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136 二夜

■二夜■




廊下のどたどたいう音や女将の声がしなくなり、どうやら先ほどの一件は落ち着いたようだった。


「どうだ?」

「大丈夫そうですね」


ほっ。


「よし。部屋に戻ろう」

「2時まで、自分の番ですよね?」

「ああ。しっかり警護するように」

「了解」


さささっ。


警護官たちの部屋は、和人たちのそれとさほど離れていなかった。


そぅーーーっ。


警護官たちは自分たちの部屋で待機し、布団を並べテレビのニュースを見ながら話した。


「どう思う?」

「どうと言いましても・・・」


「あの若い外人娘、ユティスだ。なんで、政府は彼女をそんなにまで守りたがるんだろう・・・?」

「VIPですからねぇ・・・」


「大田原内閣特別顧問の直々の指令だからな。なにかとてつもなく秘密があるに違いないが・・・」

「部長、任務っすよ。それ以上考えても仕方ないっす」


「ふむ・・・。とにかく、Z国のヤツラから、守りきらんとな・・・」

「そうっすね」




二人がテレビを見ていると、心当たりのあるニュースが飛び込んできた。


「では、次のニュースです。本日午後、高速海岸3号線を走行中の車のフロントガラスに謎の表示がされました。走行中の多数の車がまるでコンピューターに制御されてるかのように一斉に自動運転になり、表示から数十分にわたり、車間距離、スピードともに絶妙に調整し合っているような走行が続きました。車の運転手たちは、アクセルもブレーキも特に操作しているわけではないのに、極めてスムースに速度が調整され、追い越しも車線変更も、自分たちが思うとうりに流れるように行われたとのことです。では、その時の状況をビデオで撮った人からVTRを入手しておりますので、ご覧ください」


「ありゃ、部長、これ・・・」

「うむ。われわれの車にも現れた表示じゃないのか?」

「そうっす」




ビデオは車のフロントガラスの下の方に、表示された液晶上の文字みたいだった。


ぴっか、ぴっか・・・。


『安全運転制御履行中。安心してドライブをお続けください』


ぴっか、ぴっか・・・。


表示は、4回ゆっくりと現れ、そして消えた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「それでは、その時に表示が現れたという方のインタビューです」


「あれ、と思ったんですよ。ちょうどフロントガラスの下のほうでね。液晶の文字みたくすうーっと現れましたねぇ。今までぜんぜんそんなことがなかったし、聞いてもいませんでした。それが高速を抜けて対向車線になったとたん。解除されちゃって・・・」


「それが、これですね?」

「あー、それそれ」


ぴっか、ぴっか・・・。


『安全運転制御終了。各自で注意しドライブをお続けください』


ぴっか、ぴっか・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「なんとも奇妙ですねぇ?」

「そうなんです。カーディーラーに問い合わせたんですが、そんな設備は供えてないと言ってね、わけがわかりませんよ」


「高速道路公社にも問い合わせたんですが、あの区間でそんなものは設置してないと言ってましたよ」

「そりゃ、そうでしょう・・・」




「やっぱり、変ですね、部長・・・」

「うむ。こうしてみると、ユティスを中心として、前後だいたい700m以上、あの影響下に入ってたようだな・・・」

部長は腕組みをした。


「じゃ、ユティスに関係があると?」

「オレの推測だがな・・・。ユティスを守るためのなんらかの制御システムが働いてたとしたら、まんざら、おかしくはあるまい。それがなんであるかはわからんがな・・・」

「自分もそれに賛成です」




和人たちの部屋では、和人が常務の俊介に今日の定期連絡を入れていた。


るるーっ。


「常務、和人です」

「おお、和人か。で大丈夫か?」

「はい」


「今日は、どこに泊まってるんだ?」

「えー・・・、温泉宿です」

「そいつはよかった。今夜こそ、ちゃんと一緒に風呂に入れよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「常務!」


(なんで、お風呂のことを常務が知ってるんだろう?)


