、採血しています。眩暈とかありませんか?」

「わたしは、大丈夫です」


「そうですか。患者は病室に移しました。外科棟の305号室です。行かれますか?」

「はい」


「まだ、しばらくは意識が戻らないでしょうが、お側にいるくらいなら、OKでしょう」

「ありがとうございます」


「患者は、あなたのお知り合いで?」

「ええ、よく知っています」


「よかった。それなら患者も安心するでしょう」

「は、はい・・・」


「よくあるんですよ。周りには、本人は意識がないように見えても、大切な人がそばにいるってことを、患者が察することが・・・。その方が患者の手を握ったり、マッサージしたりして、心から呼びかけているのがわかるらしんです」

「・・・」


「それで意識が戻ったという例もたくさん報告されています。なぜだかは、今の医学では説明できませんが・・・」

「二宮さんの意識戻らないんですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そういう意味じゃないですよ。二宮さんなら、大丈夫、麻酔が切れたらすぐに気づかれますよ」

「そうですか・・・」


ぽた・・・。

イザベルの目から、涙が零れ落ちた。


「・・・」


「大切な人なんですね?」

「ええ・・・。たぶん」


--- ^_^ わっはっは! ---


「では。容態に変化があったらすぐにコールしてください」

「はい・・・」


かちゃ。

外科医は手術室を出て行った。




かちゃ。


「さ、喜連川さん、305号室です。どうぞ、こちらです」


「看護婦さん、二宮さんは?」

「今は落ち着いています。ご家族への連絡はまだですか?」


「わたし、二宮さんのご家族は知らないんです」

「そうでしたか・・・」


「でも、会社の人たちがいたんで、たぶん・・・」

「わかりました。わたしは、しばらくナースセンターに戻ります。何かありましたら、すぐコールしてくださいね。コールボタンはわかりますか?」

「はい」



二宮はベッドの上で点滴の最中だった。


「うううっ。二宮さん、わたしのせいで、ごめんなさい。わたし、わたし、恐ろしかった。怖くて、怖くて、何もできなかった。ナイフがキラリと光って血の気が引いて、声をあげることさえできなかった。足がガクガク震えて、身の毛が逆立ち、髪の毛も総立ちになった。もう一人が、あなたに襲いかかろうとしているのを見ても、声すらも出せなかった。ごめんなさい。二宮さん。うううっ。なのに、二宮さん、あなたはお腹にナイフを突き立てられて大けがをしていたのに、わたしを守ってくれた。あいつ、あなたの横蹴りで5m以上も吹っ飛んだの。あばらを3本も折っちゃった。ははは・・・」


イザベルは二宮を見つめた。いつものバカばかりやってる二宮とはまったく違うように見えた。


「お腹の傷からドクドク流れる血を手にすくって、あなた舐めたでしょ。あの目は一生忘れないわ。死ぬことを考えてもいなかった。わたしには、あんな状況で、あんな冷静な目はできないわ。アイツは、そんなあなたの目を見て、心底震え上がっていた。わたしにはわかった。その一瞬のできごとが・・・」


イザベルは右手でそっと二宮の左手を握った。心なしか、少し冷たかった。


「だけど、バカよね。自分の命も顧みず。それにひきかえ、わたしは何なの。初段。黒帯。何にもできなかったじゃないの。声一つ出せなくて。何が黒帯よ。型ができて、組み手ができて、試合で勝つだけが黒帯?わたしなんか黒帯締める資格なんてない。二宮さん。昇段審査、また、わたしのせいで、受けれなくなっちゃったね。また、わたしがあなたの昇段を阻んじゃったね。命の恩人なのに仇になっちゃった。どんなに謝ったって謝りきれないよね。どうすればいいの。あなたに何て話せばいいの・・・」


