125 後援
■後援■
エルフィアでは、ユティスと和人のセキュリティ確保のために、SSのアンニフィルドとクリステアが最後の準備に入っていた。
「はっ!」
ばしっ、ばしっ。
「はっ!」
ばしっ。
「ふーーーぅ。今日は、もう、おしまいにしましょう」
「リーエス・・・」
「はーーー。はーーー・・・」
アンニフィルドはトレーニング室でクリステア相手のいつもの訓練を終えた。
「クリステア、あなたエルドから着任日を聞いた?」
「ナナン。地球語の研修終了が条件らしいの」
クリステアは考え顔になった。
「地球語ってけっこう難しいらしいわよ・・・」
「そうかしら、ユティスのプログラムを見たけ限り、そう大変そうに見えなかったけど?」
アンニフィルドは涼しい顔で答えた。
「話す方はそれでいいけど、読み書きよ、問題は・・・」
「でも、ハイパーラーニングで2、3日で済んじゃうんでしょ?」
「それはそうだけど・・・、漢字って文字は相当難しそうだわ」
「漢字?」
「リーエス。日常生活でも最低2000文字くらいあるんだって・・・」
「はいっ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「だから2000文字。ちゃんとした文書を読み書きしようとすれば、さらに2000文字くらい必要だって・・・」
クリステアは心配そうにアンニフィルドを見た。
「全部で4000文字ですってぇ・・・?なによ、それ?」
「アンニフィルド、あなた、びびっちゃわない?」
「リーエス。でも、ユティスはわかるの、それ?」
「そうみたい。和人から移植してもらってるからねぇ・・・」
「ちゅうって・・・?」
にこっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「違うったら、そんなもので記憶は写らないわよぉ!」
「で、あたしたち、それをマスターしないと、地球に行けないわけ?」
「そうなんじゃない・・・」
「4000文字だなんて聞いた事がないわ・・・」
「で、さぁ・・・」
クリステアは話題を変えることにした。
「リーエス。なに?」
アンニフィルドも話題の変更に同意した。
「どうだったの、彼氏との食事?」
クリステアはアンニフィルドにタオルを渡した。
「ありがとう。ブリュンデルゼールとの食事のこと?」
「そう」
「とても美味だったわ」
「じゃなくて、彼氏の印象とか相性よ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わかってるわよ。良い人だけど、ぜんぜんときめかない」
「あ、そう。なにが、気に入らないの?」
「自分への自信かなぁ・・・」
「彼、控えめだからじゃない?」
「ナナン。逆だわ。押しは強いのよ。でもね、なんか、わたしに一方的に依存してるって感じがするの」
アンニフィルドはつまらなさそうに答えた。
「そりゃ、先に好きになった方が立場は弱くなるもの」
「ナナン。そうじゃなくて。『ぼくには、きみしかいない』て真剣に言われるとね・・・」
「それ、普通じゃない?」
「でも、『きみしかいない』って言われれば、彼の人生を左右するのは、なんか、こっちの責任だって暗に言われてるみたいじゃない?」
しゅ・・。
アンニフィルドは頭の後ろで長いプラチナブロンドを整えた。
「考えすぎよ。男の心理戦術だってば。男ってだれでもそう言うの。あなたの方が変なんじゃないの?」
クリステアはアンニフィルドにもっとクールになるよう言った。
「そうかなぁ・・・。とにかく、最初からそういう風に寄り掛かられるのって、すっごく重いのよねっぇ・・・。わたしにとっては・・・」
「じゃぁ、どう言って欲しかったの?」
クリステアがアンイフィルドに切り返した。
「そうね。何気なく優しく抱きしめて、キッスして・・・。『ステキな夕食だったよ・・・』。『アルダリーム・・・』。『朝食も一緒にどうだい・・・?』。『リーエス・・・』。とか・・・」
(あらあら、お泊りさせちゃうの?)
--- ^_^ わっはっは! ---
「にっこり笑って、優しくキッスして・・・。『最後のデザートが一番ステキだったよ・・・』。『アルダリーム・・・』。『おかわり、くれるかな・・・?』。『リーエス・・・』。『ちゅっ』、とか」
(キッスの大安売りね・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「依存し合うんじゃなくて、もっと気楽に、お互い、ときめきを与え合うというか・・・」
(気障ーーーっ!)
