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160 美女

■美女■




Z国大使館では、緊急会議がリッキーにより招集されていた。


「みんな、もうわかってると思うが、エルフィア人は既に3人までになっている。1人目は例の全権大使、ユティスだ。しかし、後の二人は役目が違うようだ」

「リッキー、おまえはそれを確認したのか?」

外商部長のマイクがリッキーにきいた。


「ああ。ユティス確保チームが失敗した一連の状況をカメラに撮った。オレの話の前に、まず、写真を見てくれ」

リッキーは静かに話すと、目の前のミネラルウォーターを口にした。


ごっくん。

かた・・・。

ペットボトルを置くと、リッキーは今日起こった一連の全体像について、PCに取り込んだ写真をプロジェクターでスライド映写しながら、話し始めた。


ぴっ。


「場所はカメ横丁。大通りに程近い、人がごった返すところだ。幸い、余りに人が多いので、隣になにが起こってもだれも気にしないし、よほど側でも気づくこともない。ユティス確保には適したところと言えよう」


ぴっ。

写真は和人とユティスが魚屋にいるところから始まった。


「二つの向かい合う魚屋で、宇都宮和人とユティスが同時に声をかけられ、二人が互いに反対を向いた瞬間だ」


ぴっ。

次の写真は、人並みにもまれ、ユティスが和人から3メートル以上離されたところだった。

「ここで、ユティスは、ほぼ完全に宇都宮和人から離された状態になった。次にいく」


ぴっ。

「2人が15メートル離れたところで、ベンとジェニーがユティスの後ろに迫った。この時点で二人は互いの位置を判別できなくなっている」


ぴっ。

「そして、ここで、ベンとジェニーがユティスの背後に回った」


「リッキーに打ち勝つ精神感応力を持ちながら、どうして二人は、テレパシーで位置を確認し合わなかったんだろう?」

一人が疑問をぶつけた。


「わからんが、あまりのことで気が動転していたか、すぐに探せると思っていたのではないかな。そう。時間にして、20秒も経っていない」

「なるほど・・・」

「続ける」


ぴっ。

「ここで、ユティスの両脇から2人がユティスを確保した。すぐにエーテルを嗅がせたが、それを吸い込んで気を失う前に、ユティスから救難サインを出された」

「だが、宇都宮和人は、ユティスを既に目指して、群集を掻き分けているように見えるぞ」

マイクは右手を顎にやった。


「ふむ。確かに、これは意図的にベンたちに向かっているように思えるな」

「そこで、なぜ、急に宇都宮和人はこうも一直線に来れたかだ。オレも見ていたが、すぐ直前まで、宇都宮和人はユティスを探すことができずに、パニック状態だったんだ。だが、一瞬後にはベンたちに迷わず突進してきた。もっとも群集のおかげで、たどり着くまでにはならなかったがな」


「リッキー、もったいぶるな。お前の意見は決まってるんだろ?」

マイクがリッキーに催促した。


「だれかが、宇都宮和人に、そこだと教えたんだ。だからわき目も振らず突進できた」

「だれかだと?」

「まぁ、それは後でいい。次だ」


ぴっ。

「ここだ。ユティス確保計画が狂ったのは」

リッキーはスクリーンにレーザーポインターで、一組の男女を指した。


「宇都宮和人の会社の経営者だ。男は常務の国分寺俊介。女は社長の国分寺真紀。二人は二卵性双生児だ。この2人が、横からふいに現れた。国分寺俊介の方は、184センチ、95キロの巨漢だ。学生時代と社会人で2年間、ワイルドさでは追従を許さないアメリカンフットボールの名QBクォーターバックだった。QBは普通タックルは受けることはあっても、タックルをする方でないが、いつタックルを受けてもダメージを受けないよう、信じられないような筋トレを常にやっている。彼が週3日、決まって午後2時間事務所を空けるのは、ウェイトトレーニングを欠かさないようにしてるからだ」