じわーーーーっ。

ぽたり、ぽた、ぽた・・・。


「二宮さん・・・。わたしにできること・・・、あなたの手を取ってあげる、ことくらいしかない」


ぎゅっ。


「早くよくなって、二宮さん・・・」


イザベルは、二宮の右手を両手で優しく握った。そして頭を二宮の体にあずけるようにして、イスに座った。




警察の事情聴取が終わり、セレアムの人間たちは、ようやく外科病棟の305号室に着いた。二宮の手術はとっくに終わっていた。


「ユティス、静かに。先輩しかいないから、ノックしなくていいよ。そっと入ろう・・・」

「リーエス・・・」


かちゃっ。

そろり、そろり・・・。


「二宮さん・・・」

「あ、イザベルさん・・・」

ユティスは、二宮に寄り添うイザベルを見つけた。


「和人さん、そっとしておいてあげましょう・・・」

「うん、そうだね」


「そーっとぉ・・・」

「リーエス・・・」


かちっ。


二人はますでコソ泥のようにして、305号室のドアを閉めた。


「どうした。ユティス?」

「あ、常務さん、イザベルさんが二宮さんのお側に・・・」


「なるほど・・・。見舞いは、しばらく後にするか」

「はい」


珍しく、俊介が二宮への冗談を言わなかった。




そこにナースが一人やってきた。


「二宮さんの会社の方ですか?」

「えー、はい」


「二宮さんの看護担当のナースの那須です」

「ほう。代々、ナースをおやりなってるとか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はいっ?」


「いえ。どうも国分寺です。今回は、二宮がお世話になりまして・・・」

「手術は済みました。今は眠っていますので、おそばに行くだけなら」

「ええ」


「ご家族への連絡は?」

「社から二宮の家族へしました」


「先輩の実家は、九州なんです」

和人が那須に言った。


「それでは、お越しになるのは、早くても、今晩遅くなりますね?」

「そうですね」


「あのぉ、変なことお聞きするんですが。二宮さん、ここに来る前に、どなたかに応急処置をされたようなんですが・・・」


「救急車の救命員じゃないの?」

俊介は那須に答えた。


「違います。その方たちが、駆けつけた時には、もう、処置が済んでいたとかで・・・」

「ええ・・・?」


「ですから、手術では、消毒と傷口の縫合くらいで・・・」

「だから、時間もそんなにかからなかったんだ・・・」

「はい・・・」


「じゃ、いったい、だれが?」

俊介は理解できなかった。


「さぁ・・・。それが、あまりにも手際よくされていたので、先生が驚いてらしたのです。本格的に、看護を学ばれた方でもいらっしゃるのですか、こちらの会社に?」


「いえ、そのような者は、おりませんが・・・」


「ユティス、ありがとう、きみのおかげだ」

「よかったですね」


にこ。

和人の耳打ちにユティスは微笑んだ。




「二宮は、幸せモンだな」

「はい」


「病室には、とても入っていける雰囲気じゃなかったですね」

「ああ、イザベルに血を分けてもらって、文字通り、一身一体か。本人は知らされとらんが・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「願いが叶ったわけですよ」

「まったくだ」


にっ。

「重症の二宮には悪いことしたが、結果イザベルはうちに来ることになりそうだな・・・」

俊介はにやりとした。


「はい、そんな気がします」

「あいつらしい決め方だな?」

「はい」


「ユティスが言ったとおり、運命ってあるのかもしれないね」

にこ。

和人はユティスを見て微笑んだ。


「お二人ともお忘れですか。イザベルさんはわたくしたちの会社に入る決断の前に、二宮さんと心が結ばれるのです。こちらこそ、もっと、お喜びすべきことではありませんでしょうか」


にっこり。

ユティスは和人と俊介に微笑んだ。


「確かにな」

「やっと先輩にも春が・・・」


「早く元気になってくれればな。ご両親も夜には来るだろうし、われらはこの辺で退散するか」

「はい」

「リーエス」


3人は、大山中央病院を後にした。

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