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157 焼鳥

■焼鳥■




SSの二人は、スラリとしたバツグンの容姿とルックスで、たちまち人目を集めた。


「ふむ。確かに、きみらは背丈あるなぁ・・・」

国分寺俊介は184センチあったから、それでも、SSたちより高かった。


「あなたは、もっとあるじゃない」

「ちょうど釣り合うかい?」


にっ。

さっ。

俊介は、アンニフィルドの横に並んで立った。


「きゃ・・・」

アンニフィルドは肩が触れ合い、思わず声を出した。


「悪いかよ?」

「ナナン・・・。悪くはないわ。ぜんぜん・・・」


ぽっ。


「お、そっか。光栄だねぇ」

にこっ。

俊介は、笑うととても愛嬌があった。


(やっぱり、わたし好みのイイ男、好きになりそうだわぁ・・・)


アンニフィルドはそう思った瞬間赤くなった。

ぽっ・・・。


同時にクリステアの声がした。

「あなた好みなんでしょ?」


「なにがでしょうか?」

ユティスがアンニフィルドに尋ねた。


「ここよ。ここ。この市場の雰囲気。いいわぁ・・・。地球って感じで。あはは・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「リーエス。ほんと、そうですわね」


「こら、誤魔化しちゃって!」


ちくっ。

悪戯っぽくクリステアがアンニフィルドをつねった。


「痛いわね、クリステアったら!」


この時の俊介は、まさかエルフィア娘たちの話題の主が、自分だとは思ってもみなかった。


「せっかくこうして会えたんだ。もっと仲良くなるには、ちょっと早いが、夕食でもどうだ、みんな?」


(アンニフィルドとお近づきになるにはと・・・)


「あー、あー。思ってることと、言ってることが、違うじゃない?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ああ?」


(ちょいと待てよ・・・。彼女らに、まさか、本当にオレの考え筒抜けか?)


「今晩は、二人っきりのデートしたいんじゃないの?」


きらっ。

アンニフィルドは、目を輝かせた。


(げげ。バレバレじゃないか・・・)


「あら。そうなの、俊介?」

にたっ。


--- ^_^ わっはっは! ---


真紀が反応してにやりとした。


「姉貴!」


「二人きりのデートだなんて、ステキ」

ユティスも俊介に微笑みかけた。


「はははは・・・」


「いいわよ」

ぱちっ。

アンニフィルドは俊介にウィンクした。


「へ・・・?」

「デートしてもいいと言ったのよぉ。少しは喜びなさいよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あー・・・。ん、ん。個人的なそれは、それとしてだな・・・」

あたふた・・・。

俊介は急に慌てて誤魔化そうとした。


「と、とにかく、一流レストランとはいかんが、せっかくカメ横に来たんだ。焼き鳥屋ってのも風情があっていいぞ。店の外に出てるテーブルに着いて、みんなでワイワイやるってのは、エルフィアのお嬢さん方も気に入ると思うが・・・」


「いいわ。面白そうね」

クリステアがすぐに反応した。


「じゃ、焼き鳥屋に決定」

真紀が微笑んだ。


「それって、親父たちの立ち飲み屋のことでしょ、常務?」

和人はなにを言うかという顔をした。


「そうだぜ。気に食わんか?」

「うら若き乙女たちを招くには、ちょっと・・・」


「なに言ってんの、和人。今時の女の子は焼き鳥屋さんくらい平気で入るのよ。ポッピーだって飲むんだから」

真紀が陽気に言った。


「ええ?知らなかった・・・」

「まったく、格好つけるって柄でもないだろ?」

「おっしゃるとおりで・・・」


「常務さん。焼き鳥とおっしゃられると、そこは、お肉しかないのですか?」

ユティスがきいた。

「いや。焼き魚もあるぞ」


「常務、それ肉と一緒ですってば」


--- ^_^ わっはっは! ---


「他にもいろいろござれだ。ネギや、ししとう、ギンナンや、シイタケなんかもある。煮込みなんか、日本にしかない珍味中の珍味。これも旨いと思うが?」


「それは、お野菜ですか?」

ユティスがきいた。


「おお。ほとんど、そうだけど?」

「もしかして、あなたたちベジタリアンなの?」

真紀が、エルフィア娘たちを見つめた。


「リーエス。基本はそうですわ」


「じゃ、焼き鳥屋じゃ、だめじゃないですか・・・」

和人が俊介を見て言った。


「いいのよ、気にしないで。和人。そこにしましょ」


ゆらーーーっ。

アンニフィルドは、わざと俊介の目に止まるように長いプラチナブロンドを揺らせ、ピンクの瞳を輝かせてにっこりと微笑んだ。


ちらーーーっ。

そして、俊介にだけわかるようにして、色っぽく流し目を送った。


ぞくっ。

(アンニフィルド。いい女だ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


ぶるぶるっ。

(いかん。いかん)