「社内恋愛、大いに結構!オレが仲人してやろうか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いい加減にしてください!われわれは、純粋なんです!」

「なんだそれ。まるで結婚が、不純だと言わんばかりだな」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんな、意味じゃありませんてば」

「じゃ、明日もな」


ぶちっ。

10時に、和人が俊介に顛末を報告をして来たので、俊介はホットした。




和人が電話をし終えると、ユティスが和人にはなしかけてきた。


「さっきは、お風呂でどうしたんだい?」

ユティスはさっきのことを思い出していた。


「お風呂に入っていましたら、お隣でどなたかお入りになっていたようなので・・・」


「それで?」

「和人さんがお入りになってるのかと思って、木塀の上から・・・」

「男湯を覗いたの?」

「リーエス・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それが・・・」

「オレじゃなかったんだね?」


「リーエス・・・」


ユティスは真っ赤になった。


「それで・・・」

「あははは。見ちゃったのかい、その人の・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「リーエス。その方と、お顔を合わせてしまいました。それで、びっくりして、足をすべらせて・・・」


「お湯の中に、落っこちたってわけか」

「リーエス・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「でも、よく頭を打ったりしなかったよね。よかった・・・」

和人は心よりほっとした。


「リーエス・・・。幸運でした・・・」

「あははは」

「うふふふ」


[どっと疲れちゃった・・・]

「わたくしもです」


「さぁ、布団もしいてあるし、さっさと寝よう」

「リーエス」


和人とユティスは並んで並べられた布団の上に座った。


「どうしたの?」


ささっ。


「よいしょ」


すぅーーーっ。


ユティスは自分の布団を和人の布団とぴったりくっ付けた。


「リーエス。これで完了です」

「ユ、ユティス、布団をこんなにくっ付けちゃって・・・」


「うふふ。これでなきゃ、安心できませんわ」


(や、やばいぞ。やばいぞぉ・・・。オレ、今夜持つかしら・・・)


和人が少し離そうと布団に手をかけた途端、ユティスの抗議が上がった。


「ダメです!」


「そんなこと言ったって」

「ダメです」


「ユティス・・・」

「ダメです。ダメ、ダメ、ダメ。ダメですぅーーー!」


にこっ。

「ダメ・・・です・・・」


ユティスは布団を掴んだまま、和人の布団にぴったり合わせたまま、動こうとしなかった。


「はぁ・・・」


ぷるぷる・・・。


(おー、神さま、オレをお試しにならないでください!)


和人は頭を振った。


「和人さん?」


「眠くないのかい?」

「リーエス。なんだか、お風呂でのぼせてしまってから・・・」


「オレも・・・」

「そうですか。でしたら、お話しませんか?」


「どんな?」

「和人さんの大好きなこと」


「オレの?」

「はい。もっと、コンタクティーさんのことを知りたいです」


「仕事なんだね・・・。エージェントの・・・」

「うふ」


「きみの大好きなことについては?」

「リーエス。お話しますわ」


「まずは・・・、ユティス・・・」

「和人さんから・・・」


「リーエス。わかった」


「質問です。和人さんの大好きなことは?」

「そうだなぁ・・・。えーと、大好きなことをしている時」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それでは、答えになってませんわ」

