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148 TV

■TV■




テレビのワイドショーはユティスの動画を報道していた。


「トリックじゃないのですか?」

「ええ、そこで専門家に調べてもらったのですが、デジタル補正はされていないということなんです」


「だって、人間の体から光が出るなんてことはありえないじゃん」


「これは、間違いなく、オーラですね」

「カメラのレンズ反射でもないという結論です」

「それにしても、彼女が歌ってるこの歌ですが、響きませんでしたか、体の奥底に」

「ええ、わたしは、胸の中で魂が揺さぶられるような感じが」

「そうなんです。この投稿を見たかぎり、多くの人が魂が揺さぶられるってコメントしているんです」

「これはいったいどういうことでしょうか?」

「とても不思議な感覚です。表現できません。ただ、非常に安らかな気分になりました」




「んん?あーーー!ユティスぅ!」

茂木も自宅のテレビでそれを見ていた。


「そういえば・・・。石橋、スマホで、ユティスが歌ってるところを撮ってなかったかしら・・・。ええ、そう。確かに石橋が、スマホを構えていて、わたしが話しかけたのを無視したのよ。まさか、動画サイトに投稿するなんて、思いもよらなかった」

茂木はテレビに釘付けになった。


「あーーー!」

「どうしたの?年頃の娘が大きな声を出したりして・・・」

「だって、会社の新人がテレビに映ってるんだもん」


「あなたの会社の新人さんが?」

「ええ、そうよ」


母親は茂木のそばに来ると、ソファーに一緒に座った。


「この娘がそうなの?」

「そう」


「外人さんじゃない?」

「うん」

「あなたの会社、国際的なのね?」

「そうよ。最近じゃ宇宙的って言うみたい」


--- ^_^ わっはっは! ---


「しかし、なんて優しそうな人かしら・・・」

「お母さんもそう思うの?」

「ええ」


「それだけじゃないのよ。実物はすっごく可愛くて美人なんだから・・・」

「わかるわ。え、なぁに、この光?」

茂木の母親は、ユティスに纏わりつくように揺れている光のことを言った。


「ああ、それね。わたしにも実際に見えたわよ。なんか、あまりにキレイで天使みたいだった」

「不思議・・・。本当に天使だったりして・・・」

母親は夢見るような目になった。


「なに、バカなこと言ってるの、お母さん」

「それで、この女の子、なんて名前なの?」

「ユティス。ユティス・なんたら・かんたら・ベネルディンとか言ってたわ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「どこの国の人?」

「エルフィア」

「ヨーロッパかどこかなのね?」

「うん。確か、そう」


--- ^_^ わっはっは! ---



番組の司会者は先を続けた。

「それに、彼女はいったい何語で歌っているんでしょうか?」


「ラテン語!」

「イタリア語!」

「ハズレ」

「バスク語!」

「ブブー」


「マレー語!」

「はい、残念」


「スワヒリ語!」

「どんどん、ハズレていきますねぇ」


「ウルドゥー語!」

「え、どこですか?」


「アイマラ・インディアン語!」

「タミール語だぜ!」

「絶対に、クレオール語!」

「タガログ語よ!」

「違うぜ、ハンガリー語!」

「茨城弁!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ブ、ブー!」


「違います。皆さん、いずれも違うんです。世界中で言語学者たちがこの映像の女の子のの歌っている言葉を分析したんですが、地球上のいかなる言葉でもないと結論付けているんです」


「どういうことですか?」

「それこそがナゾなんですねぇ」


「適当に歌ってんじゃないの?」

「でも、明らかに意味を持った言葉に思えますね。デタラメな言葉を意味もなくつないでいるようには、とても見えません」


「まさに。この歌で繰り返し口にされているのは、『オーレリアン・デュール・ディア・アルティーア』という言葉です。もし、これが意味のないでたらめなら言葉なら、こうも何度も繰り返すことはないとのことです」


「これも言語学者のコメントですか?」

「そのとおり」


「なんて意味ですか?」

「だから、わかるわけないじゃないですか。未知の言語だって言ったでしょ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なんか隠してるんでしょ、どうせ・・・?」

「疑り深い日とですねぇ。わたしに聞かないでくれます?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「もう一度、見てみましょう」

