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133 手品

■手品■




和人の後三台離れて走っている警護官たちにも、アンデフロル・デュメーラのメッセージは届いていた。




ぴっか、ぴっか・・・。


『安全運転制御履行中。安心してドライブをお続けください』


ぴっか、ぴっか・・・。


「おい、なんだこりゃあ・・・?」

「自分は知りませんが、本部が導入したという新しいシステムかなんかじゃないんすか、部長?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そっかぁ。とにかく安全運転中という判断であれば、問題はないだろう」

「了解」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぴっ。

「こちら三蔵、了解」


ぷしっ。

「二人は、どうしている?」

部長の警護官はスマホを切ると部下にきいた。


「こっちの表示どおり、制限速度を守ってますね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「バカもん。われわれは、交通機動隊ではない。そのような報告はいらん」

「了解。ハイウェイを最後まで行くようっす」


「その先は、海岸線沿いに国道に入るんだな?」

「その様子っす」


ぶろろろろ・・・。




やがて海岸線に出るとハイウェイは終わった。


「ユティス、ハイウェイはここまでだね?」

「リ-エス」

和人たちは一般道に降りると海沿いの一般道をドライブした。


ぶろろろ・・・。


「あ、あそこ・・・」

「浜辺だね・・・。行ってみるかい?」

「リーエス」


きーーーっ。

ばたむ。


「どう?」

「・・・」


美しい浜辺にきて二人は駐車場に車を止め浜辺に降り立った。


ざっ、ざっ・・・。


「まぁ、なんて美しいところでしょう!」

「気に入ったかい?」

「リーエス!」


ユティスは感嘆の声をあげ、手を広げて喜びを露にした。




浜辺に出るとすぐにユティスは注目を浴びた。


「うわ、すっげぇ、可愛い娘ちゃん・・・」

「諦めな、男が付いてるぜ・・・」

「け、しけた野郎・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


男は、彼女連れの男に対して、極めて厳しい評価を下した。


「行くぞ」

「おう・・・」




「だれ、あの娘?」

「芸能アイドルかもよ・・・」


その時風が吹いて、ユティスのダークブロンドとスカートが舞った。


ふんわぁ・・・。


「きゃ・・・」

小さな声を上げると、ユティスはスカートを押さえた。


どっきん!

和人は思わずツバを飲み込んだ。


(やばい・・・。ユティス、滅茶苦茶色っぽい・・・)




「うわぁ!絶対アイドルだよ、あの娘」

「ねぇ、こっち来るわよ・・・」


ユティスは波際に向けて、和人と並んで歩いた。


ざっざっ・・・。




「和人さん、手を繋いでいいですか?」


ささっ。

ユティスが微笑んで、和人の前に躍り出た。


「あ、リーエス。いいけど・・・」


ぎゅっ。

「うふふふ」


ぐさっ。

ぐさりっ。


ユティスが和人の手を繋いだ途端、和人は回りの刺すような男たちの視線を感じた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あの、野郎・・・。ちくしょう、あんな可愛い娘とデキてんのかぁ?」

「諦めろってだろ、盛りの付いた犬かよ、おめぇ?」

「うっせいなぁ・・・」



あるカップルはそんな二人に、男だけグループとは正反対の評価をしていた。


「きっと新婚さんじゃない?」

「だろうね」


「今夜が初夜かも・・・。にひひひ」

「こら、おまえ、下品だぞ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「だって、彼女さぁ、ものっすっごぉーく幸せそうな顔してるわよ?」

「わかるの?」


「うん。わたしも女だもの。大好きな彼の手を握ってると安心するの。彼と身も心も繋がってるって感覚になるんだよぉ・・・」

「そっかぁ・・・」


「あー、信じてないなぁ・・・?」

「そんなことないよ」


「あのね、女の子って自分から彼の手を握りにいくのって、とっても勇気要るんだからね」

「へぇ、そうなんだ・・・」


「わたしも、初めてあなたの手を握った時、どっきどきだったもの」

「握られたオレも、心臓ばくばくだったんだぜ・・・」


「ホント?」

「ホントさ・・・」


ぎゅ・・・。

「あ・・・」


どきどき・・・

ずっきーーーん。


「今だってそんなに変んないけど・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「えへ。あなたのそういうウソつけないとこ、わたし大好きだよ」


ぴとぉ・・・。


「こ、こら、くっつき過ぎだって・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いいじゃない。あなたにこんなにくっついてくれるの、わたしだけだよ・・・」


