150 録画
■録画■
テレビの番組レポーターのユティスヘのインタビューを収めた録画が始まった。
「いやぁ、びっくりです・・・」
「うふふ」
ビデオ映像はレポーターの満面笑顔から始まった。カメラが、後ろに引いていくと、短く笑った声の持ち主が現れた。
「こんにちわ」
「こ、こんにちわ・・・」
「んふ?」
にっこり。
ユティスの微笑みで、彼はいっぺんに癒されたような声になった。
「きみが、ユティスちゃん?」
「はい」
「これは、あなたなんですね?」
レポーターはスクリーンを指した。
「リーエス」
「りーえす?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あ、いえ。はい。うふ」
にこっ。
どっきん。
「それにしても、なんて愛らしい。話してて緊張しちゃうな、ボク・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「まぁ。お褒めいただき光栄ですわ」
「あのぉ。きみは日本語が上手だけど、もう、何年か日本に住んでたの?」
「ナナン。まだ、ここに来てから1週間くらいです」
「ええ、たったの1週間?」
「リーエス」
--- ^_^ わっはっは! ---
「それで、こんなに話せるんだ・・・」
「ここに来る前に、3日ほどハイパー・ラーニングの講習を受けましたから・・・」
「たった3日?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「はい。標準的な時間ですわ」
「標準時間なのぉ、それが・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス。1日では単語を覚えることはできましても、さすがに文にすることは無理ですもの。うふふふ」
「ははは・・・」
「本当は・・・」
にこっ。
「ほらほら、やっぱし隠れて習ってたとか?」
「リーエス。本当のことを申し上げますと、精神体で地球におじゃましていた数ヶ月間、和人さんにいろいろと教えていただいてました」
「精神体で地球に来てた・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「よくわからないけど、きみは・・・」
「地球語は、とても難しい言語に分類されますのよ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「地球語は難しい?」
レポーターは理解不能に陥っていた。
「リーエス。正直、漢字は苦手ですわ」
「そりゃ、ボクもだよ」
「まぁ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「えーーー。それはともかく、お国はどちらなんです?」
「エルフィアです」
--- ^_^ わっはっは! ---
「エルフィア・・・。ヨーロッパのどこでしたっけ?」
「もう少し遠くですわ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「アフリカとか、南米ですか?」
にこっ。
「そうではありません。わたくしの星は地球ではないのです」
--- ^_^ わっはっは! ---
「えっ。星って、宇宙にぽっかり浮かんでる、あの星のこと?」
「はい。ぽっかり浮かんでいる惑星エルフィアですわ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「地球じゃないって、そんなバカな・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
にまぁ・・・。
「わかったぁ!ユティスちゃん、きみ、ひょっとして冗談が好きでしょう?」
「はい、大好きですわ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「やっぱりねぇ・・・。ボクも好きだよ。愛してるよぉ」
「ステキ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「で、地球じゃないってことは、ユティスちゃんは宇宙人ってことかぁ?」
にっこり。
「はい。あなた方が、地球人以外の方を宇宙人とお呼びになるのなら、そうですわ」
--- ^_^ わっはっは!」 ---
「こりゃ、びっくりだ。えへ。なにを隠そう、実はボクもアンドロメダ星人なんだ」
レポーターは、ユティスの言葉を完全にユーモアと解釈していた。
「まぁ、それは、遠いところからわざわざお越しいただき、ありがとうございます。お疲れ様です。大変でしたわね?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そうなんですよ。自分でもびっくりなんです。じゃない!ユティスちゃん、それで、きみは、今、日本のどこに住んでるの?」
「そ、それは・・・」
「あ、それは内緒なんだったね。悪い、悪い。じゃあ、話題を変えよう。それでね、本題なんだけどさぁ。あの歌を歌っている時、きみの身体からキレイな光が出てたでしょ?あれはなんなの?」
「生体エネルギー放射のことをおっしゃてますのね?」
「うん、たぶんね。で、生体エネルギー放射ってなんのことかなぁ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「生物が、もともと持っている生命体エネルギーのことですわ。普段は可視光線で捕らえることはとても難しいのですが、大型恒温生物である人間は、とても強く放射していますので、光が少ない場所では比較的見え易いんです。人にもよりますけど、精神的にとても高揚している時や、逆にとても安らかに安定している時など、身体から放射しているエネルギー場がいろんな色に見えるんです」
「ふうん。よくわかんないけど、いわゆるオーラとか、気とかいうやつかな?」
「んふ」
「それって、きみだけの特技なの?」
「ナナン。どなたでもそれが出ていますし、訓練すればお見えになりますわ」
