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129 妖精

■妖精■




夜になり、テーマパークの最大の呼び物のイルミネーション・パレードが始まった。


「すごい人ですわ・・・」

ユティスは、パレードのコースに沿って並んだ人だかりに、まず仰天した。


「イルミネーション・パレードは、なんといってもこのテーマパークの一番の呼び物だからね。これを見なくちゃ、ここにきた意味がないよ、ってくらいのもんなんだ」

「うふふ。楽しみですわ」


和人たちは、運よくパレードのそばに2人分のスペースを、確保できた。


「ここなら、きっと間近でよく見えると思うよ」

和人は持ってきたビニールシートを敷いて、二人がそこに座れるようにした。


「ご準備がいいんですね、和人さん」

「えへ。こうなることを予想してたんだ」

「まぁ!うふふふ」

ユティスは楽しそうに笑い声をあげた。


夜の帳が下り、イルミネーション・パレードを引き立てるため、沿道の外灯ははすべて消され、パレードのコースのあたりは帯状に闇になった。


「うふふ。なんか期待してしまいますわね?」

「リーエス」


その時、ユティスの身体から生体エネルギー場の放射がうっすら見え始めてきた。


ぽわぁーーーん。


「ありゃ、ユティス・・・、それ・・・」

和人が指摘すると、ユティスは微笑んだ。


「わたくしの精神が喜びを表しているのですわ」

「そうじゃなくて、みんなびっくりしているってば・・・」

そう言っている間にも、ユティスにまとわりつく光は虹色にはっきり見えるようになってきた。


「すっげぇ、可愛い娘ちゃん・・・」

「あのゆらゆら揺れる光、キレイ・・・」


ゆらりゆらり・・・。

周りの観客が、そんなユティスに注目した。


「パレードの参加の人じゃない?」

ぴかぁ・・・。

誰かが言った。


「ちょっと、きみ、パレードに参加のスタッフの集まるところはあっちだよ」

警備員が二人の右手の遥か奥を指差した。


「いえ、違うんですけど」

和人が言うと、警備員はユティスを見て言った。


「だって、この娘、光ってるじゃないか。さぁ、行った。行った。パレードに間に合わなくなるよぉ」

「あの、わたくし観客ですわ・・・」


ぽわぁ・・・。

「ええ?」

警備員は信じられないように、ユティスを見つめた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あんた、どういういう魔法つかってるんだ?」

「うふふ。ここはファンタジー・テーマパークですもの」


「は・・・。そういうことですね・・・」

警備員はそれをユティスのジョークと受け取った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「とにかく、それじゃ、ロープの内側からご覧ください」

「リーエス」


「リーエス?」

「はい。はいです」




急にファンファーレが響き、続いて音楽が鳴り響いた。


「いいよだね?」

「リーエス」


ぱんぱらーぱぱーーーん。

軽快な音楽に乗って、右手の奥の方からパレードはやって来た。


「ほら、ご覧よ、ユティス!」

「リーエス・・・」


ユティスの目は夢を見ているようになった。

「はぁ・・・」

「うわぁ・・・」


ユティスはしっかりと和人の腕に掴まり、和人に微笑みかけながら、パレードを楽しんだ。


ぱんぱらーぱぱーーーん。


「わぁあ、これはなんという動物をかたどったものですか?」

「それは、ドラゴンといって、想像上の生き物だよ」

「大きくて立派ですわ・・・」


何千個、何万個といういろんな色にLEDで飾られたドラゴンは、ゆっくりと二人の前を通過していった。


「あの方たちは?」

「妖精だと思うよ。これも想像上の生き物・・・、というより森の木の精や泉の精たちだよ。神話や民話によくでてくるのさ」

「ステキです・・・」


「でも、きみも虹色の光をまとって、まるで天使みたいだよ・・・」

にこっ。

和人はユティスを見つめて、ユティスに微笑んだ。


「アルダリーム・ジェ・デーリア、和人さん・・・」

ユティスも和人に微笑みかけ、手を握り返した。


らったった・・・。

らったった・・・。


10人以上の妖精の姿をした娘たちは背中に大きな羽を背負い、LEDをいっぱいにつけて、本当に美しく今にも空に向け飛び上がりそうな感じで、ユティスたちの目の前で止まり、しばらく踊った。