VTRが回った。


「オーレリアン・デュール・デイア・アールティーア・・・」


「はい、止めてください」

ぴっ。


「皆さん、この映像がどこで撮られたか、おわかりですか?」

「うぁお!中華レストラン!」

「あっ、あれ、ひらかな・・・。日本なの?」

「当ったりぃ」


「それに・・・。中華レストラン大山・・・なんとかって・・・」


「はい。何と、皆さん。この映像は日本で撮られたんです」


「まっさか!」


「ここで、映像をアップにしてみます。はい、どうぞ」

映像がアップになった。


「大変な美女というか、可愛い娘ちゃんというか。とっても優しい顔」


「目の色は青か、紫っぽいわね」

「ダークブロンドね。髪の毛も染めたり、ブリーチしてるんじゃなく、ナチュラルじゃないかしら・・・」

「この娘、ハーフかなぁ?」

「どう見たって日本人じゃないわ」

「あれ、あれ。あの後ろに映ってる男は、日本人だぞ」


「そのとおり!」


「どこで撮られたんですか?」

「ちゃんと調べてあります」


「中華街」

「可能性あり」


「ホントはどこなんですか?」


「この投稿があった日から換算しました。番組のスタッフが、大山なんとかとつく名前の中華レストランを、総出で探しました。それで、投稿日を入れて3日以内に貸切をしたお店は12店。いいですか、日本中にいくら中華レストランがあると思っているんですか。星の数。そう、そのうちの12店ですよ。特定したも同じです。ということで、来週も続きます。本企画どうでしょうかぁ?」


「見たーい、見たーい!」


「番組では、彼女はいったい何ものなのか、あの歌は何なのか、ナゾの追跡を続行いたします。この映像をアップされた方、お知り合いの方、番組にご一報ください。彼女を知っている方、いませんか。もちろん、ご本人、大歓迎です。情報を受付ます。もう一度言いますね。控えてください。情報受付ハッシュ・タグは、#tenshi-megami-mtvs。テロップを流してまーす。それから、ご本人さん。ぜひ、ご連絡して、スタジオにいらしてくださいね。あなた、日本中で有名になってますよ」


「うぁーい!」


「ナゾの美女現る。彼女は天使か女神か妖精か。来週を請うご期待。信じるか否か、それはあなた次第です!」




ぷるるる。


「和人か?」

「はい。例の動画投稿の件で、話しておかなければならないことが・・・」

「だれが撮ったかというか、Z国に操られているか、知ってるんだな?」


「はい。実は、石橋さんが・・・かくかくしかじかで・・・」

「石橋が、なに者かに操られて、無意識で撮っていたというんだな?」

「そうです。でも、石橋さんは悪くはないんです」


「どうしてわかった?」

「アンデフロル・デュメーラの警告です」


「アンデフロル・デュメーラ。あの、空に浮かんでて、目には見えないという、でっかいエルフィア美女か?」

「ええ。たまに目の前に出てきますけど・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「その石橋をコントロールしている輩はわかっているのか?」

「ある程度は予想がついています」


「だれだ?」

「恐らく、Z国通商部のリッキー・Jかと・・・」


「やはりか・・・。しかし、なんで、やつらにユティスの存在がわかるんだ?」

「一度、リッキー・Jと接触したんです。オレが・・・」


「どこで?」

「とあるIT研究会の懇親会です」


「そういうことか・・・。なぜ、もっと早く言わなかった?」

「すみません。あの時は、まさか・・・」


「まぁ、いい。過ぎてしまったことだ。その時の様子を詳しく聞かせろ」

「でも、ややこしいので電話では・・・。詳しい話は、直接お会いしてからの方が・・・」


「盗み聞きされているというのか?」

「それもですが、ユティスと一緒にいた方がご理解が早いかと」


「わかった。すぐにそっちに行く」

「ありがとうございます」




ぷっ。


「和人ね?」

「ああ。まったく、石橋がスマホでユティスを撮ってたなんて・・・」


「俊介?」

「なんだ、姉貴?」


「そのことだけど、実は、わたし、あなたが和人のところで話してる時に、石橋から相談を受けたの・・・」


「石橋だって?」

「ええ。この件よ。わたしは、石橋のところに行くわ」


「大丈夫か?和人の話だと、Z国が、ユティスがわれわれのところにいることを、嗅ぎつけてるらしい。それに、石橋は既にZ国に操られているらしいぞ」


「ほんと?」

「リッキー・Jに暗示を掛けられているに違いない」


「じゃ、行くわね」

「待てよ。姉貴独りじゃ心配だ。道中狙われでもしたら・・・」


「まぁ、心配してくれるの、わたしを・・・」

「当たり前だ。会社をここで潰されてたまるか!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あ、そう。やっぱり、あなたはそこにいくのね」