--- ^_^ わっはっは! ---
「連れ合いになるのを前提にお付き合いなんておかしいわよ。お付き合いしてだんだん相手の存在が大きくなるんじゃないの?ましてや、それを相手に押し付けるなんて、横暴の極みね。わたしはお互いもっと自由でいいと思うんだけど・・・」
「ファム・・・、ファム・ファタールだわ、アンニフィルド。あなたって、意外に危ない女ね」
「あは。上段回し蹴りは、100発100中よ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そっちじゃないったら。あなたのそう言ってる時の視線よ。超新星のガンマ線バースト並みだわ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「こう?」
きらっ。
アンニフィルドはピンク色の瞳を輝かせた。
「そう。それよ。当たった男は、即、プラズマに蒸発ね。焼け焦げる暇もないわ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そうかしら?女として普通じゃない?」
「はいはい。今晩はだれと食事するの?」
「だれとも、約束なんかしてないわ。あなたとするってのは?」
「だぁめ。約束があるから」
「は、はーーーん。赴任前に、フェリシアスと、しっぽり朝まで最後の・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「人のこと、からかう暇があるなら、さっさと、自分の彼氏、見つけたら?」
「ん、もう!」
「だって、あなたが決めないから、どんどん変なのまで言い寄って来るんじゃない」
クリステアはアンニフィルドに詰め寄った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「変とは、なによ。変とは!自分だって、フェリシアスの堅物によくつきあえるわね」
ばん!
「アンニフィルド、言っていいことと悪いことがあるわよ!」
クリステアは机を叩くと、アンニフィルドに真顔になった。
「わかったわよ。ごめんなさい・・・」
「ふん!」
「誤ったわ・・・」
「心が、ぜんぜんこもってない」
「じゃぁ・・・」
アンニフィルドはじっとクリステアを見つめて目を細めた。
「な・・・、なによぉ?」
「ごめんなさい・・・」
ちゅ・・・。
アンニフィルドはクリステアの唇にキッスした。
「あ・・・」
とろん・・・。
「・・・」
はっ!
さっ。
「ちょっと、なにするのよ、アンニフィルド!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「仲直り。あなたの唇ってとっても甘いのね。マシュマロみたい・・・」
すくっ・・・。
クリステアが背筋を伸ばした。。
「なんなの?」
「うがいしてくる」
--- ^_^ わっはっは! ---
くるり。
クリステアはアンニフィルドに背を向けた。
「ひどぉーーーい!」
「彼とキッスする前に清めておかなきゃ」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぱちっ。
クリステアはアンニフィルドにウィンクした。
エルドは、SS二人の地球言語の習得が終わり次第、ユティスのもとに送り込むことを告げた。ユティスは礼を言った。
「できれば、アンニフィルドとクリステアが、一番気が合っていいんですけど・・・」
「そう考えていたところだ。二人とも和人との相性は87%以上だから、まずうってつけのチーム編成だな」
「まぁ、ステキ。アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)。エルド・・・」
「二人の地球語のマスターの準備に、あと2日、待ってほしい」
「リーエス、エルド」
「きみが、どうしてもっていうからだよ」
「ご無理をお願いして申し訳ございません」
「わはは。通常の半分の時間で二人を仕上げなくちゃならない。ま、きみ自身、準備なんか無視して、飛ぶように行ってしまったからね」
「実際、5400万光年を飛び越えましたわ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「それだけ、きみは、待てなかったんだ」
「まぁ、エルド。わたくし、精神体で訪問中、地球語の習得をしていましたのよ」
「それでも、待てなかった」
「うふふ。リーエス。わたくし、1秒でも早く・・・」
「まいったなぁ・・・」
「リーエス。うふふふ」
ユティスは喜んでいた。
