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143 歓迎

■歓迎■




時間になり、大山満腹亭には株式会社セレアム様ご一行が、新人歓迎会を開こうと一斉に席に着いていた。


「さぁ、皆そろったかなぁ?」

真紀が和人にきいた。


「真紀さん、そろいましたぁ!」

和人は人数を数えて、両手で大きく丸を描きOKを出した。


「よぉし、じゃあ、始めるわよぉ?幹事、宇都宮和人!あなたにバトンタッチするわ!」


ざわざわ・・・


「すっごく、真紀社長はキャリアウーマンって感じがします。ご判断がとても早くて正確です。エルドといるような感じですわ」

ユティスは真紀のてきぱきした様子に感心した。


「社長と常務の二人は二卵性双生児。真紀社長は美人だし、相当なキレモノだよ。常務をはじめ誰も逆らえない」


「うふふ。和人さんもですか?」

「いや、もっと強力な人がいるから、二番目かな・・・」


「一番目はどなたですか?」

「きみには見えない人だよ」


「わたくしが見ることができない方ですか?」

「リーエス。でも、きっとその人を知ってると思うよ」


「ええ・・?」

ユティスは、そんな親しい人間が和人にいるのかどうかわからなくなり、不安そうに尋ねた。


「降参です。お教えくださいますか?」

「この人だよ・・・」


ささっ。

そういうと、和人は自分のスマホの壁紙を見せた。


にっこり。

そこには精神体であの青空をバックに微笑んでいる天使のようなユティスがいた。


「絶対にさからえないよ、彼女には・・・。あは」

和人は照れ笑いしてユティスの反応をうかがった。


「まぁ!」




「おーーーい、そろそろ始めてくれぇーーー!」


ざわざわ・・・。


「和人、やってよ」

「はい」

和人は前に出てくると、カラオケ用マイクを片手に一同を見回した。


「えーーー。テスト、テスト。本日は晴天なり。本日は晴天なり」


--- ^_^ わっはっは! ---


きーーーんっ!


「きゃあ!」


きーーーんっ!


「うは!」

和人のマイクがハウリングを起こして、甲高い音を発した。


「音量下げろよ!」

二宮がすっとんできた。


てきぱき・・・。

ぴっ。


「ついでにエコーも切ったから、もう大丈夫だ」

二宮はハウリングが治まったのを確認すると、後ろに戻っていった。


「なぁに、やってるのよぉ。マイクのテストなんて要らないから、早く始めなさい!」

真紀が催促した。



「えーーー、失礼しました。本日は皆様お忙しい中、当店、大山満腹亭にお越しいただき誠にありがとうございます。当店、大のお得意様の二宮様のご紹介で、株式会社セレアムの新人ユティス・アマリア・エルド・アンティリア・ベネルディン様の歓迎会をご開催いただき、無常の慶びといたす次第でございます」


「うぁ、長ぁーーーい名前!」

「わぁお!」


ぱちぱち・・・。


「お静かに。つきましては、僭越ながら本日の進行役を勤めさせていただきます、入社2年目、ついに後輩ができることになりました、宇都宮和人と申します・・・」


「和人、前置き長すぎーーー!」

「さっさと乾杯にしろーーっ!」


むっ。


(うるさい人たちだな、ホント・・・)


「まずは、株式会社セレアムの社長、国分寺真紀様のご挨拶を・・・」


「はぁい。ユティス、立って」

「はい」


すく。

ぱんぱんっ。


「社長の真紀です」

にこっ。


「こちらが、新人のユティスちゃんです。はい、ご挨拶」

「みなさん、ユティスと申します。よろしくお願いいたします」

ぺこり。


「はぁい、よくできました」

「ありがとうございます」


すとん。


「え?」

「それで終わり?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いけなかったでしょうか?」

「もうちょっと、しゃべってよ、ユティス」

「そうだ。そうだ」


「あの、生まれ故郷だとか出身学校とかの紹介はないのぉ?」

「そうそう、趣味とか好きなお料理とか好きな男がいるとか、いないとか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


(やばい・・・)


