159 着任
■着任■
カメ横丁から6人は大山市に戻ってきた。
「これから、きみたちは、ユティスのところに入ってもらうことなるんだが、気にってもらえるといいんだが・・・?」
俊介がSSの二人に言った。
「真紀さん。あなたが用意してくれたって、和人から聞いてるわ」
クリステアは真紀を見た。
「ええ。本当によかったわ。4LDKにしといて」
真紀は楽しそうに笑った。
「じゃ、俊介。二人に現地確認してもらいましょう?」
「ええーーー?あそこ、オレの家じゃなかったんですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「アホ。そんな贅沢許すわけがないだろ。おまえの部屋は一つだけだ」
「じゃ、残りの3つは?」
「ユティスとアンニフィルドとクリステアに決まってるじゃない」
真紀が補足した。
--- ^_^ わっはっは! ---
「えーっ、4人で暮らすんですか?」
「バカもん。なんで4LDKを社員寮にしたかわかんなかったのか?」
「あの場面では、普通、オレ一人で、住むと思いますよ」
「ユティスとSSが来ると、わかっていてもか?」
にやにや。
--- ^_^ わっはっは! ---
面白そうに、俊介はニヤリとした。
「は、はーーーん」
クリステアは目を細めた。
「わたしたちは、おじゃま虫ってことね・・・。ユティスと二人っきり、新婚夫婦気取りで、しっぽり暮らせるとでも思ってたのね?」
ぷくう・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドも、わざと膨れっ面になった。
「なに言ってんだよ!」
「スケベ・・・」
「そんなんじゃないってば」
「本当かしら?」
「そりゃあ、オレも男ですからね、少しは考えましたけど、意地悪いですよ、社長、常務・・・」
「人のせいにするな。なにも聞いてこない、おまえ。考えが足りない、おまえ。おまえが未熟なんだ」
「はい・・・」
「4人で暮らすんじゃ、にぎやかになりそうね?」
にっこり。
真紀がにこやかに言った。
「ホント。俊介、こっちが片付くまで、デートはお預けよ」
「ああ。それについてはまたということで・・・」
「リーエス。その時に空きがあればね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「競争率高いんだな?」
「そうでもないわ。あなたを選ぶか、選ばないか。確率は、二分の一・・・」
「絶対に当たる方に、よろしく」
--- ^_^ わっはっは! ---
「オホン。さてと、本題に移ろう。問題は部屋割りだ」
俊介は咳払いをすると、家の見取り図を取り出した。
ぴらっ。
「こいつがそれだ。4LDKということは、4つの寝室、1つのリビングと台所っていう意味だ。わかるか、二人とも?」
俊介はSSたちを見た。
「リーエス。バスもトイレもお庭にあるのね?」
クリステアが片眉を上げた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「ふっふ。そう言うと思ってたぜ。トイレは1階と2階にそれぞれ一つずつ。バスは1階に混浴が一つ、ちゃんとある。心配するな。な、和人?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あ、そう、そうです」
「今、混浴って言わなかった?」
アンニフィルドが和人を見た。
「ええ?そんなことはないさ。だって1坪浴室に二人も入れやしないよ」
「だから時間をずらして、きみらが使用する。これで、混浴だ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「兼用というだけじゃないですか。誤解を生む言い方は止めましょう、常務」
「どうしても時空を共有したいのであれば、オレはかまわんぞ。もちろん他の3人の同意を得てな」
「常務!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わっはっは」
「で、部屋割りをどうするのよ、俊介?」
真紀は具体的な問題に入った。
「女性たちは2階の3部屋、和人は一階リビングの隣、8畳部屋でどうだ?」
「そうね。入り口に近い方に男性がいる方がいいでしょ、みんな」
「リーエス!」
3人はコーラスした。
「各部屋にはキーをつけてある」
「どうも」
「はい、これ。あなたたちに渡しておくわ。和人には既に渡してあるでしょ?」
「はい」
真紀は和人以外の3人に家と部屋の鍵を渡した。
「それから・・・」
「まだ、なにかあるんですか?」
「和人、あなたには今日からこの寮の管理人を任命するわ。社長の人事通達よ」
「ここの管理人・・・?オレの仕事なんですか?」
「そうよ」
「おまえ、まさか、本気で月1万円でここに入れると思ってたのか?」
俊介があきれ顔で言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「そういうことですか・・・」
「そういうことだ。管理人としての役目をしないなら、月15万円はもらわないとな」
「ねっ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ああ!」
国分寺姉弟は見合って笑った。
