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127 体制

■体制■




「えつ、和人さんとユティスさんが出張ですか?」

「2泊3日でね」

真紀は石橋に真実を言った。石橋は胸騒ぎがした。


(でも、どうしてユティスさんなの?いくら超VIPだとしても、昨日入ったばかりの新人でしょ・・・)


「その通りよ、石橋」


真紀が石橋の思考を断ち切った。


しゅん・・・。


「えっ、真紀社長。なんで、わたしの考えが、わかるんですか・・・?」

「あなたの考えは、顔を見てりゃ誰だってわかるわ」


--- ^_^ わっはっは! ---


真紀は、優しい笑顔で、石橋にだけ聞こえるように囁いた。


「ユティスはね、ある国の重要人物なの。国賓級。いいえ、それ以上の・・・。世界の未来を左右するくらい・・・」


「いったい、どういうことですか?」

石橋は、それでもまったく納得できない様子だった。 


「ごめんなさい。今は、緊急事態。詳しくは言えないの」

「そうですか・・・」

「和人はその国のご指名連絡員。この前も言ったでしょ?」


「でも、どうして和人さんが・・・?」

「それは、わたしじゃなんとも・・・」


「それじゃ、和人さんは、政府のお仕事という訳ですね?」

「そういうこと」


「ユティスさんの使命は、本当に日本の日常を視察するということですか?」

石橋は仕方がないのかという顔をした。

「そうよ」


「でも、どうして、真紀社長がそれをご存知なんですか?」

「あ・・・。それは、わたしがセレアムの社長で、政府から直接・・・」

「極秘の依頼があったから・・・、なんですね?」

「そ、そうよ」


(やれやれ、石橋には早々に真実を告げなきゃいけないわね。気が重いわ・・・)


「はぁ・・・」

真紀はため息をついた。


(真実を知ってひっくり返られたら、どうしよう・・・、蛙さんみたいに・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


ぷるるる・・・。

真紀のスマホが鳴った。


「おじいさま?」

「お、真紀か?どうしたんだ?」


「それでね、ユティスと和人は、一時も離すわけにはいかないと思うの。どちらかが一人になれば、二人とも身の安全が危うくなるわ」

「おまえの言うとおりだな・・・」


「それに、一つところに留まるのも、よくないわ」

「狙い撃ちに合うからな」

「そうよ」


「うむ。ユティスの拉致だけは避けねばならん」

「それで、一つは、俊介が頼んだように、大至急、二人に警護をはりつけて欲しいの」

「手配済だぞ」


「ホント?でも、極秘活動って腕章をつけた、それらしい人は現れてないわよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なんだ、それは?」

「あはは。冗談よ。でも、少なくともこっちになんの連絡も来てないわ」

「隠密行動を取っているからな」


「本当ならいいけど・・・」

「わかった。確認させよう。それで、次は?」


「ユティスの身の安全を確保するためと、日本のためなんだけど、早く日本国籍を用意して欲しいの」

「それも、手配済だ」


「了解。でも、もう、一つあるんだけど・・・」

「まだあるのか?」

「ユティスは、セレアムの社員にしたわ。そして、今日から三日間、和人と二人で出張させることにしたの」


「そういうことか。そいつは名案だな。ユティスは、地球文明の様子を実地確認できるし、いつも、大義名分で二人が一緒にいれる」

「そのことだけど。うちの社員の目の前で、いつもくっついてられると困ることもあるの。なにしろ、社員の大半が未婚の若い女性だから・・・」

「はっはっは。なるほど。和人はなかなかの好青年だからな」


「3日間、その警護はどうすればいいかしら?」

「和人のGPSを頼りに、50メートル以内に常に待機している」

「わかったわ。ありがとう」


「他にもあるんだろ?一番大事なことが?」

「ええ・・・」


「二人の出張費用のことだけど、政府でもってくれないかしら?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なんだ。そんなことか。遠慮はいらん。すべて請求書は、わたしに直接回していいぞ」

「ありがとう。おじいさま」


「エルフィア人のエージェント、ユティスは、国賓だからな。国費を当てるのが当然だ。おまえたちだけですべてを負担するのは筋違いだ」


「でも、政府にとっては、まだ密入国者なんでしょ?」

「いや。出生届前の赤ん坊扱いさ。国籍取得は保証されている」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ええ、おじいさま。感謝するわ」

「礼などいらん」

「ええ。じゃ、また連絡するわね」

「ああ。俊介と和人によろしく。それに、ユティスにも」

「わかったわ。じゃ、切るわね」

「またな」




「俊介、費用の件、おじいさまに了解してもらったわ」


にんまり。

「サンキュー、さすが姉貴。やっぱり、じいさんは姉貴の言うことは無条件に聞くか」


「わたし、おじいさまのお姉さまに似てるんだって・・・」

「セレアムの、そのなんとかっていう大叔母さまかい?」

「ええ」


「きっと、大叔母さまは性格が似てるんだよ、姉貴に」

「どういう意味よ?」


「けっこう美人で、男に言い寄られるんだけど、押しが強くて一途で妙に冷静で男っぽくて・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「男っぽい・・・?わたしのこと、けなしたい訳?」

