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149 取材

■取材■




「和人。おまえ、ユティスがあんなに有名なっちまって、大丈夫か?」

「まぁ。心配は、心配ですけど・・・」


「常務の言うこと真に受けて、知らん顔してほっといて、大騒ぎになっても知らないぞぉ・・・」

「わかってますよ」

「ユティスが、異星人だってわかったら、おまえだって、無事じゃすまないんだぞ」


「そういうことなら、先輩だってそうでしょ。オレの先輩、イコール、ユティスの先輩」


「おっ、そりゃ、そうだなぁ・・・」

(もしかして・・・?)


「毎朝、毎晩、テレビの取材が来ますよ」

「そ、そうだよなぁ・・・」

(セレブの仲間入り・・・?)


--- ^_^ わっはっは! ---


「もちろん」

「レポーターは、・・・美人かな?」

(でへへへ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「あのねぇ、先輩。先輩には、イザベルさんて片思いの恋人がいるんでしょう?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「お、そうだった。ん・・・?この野郎、片思いだけ余計だ!」


--- ^_^ わっはっは! ---




「和人さん、お帰りなさい」


ぺこり。

ユティスは和人と二宮に頭を下げた。

「おいおい。和人はトイレに行っただけだぞ」


--- ^_^ わっはっは! ---


二宮はやれやれという顔をした。


「素敵な先輩たちですから」

にこにこ・・・。


「そういうことなら、いつだって歓迎だけどな」

ふんむっ。

二宮は胸を張った。


--- ^_^ わっはっは! ---




ユティスの動画がテレビで取り上げられたことは、国分寺よりすぐに大田原に伝えられた。


「じいさん。ユティスがマスコミに露出しちまった」

「そのようだな」


「テレビ取材に追っかけられるってのは、ぞっとしないんだが」

「なに、心配することもないだろう」


「どういう意味だ?」

「いずれは、世間に知れる。なるようにしかならんということだ」

「じいさん!」


「考えようによっては、ここいらで、ちょいとばかし、ユティスがマスメディアに登場してもらうのは非常に有効かもしれん」

大田原の声は意外に明るかった。


「なにを考えてるんだ、じいさん?」

「隠し通せないのなら、いっそ本当のことを見せればいい」

「そんなぁ・・・。無謀すぎるぜ・・・」

「そうとは、言えんぞ」


「なにを考えている?」

「俊介、一番、重要なことは、なんだ?」

「一に会社の存続、二にオレの命、三にビール、四に・・・」

「ん・・・。もう、言わんでいい」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いや、冗談だ。ユティスの身の安全に決まってるだろ?」

「だったら、みんなが、ユティスを知ってればよい、ということではないか?」


「さっぱり、理解できんぞ」

「まだまだ頭が硬いな、俊介は。さしずめ花崗岩だ」

「うるせい」


「俊介冷静に考えて見ろ。ユティスはみんなが知っている。もし、彼女になにかあったら、一般市民が騒ぐ。マスコミも取り上げる。としたら・・・?」

「ただのゴシップじゃないのか?」


「はっはっは。わからんか?」

「ん?」


「みんなが知ってるってことは、Z国はさぞかし作戦し辛いだろうな」

「なるほど・・・。おいそれと、拉致目的でユティスには近づけないってことか?」


「そういうことだ。市民の目があれば、Z国もそうそうは手が出せん」

「わかったぜ。じいさん。それを地球規模ですりゃ、どこの国も手出しができなくなるってことだな?」


「うむ。だがな・・・、一つ問題がある」

「なんだ?」


「まだ、ユティスが、エルフィア人だという真実だけは、伏せておいた方がいい」

「なんで?」

「世界中が、感動を超えてパニックになる」


「で、どうするつもりだ?」

「ただ、匂わせるんだ」


「匂わせる?」

「ああ。嘘に、少しだけ真実を混ぜて伝える」

「混乱させるのか?」

「ある意味な」


「どうやって?」

「バラエティ番組なら、面白可笑しく深刻には伝えんだろう?」

「なるほど」

「だから、好都合なんだ。みんなの心の準備の第一段階ってわけだ」


「じゃ、オレたちは?」

「至急、エルフィアについて、情報開示プランを練るんだ」

「わかった」




テレビ番組のスタッフたちは、ユティスは撮影された中華レストラン、大山満腹亭と、その場所を突き止めた。


「よし。突き止めたぞ。大山満腹亭はここだ」

「はい」


ぴんぽーん。

自動ドアが開き、チャイムが鳴った。


「ちわぁ・・・」

「毎度・・・」


「NTVSです」

「ああ、先ほどは、どうも」

大山満腹亭の主人は、満面の笑顔でスタッフを迎えた。


「さ、どうぞ、どうぞ」

「どうも。早速、取材したいんですが、その前に打ち合わせを」

「はい。結構です」


「おい、岩井。カメラ回しとけよ」

「はい」


「じゃ、打ち合わせも含めて撮りますんで」

「もちろん構いません」


「カメラスタート準備」

「いいぞ」

「3、2、1。スタート」


「おい、岩井。個人名、会社名は、伏せとけよ。放送時は偽名を使う」

「了解です」




「ええ。お得意様です。二宮さんなんか、よくご利用いただいていますよ」

大山満腹亭の主人は答えた。


「ん、んっ。その二宮さんて男はともかく・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「可愛い娘ちゃんは、なんて言ってました?」