(なんか、話がうますぎると、思ってたんだよなぁ・・・。ユティスと二人きりの夢の生活が・・・)
がらがら・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
ぽん。
「やることなんて、大してないじゃないか」
俊介は和人の肩をを叩いた。
「そうよ。玄関の掃除に、水回りのチェックに、ガス、電気、ゴミの峻別出しに町内会の会合出席。避難訓練。回覧板。住人の苦情解決。そのくらいかしら」
「住人の苦情か・・・。いっぱい言いそうなのがいるよなぁ・・・」
ちらっ。
和人は、アンニフィルドを見た。
--- ^_^ わっはっは! ---
「だれを見て、言ってるのよ?」
アンニフィルドは間髪入れずに、和人に文句を言った。
「だぁれも・・・」
「和人、つべこべ言うと、15万円の他に契約時の敷金2ヶ月分も請求するぞぉ」
「そんなぁ、常務の鬼・・・」
「なんか言ったか?」
「いいえ」
「常務の鬼!ですって。あはははは!」
アンニフィルドが拡声器になった。
「もう一度、言ってみろ、和人!」
「いいえ、なんでもありません・・・」
「じゃ、決まりね」
真紀は、和人の部屋のドアに、管理人室と、でかでかとマジックで書いた表札を貼った。
「社長、かんべんしてくださいよぉ。それ」
「あら、そう?誤字はないはずだけど」
--- ^_^ わっはっは! ---
「かっこ悪いんですったら」
「取ったら、公共物破損の罪に問うぞ。しばらく、そうしてろ!」
「そんなぁ、常務!」
「それと、あなたたち3人には、これね。お部屋は話し合って決めて。いい?」
「リーエス」
「じゃ、わたしたち、今日のところは帰るわ」
「どうも」
「どうも」
3人に鍵を渡すと国分寺姉弟は帰っていった。
エルフィア娘たちが2階の部屋となると、和人は自分の荷物を1階の部屋に移さねばならなかった。
「せっかく、荷物を2階に上げてもらったのに・・・」
「そりゃ、当然でしょう」
「1階は、男性がガッチリ守ってくれなきゃね」
アンニフィルドは愉快そうに言った。
ぱちっ。
クリステアもウィンクした。
「頼りにしてるわよ、スーパーヒーローさん」
「わかりましたよ。今後は、ハイパーヒーローと呼んでください!」
「あ、開き直った・・・」
4人はリビングに集まった。
「真紀さん、本当に各部屋にベッド搬入してくれたんだ」
和人は各部屋を見回って言った。
「えーと、これでよしと」
「今だけだからね。わたしたちの部屋をあなたが勝手に覗けんの」
アンニフィルドが、いたずらっぽく笑った。
「ベッドの他、なにもないじゃないか?」
「まぁ、失礼ね」
「事実じゃないか」
アンニフィルドがにこにこしながら3人を見回した。
「えへへ。アンデフロル・デュメーラに頼んで、時空ロックとパスワードの設定をしっちゃった!」
アンニフィルドが得意そうに笑った。
「えーーー、なんだって?」
和人は自分の部屋から閉め出されると思った。
「あたりまえじゃないの」
「リーエス。コンタクティー・カズト」
アンデフロル・デュメーラが即答した。
「げげ。本当にしたのか・・・」
「乙女の部屋に物理的な鍵だけじゃ、安心できないわ。なにしろ狼さんが一匹住んでんですもの。いつ、バギバギってドアを破ってくるから」
ささっ。
アンニフィルドは、両手で胸を隠した。
「きゃあ、怖い~~~っ!」
クリステアがアンニフィルドの陰に隠れた。
「きみらがぁ?そんな柄かい?」
ぱこん!
アンニフィルドが軽く和人の頭を叩いた。
「痛・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「まじで、ロックかけたわよ。和人、パスワード言わなきゃ、あなたの部屋だって、自分では入れないからね」
「余計なことすんなよなぁ、アンニフィルド」
和人は不満げに言った。
「事故が起きてからじゃ、遅いんですのよ、和人さん」
ユティスがにこやかに言った。
「リーエス。ユティスが正しい!」
「まるで、オレを色魔みたいに扱って・・・」
「それ、大変な誤解よ。本当に、あたしたちが心配してるのは、外部からの侵入者」
アンニフィルドは真顔に戻った。
「Z国みたいなね・・・」
「そうか。確かにそれは一理ある」
「時空ロックは、対象空間自体が、異次元にあるようなものよ。パスワードで解除されるけれど、ロック中は、だれも絶対にアクセスできないわ」
「試しに、開けてみてよ、和人」
「うん」
かちゃ、かちゃ。
「あれ、ホントだ。開かない」
和人は自分の部屋のドアを開けようとしたが、ドアはびくともしなかった。
「間違いなく、ちゃんとかかってるよ」
「蹴破ろうったって、びくともしないわよ。ドア自体もロックの対象時空だからね」
「本当だ。鋼鉄製の金庫のドアみたい・・・」
「パスワードで開くかどうかは、確かめないの?」
ぱちっ。
アンニフィルドは振り返って、クリステアとユティスにウィンクした。
「うん・・・。ユティス大好き・・・」
「ちゅうーして欲しい!」
アンニフィルドが口を挟んだ。
「まぁ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「アンニフィルド!また、言わせようとしたな。だれが引っかかるもんか!」
「あははは。バレちゃったか!」
「ふふふ。和人さん、ちゅっ」