「とんでもない。褒めてんだぜ」

「そうかしら?」


「ああ。それに、未だ独身。あっ・・・」。

「俊介!」

「悪い・・・」

「・・・」


「失言だ・・・。誤るぜ、姉貴。思い出させちゃったな・・・」

「いいのよ・・・。もう、昔のことだから・・・。あなたも、親友だったわけだし」


「そうだな。だが、オレは、どこかで、未だに引きずっているような気がする・・・」


「俊介・・・」


つい、俊介は過去の傷に触れてしまった。




エルフィアでは、地球支援反対派のブレストたちが計画を着々と進めていた。


「トルフォ、ケームの叔父様は承諾いただきましたか?」

「リーエス。意外なほどあっさりな」

「ありがとうございます」

ブレストは丁寧に答えた。


「しかし、ケームにいながら、どうして、エルフィアの転送システムを設定できるんだ?」

トルフォは合点がいかなかった。


にやり。


「ふふふ。それが、担当エンジニアというものです」


--- ^_^ わっはっは! ---


ブレストの自信たっぷりの言葉はなんの説明にもなっていなかったが、トルフォはそれ以上突っ込んで時間を浪費させることはなかった。


「地球のZ国のリッキー・Jとやらとの連絡は、どうなっている?」

「シェルダブロウが、近日中に・・・」


「確実に行なえ。実行前にエルドの耳に入ればおしまいだぞ」

「リーエス。SSたちはすっかり計画に乗り気です」


「そうだろうな、ユティスの安全かつ極秘の回収はやつらにしかできん。成功の暁には、ライセンス仮復活が保証されているとあっては、力も入ろう・・・。ふっふっふ」

トルフォは満足そうに言った。




内閣の極秘特別プロジェクト『銀河の彼方計画』では、数日おきに、ある時は毎日のように、厳重な警備の下、完全盗聴防止の首相官邸の秘密会議室で行われていた。


「というわけで、プロジェクトの経費はすべて請求してくれたまえ。機密費で処理をするよう指示済みだ」

「機密費か・・・」

大田原から告げられて、プロジェクトの面々は顔を見合わせた。


「それで、大田原さん、あなたはユティスと面会したわけですな?」

藤岡が羨ましそうに大田原を見た。


「左様。首相にお引き合わせする前に、ここはだれかが確認をしなければなりませんからな」

大田原はもっともらしく答えた。


「それで、ユティスはどのような人物で?」

メンバーの一人が大田原に質問した。


「依然、プロジェクトの発足時に配布した資料、それに記載してあったとおりです。身長172センチ、濃いブロンドに、濃い紫の目、太からず細からず、極めて温厚で柔和な面持ちです。彼女の科学知識は、われわれを遥かに凌駕しております。地球に対しては、かなりの危機感を持っていますな。ただし、性急な改革などは望んでいません。当面は各国が紛争や戦争を回避し、みなの安全が確保される状況を各国首脳が目指すという方向性を、確認できるようにと。あくまで支援のための予備調査に徹するつもりです。地球人自ら学習するよう期待しているわけです」


「それでは、支援とはいえんでしょう?」

「いいえ。それこそが支援なのです」


「どういうことかね、大田原さん?」


「一つ、地球における現状の事実を自覚すること。一つ、地球はだれのためのものかを考え共有すること。一つ、これからどこを目指すのか自ら方向性を決めること。これらに対する支援です。科学の知識をそのまま丸ごともらっても、われわれだって圧倒されるだけです。各国でそれを奪い合い、紛争するのでは本末転倒というものですが、違いますかな?」


「大田原さんのおっしゃるとうりです」

「しかし、それでは、抽象的過ぎますなぁ・・・」


「だからいいのです。具体的な処方は幾万とありますが、それでは根本的な支援になりません」


「そうですとも、熱が出るには原因がある。いろんな解熱剤をやみくもに試すだけでは、病気は治りません」


「では、ユティスは医者のようなものだと?」

「左様。文明の病みに対すると意味においては、エルフィア人は医者の立場です。患者を診断し、根本原因を取り除く処方をし、緊急の病状にも対処する。しかしです・・・」


「しかし、なんでしょうか?」


「患者自体に病気を治す意思や努力がないとしたら、即効性を期待しその日のうちに完全回復しないなら医者を罵倒するとしたら・・・?」


「医者の言うことは聞かんでしょう。そして、間違いなく病状は悪化するでしょうな・・・」

プロジェクトメンバーに加えられた医学博士が答えた。


「で、われわれは、いつ、ユティスと面会できるので?」

「そうですよ。なぜ、今じゃないんですか?」


「近々と申し上げておきましょう。わたしが、この場にSSたちとともに連れてきます」

大田原は約束した。


「SS?」

「なにものだね、それは?」


「エルフィアのセキュリティー担当者です。エージェントたるユティスとコンダクティーの和人の身の安全を、身を挺して守るスペッシャリストたちです。今回は当座2人派遣される通知を受けています」