「あ。うん・・・。ありがとう・・・」

「あは。ホントに素直だね?大ーーー好き!」




そんなカップルは和人とユティスの目に止まっていた。


「あそこのカップル、新婚さんかもしれませんわ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「どこどこ?」

「はい、あそこ・・・」


「うわ、手を握ってくっ付いちゃってる・・・」


いちゃらいちゃら・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「今夜が初夜だったりして・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「初夜ですか?」

「あーーー、それねぇ・・・」

「特別な意味があるんですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そう、特別の意味ねぇ・・・。とにかく新婚初日の夜のことさ。今じゃ、事実上死語だよ」


「もう、どなたも使わないんですか?」


「いや、使うんだけど、ほとんどすべてのカップルはとっくに済ませちゃってるというか、そのぉ・・・、初夜の意味するところは、既に終わっちゃってるって言うか・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はぁ・・・?」

「とにかく、そういうことだよ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わたくしたちは、今は新婚さんですよね?」

「新婚さんて言ったって、マネごとだろ?」

「マネごとでも、新婚さんです・・・。わたくしは新妻です・・・」

ユティスは不服そうに下を向いた。


「そんなこと言ったって・・・、弱ったなぁ・・・。どう言えばいいんだ?」


--- ^_^ わっはっは! ---




「わぁ、ステキな人。ねぇ、サインくださぁい!」


突然、数人の女の子グループがユティスに群がって来て、和人のしどろもどろ答弁は有耶無耶のうちに終わりを告げた。


「え?」


「あなたアイドルなんですよね?」

「うわぁ・・・、背が高くてスタイルいい。うらやましぃです」

「髪、本物のブロンドだぁ・・・」

「可愛い!」

「キレイ!」

「ステキ!」

「なんて、お名前ですか?」

「いつ、デビューされたんですか?」


「あの、わたくし・・・」

にこにこ・・・。

ユティスは笑いで誤魔化そうとしたが、女の子たちは続けた。


「サインください!」

「ねぇ、マネージャーさん、いいですよね?」

「マネージャー・・・、オレのこと?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ねぇ、いいでしょぉ?」

「サイン。サイン!」


「ちょっと待ってよ、きみたち。ユティスはアイドルじゃなくて・・・」


「ユティスさんていうんですか?」

「ハーフですか?」

「いえ、わたくし、ここの人間ではないんです」


「じゃ、やっぱ、外国人だぁ!」

「日本語上手ですねぇ!」

「すっごい可愛い!」

「キレイ!」

「ニッキーみたい。やっぱりアイドルだぁ!」

「だから、みんな、違うんだってば!」


「きゃあ、きゃあ!」

「すてきなお洋服!」

ユティスは彼女たちに揉みくちゃにされていた。


「はい、はい、みなさん。わかりました。サインをすればよろしいのですね?」

ユティスが降参した。


「うん。サイン、サイン!」

「ここ、ここ、ここにしてください!」


女の子たちはシャツを引っ張って、そこにサインするようにねだった。


「あのぉ、どうやって書けば・・・?」

「えー、アイドルなのに、マジックいつも持参してないんですかぁ?」


むっかぁ・・・。

(なんだい、この娘たち、自分勝手なことばかり言って・・・)

和人は少々頭に来ていた。


ぶわんっ。

とその時、いきなりユティスの手に油性マジックらしきものが現れた。


(エージェント・ユティス、大至急手配しました。これでことなきを得ると思います)


--- ^_^ わっはっは! ---


ほっ・・・。

「アルダリーム・ジェ・デーリア、アンデフロル・デュメーラ」

ユティスはアンデフロル・デュメーラに礼を言った。


「あれ、なんて言ったんです?」

「『あるじゃないでぇすか。ワンダフルおめぇら』、じゃない?」

「なに、それ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「きゃははは。変な日本語!」

「あっはっは!」

「ユティスは外国人なんだから、しょうがないわよぉ」

「あははは」


「あーーー。ほら、マジック、あるじゃないですか、わたしの聞いたとおりじゃない。そうでしょ、ユティス?」

「え?あ、はい・・・」


女の子たちは、しかっりユティスのサインをもらって、上機嫌だった。


「ありがとうございます、ユティス!」

「頑張ってね。あたしたち応援するわ!」


「リーエス、みなさん・・・。うふふふ」


女の子たちが消えて、嵐が過ぎ去った。


「ふぅ・・・。なんだったんだぁ、あれ・・・?」

「わかりません。でも、喜んでいただいたみたいですわ・・・」

にこっ。

ユティスは微笑んだ。


「地球も安泰ですわね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ぷふぅっ・・・。あははは」

「うふふふ」




「部長、えらく女の子たちに囲まれてましたね?」

「サインをしていたみたいだぞ・・・」


「そう、それなんっすよぉ。自分、女の子の方の唇を呼んでたんですが、『アンデフロル・・・・、なんとかって言った時、右手にマジックがいきなり現れたんですよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「マジックが右手の中に現れただと?」