和人はみんなを見回した。


「それじゃ、まず、趣味は?」


「えーーー、そういうことは、個人情報保護に抵触しますので、あとで、個人的な了解を得て、直接本人にきくことにしてください」

和人はとっさに言った。


「こら、和人、あなたに聞いてんじゃないわよ!」

「じゃ、続けて、常務の国分寺俊介氏、お願いいたします」

和人はそれを無視した。


「おう」


すくっ。

俊介は、おもむろに立ち上がると、ユティスに向かって両手を広げた。


「ユティス、ようこそ、宇宙一の会社へ!」


「はい!」

にっこり。


--- ^_^ わっはっは! ---


「いいぞぉ!ユティス」

「だって、和人さんがいらっしゃる会社ですもの・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


かぁ・・・。

和人は壇上で真っ赤になった。


「おおおーーー。いいぞ、ユティス!」


ひゅう、ひゅうーーー!

ぴーーー。


「みんなぁ、この宇宙一の我が社の今年の新人、ユティスはご覧の通りのスーパー可愛い娘ちゃんだぁ!もちろん。きみたちも、スーパーの可愛い娘ちゃんにはなれるぞ。うむ。口うるさいという若干の問題は無視して・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ぶーーー!」

「ぶぅーーー!」

「こら、俊介!取って付けたような言い方するな!」


「あー。とにかく、大切にしてやってくれ!オレは女性社員は可愛い娘ちゃんしか取らん!みんな自信を持ってくれ。また、可愛い娘ちゃんには、全員外回りをさせる。クライアントは喜ぶし、事務所男たちは、仕事に身が入るってわけだ!」


ぴー、ぴー!


「事務所に残ってる男って、あんたのことじゃない、俊介!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いいぞぉ、セクハラ常務っ!」


「しかしだ・・・。悲しい知らせがある!」

「おお、なになに?」


「この和人が、彼女に早くもツバをつけてしまった。おまけに、なぜだか知らんが、大切な新人であるところの大切なユティスが、教育役にコイツを選んでしまった。わが社では、新人の権利で教育係は、自分で指導の先輩を選べることになっている。知っているな?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「えーーー?」

「知らなぁーーーいです」

「そんな決まり、いつできたのよぉ?」

社員たちは文句を言った。


「まぁ、それは、さておき、まさか、ユティスがよりによって駆け出し野郎の和人を選ぶとは・・・。マン・ツー・マンで、手取り足取り指導にあたる、ことになってしまったァ。これから、毎日・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ちょっと、待ってください、常務!誤解を生むじゃないですか、その言い方!」

「きゃぁー、和人のエッチィ、変態っ!」

「セクハラよ、セクハラ!」 

「キャーキャー」


「よぉーし、オレも男だ!また、規則は規則だ。オレも規則は守ってやろう。和人、ユティスは3ヶ月預ける。好きなようにしろ。じゃなくて、しっかり教育をしてくれ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


俊介は一同を見回すと一呼吸置いた。


「しかしだ・・・。それにしても、納得いかんだろうが、みんな?」


「いぇーーーい!」

「うぉーーー!」


ぱちぱち・・・。


「そうだ、そうだ!」


「特に、喜連川イザベルに、失恋中の二宮っ!」


「出たっ、俊介の無茶振りっ!」

「キャーッ、キャーッ!」

「二宮さ~~~んっ!」

「ワーッ、ヤンヤ、ヤンヤ!」


ぴき!

ばん!


「うー、うっせいっ!まだ失恋したわけじゃないつーの!」


--- ^_^ わっはっは! ---


(あちゃー、二宮先輩・・・自爆だよ!)


「ハァーッ、ハァーッ!」


どんっ!

「今、はやしたてたヤツ、ぶっ殺してやる!」


「殺してぇ、殺してぇ、二宮ってば・・・!」

「ま、真紀社長までっ!」


「後で、和人には酒飲ませて、皆でぼてくりこかそう。以上!」


「そうだ! そうだーぁ!」


わーわー!


「常務も、全然ユティスの紹介になってないっすよぉ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


(ふふっ、和人さんも二宮さんも、人気者なのですね?)

(いじめです。いじめ!)


「えー、そういうことで、乾杯の音頭は・・・・」


(誰にしようかなっと、考えてなかった!)