「姉貴、一緒に行かせてくれ。和人のところはその後だ」

「はいはい」




ぴんぽーーーん。


「はい、石橋です」

「セレアムの国分寺と申します」


かちゃ。


「まぁ、社長さん、それに常務さん。さ、どうぞ」

「おじゃまします」

「失礼します」


「ほら、可憐。社長さんと常務さんよ」

「はい」


「さ、おあがりください」

「はい」


「こんばんは」

「こんばんは」


「さっそくで、申し訳ないけど、二人きりでお話しを」

「姉貴、オレは車で待機するぞ」

「わかったわ」


「真紀さん、ちょっと待っててください。お母さん?」

石橋は母親を呼んだ。


「なぁに?」

「ちょっと仕事のことで、あんまり公にできない話なの。だから・・・」

「わかったわ。二階のあなたの部屋に行きなさい。わたしは下にいるわ」

「ありがとう、お母さん」


「すみませんねぇ、お母様」

真紀は母親に礼をした。

「いえいえ、どうぞ」


「お母さん、なにかあったら呼ぶから」

「はいはい」

二人は二階の石橋の部屋に上がった。




とんとん・・・。

かちゃ。


「どうぞ、お入り下さい」

石橋が自分の部屋に真紀を入れた。


「ふうん。もっと、女の子女の子した部屋かと思ったわ」

「もう、高校生じゃありませんから」

「なるほど。アイドルは卒業ってわけね」


真紀は、机の上にきれいに飾ってある、石橋と和人とのツーショット写真を見て、にっこり微笑んだ。


「ふーーーん」


--- ^_^ わっはっは! ---


「きゃあぁ!」


ぱたん。

石橋はすぐに写真を隠した。


にこっ。

「ハイキングの時のね?よく撮れてるわ。楽しそうね」

真紀は優しく微笑んだ。


「ええ・・・。でも・・・」


石橋は真っ赤になって、言い訳をした。

「あの時は、和人さんへの気持ちに、気づいたばっかりで・・・」


「石橋。あなた、自分じゃ、わからないかもしれないけど、とっても可愛いわよ」

「そんなぁ・・・」


「ウソなもんですか。もっと、自信を持ちなさい。和人だって・・・。あ、ごめん」

「いいんです。それより、ご相談の件なんですけど・・・」


石橋は本題に戻すことで、それ以上、真紀の関心を広げないようにした。


「それで、どうしたの?」

「これです」


石橋はスマホの動画を再生して見せた。


「これ、ユティスじゃないの?」

「はい。問題は、これをわたしが撮ってたことを、わたし自身ぜんぜん覚えてないということなんです・・・」


「そっかぁ・・・。詳しく聞かせて」


「はい。とにかく、ユティスさんが歌っていたのは記憶にあるんです。でも、わたし、スマホを取り出したことも、それでユティスさんが歌っているところ撮っていたことも、まったく記憶にないんです・・・」