ぱちぱち・・・・

思わずユティスは拍手していた。


ゆらぁーり・・・。

きらきらぁ・・・。


「あ、妖精みたい・・・」

「わぁ、こっちもキレイだぁ・・・」

みんなが、ユティスに注目した。


ユティスも妖精に負けないくらい美しい虹色の光が纏わりついて、ゆらゆら不思議に揺れて輝いていた。


「なんてキレイなんだろうね・・・?」

「リーエス。はぁ・・・。すごいです・・・」


「きみのことだよ、ユティス・・・」

「まぁ、和人さん・・・」

ぽっ。


--- ^_^ わっはっは! ---


らんたんたぁーーー。

らんたんたぁーーー。


大小いろんなイルミネーションに飾られ、キャラクターやさまざまな形の山車が、次から次へと通り過ぎ、パレードは果てしなく続くように思えた。


「うわぁ、なんてキレイで素敵なんでしょう・・・」


らったったぁーーん。

らったったぁーーん。


ユティスは、次々に目の前を通り抜けていくLEDに飾られた山車にすっかり魅せられた。そして、ユティス自身の光も一段と強くなっていった。


ぽわぁーーーん。

きらきらぁ・・・。


「うわ、なにこの娘、光ってる・・・」

「特別なお洋服着てるんじゃないかしら?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「キレイ・・・。七色に揺れてるわぁ・・・」


女の子の声が響き、ユティスはその方に振り向いた。

にっこり。

ユティスは微笑んで右手を顔の側まで上げ、手を開いて振った。


「お母さん、わたしもあの妖精さんのお服かってぇ!」

「いけません、あれは特別製のお洋服で、とっても高いんだから!」

「うぇーーーん!」


--- ^_^ わっはっは! ---


しかし、観衆もパレードのスタッフたちもそれを見て、驚き夢見心地ににはなったが、恐れたり不思議がったりするようなことはなかった。


そして、イルミネーション・パレードは30分以上も続いた。




ひゅうーーー。

ど、ど、どぉーーーんっ。


ひゅう、ひゅ、ひゅーーーん。

ど、ど、ど、ど・・・。


ぱん、ぱん、ぱーーーんっ!

ぱ、ぱんぱんぱーーーんっ!

ぱーんぱーん、ぱ、ぱ、ぱーーーんっ。


イルミネーション・パレードの後は、10分間の花火が打ち上げられ、最後は特大のスターマインが最後を飾った。


「うわぁーーー!」

「きゃあーーー!」


ぱちぱちぱち・・・。

ぱちぱちぱち・・・。

周りから一斉に大歓声が沸き起こり、ついでに拍手があたりを覆った。


「和人さん、とってもステキです。わたくし、こんなにステキな気分になったのは久しぶりですわ・・・」

ユティスは頭を和人の肩に預け、和人の耳元で囁いた。


「メインはこれでおしまいだね?」

「リーエス」


「あと1時間くらいは、アトラクションやってるこで、見ていくかい?」

「ナナン。もう、十分です。この感動を忘れないうちにでましょう?」


こてん。・・・。

ユティスは頭を和人に預けたまま答えた。




1日目はこうして終わろうとしていた。


(エージェント・ユテイス?)

(リーエス。なんでしょう、アンデフロル・デュメーラ?)


(本日のお宿ですけど、そこでしたら空いているようです。コンタクティー・カズトにお教えすますか?)