ユティスは和人にキッスする真似をした。
--- ^_^ わっはっは! ---
「くっくっく・・・」
クリステアは笑いを堪えていた。
「うふふふ」
「ユティスまで・・・」
「さてと、ユティス。あなたは、普段は和人と一緒の部屋がいいんじゃないの。もうキスした仲なんでしょ?」
にやっ。
クリステアが、さらりと言った。
「ユティス、あなたも自分の部屋はあって損はないわよ」
ぱちっ。
アンニフィルドが、クリステアとは反対の意見を述べると、ユティスにウィンクした。
「リーエス。わたくし・・・」
「いつも和人と一緒じゃ、新鮮味がないわ。プライバシーが必要な時もあるでしょ?一人でこもりたい時だって・・・。着替えとか、お化粧とか。それに、夫婦喧嘩した時とか」
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドは付け足した。
「リーエス。でも、夫婦喧嘩なんて嫌ですわ・・・」
「そうだよ。結婚してもいないのに」
「あははは、例えよ。例え」
「和人もいい?」
「は、はい」
「わたしたちも、キッスくらいで驚いたりはしないわ。さっきは、あまりにだしぬけだったからよ」
「ホントかよ?」
「リーエス。次は、もっと期待しちゃうから」
--- ^_^ わっはっは! ---
「こらっ!なに言ってんだよ!」
「あははは」
ユティスの部屋は真ん中の8畳部屋になった。両脇をSSの二人が、ユティスを囲むような感じになっていた。
「これで良しと」
4人は再会を喜び、話もはずんでいった。
「和人、自分のお布団下に運びなさいよぉ」
「わかったよ、アンニフィルド」
「手伝おうか?」
アンニフィルドが和人に言った。
「ナナン。いいよ、オレ一人で」
「一人じゃ大変でしょ?衣類のケース持ってってあげるわよ」
と言っているうちに、衣類ケースが空中に浮き、廊下を漂い始め、階段を下って、和人を追いかけていった。
ふわふわ・・・。
「アンニフィル・・・」
後ろを振り返った和人は、列をなして空中を浮遊する衣類ケースを見て、ひっくり返りそうになった。
「ぎゃあ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
ごっつーーーん。
どかっ。
最前の衣類ケースが和人に衝突し、蓋が開くと、中身を辺りにぶちまけた。
「あわわ・・・」
「うわぉ・・・。パンツね、これ・・・」
アンニフィルドがその一つを拾い上げ、後ろの二人に広げて見せた。
「随分機能的にできてるじゃない。真ん中が開くようになってるのね・・・。ふむふむ」
クリステアがパンツのデザインに頷いた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「きゃあ!」
かぁ・・・。
ユティスが真っ赤になった。
「あ、こら、アンニフィルド、なにやってんだ!」
「拾ってあげたんじゃない、お礼くらい言いなさいよぉ」
「どさくさに紛れて広げるなよ」
「お礼は?」
「あ、ありがと。あー、とにかく、もういい。オレするから!」
和人はそれらを1階に降ろすと、続いて布団を降ろした。
「ふう。これで終わりと・・・」
1階の部屋に一人入った和人は、たとえ我慢の数日とはいえ、ユティスと一緒に過ごした時間が、急に恋しくなった。
「隣の部屋くらいかと思ってた・・・。1階と2階じゃ、建物が違う感じがするなぁ・・・」
「やっぱり、ユティスと同じ部屋にする?」
和人の耳元にクリステアが囁いた。
「ぎゃあ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そんなに驚かなくたっていいじゃない・・・」
「びっくりするに決まってるじゃないか。はぁ、はぁ・・・」
すぅーーー。
和人は息を大きく吸った。
「いつでも上にいらっしゃい。わたしはかまわないわよ」
ぱち。
クリステアはウィンクすると2階に戻っていった。
SSの二人が一緒になり、身の安全は確保できたが、ユティスと和人の水入らずの暮らしとは、到底なりそうもなかった。
「あーぁ。先週のような二人きりの甘い時間は、もう作れないかもなぁ・・・」
がっくり・・・。
和人はため息をついた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「バカね、和人・・・」
今度は、突然アンニフィルドが和人の思考に割って入った。
「あたしたちが、そんな野暮するわけないじゃないの。こう見えてもプロフェッショナルのSSよ」
「だよな・・・」
「そう」
「で、昨夜は、どこまでいったの?正直にいいなさい、和人」
--- ^_^ わっはっは! ---
「どこがプロだよ!」
「あはは。和人が言わないんなら、ユティスに聞いちゃおっと」
「こら、止めろってばぁ!」
和人の叫びを無視すると、アンニフィルドはユティスに向き直った。
「ねえ、ユティス。真紀の言ってた2泊3日の出張旅行、混浴でお布団も同じだったんでしょ?和人とはキッスだけで終わちゃったのぉ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そんなこと・・・。アンニフィルド、わたくしたち・・・」
たちまち、ユティスは真っ赤になった。
「あーあ、つまんない!」
アンニフィルドはアンニフィルドだった