「それで、あのベンをふっ飛ばしたってわけか・・・」

マイクは、スライド上でも十分にわかる俊介の両腕の太さに、その時の破壊力を想像して、首を振った。


「ああ。あんなのをまともに喰らったら、普通の人間なら首の骨をへし折られてるぞ。鍛えているベンだから、とっさに受身で逃れることができたんだ」

リッキーは次に移った。


「おかしいとは思わんか?なぜ、こうもタイミングよく、国分寺姉弟が現れたのか?」

「ユティスたちの後をつけていたとしか考えられんな・・・」

「少なくともGPS付きのスマホは利用していたと思われる」

「なるほどな」


「ベンはどこにいる?」

「医務室のベッドの上だ。首を鞭打ちにしてるんでな。4週間はギブスだ」

「その時にか?」

「いや、あの後、やつの女、ジェニーに吹っ飛ばされたらしい」


--- ^_^ わっはっは! ---


「例の浮気がバレたんだな?」

「ジェニーは知る人ぞ知る女流格闘家だ・・・」

「オレが関知すべきことではない」


「これで、ベンとジェニーは、ユティスを放し、脱出用の車に乗り込んだ。だが、ここでもおかしなことが起こっている。ミッキー、その時の状況を言ってくれ」

リッキーは、その時のドライバーの発言を求めた。


「はい。とにかく電気系統が切れたんです。もう、うんともすんとも言わない状態で、車を発進できなくてあせりました。けど、急にまたすべての電気系統が復帰したんですよ」

「で、エンジンも始動した?」

「ええ。マイク。そのとおりです」

ドライバーの証言は、いくつもの疑問点があったが、リッキーは先を急いだ。


「強力な電磁パルスを照射された可能性が多きい。これがどういうことを暗示しているのかというと、ユティスを保護する支援するシステムが既に構築され、確実に機能しているということだ。しかも最先端テクノロジーによってな」


「バカな・・・。日本は既にエルフィアからそういう技術的手解きを受けたと言うのか?」

「それを確かねばならんのが、われわれの使命だ、マイク」

いかにも科学者か研究者かといういでたちの男が言った。


「それで、ベンたちはなんとかその場を逃れたんだが、その次だ。極めて重要な写真だ」


ぴっ。

スライドに二人の長身の女性が、駆け寄ってくる写真だった。


「これは?」

「風体からして明らかに日本人ではない。それに、服装を見ろ。極めて運動機能に優れていて、ジャズダンス風にも見て取れる。そして次だ」


ぴっ。

次のスライドは胸から上を撮ったもので、その二人の表情が見て取れた。


「並んで立っている国分寺俊介の頭の位置からすると、身長は180センチ前後だろうな」

「でかいな・・・。えへへ・・・」

「どこを見てる、バカもの」


--- ^_^ わっはっは! ---


「一人はプラチナブロンドで赤い目をしている。もう一人は黒に近い茶色のショートのブルネットだ。この二人、スタイルも抜群だが、マスクも相当なものだった。モデルか女優か、とにかく大変な美女であることに疑いはない」


「で?」

マイクがリッキーの結論を急がせた。


「この二人こそ、ユティスのセキュリティを確保するために送り込まれたスペッシャリストだ」

リッキーは、そこで一旦スライドを止め、一同の反応を確認した。


「セキュリティのスペッシャリスト・・・?」

「女の身でか・・・?」

一同は、その二人を脳裏に焼き付けようとした。


「女だと侮るな!」

リッキーは急に大声で喝を入れた。


「ぎゃ!」

「うぁお!」

一同は、肝を冷やした。


「いいか。相手はエルフィア人だ。地球人ではないんだ。われわれの常識は捨て去れ。でないと、われわれがユティスを手に入れ、超高文明のテクノロジーを独占することはできなくなる。それがどういうことか、己が肝に命じておけ!」