俊介はアンニフィルドの視線を感じて動揺した。


「おまかせするわ」

エルフィア娘たちは焼き鳥屋に興味津々だった。


「地球の平均的な人の日常の食生活がわかるのですね?」

ユティスも笑顔で言った。


「そうだとも。じゃぁ、決まりだな。そうだ・・・。店の中に入って、そのまま閉じ込められたら、逃げ場がなくなる」

「確かにそうね」


「そんな閉鎖的なところで、周りに気づかれずに6人をどこかへ移動させるのは、いくらなんでもきついわ」

クリステアがそれは一理あると俊介の意見を認めた。


「大丈夫です。アンデフロル・デュメーラがいますわ」

「あ、そうか」


「お呼びですか?エージェント・ユティス」

「ええ。もし、大変なことになりましたら、助けてくださいね」


「リーエス。エージェント・ユティス」


「今の今で、また襲われることはないでしょうが、入り口を押さえられたら、身動きできなるわね」

真紀も相槌を打った。


「ということで、あそこはどうだ?」

俊介の指したところは、いかにも世の親父たちが行きそうな、伝統的な立ち飲み焼き鳥屋で、既に陽気な声が飛んでいた。


「ところで、アンデフロル・デュメーラって、危機的な状況で、そういう時どうするの?」

「単に収容するのよ。32000キロ上空に」


--- ^_^ わっはっは! ---


「32000キロ?」

「どこだ、そりゃ?」

真紀と俊介が同時にきいた。


「いいの、いいの、その時が来ればわかるわよ」

アンニフィルドはまったく気にもしなかった。




「ちわぁ・・・」

「へーい、らっしゃい。6人様ご案内っ!」


にこにこ。

さっさっさっ。

陽気に店員があっという間に外のテーブルに6席作った。


「うわぉ・・・」

エルフィア娘たちは目を丸くして、これからどうなるのかと見守った。


「なんだか、面白そうだわねぇ・・・」

アンニフィルドがわくわくして言った。


「で、そっちの3人は、アルコールはちょこっとくらいイケルのかな?」

俊介が楽しげにきいた。


「わたしは平気よ」

まずアンニフィルド。


「お、頼もしいね、アンニフィルド」

俊介は喜んだ。


「わたしくしは、少しだけいただきます」

ユティスが言った。

「承知した」


「そちらのお嬢さんは?」

「今度にするわ。SSが二人とも酔っ払っていては、仕事にならないでしょ」

クリステアは落ち着いていった。


「固いわよ、クリステア。そんなに飲むわけじゃないし、アンデフロル・デュメーラだっているでしょ」

アンニフィルドは少々不満げに言った。


「それは、あなたの意見。わたしの見解は違うわ」

「ま、いい。飲みたくなったら言ってくれ。で、姉貴も和人もビールでいいな?」

「はい」


「じゃ、ビール5つに、あとはウーロン茶とポッピーくらいにするか」

「おまかせよ」

クリステアは店の客を観察しながら言った。


「和人、おまえ頼め!」

「はい」


「塩で6人前だな?」

「リーエス」


和人はオーダーした。


「さっきから、気になってたんだが・・・。なんだ、そのリーエスってのは?」

「そうですわね、和人さんエルフィア語おわかりですもの」

ユティスがにっこり微笑むと、和人に向かって言った。


「さしずめ、アイアイサーてとこでしょうか。あはは」

和人は照れ笑いしながら言った。


「ほう。おまえ、ひょっとして、エルフィア語がペラペラなのか?」

俊介は感心したように、和人に確認した。


「ま、ちょびっとですけど、ユティスから教わって・・・」

「プロポーズの仕方は習ってないみたいよぉ」


--- ^_^ わっはっは! ---


ばちっ。

クリステアがユティスにウインクすると、ユティスはたちまち頬を赤くした。


「まぁ!クリステア・・・」


ユティスは一瞬和人を見つめて、すぐにうつむいた。


ぽっ。

かぁーーー。

和人は今にも沸騰しそうに真っ赤になった。


「おい、おい。おまえが告白するって、当然女の子だよな?」

「ピンポーン」


「あ、当たり前です!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「て、ことは、やっぱり意中の彼女がいるってことね?」

クリステアが念を押した。


「あ・・・」

「マジかよぉ?」

一同は大笑いになった。


「わー、なに言ってんだよ、クリステア。常務、かんべんしてくださいよぉ・・・」

和人は大慌てで言った。


「で、その告白とやらは、だれにすんだ?」

俊介はそらとぼけた。


「和人さん・・・」

ユティスも頬を染めていた。


「・・・」


「さあ、ビールにウーロン茶にポッピーです」


どん、どん、どーーーん。

でん、でん、でーーーん。


その時、店員が2人がかりで両手にジョッキを抱えて持ってきて、和人の糾弾は一時休止となった。


「よぉーし、とにかく、みんな、地球にようこそ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「カンパーイ」


