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142 動向

■動向■




在日本Z国大使館の置くの秘密会議室では、リッキーたち通商部の人間たちが密かに話していた。


「リッキー、宇都宮和人とエルフィア人はどんな様子だ?」

「エルフィア人の周りは、警備が厳重になっている。50メートル以内に常時数人の私服警官、それに、合衆国SSが張り付いているようだ」


「ふむ・・・。で、どうするつもりだ?」

「なぁーに。それならそれ・・・。マリオネットを使うだけだ」


「例の石橋可憐とかいう女か?」

「そうだ。ユティスというエルフィア人の女は、セレアムというIT系の会社に正式に所属した。そこには、例の石橋可憐がいる」


「リッキー、おまえがIT研究会で知り合った女だな?」

「そうだ。オレの推理は正しかったんだ。今じゃ、あの女はオレの支配下にある。本人は気づいていないが、オレの思念波でいつでもこっちの言いなりだ」


「エルフィア人に、バレてないだろうな?」

「ああ。エルフィア人の女は、オレの思念波を察知する能力があるばかりか、それを遮断する能力もある。だから・・・」

にや・・・。


「だから、なんだ?」

リッキー・Jの意味深な笑いに、通商部長は詳細を聞きたがった。


「彼女が、石橋可憐と離れている時か、他のことに意識を取られている間に、石橋可憐にエルフィア人の能力発揮の証拠が取れるように指令を出す」


「ふむ・・・。それで、今日の予定は?」


「石橋可憐によると、株式会社セレアムでは、夜、エルフィア人、ユティスの歓迎会をする予定になっている。そこで、ユティスの行動を無意識下でウォッチさせ、例の能力を出した時スマホで記録をさせる。絶好のチャンスと言えるな・・・」


「どうやって、こちらに送らせるつもりだ?」

「ソーシャルサイトに、確固たる証拠の写真ないしは動画を、転送させる」

「ソーシャルサイトだと?なぜ、こちらのサイトに誘導させない?」


にやり・・・。

「ソーシャルサイト・・・。だから、いいんだ・・・」


「それでは機密が漏れてしまうではないか?」


「ふふふ・・・。今日のスマホの機能を、知らないようだな、マイク?」

「なんだと?」


「石橋可憐のスマホは会社支給のものだ」

「だから?」

「一旦、株式会社セレアムのセキュリティ・ゲートをくぐって、外にアクセスするんだ」


「そういうことか・・・」

通商部長は深く頷いた。


「加えて、石橋可憐と宇都宮和人のスマホには、登録先以外にはメールできないような設定になっているはずだ」


「ということだな?」

「まぁ、そういうことだ。それに、セレアムの管理サーバーに、石橋可憐が、われわれにアクセスしたというログを残したくはないだろう?」


「確かにな。だが、それなら、なぜ、こちらの専用機を彼女に持たせない?」

「石橋可憐にか?」

「そうだ」


「はっ。すぐ気づかれてしまう」

リッキー・Jは続けた。


「それに・・・、株式会社セレアムのことを調べてわかったのだが、社長と常務の双子は、影の官房長官の噂高い、大田原太郎、彼の実の孫だ」

「なに?大田原太郎の孫だと・・・?」

「ああ。これが、どういうことか、わかるな?」


「うーーーむ。こちらがスパイしている直接的証拠を、即座に、日本政府に握られるということか・・・」

「その通り。と言うより、合衆国や同盟国が最初だな。スマホも通信キャリアのサーバに自動アクセスするということは、そういうことだ」


「合衆国に情報が筒抜けになるか・・・。そいつはまずいぞ、リッキー・・・」


「わが国は、現在、合衆国とは超大型商談を進めている。もし、エルフィア人に関する諜報活動がバレてしまえば、たちまち、商談は流れてしまうだろうな。本国の商務長官が、それを許すとでも・・・?」


「うーーーむ。そんな危険は、絶対に冒したくない・・・」

「そこでだ、ソーシャルメディアを逆に利用する」


「どんな具合に?」


「われわれは、石橋可憐のつぶやきサイトをウォッチしていればいいだけさ。だれもが情報を取れる環境に、まさかエルフィア人情報をアップするなど思うまい。情報がアップされたら、即、こちらに取り込み、記事は本人から削除させる」


「しかし、いくつかの経由サーバーには残るぞ」


「かまわんよ。合衆国や日本側が気づいた時には、われわれは情報を手にしている。大切なのは、われわれが確実な証拠を掴むこと。エルフィア人を確保するために、その能力を確認すること。そして、一番大事なのは、一等最初にそれをわれわれが掴むことだ」


「だが、世界中に一般公開されるんだぞ。そっちは、どうするつもりだ?」

「わかる連中には、わかる・・・。というだけだ」


「わからないヤツには、わからないか・・・」

「そういうことだ。後は、適当にゴシップでも流してしまえば、その間に、われわれは、エルフィア人を確保する算段を練れ、実行に移せる」


「だが、もう一つ懸念がある・・・」

「なんだ?」

「ソーシャルサイトで、有名にしてしまっては、今後、エルフィア人の確保に、支障とならないのか?」


にたっ。

「ふっふっふ・・・。普通、そうなるだろうなぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「リッキー!冗談ではないぞ!」