「カンフーとか修行を積めってこと?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そういうことではありません」
「今は、見えないけど、きみはちゃんと出てるのかな?」
「はい。今は、はっきり見えませんが、生きている限り生体エネルギーは、いつでも放射されてます」
「ボクでも?」
「はい。もちろん」
「あは、そりゃ光栄だ。いったい、ぼくはどんな色してるのかなぁ?できればどす黒い色とかじゃなく、ゴールドなんかがいいんだけど?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「うふ。変な方」
--- ^_^ わっはっは! ---
「それ、褒めてくれてます?」
「褒めてることになるんですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「はい。ボク、一応芸人。コメディアンですから」
「うふふ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そうです・・・。今は、あなたの精神が高揚されてませんから、わたくしにも生体エネルギー場は見えませんわ」
「見えない・・・?大変だ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「通常では、そんなにはっきりとは見えないんですよ」
「そっか、よかった。じゃ、気分を高揚させてみようか」
「はい。お試しになって」
「協力してくれるんだ。嬉しいなぁ・・・。でへへ」
--- ^_^ わっはっは! ---
すっ。
レポーターはユティスのすぐ目の前に移動した。
「ユティスちゃん、ぼくの目をじっと見つめてくれる?うんと近寄って、優しくね・・・」
「はい」
「そして、ゆっくり笑ってくれるかなぁ・・・。気持ちを込めて、ボクを恋人と思って・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「はい」
す、すっ。
じーーーっ。
にこっ。
どきっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「ストップ!ストップ!」
慌てて和人が見つめ合う二人の間に入った。
「ユティスに、なにをするんですか、あなたは?」
「精神の高揚実験だよ。付き人は、じゃましないでくれるかなぁ・・・」
「付き人?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ところで、きみは、だれなんだ?」
レポーターは和人に初めて気づいたように言った。
「ユティスの保護者です」
和人は憮然として答えた。
「ほう。ユティスちゃんの保護者ねぇ・・・。彼女、未成年なの?」
「違います!」
ころっ。
レポーターは和人を無視することにした。
--- ^_^ わっはっは! ---
「それに、もう一つ確認したいことがあるんだけどなぁ・・・」
「はい。わたくしにわかることでしたら」
「うん。ユティスちゃん、歌、すっごく上手だよねぇ」
「うふふ。ありがとうございます」
にっこり。
「どこで習ったの?」
「母ですわ。母から手ほどきを受けました」
「お母さんかぁ・・・。きみを見たからわかるけど、さぞかし優しい方なんだろうね?」
「はい!」
にこにこ。
「それで、あれはなんて曲なの?」
「『自分自身』と、それを授けてくれた『すべてを愛でる善なるもの』への感謝を表した、『祈りの歌』です。それを、そこにいらっしゃる方全員に捧げました」
「『祈りの歌』ね・・・。ボクの幸せも祈ってくれた?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「はい。そのビデオをご覧になられた方には、全員、お伝わりいただいたと思います」
「そうだと思ったよ。こうして実物のユティスちゃんに会えたんだもの!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「まぁ!うふふ。それは幸いです」
にこにこ。
「それでね、ボクもそうだったんだけど、きみの歌を聴いていた時、なんかこう、どう言ったらいいんだろう・・・。そう、みんなが言ってたように、魂に響くといいうか、とにかく、すっごく心にきたんだ。なんか身体全体を優しく揺さぶられるようにね」
「はい」
「それ、なんか特別な歌い方とか、呪文とか魔法とか、そういうものがあるのかなぁ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「はい。恐らく、わたくしの生体エネルギーがわたくしの声を通じて、みなさんの精神に共鳴しているからだと思います。あの歌はそう言う風に作られていて、心を落ち着かせて愛に身を委ねると、そういう効果が現れるんです。わたくしも、その曲の歌い方を直接母から習いました。わたくしが初めて母の歌を聴いた時は、あまりの感動で涙した記憶があります」
「ふうーーーん。きみのお母さんは歌がとっても上手なんだ・・・」
「はい。わたくしでは、まだまだ母の足元にも及びませんわ」
にこっ。
「そうなの?ボクなんか感動して、いろんなとこから涙が出ちゃったよ」
「いろんなところですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「うん。目とか、鼻とか、あそことか・・・」
「あそこから涙ですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あーーー。失敬、失敬。気にしないでくれる?」
「あ、はい」
ぽかぁーーーん・・・。
「そうだ。ねぇ、ねぇ、ユティスちゃんは、いくつなの?」
「いくつだって、おっしゃられても・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
しゅうんっ。
アンデフロル・デュメーラがユティスに助け舟を出した。