和人の目と茂木の目が合った。

ばちっ。


「も、茂木マネージャーに・・・」

「和人、あなた乾杯の音頭を、女の子に振るのぉ?」


「でーーーっ!」

「まぁ、いいわ」


茂木は右手にグラスを持った。


「じゃあ、ユティス、ようこそセレアムへ。乾杯!」

茂木はグラスを目の前に高く掲げた。


「そ、そんだけですっかぁ?」


「うるさいわね。いくよぉ・・・!ユティスにカンパーイ!」


わーわー!


「乾杯!」

かちん。

かちん。


「ドサクサにまぎれて、しっかりユティスを右隣に確保してんな・・・」

二宮は和人のコップにビールを注ごうとした。


「二宮先輩、ダメダメ、オレ、車の運転があるんですから」

「こら、質問をはぐらかすな」


「あの、二宮さん、わたくしが和人さんのお傍に座ったんです」

「お傍に座ったぁ?」

「わたくしの教育係りですもの」


「えーーーっ、本当だったの?和人がぁ?ありえない!」


「おやおや、酒、一口やっただけで、もうからんでんの、二宮っ」

「真紀さんまでもが、オレをイジメるんですかァ・・・」


「二宮、あなた、二人にかまってる暇あるのぉ?」

「そうですよ、二宮先輩には、これから口説かなくちゃいけない、イザベルさんという女性がいるんでしょぉ?あは」


「そうですよ、二宮さん」

石橋も真紀の計らいで、和人の左隣に位置していてた。


「あーっ、石橋、お前も和人の隣かぁ?」


にこにこにこ・・・・。

「そうでーす!羨ましいですかぁ?」


ぎゅっ。

ぴとぉ。

石橋も、最初の乾杯で気分が良くなっていたので、和人の左手を取ってくっ付いた。


「アホ。だっれが、こんなヤツの側なんかが・・・」


きっ!

ぎゅっ。

石橋と、ユティスは、和人の両手をそれぞれが掴んで、二宮を見据えた。


--- ^_^ わっはっは! ---


石橋とユティスは、和人の両手をそれぞれが掴んで、二宮を見据えた。

「じょ、冗談だってば!」


にこっ。


「あははは。こっちもジョークでーーーす」

「ジョークでーっす・・・わ」


「ねーーー」

「ねーーー」


石橋とユティスは顔を崩した。

にこ。


「乾杯しましょうよ。イザベルさんに、チューしたい、二宮さん!」


「本気で怒るぞ、石橋!」

「きゃっ、その怒ったお顔、す・・て・・き・・!」

真紀がときめいたように、目をパチパチさせて両手を合わせた。


「真紀さんっ!」

「まぁ、4月にはイザベルもうちに来てくれそうだし、まずは、一杯やんなさいてっば、二宮!」


「オス。それ、ホントっすか?」


にまぁ・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「えへ、えへ・・・」

「ほらほら、ぐうっと、やんなさい!」


どくどくどく・・・


「オレも仲間に入れろ!」

どか。


「常務!」

きゃっ、きゃっ・・・。


歓迎会は始まると同時にあっという間に最高潮になった。




「エージェント・ユティス?」


日本上空32000キロにステルス待機している、エストロ5級母船、アンデフロル・デュメーラから、ユティスに警告が発せられた。


「リーエス。なんでしょうか、アンデフロル・デュメーラ?」

「アラームです。あなたの周りで、不穏な思念波をキャッチしています」


「なんですの?」

「詳しくはわかりません。エージェント・ユティス、あなたのことを探っているようです」

「まぁ・・・」


「モニター・ログを取りますか?」

「リーエス。お願いしますわ」

「リーエス。エージェント・ユティスに危害を加えるつもりではないようですが、どうか、お気をつけを」


「リーエス。ありがとう、アンデフロル・デュメーラ」

「どういたしまして」




「どうかしたの?」


和人がユティスにきいた。


「いえ、なんでもありませんわ」

「そう?」


「ところでさぁ。ユティスは、コイツのどこが気に入ったのよぉ?」

茂木がにたにたしながら、ユティスに尋ねた。


「茂木さん。わたしの名前は宇都宮和人です。コイツではありません」

「そうそう、コイツのどこがいいのよぉ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「真紀さんまで。オレは和人です」