「わかっている。その時には、ユティスを国賓としてわが国の政府高官から、堂々招待すればいいではないか。どうなると思う?」

リッキーは余裕綽々だった。


「国賓として招聘するだと?」

「ああ。超有名人なわけだからな。道理は通る」


「その途中で、身柄を確保するというわけか?」

「いかにも。やっとわかったようだな、マイク。だから、彼女が日本にいる間に、それを完了する必要がある」


「ふむ・・・。見えてきたぞ・・・」


「で、わが国は公式にユティスを招待してるわけだから、敢えて裏で確保する必要などない。もし、招聘の途中で消えたのなら、わが国を陥れようとする国の陰謀だと、しっかり惚け通すことだ」


「なるほど、独り芝居か・・・」

「日本政府が招聘の回答を出す前に実行に移さねばならない」


「ええ、どういうことだ、リッキー?」

「ヤツらが、われわれの招聘をすぐにOKするわけがないだろう?」

「それはそうだが、それなら、いったいどうやって?」


「そこが肝要なところだ。単に面食らってくれればいいのさ。それで、わが国へのNOという返答が遅れる。それが狙いさ。本国には、日本が回答を遅らさせざるをえないような作戦を実行してもらう。もちろん、すべては慎重にせねばならないがな・・・」


「それなら、うまくかわせるぞ」

「そういうことだ。とにかく・・・」


「なんだ?」

「スピードが命だ。そのための石橋可憐だ」


「うむ。わかった。すぐに実行してくれ」

「了解した。セレアムの社員は、全員、つぶやきサイトにアカウントを持っている」

「期待しているぞ。リッキー・J」




和人たちが事務所に戻るなり、二宮が寄ってきた。


にたにた・・・。

「おい、和人、店、決まったのかぁ?」

「二宮先輩!」


「その顔じゃ、まだだな・・・?」

「はぁ。だって10社も回って来たんですよ。そんな時間ないですよぉ・・・。そうだろ、ユティス?」

「申し訳ございません、二宮さん」


「あはは。ユティスは謝る必要なんかないんだよ。だって、きみは主賓だろ?」

「あ、はい」


にたっ。

「そうだろうと思ってなぁ。見つけてきてやった・・・」


ぽんぽん。

二宮は得意げに和人の肩を叩いた。


(ヤバイ・・・)


「危ないところじゃないでしょうね?」

「信用してないな」

「してます、してます!」


「ばっきゃろう!『上段回し蹴りを食らわす』ぞ!」


「『冗談廻し、下痢を食らわす』んですか・・・・?」

ぽけー・・・?


--- ^_^ わっはっは! ---


「あー・・・。そのぉ、ユティス、女の子は、そんな、はしたないこと言わないの」


「違う、違うよ、ユティス。先輩が言っているのはカラテのことだよ」

「わたくし、まるでわからないんですけど・・・」

それは、ユティスにとって、ハイパーラーニングでは習っていない表現だった。


「わかんなくていーのよぉ、ユティスちゃんは!」


(先輩、キモーーー!)


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんなことより、お店ってどこなんですか?」

「オレの行きつけ」


(やっぱり・・・)


「ギョーザと中華の大山満腹亭じゃないでしょうね?」

「ビンゴ!昼に店長に相談したらOKだと!」


「先輩、今日は歓迎会ですよ、ユティスの・・・もうちょっと、おしゃれな・・・」

「なんだとぉ。後輩を思う先輩の気持ちを、上段からバッサリと・・・。許せん!」


ぽかり!


「イッテー・・・! 何するんですか、先輩!」

「和人こそ、今日、朝から晩まで、仕事もしねぇで、ユティスと独占デートしていながら、料理屋の1軒も見つけて来ないで、よく言った!」


「仕事ですよ、仕事!デートだなんて、人聞きの悪い!」

「情けない!社長たちとオレの愛がわかってないなァ」


(わかりません)


「何か言ったか?」

「言いません!」


「じゃあ決まりだ、店長に正式連絡入れるわ・・・」


すたすた・・・。


(社長といい、二宮先輩といい、何で体育会系なんだよ、うちは・・・)

(二宮さん、こういうところは、社長さんにそっくりなんですね!)