リッキーはまくし立てると、最後のスライドを映した。それは、同じ写真が左右に2枚並べられたものだった。だが、そこには明らかに違いがあった。


「見ろ、これを!」

リッキーが言うまでもなかった。


500分の1秒のシャッタースピードで撮られた写真2枚。左は群集の中に白くぼやっとした人影がまるで幽霊のように微かに写っていた。そして、身後の写真は、その二人とわかる姿が鮮明に写っていた。


「どういうことか、わかるな?このセキュリティのスペッシャリストは、瞬間移動ができるんだ。わが国にもこのようなエスパーはいない。女だと侮るととんでもないことになるぞ・・・。極めてラッキーだった。虫の知らせというのか、とにかく、あの瞬間、そこにカメラを向けてシャッターを切っていた・・・」



「ふふふーん、と」

アンニフィルドは、鼻歌交じりに、エルフィア大使館の中を見回っていた。


「あれ?和人、こんなところに、なにを置いてるの?なんなのかしら?」


アンニフィルドは、和人が、リビングに置いたテレビを入れたラックの中に、DVDのパケットを見つけた。アンニフィルドは、パッケトの中身を見た。


「ああーーーっ!」

それは、二宮が和人の部屋に泊まった時に、置いてきたアダルドものだった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「和人のドスケベ!こんなものを、わたしたちが見えるところに、堂々と置いておくなんて、なんて無神経なの!」


かぁ・・・。

アンニフィルドはDVDのパッケージにたちまち赤くなった。


「でも、地球人の女性って・・・、すごぉっい。ユティス!あ、いや、黙ってた方が、いいわね・・・」


にまぁ・・・。

アンニフィルドはにんまりし頷いた。


「よし、和人め。あはは、面白いことになりそうだわ」

アンニフィルドはそれを元のところに置き直した。




和人はバッグにDVD入れて、二宮のアパートに来た。


(やれやれ、やっと時限爆弾から開放されるよ。危うく忘れるところだった)


ぴんぽーーーん。

「二宮先輩。いますか?」


かちゃ。

「おう、和人。入れよ」

「失礼します」


「おまえ一人か?」

「ええ。そうですが、どうかしました?」


きょろきょろ・・・・。

ばたん。

かちゃ。


「ふう・・・」

「先輩、これ、どうも」


和人は、二宮が置いていったアダルトDVD袋から取り出し、二宮に差し出した。


「おっ、ちゃんと楽しんだのか?」

「なに、言ってんですか。こんなものをユティスたちの目に見えるところに置いていくなんて、困ります」


「とか、なんとか言って、ホントは、ユティスと二人で見てたりして」

「絶対に、ありえません!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あーん、和人さん。もっと、地球人の愛とやらを研究したいですわ!」

「先輩、殴りますよ」


「わかった。わかった。まぁ、上がれよ」

和人は玄関で靴をはいたまま二宮を見つめた。


「せっかくですが、急いでますので」

「愛想のないヤツだなぁ」


「これ、お返ししときます」

和人はDVDの入ったパケットを二宮に差し出した。


「先輩ほどヒマじゃないんです。ユティスたちを待たせてるんで」

「ホント、つれないよなぁ」


「じゃ、また」

「おい、和人!」


かちゃ。

和人は二宮のアパートを後にした。




和人は、二宮が一宿の礼として置いていったDVDを、二宮に返しに行くところだった。


(ふぅ。あんなものを、オレの部屋にいつまでも置いておけるかってんだ。まったく、二宮先輩ったら、自分だってイザベルさんが来でもしたら、どうするつもりなんだよ?)