「やっぱり?」

「うふ」


「急に、言われてもなぁ・・・。そうだ。曲作り。メロディーを考えたり、詩を書いたり、ギターを弾いたり、歌ったり。バンドの仲間と練習したり・・・」


「ステキ・・・」


「あはは・・・。あんまし、うまくないし、曲も駄曲が多いんだけどね」

「いいえ。そんなことはないと思います」

「でもね。200曲以上あるんだ、自分たちの曲」

「それは、すごいですわ。まるでプロのミュージシャンみたいです」


「あはは。数じゃ負けないよ」

「まぁ」


「ユティスは、歌がとっても上手だから、好きなんでしょ?」

「リーエス。歌は2番目に好きなことです」


「2番目?」

「リーエス」


「じゃ・・・、1番は?」

「ふふ。お聞きになりたいですか?」


「うん。とっても」

「大好きな人と、一緒にいることです」


「大好きな人とねぇ・・・。そりゃそうだよ」


「リーエス・・・」

ぽっ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「で・・・?」

「今ですわ・・・。今、一番好きなことをしています・・・」


「あ・・・。オレと・・・」

「はい」

にこっ。


どきどき・・・。

「・・・・ますます、眠れそうにないや」


--- ^_^ わっはっは! ---


「仕方ありませんわ。気持ちを隠し通すことはできませんもの」

「オレも、今、一番好きなことしている・・・」


ユティスは和人の左隣に移動すると、ゆっくりと頭を和人に肩にをあずけた。

ことん。


「先ほどは、本当にありがとうございます・・・」

「どういたしまして・・・」


「アルダリーム・ジェ・デーリア・・・」

「パジューレ・・・」


す・・・。

和人はユティスに軽く腕を回して引き寄せた。


ちゅ・・・。

その瞬間、ユティスの甘い唇が、和人の唇に恐る恐るかすかに触れてきた。


ぶるっ。

そして、次の瞬間、和人はユティスが身を硬くするのを感じた。


さぁ・・・。

和人はゆっくりと身を引いた。


「ダメ、ダメだよ・・・。オレ、これ以上できない・・・。怖いんだ、自分が・・・。完璧にきみを襲っちゃいそう・・・」


「このまま、しばらくいさせてください・・・」

「リーエス・・・」


和人は優しくユティスを抱きしめたままでいると、だんだん、ユティスの緊張が解け、呼吸が整ってきた。時は既に11時を過ぎていた。


すぅ・・・、すぅ・・・。


「眠ろうよ、ユティス・・・」

「リーエス・・・」


ぎゅう・・・。

二人は布団に潜り込んだ。ユティスは、自分の布団越しに、片手で和人の手を握り締め、それを自分の頬で触れた

ぴとぉ。


和人も、目を閉じてその感触に身を委ねていると、いつの間にか寝入っていた。




「和人さん、大好きです・・・」


和人はユティスの声を聞いたような気がして、目が覚めた。ユティスは和人のすぐそばで寝ていた。


(なんて可愛い寝顔をしてるんだろう。。。)


すぅ・・・。

ユティスは、穏やかな表情で幸せそうに寝息を立てていた。


(すてきな夢でも見てるんだろうな。相性、99.99%か・・・。早く、夫婦になれって言っているようなもんじゃないか、それ・・・)


和人は自分で言った言葉に驚いた。


(夫婦か・・・。まだ、やっとキッスできたくらいだ・・・)


「ん・・・」

ユティスは小さな声を出した。


(ええい、ちっくしょうめ。こんなにも大好きなユティが、こんなにも側にいるというのに、なんにもできないなんて、地獄だよぉ・・・)




エルフィアでは、エルドがSSたちの控え室に足を運んで、アンニフィルドとクリステアを呼んだ。


「まぁ、エルド。わざわざ、こちらに・・・」

アンニフィルドは立ち上がって、エルドと抱擁した。


「クリステアは?」

「あは。フェリシアスと・・・、と言えばわかるかしら?」


ぱちっ。

アンニフィルドは悪戯っぽく片目をつむった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「けっこう。クリステアにはきみから伝えて欲しい」

「えーーー、あの二人のところに割って入るの?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「今じゃなくていいよ。わたしもご免だ。わっはっは」

エルドは大笑いした。


「それで?」

「うむ。そろそろきみたち二人に地球派遣の最終準備をしたい」

「リーエス」


「まず、地球できみたちが会うことになる人物を知っておいてもらいたいんだが、その変の資料をまとめた。語学研修が終ったら来てくれたまえ」

「リーエス」


アンニフィルドはエルドの依頼を承諾すると、エルドの後姿を目で追った。

「いよいよだわ・・・」




そういうことで、アンニフィルドとクリステアは、地球への赴任に向けて地球語の習得レッスンを重ねていた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「エルドから召集を受けたわ。現地の人物確認だそうよ」

アンニフィルドがクリステアにエルドの話を伝言した。


「この後?」

「リーエス。こっちのクリアはハードル高いわぁ・・・」

「ぶつぶつ言ってないで、集中しなさいよ。補講になっても知らないから・・・」


「あーあ、それにしてもけっこう複雑ね、地球語てのは」

「ええ。その複雑で変な文字、漢字って言うんだって」


--- ^_^ わっはっは! ---


「最低3000文字は習わないと、日常生活できないらしいわ。あー、面倒くさぁーーーい」

「同感だわ」


アンニフィルドとクリステアは、ハイパーラーニングで地球語の習得中であった。ユティスは、和人から収集した単語やフレーズ、そして文法などから、地球語習得のためのプログラムを作成していた。それを、ほかのエルフィア人たちも利用することができた。