「確か、ユティス・・・なんたら、かんたら・・・。長い名前でしたね」


「ユティスですか?」

「ええ、そうですよ」


「どうやら、日本人ではなさそうですね?」

「もちろん。髪の色も目の色も黒くなかったですし・・・」


「脱色か染めてたとか?」

「そんなんじゃなかったですねぇ。ありゃ、自然のままですよ。あ、それに・・・」


「なにか、お気づきのことでも?」

「ええ。お店に来た時から輝いていましたねぇ・・・」


「そんなに目立っていたんですか?」

「はぁ・・・。目立つっていうより、文字通り輝いていたんで・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「例の虹色の光が、からだに纏わりついていたってことですか?」

「纏わりついていたんじゃなくて、その、身体から放射しているような感じで・・・」


「光ってたってことですか?」

「まぁ、そういうことでして・・・」


「なるほど・・・。他の人はそれに気づかなかったんでしょうか?」

「どうでしょう。しばらくしているうちに、見えなくなってしまいました」


「ふうん。そうなんですか。で、歌を歌っている時には、見えてましたよね?」

「そうなんです。来た時には、それとなくだったんですが、歌われている時には、完全に光が放射状態でしたね・・・。動画に映っている以上の輝きだったですよ」


「美しかったですか?」

「ええ。そりゃぁ、もちろん。なんか天使を見ているような錯覚に陥りましたねぇ・・・」


「天使ですか?」

「ええ。それが一番納得いく表現です」




一早く、ユティスの存在と正体を嗅ぎつけていたNTVSだった。それは、そのテレビ局内で始まった。


「境!」

「あっ、どうも」


「例のさ、あの動画の可愛い娘ちゃん。見つかったって」

「え?本当か?」

「ああ。近々7時のワイドショーで、やるそうだ。番組スタッフの話だから間違いないだろう」


「じゃ、本人も出るのかな?」

「それは、どうかな。ただ、見なきゃ損だぜ」

「おう。オレ、録画予約しておこう」




「岩井」

「はい」

「今日の取材、すぐに編集に出せ」

「はい」


「オレも立ち会う。それから、明日は、その株式会社セレアムに行く。アポ入れしとけ」

「時間は?」

「何時でもいい。天女に合わせろ。彼女がいなきゃ意味がない」

「了解」




るるるーーー。


「株式会社セレアムでございます」

「どうも。こちらは、NTVSの特番番組のADの岩井と申しますが・・・、かくかくしかじか・・・、ということでして・・・」


「かしこまりました。代表と代わりますので、少々お待ちくださいませ」

「はい」


ぱちっ。


「来たわよ。真紀」

岡本が真紀に目配せした。


「わたしが出るわ」


ぴっ。

「はい。国分寺と申します。いつもお世話になります」


「いえ、こちらこそ。それで、本日、お電話しましたのは、・・・ということでして」


「わかりました。取材は問題ございませんが、こちらも、ごくごく小さな会社ですので、あまり業務に差し支えるようだと、それも困るんですが・・・」


「いえ、それには、及びません。スタッフは、インタビュワー、カメラ、照明、アシステントの4名だけなんで」


「そうですか」

「それで、早速なんですが、本日、そちらにお伺いを・・・」

「けっこうです。本人たちは、外から帰るのが4時になりますけど、よろしいですか?」

「問題ありません。どうも、ありがとうございます。感謝いたします」

「では、準備もありますんで3時にお伺いします」

「はい。けっこうです」


「明日は、事前に、確認連絡をお入れいたします」

「わかりました」




「どうだった、岩井?」

「ばっちし、OKです」

「そうか、よくやった!すぐに準備にかかるか」

「はい」


「それにしても、意外なほど、あっさり取れちまったなぁ・・・」

「そうですね。なんか、われわれが連絡することがわかっていたような感じです」


「そうか。覚悟してたんじゃないか?」

「そうですね」


「カメラは、インタビュー前の外にいる時から、すべて回しておけよ」

「了解です」




「和人、今いい?」

「あ、真紀社長」

「3時に戻ってこれる?」

「事務所にですか?」


「そうよ。急用。テレビの取材が決定したわ」

「テレビの取材って、またなぜ?」

「石橋の投稿動画よ。ここを突き止められちゃったの」


「それ・・・、まずくないんですか?」

「どうしようもないじゃない。もう、なるようにしかならないわ。それでね・・・」

「はい」


「戻る時、ユティスを忘れてこないでね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「当ったり前です」


「ここまで、警護官の車が、あなたたちの後ろを固めてくれるはずよ」

「まだ、付いているんですか?」

「ええ。大田原太郎が解除指令を出すまでね」




「ユティス。えらいことになっちゃった」


「なんですの?」

「テレビの取材だって。3時まで、事務所に戻らなきゃ・・・」


「戻ることはなんでもありませんわ。いざとなれば、アンデフロル・デュメーラが、時間きっちりに転送してくれます」


ぼわんっ。

和人はすぐにそれが想像できた。


「ダメダメ。いきなり、客先から消えるのは、まずいよぉ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「では、3時までに戻れるようにしなくてはいけませんわ」