(エージェント・ユティス、地球では、身体的かつ性的完成を18歳として、成年とみなされます。ただし、アルコールやニコチンの摂取許可は、地域で異なりなります。すべてが社会的に容認されるのは、20歳をもってです)
(アルダリーム・ジェ・デーリア。アンデフロル・デュメーラ、お知らせくださってお礼申しあげますわ)
(パジューレ)
しゅうんっ。
「しかし、ユティスちゃんって、まだまだとっても若いけど、失礼なければ教えて欲しいんだけど、いったい幾つなのかなぁ・・・?」
「和人さん、地球年齢に換算して、18歳以上は成年なんですよね?」
ユティスはレポーターの後ろにいる和人に尋ねた。
「成年?ああ、映画やアニメの話だね?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス。では、十分成年です」
「じゃ、20歳くらいってとこかな?」
「んふ。そういうことにしていただいて、結構ですわ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「じゃ、立派な成年ということで、いいよね、ユティスちゃん?」
「はい」
「いろんな楽しいことを、いっぱいできるようになって、どうだい?」
「はい。楽しんでいます」
「ホントに?」
にったぁ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「今度、ボクと一緒に楽しんでくれないかなぁ・・・?」
「冗談の掛け合いでしょうか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そうそう。まじめに冗談を言い合うんだ。二人っきりで・・・」
「やっぱり、ご遠慮申しあげます・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「冗談。冗談。冗談に決まってるじゃないかぁ・・・。あははは」
「うふふ」
レポーターは話題を変えることにした。
「今は、どこかに勤めてるの?」
「はい。株式会社セレアムというところです」
「会社員ってこと?宇宙人で平社員として働いているんだ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「はい。もうすぐ日本国籍をいただけるそうなんで、地球人にもなれるんですよ」
「宇宙人を捨てて、地球人になるの?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あの、捨てるわけじゃないんで、その辺は心配ございません」
「宇宙人のままなんだね。よかったぁ・・・!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「それに、会社のみなさんは、とてもステキで優しい方ばかりで、毎日充実してます」
「そりゃいいね。そこでは、きみはなにをしてるの?」
「今は、お仕事の勉強中なんです。和人さんとにご一緒いただいて、お客様回しをしてますわ」
「お客様を回すの?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「お客様回りだよ、ユティス」
和人が訂正した。
「すみません。お客様回りでした」
「あ、お客様回りね。良かったぁ。客先でプロレスでもするのかと思っちゃったよぉ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「和人さん・・・?」
「はい。和人さんはわたくしの教育係なんです」
「教育係って、先輩ってこと?」
「はい。日夜、ご指導いただいてます」
「日夜・・・?夜もかい?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「残業があるんです!」
和人がすかさず口を出した。
--- ^_^ わっはっは! ---
「にしては、なんかとっても親しそうにユティスちゃんと語って、あんた、付き人のくせに気に、食わない男だなぁ・・・」
じろっ。
レポーターはあからさまに嫌な顔をした。
--- ^_^ わっはっは! ---
「うふ。男性には、みんなそうおっしゃられてるんですね?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ユティスちゃん、ソイツ、既に彼氏だったりするの?」
「まぁ、ソイツだなんて、失礼ですわ、和人さんに」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あ、こりゃ失礼。で、その男性はどんな人なの?」
「んふ・・・。とってもステキな方です。わたくしの人生を変えた方・・・」
「オレ、オレです!」
和人はレポーターの後ろで、自分を指差した。
--- ^_^ わっはっは! ---
「マジ・・・ですか?」
ぽっ。
ユティスの頬は、ほんのり赤みを帯びた。
「ええーーーっ。人生を変えた、とってもステディな方って、やっぱ恋人・・・?ボクと知り合う前に結論するなんて、早まってない?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ナナン。そういうわけではなく、わたくし、宣誓にはまだなにもお応えしてません。だから公式には・・・」
「宣誓?応え?公式?なんかさっぱりなんですけど・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
かぁーーー。
ユティスの後方で和人は顔を赤らめた。
「わたくし・・・」
ユティスは答えに窮した。
「その辺にしといてくれませんか?」
和人がユティスに助け舟を出し、レポーターを制した。
「よし、もういいんじゃないか、あんたら。ユティスは仕事に戻らなくちゃならん」
俊介もそれを援護した。
「あ、そう・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
レポーターは、和人と俊介に対して、あからさまに声を低くした。