ユティスが去り、エルドは秘書のメローズに話しかけた。
「メローズ?」
「リーエス」
「それにしても地球という世界は不思議なところだね。美しさと過酷さが同居していて、自然も人間もいつの間にか引き込まれてしまう不思議な魅力に満ちている」
エルドはいつになく乗り気だった。
「すっかり、地球が気に入ったご様子ですね?」
「わかるかい?」
「リーエス。もう、はっきり」
「断言されてしまったか・・・」
「ふふふ・・・」
「あははは・・・」
「あなたも、ご自身で行ってみたいのではありませんか?」
「ああ。ぜひ、近いうちに、一度訪れてみたいね。地球は、カテゴリー2になったばかりで油断ならないが、将来性も十分にあるように思う」
「きっと、ユティスが、証明しますわ」
「恐らくな。予備調査の結果を楽しみにしてるよ」
一方、地球では、エルフィア人の安全確保に俊介たちがやっきになっていた。
「さてと、じいさんにはああは言ったが、どうやってユティスを守り通すんだ?」
俊介は真紀を振り向いた。
「ユティスの日本での身柄を、確実にしておくことが必要ね。おじいさまが、ちゃんと進めてくれてるはずだけど・・・」
「今のまんまじゃ、ユティスは密入国者。密航者と変んないからな・・・」
「ホント。警察官に呼び止められたら、どう言い訳するの?」
「和人のアドリブじゃあなぁ・・・」
俊介は考え込んだ。
「エルフィアからお出での王女様です・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ウソがバレバレね」
「それに、ユティス自体、あの容姿にあの格好は目立ちすぎるぜ・・・」
「そうかといって、和人と離すことはできそうにないし・・・」
「当然だな」
「二人を離したら、よけい面倒なことになる。なにしろ、政府にとっちゃ、ユティスは地球外生命体だ」
がぉーーーっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「俊介ったら、なんかユティスを怪物扱いしてるような言い方ね」
「してるわけないだろ。オレが言いたかったのは、ユティスが異星人、つまり地球以外の人間で、エルフィア人ということ」
「了解よ」
「しかも、地球とは比べものにならないくらいの超高文明の人間だ。この秘密を、どう守るかということだ。いろんな意味で、ユティスにはとんでもない価値がある」
「わかるわ。それを外国政府に知れたら、日本政府が独占していると、大変なことになるわけね?」
「ああ。日本と違い、そいつらは自分たちだけで超高文明のテクノロジーを独り占めして、軍事的に優位に立とうとするに違いない」
「確かに、Z国とかがこれを知ったら。どんあことをしても、ユティスを拉致しようとするわね」
「ビンゴ」
「俊介、早く、おじいさまに、二人の警護を確認しといて。わたし不安で仕方ないわ・・・」
「ああ。二人を離すことは警備も倍、いや、もっと難しくなる」
「和人だって、人質にされたら、ユティスも自分から名乗り出ざるをえなくなるかもしれないわ」
「そうだな。とにかく二人は一緒にするしかない。どっちかが拉致でもされるような事態になったら、たちまち日本政府は手も足も出なくなる。二人は一時も離してはならないんだ」
「同感よ」
「んー・・・」
「姉貴、まだ、なにかあるのか?」
俊介が真紀を見た。
「とはいえ、VIPのお守りという言い訳で、このまま会社をズルズル休ませるわけにはいかないわね・・・」
真紀は考えあぐねていた。
「それなんだよ、姉貴。二宮以外はユティスの事情は知らんからなぁ」
「あんまり和人の休みが目立つと怪しまれるわ。社内から不満続出よ。石橋にも、なんて説明すればいいのやら・・・」
「そうだな」
(石橋に本当のことがバレたら、大変なことになりそう・・・)
「そんなことになれば、収拾がつかなくなるぞ・・・。どうする?」
(あーあ。石橋に、なんて言おうかしら・・・)
真紀は石橋の不安がる顔が目に浮かんだ。
「わかってるわよ」
「うーん」
俊介はうなった。
「うちも在宅勤務制を導入するかぁ?」
「もう、実質、半分そうじゃないの?」
「だよなぁ。出勤時間、就業時間、自分の時間・・・。姉貴、いい知恵はないのか?」
「うーーーん」
「うーーーん」
二人はしばらく考えていた。
ぽんっ。
突然真紀が手を打った。