(アンデフロル・デュメーラ、アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)。わたくしから、和人さんにお伺いしてみますわ)

(パジューレ(どういたしまして)。よろしくお願いします)




「和人さん?」

「なんだい、ユティス?」


「今晩は、どこにお泊りしますか?」


はっ・・・。


(しまった・・・。今夜の宿、まったく考えてなかったぞ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「ごめん、もう10時近いよ・・・。オレ、すっかり忘れてた・・・」


ぺこん・・・。

和人はユティスに頭を下げ、申し訳ないという気持ちでいっぱいの顔になった。


「うふふ。まだ、大丈夫だと思いますわ。あそこは、いかがでしょうか?」


ユティスが、テーマパークに隣接したイタリア風の大きなホテルを指した。


(げげっ。ホテル・ベネチアン・ベルメール。セキュリティは大丈夫だけど、超高級ホテルじゃないか・・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「請求書は回せよ」

和人の頭に俊介の言葉がこだました。


(今、手持ち15万しかないぞ。1泊いくらだよ?どうせ会社持ちだけど・・・。後もう一泊しなくちゃならないんだぞ・・・。ここは、もうカードで払っちゃうしかないな・・・)


「部屋、空いてるかな?」

「大丈夫そうですよ」

ユティスがにっこりした。


「わかるの?」

「リーエス。アンデフロル・デュメーラの推薦で確認済みです」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ええ?ひょっとして、もう、ブッキングしてあるとか・・・?」

「ふふ。さぁ、どうでしょうか?」

ユティスはいたずらっぽく笑った。


「じゃ、そこに行こうか。他に当てがあるわけじゃないし・・・」」

「リーエス」


二人は、テーマパークの出口からすぐ目の前にあるホテル・ベネチアン・ベルメールに歩いていった。




そして警護官たちも、二人の後を追って、ホテル・ベネチアン・ベルメールに向かっていった。


「今夜は、あのホテルに泊まるつもりだな・・・」

「部長・・・」


「なんだ?」

「ここ、カップルや家族しか泊まんないじゃないんすか?」

「任務だ」


「そりゃ、悲しいっすねぇ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「にしても、高いんじゃないっすか?」

「任務だ」


「おーお、いい女・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「任務中だ。二人から目を離すんじゃない」

「了解」


てくてくてく・・・。

警護官たちはホテルに向かった


「部長、本当に、自分たちもこのホテルに泊まるんすか?」

「任務だ」


「了解。でも、自分、余分な持ち合わせがありませんが・・・」

「任務だ」


(しかし、本当に高そうだぞ・・・)

その時、部長は部屋料金のことを本気で心配していた。


--- ^_^ わっはっは! ---


突然部長が部下に指示した。


「裏の駐車場へ向かえ」

「はぁ?」


「任務だ。駐車場で野宿する」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ええーーー。ここに泊まるんじゃないんすか?」

「一日分の予算を超えている。任務だ」


「うちの署、すっごいケチじゃないっすかぁ?」

「予算内に収めろ」


「で、野宿ですか・・・」

「任務だ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「車を停めたらロビーに行くんだ」

「了解」




ホテル・ベネチアン・ベルメールのロビーでは、ユティスと和人が今夜の部屋のことで、フロントの話を聞いていた。


「ツインルームですか・・・。本日は、だいぶ混んでまして・・・」


(こりゃ、通常の部屋はダメみたいだぞ・・・)


「んーと・・・。そうですわ」


(そうそう。このお部屋でしたわね、アンデフロル・デュメーラ?)

ユティスはホテルのパンフを開けると指を這わせ、一つの部屋を示した。


(リーエス、エージェント・ユティス。ロイヤルスイートで間違いありません)

アンデフロル・デュメーラはそれを肯定した。


「あのぉ、ここは、空いていますか?」


にこっ!