そこまで言って、和人は一人笑い出してしまった。


「あはは。先輩は、まだまだ部屋に呼べるような仲じゃなかったっけ」


--- ^_^ わっはっは! ---




「コンタクティー・カズト?」

「あ。アンデフロル・デュメーラ・・・」

アンデフロル・デュメーラの冷静な声に、和人はわれに返った。


「二人組みの男性が、あなたを探しています」

「オレを?」

「リーエス。エージェント・ユティスを誘き出す人質にするためです」

「ついに来たか・・・」


「すぐ、そこの横丁に入ってください」

「待ってよ。そんなところに入ったら、袋のねずみじゃないか!」

「大丈夫です。誰にも見られずに、ことを処理できます」


「信じろって?」

「リーエス」


「了解。けれど、なんで、ここにいると、わかったんだろ?」

「テレパスの支援情報を元にしてと思われます。50メートル以内に接近しました」


「武器は持ってるかい?」

「金属性の武器と思われるものと、硝酸塩系の爆発成分を検出しました」


「銃だね。本気だ」

「コンタクティー・和人は、どうして、エージェント・ユティスやSSたちと離れて独りでいるのですか?」


「あ、それは、そのぉ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


(二宮先輩に、AVのDVDを返しに行くのに、女の子連れて来れるかよ・・・)


「とにかく、ユティスなら、クリステアたちが守ってるよ」

「それは、確認しています。みなさん、現在地は駅前のカフェです」


「どうすればいい?」

「SS・アンニフィルドを、あなたのところに緊急召還します」


「よろしく」

「リーエス」




ユティスとSS二人は、駅前の商店街でウインドウショッピングをしていた。


「和人さん、お一人で大丈夫でしょうか?」

「ほっときなさいよ。あなたという恋人がいながら、二宮と二人だなんて。どうせ男のスケベな企みよ」


それは図星だった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「まあ、恋人だなんて・・・」


(わたくし、まだ、和人さんから、恋人宣言を、おっしゃっていただいてませんわ)


「いまさら形式だなんて。なに言ってるの。だれが見ても立派な恋人じゃないの」

クリステアもクスクス笑った。


ぴたっ。


「あ、ちょっと待って?」


「どうかしましたか、アンニフィルド?」

「あ、アンデフロル・デュメーラ・・・。なぁに?わかったわ、すぐ行く」


すくっ。

「二人とも、ご免なさい。ちょっと和人のところに、行ってくるわ」


「ダメよ、アンニフィルド。ここじゃ目立つったら」

「え、なぁに?」


しゅんっ。

アンニフィルドはいきなり消えた。


「ん、もうっ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


がたっ。

ぎょっ!

「き、消えた・・・」

三人の隣の席にいたカップルのうち、男性がそれをまともに目撃した。


--- ^_^ わっはっは! ---


「え、なぁに?」

「消えちまったんだよ・・・」


「だから、なにが消えたっていうの?」

「女の子だよ。たった今まで隣の席に座ってたプラチナブロンドのキレイな女の子・・・」


ぽかーーーん。


「バカなこと言わないでよ。人間がそんなに簡単に消えるわけないじゃない、あなたのお給料じゃあるまいし」


--- ^_^ わっはっは! ---


「だったら、おまえの後ろ見てみろよ」

「はぁ?」


くるり。

女性客は自分の後ろを振り返った。


「あ・・・」

そこには、確かに三人いたはずの女の子が、二人になっていた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「だから、言っただろ?」


「おほほほ・・・。今日はいい天気ですわぁ・・・」


ひらひら・・・。

ユティスは、カップルに小さく手を振った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「お二人に見られてしまったようですわ、クリステア」

ユティスは小声で言った。


「ほら、ごらんなさい。言ってる端から、こうなんだから・・・」

クリステアはあきれ顔になった。


「知らん顔してなさい、ユティス」


--- ^_^ わっはっは! ---


「リーエス。でも、和人さんになにか・・・」

「あーあ、心配しすぎだってば、ユティス」


「そうでしょうか?」

「そうよ。アンニフィルドも行ったことだし」


「だと、いいんですけど・・・」

「二人が戻ったら、もうちょっと、この辺を見て回りましょうよ、ユティス」

「リーエス」


ユティスとクリステアを残して、アンニフィルドはスクランブルをかけていた。

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