「地球語って文法がやたらと面倒だわ。はっきりいって滅茶苦茶ね。とにかく主語や述語を省いちゃうから、時々、なにがなにを指しているのかまったく、わかんなくなっちゃう。完璧に詩の世界だわ」


「そうそう、それを日常的に使ってるんだから、地球ってのは相当ロマンチックなところかもしれないわね」

「悪くいえば、論理性にかけるってことかしら」


「それに、なによ、この漢字熟語の多さは・・・?」

アンニフィルドは漢字熟語の多さに閉口していた。


「えーーーっ。一つの字なのに、いくつ読み方があるのよぉ」

「時間がもったいないから、さっさと習ったらどうなの?」


「だって、クリステア。これ、一って字でしょ」

「ええ。『ひとつ』とも、『はじめ』とも、『かず』とも読むわね」


「知ってたんだぁ・・・」

「5分前に覚えたばかりだけどね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「でも、なんで、『にのまえ』、なのよ?」

「チッチッ・・・。そりゃあ、『一は、二の前に位置してる』からじゃない」

「えーーー!そんなの、ありぃ?」


「要は、その字の意味するところよ。それが読みになるの。まぁ、絵みたいなもんね」

「絵ですって?そんなの、個人で捕らえ方は違うじゃないの?」


「それがそうでもないのよ。大方が、そうだなぁ、と思えるものに落ち着いてるわ。それに、『にのまえ』なんてトンチが利いてて、わたしなんか思わず笑っちゃったくらいよ。地球人ってユーモアの天才かもね。和人もトルフォの前じゃ、すごかったし」


「トルフォの時は、ともかく、全部がそんなんじゃ、冗談じゃないわ。いくらハイパーラーニングといっても、これじゃたまんないわよ」


「つべこべ言わずに、しっかり覚えなさいよ、アンニフィルド。ユティスはもう完璧よ」


クリステアが彼女をたしなめた。


しゃらーーーん。

心地よい音が静かに響いた。


「クリステア、お疲れ様でした。地球語の学習の終了を認めます」

「アルデリーム・デ・ゼール。ディリフィス」

「パジューレ、クリステア」


「アンニフィルド、しっかり頑張りなさいねぇ。わたしは、お先にエルドのところに行ってるわよ。じゃあねぇ!」

「待ってよ、クリステア!」


ハイパーラーニングを終えたクリステアは、さっさとラーニングエリアから出た。


「ん、もう!」

ぷくぅ・・・。

アンニフィルドは膨れっ面になった。


「アンニフィルド、あなたはまだですよ。明日、また追加講習に出てくださいね」

にこっ。

学習担当官のディリフィスは、アンニフィルドに笑みをこぼした。


「えーっ、まだあるっていうの?」

「リーエス。あと、1000文字ほど履修が終了してません」


つらつら・・・。

立体スクリーンに、彼女の未修得分の漢字が次々に映し出された。


つらつら・・・。

「えーーー、そんなに?鬼!」

「なにか、ご不満ですか?」


にこっ。

「なぁんにも・・・」


「クリステアは全過程終わりましたよ」

「はいはい。明日もう1回よね」


「お待ちしています。最低1回」

ディリフィスは、にっこり笑った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「なんですってぇ?」

「2回以上にならないことを、お祈りしますわ」


ぱちっ。

ディリフィスはウィンクした。


--- ^_^ わっはっは! ---


「冗談じゃないわ。1回で十分よ!」


(べーーー、だ!)

ディリフィスの後姿にアンニフィルドは舌を出した。


「和人、ハイパーラーニングじゃなくて、これを全部、いちいち自力で書いて憶えたっていうのかしら・・・」


「ふぅ・・・」


一人残されたアンニフィルドは、当用漢字の未修得文字一覧表を見て、大きくため息をつき肩を落とした。


「和人はこれをハイパーラーニングなして、自力でマスターしたって言うの・・・?だったら、あいつ天才だわ。さすがユティスが選んだ男ねぇ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---

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