「お客様、ロイヤルスイートでよろしいんでしょうか?」

フロントはたちまち満面笑顔になってユティスを見た。


--- ^_^ わっはっは! ---


「はい!」

「もちろん、お取りできますよ。お客様」

フロントは今にも手もみをしそうだった。


「ユ、ユティス・・・」

和人は思わず値段が気になった。


「いくらなの?」


にこにこにこ・・・。

「17万円です」

フロントは当たり前のように笑顔で答えた。


「1泊17万円だってぇ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


和人の目が点になり頭は真っ白になった。


「ユ、ユティス・・・。いくら会社持ちってもさぁ・・・」

和人はユティスを力なく見た。


「大丈夫ですわ、和人さん。お願いいたしますわ」

ユティスはさっさと申し込んでしまった。


「かしこまりました、奥様。どうも、誠にありがとうございます」

フロントはユティスの一言を見逃さなかった。


「奥様?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ま、いいか。とりあえずクレジットカードがあるし、結局会社の公用だから、立替払いで後戻ってくるわけだし・・・。


「よし。ここにしよう。ユティス」

「リーエス」

和人たちは、テーマパーク提携の豪華ホテルに宿泊することにした。


ささっ。

フロントはユティスにペンと紙を差し出した。


「では、こちらにお名前とご住所を」

「・・・」


(地球で一番難しいと言われている漢字ですわ・・・。ユティスって、どう書くのでしょう・・・?どうしましょう・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「和人さん、わたくし、地球の文字をうまく書けないのですが・・・」

「地球の文字?」


--- ^_^ わっはっは! ---


フロントはユティスを不思議そうに見つめた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ユティスぅ!」

「あらまぁ、言葉を間違えましたわ。ここは日本でしたね。うふふ・・・」


「ええ、日本ですけど・・・?」


フォロントはユティスとその服装を見て、それから、ユティスは外国人で日本語を間違えたのだと考えた。


「あはは。連れは外国人なもんで、感じが苦手でしてぇ・・・。はい」

すぐに和人がフォローを入れた。


「そうでございますよね。わざわざ遠くから、日本までお越しいただきまして」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんなことありませんわ。5万年前とは、比べ物にならないくらい、早く着きましたから・・・」


「5万年・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ユティス、ここはオレが書くから大丈夫だよ」

「リーエス」


「では、ご主人様、ここにサインをお願いいたします」


ささっ。

フロントは申し込み用紙を出した。


「ありゃ・・・。完璧に新婚夫婦になっちゃったぞ・・・。ならば、宇都宮和人、同、ユティスっと・・・」


すらすら・・・。

さらさら・・・。


「これで、よろしいですか?」

「はい、けっこうです」


にこにこぉーーーっ。

フロントは満面笑みで答えた。


チェックインで、名前を思わず宇都宮和人、同、ユティスと書いてしまった和人は一人で赤くなってしまった。


かぁーーー。


「どうかしまして?」

ユティスが尋ねた。


「あの、オレたち、新婚さんということで、チェックインするからね」


--- ^_^ わっはっは! ---


和人は、フロントに聞こえないように、小声でユティスに答えた。


「あー、あくまで、本当じゃなくて、そのぉ、まねっこ。そういうふりをするだけ」


こくん。

にこっ。

ユティスは、大きく微笑むと思わず和人の腕に抱きついた。


ぴとっ。


「まねっこですわね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「うふ。新婚さんらしくしましょうね。和人さん」

「逆効果になっちゃった・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「仲がおよろしいようで、なによろですね。あははは」


フロントは、そんな二人にすっかり当てられて、額をハンカチで拭いた。


--- ^_^ わっはっは! ---




「お荷物をお持ちいたします」

ホテルのボーイが、にこにこしながら、二人のバゲージを両手に持った。


ぺこ。

「ありがとうございます」

ユティスは丁寧に礼を言った。


「お部屋までご案内させていただきます」

「リーエス。どうも」


3人はロイヤルスイートのある階に向かうエレベータに乗った。


ぎゅいーーーん。

ぱ、ぱ、ぱ・・・。

エレベータはどんどん上昇していった。


「さぁ、到着しましたよ」




こうして、和人とユティスは、テーマパーク脇の超高級ホテル、ホテル・ベネチアン・ベルメールの客人となったのであった。

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