「そうだ、そうだわ・・・!俊介、いっそ、二人を旅行させたら?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「旅行だってぇ・・・?バカ言うなよ。休みをくれた上で、二人、一緒に遊んでこいなんて、どうかしてるぞ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そうでもないわよ。一つ場所にいることこそ問題だわ。それに、ユティスを閉じ込めておくなんて、彼女のミッションもそうだけど、人権に反してる。それじゃ、どっかの国でやってる政治犯の軟禁と変わらないわ」
「確かに、そいつはマズイ・・・」
「だから・・・、地球の普通の生活、その文明度を現地調査するってことにするのよ。旅行なら、一石二鳥じゃないかしら?」
「ええっ、なに考えてんだよ、姉貴!第一セキュリティはどうすんだよ?」
「24時間、おじいさまがガード役を張り付けてくれんでしょ?」
「そうしてもらんことにはな・・・」
「旅行、旅行っと。仕事の旅行・・・。出張旅行。・・・そうよ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「出張だってぇ?理由は?」
「そんなのいくらだってあるじゃないの。新人教育を兼ねた市場調査とか」
「新人教育。市場調査、出張旅行、二人一緒で当たり前。・・・待てよ。・・・なるほど。そいつは、名案かもしれん」
--- ^_^ わっはっは! ---
「でしょ?」
「ま、いいか、それで?」
「おじいさまは、ID取得に何日必要だって言ってたの?」
「3、4日ってとこかな」
「それ、昨日の話だから、今日なら2泊3日で十分かしら?」
「ああ。それなら、十分に時間稼ぎになる」
「その間の二人の警備は、ちゃんとしてなきゃなんないわ」
「和人にはオレから指示をいれとく」
「そうしてくれると助かるわ。わたしはおじいさまに連絡を」
「頼む。費用の捻出準備を頼んどいてくれよ。じいさんは、オレより姉貴に弱いからな」
「で、エルフィアのセキュリティ・サポートの女性2名はどうしたの?」
「ええ・・・?まさか、それ、女なのか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
俊介は意外という顔になった。
「あ、女をバカにした」
「違うったら。びっくりしただけだよ」
「ふうん・・・。ユティスは、それらしいことを言ってるけど」
「まだ現れていないか・・・。なるほど・・・」
「どうしたのかしら?」
「ふむ。そりゃぁ、女には、化粧の時間が必要ってもんだよ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「やっぱり、バカにしてる!」
るるるーーーっ。
「お、じいさんからだ」
「俊介、ユティスの日本国籍と、二人の警護の確認」
真紀が俊介に念を押した。
「わかってるよ」
「おはよう。俊介君。さて、本日のきみの使命だが・・・」
「じいさん。悪ふざけは、よしてくれ」
「実は、かくかくしかじかで・・・・、というわけだ」
「なんだ、そりゃ?」
「政府の腰は重い。わたし一人では、急いでも、そのくらいは見ておかねばならない」
「わかったよ。とにかく、急いでくれ」
「ああ。じゃあな。なお、このメッセージは自動的に消滅・・・」
「するわけがないだろ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぷちっ。
「どうされましたか、大田原さん?」
「俊介のヤツ、ユーモアのセンスが落ちたようだ・・・」
「それは、一大事!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「じいさん、歳を考えろよ、歳を!」
「で、おじいさまの言う現在の政府の警護の様子はどうなの?」
「じいさんに相談済みだが・・・」
「なんなのよ、それ!」
「精鋭3名を常時つけるとの回答で・・・」
「どんな人?」
「警視庁のデカらしい。今一、信用できん」
「あっきれたぁ。警視庁の刑事ですってぇ?。あの、ユティスは、そんじゃそこらのVIPじゃないのよ!しかも、たった3人・・・。なによそれ?やる気あるの、政府は?」
「予算が・・・」
「止さんか!」
「だーっ!親父ギャグ言ってないで、真剣に考えろよ、姉貴」
「えへ。とにかく、そんなんじゃ、まるっきりダメ」
「グリーンベレーとか、シークレットサービスとか、自衛隊の空挺特殊部隊とかなら、わかるけどな・・・」
「おじいさまにクレームするわ」
「頼むぜ。オレより姉貴の方が、はるかに効果がありそうだ」
「ちゃんとしてよ、俊介・・・。元々はあなたの役よ」
「わかってるよ・・・」
国分寺姉弟は、政府の対応の遅さに業を煮やしていた。