(しっかり無視してくれちゃってぇ)


ユティスは優しい目で和人を見つめた。


「はい。和人さんの魂です」


--- ^_^ わっはっは! ---


「た・・・ま・・・し・・・いっ?」

「コイツの魂・・・?」


ぽかーーーん・・・。

周りは驚いたように口を開けた。


「はい。すごく澄んでいて鮮やかで、とても暖かで・・・美しいんです!」

「見えるものなんだ、魂って・・・?」


「和人、おまえにもあるんだ・・・、魂・・・」

二宮が割って入ってきた。


--- ^_^ わっはっは! --- 


「失礼な!」


にこ。


「そんなこと、ありませんわ」

ユティスは和人に微笑んだ。


「和人さんの魂に包まれると、とても安らかな気持ちになります。そして、とても幸福感に包まれて、わたくしは癒される気がします」


「理・・・解・・・不・・・能・・・」

ぷるぷる。

茂木は頭を振った。


「・・・だとよ、和人、良かったな・・・」

「投げやりなコメントですね、二宮先輩」


「な、ユティス。オレのは?オレの魂・・・」

二宮はユティスに確認を求めた。


「二宮さんのはとても力強いですわ。それに熱く明るく・・・情熱的で努力家・・・」


「わたしは?」

「真紀社長は、力強いと同時に、とても柔らかくふわっとした優しい色をされています。みんなを包んで励ますような・・・そんな感じです」


「じゃぁ、わたしは?」

「石橋さんは、清楚で誠実な感じに見えます。曲がったことはお嫌いですね?」

「ま、そんなぁ・・・」


「いつも、そんな風にオレたちは見えているわけぇ?」

二宮がユティスにきいた。


「いいえ、時たまでしょうか。たまたま、今は見えてますけど・・・」


「オレは、やめとく・・・」


ぐびっ。

どんっ。

俊介は、ビールジョッキを置いた。


「常務は、聞かないんですか?」

「聞くまでもないわよ」


にたっ。

「なんだよ、姉貴!」


「あなたは、魂の代わりに、真っ黒な欲望があるだけ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「知的な正しい欲望と言ってくれ」


ぱこん。

「そのアホ、二宮にもらったわね?」

真紀はレストランのメニューで俊介の頭を軽く打った。


「痛ぇなぁ。二宮も、姉貴に心のこもった、スーパー・プレゼントをしてやれよ」


ぱちっ。

俊介は二宮にウィンクした。


「例のヤツっすか?」

「おう」

「いらない!」


がたっ。

「受け取れ、姉貴!」


「いやぁ!」

「二宮、加勢しろ」

「うっす!」


「はーーー、はっ!」


ばしっ。

二人は、真紀に向かって、宇宙ヒローのファイティング・ポーズを取った。


「いや!あっち、行きなさい、俊介!」


「姉弟ゲンカは、外でやってもらえますかぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あははは!」

場は一気に盛り上がっていった。


(でも、ユティス。オレって、そんなに、きれいな魂なの?)

(はい、とても・・・。わたくしは大好きですよ)

(えへ、ちょっと嬉しいかな・・・)


「不思議な娘よねぇ、ユティスは・・・」

「でも、当たっているわ・・・わたしについては」

「・・・」




「エージェント・ユティス、わたしです」

「はい。アンデフロル・デュメーラ。なにか、わかりまして?」


「リーエス。強力なテレパスに操られている人間がいます。若い女性で、名前まではわかりません。彼女のターゲットは、あなたの行動のモニターです。映像、および音声データの収集を指示されています。物理的な危害を加えるつもりは、ありません」


「会社のどなたかですか?」


「リーエス。セミロングで、あなたより小柄です。今は、テレパスに意識をのっとられていますので、彼女にその自覚はありません。その女性のイメージをお送りしたします」


アンデフロル・デュメーラは、テレパスに意識を支配されているという女性のイメージをユティスに送った。


「まぁ、これは・・・」


「エージェント・ユティス、確認いただきましたか?」

「リーエス。和人さんに、警告を発してください」


「リーエス。おおせのとおりに」

「ありがとう」

「どういたしまして、エージェント・ユティス」


アンデフロル・デュメーラの警告は、和人にも届けられた。

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