「じゃ、今日は、佐野部長のとこは電話にした方がいいよね?」

「そうですね。カフェでお昼を取っていたら、すぐに時間になりますから」


ぽっ。

ユティスは頬を染めた。


「ん?」


にこっ。


「おいおい、今11時だよ。3時までに、いくらだって時間は・・・」


「あると思ってると意外にないんです」


--- ^_^ わっはっは! ---


「だって・・・。お昼くらいは、和人さんとじっくりお話したいんですもの。わたくしの教育係りですわよねぇ、和人さんは・・・?」


「あのねぇ・・・。なにを考えてるんだい、ユティス?」

「顧客のハートを掴む練習・・・。にっこり笑って、見つめ合って・・・、一言一言、心を込めて、恋人を口説くように・・・」


じーーーっ。

にっこり・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「和人さん・・・」


じーーーっ。

にっこり・・・。

どきっ・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「んんっ・・・」


かぁーーーっ。


「き、きみには・・・、その練習は必要ないよ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それなんだけどさぁ、お昼で、3時間もカフェにいるつもりかい?」

「教育のお時間をください・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「うふ」


(まったく、なんの教育だよ・・・)




テレビの特番で、ユティスの動画と短いインタビューが放映された。


「まずは、これですね」

ユティスの歌が流された。


「これが撮影された中華レストランのご主人のインタビューです」


ホストの一言でビデオが流された。


「いやぁ、びっくりですよ。うちに来たお客様だったなんて・・・。ええ。うちのお得意さんでね。よくご利用くださってまして」


「この動画どう思われます?」


スタッフの再生した動画には、ユティスの周りに、淡い光が纏わり付いていた。


「ええ。確かに、そのように見えました。いえ、もっと輝いてましたよ。なんか、神々しくて、わたしも、すっかり魅入られてました」


「なんだと思われます?」

「さぁ・・・。あの方たちのお話では、生体エネルギー場の放射現象で、魂とか、オーラとか言ってましたね」


「生体エネルギー場?」

「ええ。わたしもそうですが、善人にしか見えないんらしんです」


「善人にしか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「とにかく、そんなものが見えたんですね」

「ええ。はっきり見ました。カメラにまで映ってただなんて・・・」

「カメラも、善人なんですね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「少なくとも、悪人じゃないです」

「そりゃ、そうです。カメラはモノですから」


--- ^_^ わっはっは! ---


「んん。で、どうでした?その彼女?」


「どうって、確かに日本人には見えませんが、ちゃんとした生身の人間でしたよ。お酒も少しだけですけど、飲まれていたようですし、料理も召し上がられていましたし、背中に羽が生えていたわけでもないし・・・、頭の上に、輪っかもありませんでした」


--- ^_^ わっはっは! ---

「じゃ、天使ではないと?」

「まっさか。人間ですよ。ただ・・・」

「ただ?」

「彼女の歌は、魂に響くような感じで、なんとも言えない幸福感に包まれました」

「それは、音とはべつのなにかが、あなたに作用した、ということですか?」

「さぁ、それはね・・・。わたしは数学者じゃないんで」

「ええ?」

--- ^_^ わっはっは! --

「そういう意味じゃ、ネットで言われてるように、天使に会ったって感じがしましたね」

「そうですか」




「で、ついに、番組は彼女にたどり着きました」

「うわぁあ!」


どどどどど・・・。

音楽が鳴りドラムがその瞬間を暗示させていた。


どどどどど・・・。

「出して、出して!」


番組のステージ中央のカーテンにスポットが当てられた。


さぁーーーっ。

ぱっ。


ゆっくりとカーテンが上がったが、そこにはだれもいなかった。


ぶぶーーー。


--- ^_^ わっはっは! ---


ブザーが無情な結末を告げた。


「え?」

スタジオは一瞬沈黙し、次の瞬間不満の声に包まれた。


「なーによ、これ?」

「いないんじゃないですか?]

「どうも、みなさん。お騒がせしまして、大変、申し訳ありません。ご本人様は、本日、急用で来れないんで、ビデオでってかぁ?」


ぶー。

ぶー、ぶー。

スタジオにブーイングが起こった。


「あの、ちゃんとインタビューしてきましたよぉ!さ、ビデオ、キュー!」


かくして、テレビ取材による、ユティスのインタビュービデオが流れることとなった。

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