(愛弟子だからね、似たもの同士、妙に波長が合っちゃって・・)




「へっくしょい!だれか、オレの噂してるのかな?」

俊介は、くしゃみをした。


「二宮のアホ風邪うつさないでよ、俊介」

「大丈夫だ、姉貴。アホはもらっていない。うつすのは風邪だけにしとくよ」

「それもいらない」




俊介のウワサは地球だけではなかった。


「クリステアにアンニフィルド、以上であなたたちの地球赴任前情報講習は完了だけど、確認しておくことはある?」

ディリフィスは数日にわたる綿密な情報講習を終えようとした。


「質問」

「リーエス。なぁに、アンニフィルド?」

ディリフィスはアンニフィルドを見つめた。


「あの髯の男、国分寺俊介。もう一度映すことできる」

「リーエス。もちろんです」

「パジューレ、ディリフィス」


ぴっ。


「あは・・・」

にこっ。

アンニフィルドは両手の拳を握った。


(くぅ・・・。やっぱり・・・。なんかイイ男・・・。こういうのタイプなのよねぇ・・・。あは)


--- ^_^ わっはっは! ---


「なにか、質問でも?」

「全身像をお願い」

「パジューレ」


ぴっ。


「うーーーむ。なるほど、そういうことねぇ・・・」


(きゃあ、ステキ!長身でスマートなのに筋肉質で、きりっとお尻が締まってて・・・。モロ、わたし好みじゃない!)


--- ^_^ わっはっは! ---


「アンニフィルド、なにか、お気づきのことでも?」

「リーエス。彼、現地人SS支援スタッフとしてどうかしら?」

「ええ?」

クリステアはアンニフィルドをまざまざと見つめた。


「筋は通ってるわよ。この体躯にセレアム人の血の入った知性。わたしたちの現地活動の協力者にはぴったりだと思わない?」

アンニフィルドは自信たっぷりにクリステアを見た。


「そんなの現地で本人と会わなきゃ、適合するかなんてわからないじゃない?」

「これを見ればわかるじゃないの、クリステア?」

アンニフィルドはスクリーンの俊介の画像を指した。


「わたしは、ソイツの気持ちのことを言ってるの。確かめたの、あなた?」

クリステは眉を上げた。


「『リーエスと言わぬなら、言うまで願おう、地球人』だわよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はいっ?」

クリステアは頭を振った。

「始まったようよ・・・」


ぽけぇ・・・。

クリステア以外はだれも気にしていなかった。


「で、趣味はなんだっけ?」

アンニフィルドは次の質問に移った。


「ここにある限りですが、仕事、アメリカンフットボールとかいうスポーツ、お酒、あとは鑑賞です。いかにも男性というようなものですね」


「ふぅーん。で、鑑賞ってなにを鑑賞するのかしら?」

「さぁ・・・。映画か音楽か、ここでは不明ですねぇ・・・」


「女性じゃない、アンニフィルド」


--- ^_^ わっはっは! ---


クリステアがクールな声で言った。


「ホント?だったら、気合入っちゃうわよぉ・・・」

アンニフィルドは腕まくりする格好をした。


「以上ですか?」

ディリフィスはそれを軽く受け流すと、クリステアを見た。


「そうねぇ・・・。わたしたちの現地待機場所もそうなんだけど、ユティスが待機場所として寝泊りしている家、つまり和人の家、セキュリティをどう考えればいいの?このままでは、Z国とやらに、どうぞお入りくださいって言わんばかりだわ」


「良い質問です、クリステア。考え方は二つあります。一つは、アンデフロル・デュメーラ、つまりすべてが揃って完璧に安全なエストロ5級母船を、ユティス、カズト、お二人、全員の待機場所とするものです。現地には、常に母船と往き来することになります。もう一つは、いまあるウツノミア・カズトの家をそのまま利用するものです。今のまま利用するとなれば、クリステア、あなたが言うようにセキュリティは見直す必要があります」


「で、どっちにするの?」

「ユティスの意向を尊重します」


「つまり、アンデフロル・デュメーラにわたしたちは待機するのではないということでいいのね?」

「リーエス、クリステア」


「わかったわ。じゃ、今あるものでいいから、和人の家の見取り図等を詳しく教えてよ」

「リーエス」


ぴっ。


ディリフィスは解説を始めた。


「まず、全体像です。これは地球のコンピューター・ネットワーク上にあるゴーグルと呼ばれるサイトから引っ張ってきたものです」

ディリフィスは映し出された写真を指した。


「木造ツーバイフォー、一戸建ての4LDKです。築10年、まだ建ててそんなに経ってはいませんね。寝室4つに、それにキッチン付きの広いリビングです。概観は切妻2階建てで、1階に大部屋と寝室1つ、2階に寝室3つです。後は、バス。トイレは各階に1つずつ。庭を入れて土地は、約330平方メートルあります」


「あまり大きくはないわね」

「ナナン。エルフィアではそうかもしれませんが、地球では大きい方ですよ、アンニフィルド」


「時空ロックをかけれるかしら?」

「大丈夫ですよ」

「じゃ、まずはそれね。どう、クリステア?」

「リーエス」


「なにか他になければ、終わりにしたいのですが、なにかありますか?」

「ナナン。終わっていいわ」

「わたしもないわ。終わりましょう」


アンニフィルドとクリステアは同意した。

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