「そうなっすよぉ・・・。空中から、いきなり、ぱっと・・・。まるで手品みたいに・・・」

「だったら、それは手品じゃないか、女の子たちを驚かせたんだよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なるほど、やはり手品かぁ・・・」


「おい、また出発するようだぞ」

「了解っす」


ぶろろろろ・・・。


警護官たちは、車をスタートさせた。




今日も、和人たちは、どこかで宿を取らねばならなかった。数との心の中では、カテゴリー1の正直ではあるが『煩悩の塊』である和人と、カテゴリー2の常識的ではあるが『成り損ないの理性』の和人が戦っていた。


(どうしよかなぁ・・・。いっそ、ビジネスホテルにしちゃおう。シングル部屋2つなら・・・)

(バカもの!あれほど離れてはならんと言ったであろう!)

(そんなこと言ったって、ユティスと一緒の部屋になんか眠れないよう)

(アホか!ユティスの身になにかあってみろ、どう責任を取るのだ?お前を信じてくれたエルドに、どう言い訳するつもりだ?一生後悔するぞ)

(じゃ、ツインルームで・・・)



和人の葛藤をよそに、ユティスは窓から一つも見逃すまいと外の景色を堪能していた。


「和人さん、あれはなんですか?」

ユティスは、とある年季の入った温泉旅館を指差した。


「温泉旅館かな?」


「温泉?」

「うん。地下からミネラルをいっぱい含んだ暖かいお湯が湧き出てくるところにある、天然のお風呂付きの宿屋のことだよ」


「天然のお風呂ですか。地球にも、そんなところがあるのですね?とってもステキなところでしょう?」

「リーエス。リッラクスするには最高かも。エルフィアとちょっと風情が違うかもしれないけど、気に入ること間違いなしだね」


「んーーー。決まりですわ。今夜は、ここにお世話になりましょう。いかがですか?」

「ええっ?」


「地球の温泉に入ってみたいです。わたくしのミッションです。地球の温泉が、地球人にどんな良い影響をもたらすのか知りたいですわ。ぜひ、調査の必要がありますわね。決めました。調査対象として認定します」


--- ^_^ わっはっは! ---


「だーーーっ!急にミッションに燃えないでよぉ」

「うふふふ」

ユティスはいたずらっぽく微笑んだ。


「エージェント・ユティス。名案です」

「アンデフロル・デュメーラ。あなたも同意しますの?」

「リーエス。地球人の精神の健康に関連する項目はすべて調査対象です」

「アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)、アンデフロル・デュメーラ」

「お気遣いなく。パジューレ」


(アンデフロル・デュメーラまで賛成しちゃったぞぉ・・・。おい、おい、どうするんだ、和人ぉ?)


--- ^_^ わっはっは! ---




和人の車は温泉街に入っていって、スピードを落とした。


ぶろろろ・・・。


「二人のスピードが落ちてますよ・・・」

「うむ。われわれも落とせ」

「了解っす」


ぶろろろ・・・。


「なんか、きょろきょろ見てますねぇ・・・」

「そろそろ夕刻だし、今夜の宿でも考えているんじゃないか?」


「部長。ここは温泉郷ですよ。あの二人、ここに泊まるんですか?」

「かもしれんな・・・」

「自分らは?」

「車中泊だ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「またですかぁ・・・?」

「任務だ」


「あれ・・・?あの宿に入っちゃいますよ。あの二人」

「よし、間隔を置いて、続け」

「了解」


ぶろろろ・・・。


「そこの空き地に停めろ」

「了解」


ざざざざーーーっ。

きっ。

がっ。

ぶるるん。


ばたん。


さくさく・・・。


二人は車を降りて、温泉旅館の入り口に来た。

日帰り貸切混浴温泉ありって書いてありますよ。部長」

「汗を流したいのか?」

「そりゃあ、そうっすよ。せっかくここに来たんだし・・・」


「よし、許可しよう」

「ええ?いいんですか?」

「任務だ」

「了解!らったらたったぁーーー!温泉、温泉!」


--- ^_^ わっはっは! ---

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