かっちゃん。

かちっ。


俊介はアンニフィルドたちのジョッキに自分のジョッキを軽く当てた。


「へえ、これ、地球の風習なの?」

「元気があって、いいわね!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ステキですわ!」

「楽しいわね!」

「わたしたちも、地球式に、乾杯!」


かちっ。

かちゃっ。

エルフィア娘たちは笑った。


ぐいっ。


「わーっ。苦ぁーーーい。なぁにこれ?」

「ビールだよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


ちびっ。

アンニフィルドは少しだけ口に含んだ。


「ビールって、苦いのね?」

「それがいいんじゃないか」


「そうそう。ビールは、ちびちびしない。ぐうっと、いくのよ。ぐうっと」

真紀がアンニフィルドにビールの飲み方の指南をした。


「リーエス」

ぐぐーーーっ。


「おお、いい飲みっぷり」


ごくごく・・・。

「なるほど・・・。これ、グーといくと美味しくない?」


「そう、正解だわ。ビールはノド越しを楽しむものよ」


「和人・・・。あなた、なに、静かにしてるの?」

「いえ・・・」

和人はあっけにとられていた。


「エルフィア女性って、ビール飲めるんだ・・・」

「バカ言え。ビールは、地球人が発明した宇宙一の、命の水だぞ」


--- ^_^ わっはっは! ---


俊介は陽気に言った。


「スケールでか過ぎですよ、常務」

「わははは。エルフィアでのビールの独占販売権、ウチにもらうとしようぜ」

「俊介、いい加減、ビジネスを頭の中から追い払ったらどうなの?」

「へいへい、愛する姉貴殿」

「ん、もう!」


(国分寺俊介・・・)

アンニフィルドは豪快に笑う俊介の横顔に惹かれていた。


(ふうん。相当なイケメンじゃない?)

長いまつ毛にくまどられた目は鋭く、瞳は明るい茶色で、電球の光具合によっては、黄色っぽく見えた。


(こいつ、すごく生き生きしてる・・・)

鼻筋は高く通っていて、上唇にたくわえられたヒゲが、精悍な男らしさを惹きたてていた。


ぴっ。


(あは・・・)

だしぬけに、俊介の視線がアンニフィルドを捕らえた。


「アンニフィルド?」


ほわん。

その時、俊介から男性用の化粧水の香りが、アンニフィルドに微かに漂ってきた。


「なに、俊介・・・?」


くらーーーっ。

アンニフィルドはくらっときた。俊介の目がアンニフィルドのピンクの目と合った。


どっきんっ。


「アンニ・・・」

「俊・・・」


ぱっ。

次の瞬間、思わずアンニフィルドは赤くなって視線をはずした。


(あーーーっ!)

クリステアはそれを偶然目にした。


(これ、やっぱり・・・。ひょっとして、ひょっとするかも・・・)


ゆら、ゆら・・・。

アンニフィルドの長いプラチナブロンドが、俊介の目の前で優雅に踊り、俊介はゆっくりとそれを目で追った。


ぽわーん。

俊介も、アンニフィルドの髪から漂う甘い香りに気づいた。


どきっ。

「ん、ん!」

俊介はすぐさまアンニフィルドから視線をはずし、咳払いした。


(ビンゴね・・・)

クリステアは確信した。


「そこどいて。場所、代わってあげるわ」

クリステアがアンニフィルドに言った。


「な、なによ?」

「いいから、いいから」


さっさ・・・。


「お、そういうことなら・・・」


すくっ。

俊介はクリステアの意図を察して、自分からさっさとアンニフィルドの横に来た。

どっかり・・・。


「えへ。これでよしと」


--- ^_^ わっはっは! ---


さっき一瞬だけ見せた、うろたえたようなそぶりは、もはや微塵もなかった。


「よっ!デートの話の続きだけどさ」


ぱちっ。

俊介はウインクをした。俊介がアンニフィルドの横に座ると、膝がアンニフィルドの脚に当たった。


こつん。

「ちょっと、近寄りすぎよ!」

アンニフィルドの頬は赤く染まっていた。


「もうちょっと離れなさいよ」

言葉とは裏腹に、アンニフィルドはちっとも嫌そうな表情ではなかった。


「狭いんだから、しょうがないだろう?」


うり、うり・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


俊介は自分の気持ちを悟られまいとして、わざとアンニフィルドに近寄った。


「はいな!」


ぐりぐり・・・。

クリステアも反対側から、アンニフィルドを押したので、アンニフィルドと俊介は、ピッタリとくっついてしまった。


ぎゅうっ。


「ちょっと、クリステアまで!」


かぁーーー。

たちまち、アンニフィルドの頬はさらに赤く染まった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あらあら。お二人ともお似合いですこと」


にっこり。

ユティスがそれに気づいて、二人を見比べて微笑むと優しく言った。


「そうかい。嬉しいねぇ。じゃ、こちらのステキな美女に乾杯といこう!」


俊介はアンニフィルドにジョッキを捧げた。

かちん。 


「最低男さんに」

かちん。

アンニフィルドも応えた。


「ひどいな!」

「ジョークよ」


アンニフィルドは俊介とぴったりくっつけられていることを楽しんでいた。そして、俊介も楽しんでいることを大いに確信した。

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