「なに、ユティスの他に2名また来ると言うのかね?」

「左様。そういうことで、みなさんには全員揃ったところで、ご紹介しましょう」


「それが、いつなのか知りたいんですが、大田原さん・・・?」

「現段階で、デジタルにはっきりとは申し上げられません。なにしろ、エルフィア側の準備はまだ終わっていませんので・・・」


「彼らの名前とか、プロフィールはわかるのかね?」

「いえ。彼らではなく、彼女らです」


--- ^_^ わっはっは! ---


「彼女ら・・・?」

「女性なのですか、ひょっとして・・・?」

その質問には、メンバー全員が興味津々の顔になった。


「あら、女性だからといって、それが務まらないとどうしてお考えなのです?今日、世界各国の軍隊に女性兵士はいくらでもいます。特別部隊においてすら・・・」

女性メンバーから意識改革の要求発言が出た。


「とにかく、エルフィアのSSはとても優秀と聞いております。詳しいことは知らされていませんが、二人の名前はわかっています。アンニフィルドとクリステアです。二人とも、すらりとした長身で、ユティスに負けず劣らず、大変な美人であると聞いております」


「ほう・・・」

「大変な美女ですかぁ・・・」

にたにた・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ほぉ・・・」

「それは、期待できそうだ・・・」

「うーーーむ・・・」


会議室は感嘆のうめきが上がった。


「大田原さんは彼女らに、お会い、いや、写真とか見たことがおありとか?」

「いえ、残念ながら、わたしはお会いしたことも、写真等を拝見したこともありません。ただ、わが地球人代表の宇都宮和人は彼女たちに何度も会っております。もちろん精神体でお互いに行ったり来たりしながらですがね。これは彼のコメントに基づくものです」

大田原は和人のコメントをそのまま伝えた。


「ふーーーむ。それで、その3人をどう守るんで?」

「いかにも、極めて重大な問題です」


「それで、築10年の4LDKの一軒家を借り上げ、セキュリティ用の警察部隊を配置し、そこをエルフィア大使館とし、3人および宇都宮和人を住まわせることにします」

大田原は続けた。


「担当官は私服ですが、緊急用の武器を携帯させます。主としてZ国ですが、そういった諸外国からの拉致の可能性を考慮し、万全の安全を確保しています」


「エルフィア大使館ですか?」

「今はまだ非公式でありますが・・・」


極秘の特別プロジェクト会議は続いた。



一方、出張命令を受けて、株式会社セレアムでは、和人とユティスが準備に追われていた。


「さて、オレの車に着替えとか全部ぶち込んでと・・・」

和人は一通りのものをトランクに収めると、ユティスに向き直った。


「なにか他に気づいたことあるかい?」

「いいえ。わたくしは、和人さんさえ、お側にいていただければ・・・」


かぁーーー。

和人は真っ赤になった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あはは。そんなぁ。照れちゃうじゃないか、ユティス・・・」

「まあ、信じてくださらないのですか?」

「信じる、信じるよ」

「うふ」


「しかし、いざ普通の人々の生活を見せてくれったってなあ。いったい、どこに行って、なにを見せればいいんだろう」

「なにも、お仕事している場面じゃなくてもよろしいんですが・・・。みなさんが、遊んでるところとかでも・・・。娯楽は、テクノロジーが反映されている場合が、たくさんありますわ」


「遊んでるところねぇ。ナイトクラブに、ストリップクラブとか、ソープランドとか。二宮先輩や常務じゃあるまいし、まさかね・・・」

「まぁ、和人さん。そういうところがお好みですの?」


--- ^_^ わっはっは! ---


ユティスは悪戯っぽく微笑んだ。

「うふふふ」


「ち、違うよ。ジョーク、ジョーク。それがなんなのか、きみにわかるのかい?」


「はい。和人さんの浮かんだイメージで・・・」

ユティスは微笑んだ。


「うあー、考えをまた読んだ?」

「勝手に見えてくるんです。でも、少しばかり興味があるんですけど・・・。そういった場所も調査対象として・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「うふふ・・・」

「ユティス、かんべんしてよぉ」

「リーエス」


「で、どこに行こうか?」

「あのぉ。恋人たちが行くような場所は、ご存じですか?」

「恋人だってえ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「リーエス。きっと楽しいと思いますわ」

にっこり。


「あはは・・・」

和人はユティスの無邪気な笑顔にドキっとした。


(恋人かぁ・・・。まいったなぁ。うーん。オレ、自慢にならないけど、女の子とデートしたことなんかないし。気の利いた場所なんてぜんぜん知らないし。まいったなぁ・・・)


「テーマパークとか遊園地とかはご存じないのですか?」


ぽん。


「あ、なるほど。それはいい考えだ」


和人は、まずはテーマパークに足を運ぶことにした。

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