「動画投稿サイトにアップしたのは?」

「それも、まったく記憶がありません。本当です・・・」


「不可思議ねぇ・・・」

真紀は考えているようだった。


「それに、サイトの動画はもう削除しました・・・」


にこっ。

「信じるわよ、石橋」


「真紀社長・・・」

「どこかで、だれかが、あなたに語りかけてくるような声を、聞いたことがある?」

「声・・・、ですか?」

「ええ、そうよ。頭の中で、語りかけてくるような感じで・・・」

「ん・・・」


石橋は少し考えて答えた。

「わかりません。とにかく、なにがなんだかわからなくて、自分が怖いんです」


「わかったわ。ちょっと、メール履歴見せてくれる?あ、プライベートに係わるならいいけど」

「いいです。わたしも調べましたから」


「なるほど・・・」

石橋のメール履歴には、変ったところは見られなかった。


「特にサイトらしきところに送った様子はないわねぇ・・・」

「はい・・・」


「あとは・・・」

「PCのメールですか?」


「それよ。PC経由なら、スマホに履歴がないのはわかるわ」


「これです」

「ふーーーん・・・」

石橋のポータブルPCのメール履歴にも、怪しいところはなかった。


「おかしいはね。こっちもなしか・・・」

「ひょっとして、会社のPCでしょうか?」


「可能性としてはね」

「じゃぁ・・・」


石橋は、会社に行こうと言おうとしたが、真紀に制された。

「だめよ・・・。今日は遅いし、あなたは休んでなさい。明日調べましょう」


「いいんですか?」

「ええ。今更、じたばたしても、状況は変らないわ。それより明日に備えて休みなさい」

「はい・・・」


「どうも、悪かったわね。あまり相談にのってあげれなくて」

「そんなことないです。わたし、真紀社長が着てくれたんで安心しました」


「よし、その調子よ。じゃ、帰るわね」

「はい。おやすみなさい」

「おやすみ」




ばたん。

真紀はワゴンに戻ってきた。


「どうだった?石橋のスマホに動画が入ってたんだろ?」

俊介が言った。


「ええ。会社支給のマイフォンよ。確かめたわ。でも、彼女、撮った覚えも投稿した覚えもないって言うの」


「ふむ。操られていたとしたら、不思議じゃないな・・・」

「とにかく、石橋本人が、スマホにあれを見つけた時には、気が動転しちゃって・・・」

真紀が続けた。


「そうか、石橋がウソをつくとは、とても思えん」

「そこが不思議なのよ。そうかといって、石橋以外が彼女のスマホに触れる可能性もゼロに近いわ。いったい誰が、どこで、どうやって?」

真紀は首をひねった。


「和人の予想する通り、ユティスの正体とプロジェクトそのものを知ったZ国の仕業か?」


「どうやってするのよ?」

「石橋も、知らない間に操られていたんだ。和人と石橋は、IT研究会の懇親会で、Z国の通商部の人間と接触したことがある」


「ホント?」

「ああ。たった一度きりだがな・・・、それでも、やつらには十分だ」


「でも、そのったt一回の顔合わせで、どうして、石橋がユティスに繋がるとわかったのかしら?」

「わからん。和人なら・・・、知っているだろう」


「マインド・コントロールかしら?」

「ああ。Z国ならさもありなんだ」


「だったら、マジ、ヤバイわねぇ・・・」

「そうだな。なにしろ、こっちは、そのリッキー・Jという通商部の人間の名前以外、ヤツらのことは、なんにも知らん」


「不利ね・・・」

「そういうこと・・・。それで、姉貴、驚くな」

「え?な・・・、なに?」


「あのリッキー・Jは、テレパスだ。それもかなり強力な。いわば、Z国の秘密兵器だ」

「俊介・・・。まさか、それで、ユティスの正体を・・・」


「いや、まだ正確には知っていまい。だが、いずれそう結論するだろう。ユティスは地球人ではないとな。そして、その次は、なんとしてでもユティスを手に入れようとする」


「待って。石橋は、動画の投稿はしてないのよ」

「いや。したんだ。だが、したことを覚えていないんだ」


「でも、なんのために?ユティスが、人目に触れたらまずいんじゃない、Z国にしたって」

「なるほど・・・」

「なにか、世間一般で話題なることで、彼らの利益になる情報が手に入るとか・・・。そういう理由があるかもしれん・・・」


「たとえば?」

「そうね。誰かが、あの娘、あそこで見たことあるって、TV局に知らせるとか・・・」

「そして、みんなの注目がそこにいくか・・・」


「注目がいくと、ターゲットが明確になるわよね。例えば、住んでる場所とか・・・」

「住んでる場所か・・・。それは調べがついてるかもしれん。オレはもっと裏があるように思える」


「マスメディアに出ることで有名になる・・・。当然、大っぴらに拉致などできるわけがないわ・・・」

真紀は考え込んだ。


「彼らに絶対的に不利になるのよ。そんなことをZ国が進んでするって言うの?」

「姉貴の言うとうりだな。だが、石橋を介してインターネットに晒したんだ。それでも、奴等が得をするものとはなんだろう・・・?」


「とにかく、さっきのハッシュ・タグ監視してみるわ」

「頼む、姉貴」

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