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123 夜出

■夜出■




和人たち4人は、和人の車で夜の高速環状線をドライブしていた。


「きゃっきゃ!」

「うふふふ!」

「あははは」

「うふふふ」


「先輩、なんだかんだ、後ろが盛り上がってますね?」

「オレも、後ろで盛り上がった方が良かったな」

二宮は残念そうにバックミラー越しに、後ろ座席で笑い転げているイザベルを眺めた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「うわぁ、キレイ・・・」

夜の高速環状Dは、光のトンネルの中をくぐっていた。


「ホントですね。まるで、宝石を撒き散らせたみたいですわ」

ユティスとイザベルは夢見るように言った。


「そろそろ、お目当てのハーバーブリッジが、見えてくるよ」

和人が、左手のビルの間に見え隠れしている、巨大な吊橋を指した。


「まぁ、素晴らしい!」

「あそこを通るのですか?」


「そうだよ。海からみる街は、これまたすごいんだから」

女の子たちの話しに和人が乗った。


「そうだとも、ユティス。都会ってのは、夜こそ楽しむべきなのさ」

二宮が得意げにユティスを振り返った。


「本当ですねぇ。うふふ」


「二宮先輩が言うと、別の意味に聞こえるんですけど」


--- ^_^ わっはっは! ---


「お、和人、オレの意見にケチつけやがって」

ぽかり。


「痛いじゃないすか。今、運転中なんですよぉ」

「そうですよ、二宮さん。危ないです」

イザベルが和人を弁護した。


「喜連川さんまで、和人の肩を持って・・・」

「あのぉ、わたし、和人さんの肩も腕も触ってませんけど・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「じゃ、オレの肩を持ってよぉ・・・」

「相当、凝ってらっしゃるんですね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうなんだ。さっきの3000本突きで。だからもんで?」

「嫌です。そういうのは専門の整形外科にでもいらっしゃった方がよろしいかと思います」

「そんなぁ・・・。和人も言ってやってくれよぉ」

二宮はわざと情けない表情でイザベルを振り返った。


「あはは。二宮さん、いつもその調子なんですか?」

イザベルが思わず笑った。


「おす。普通に言っただけですよ。あは」

二宮はイザベルを振り返りながら、照れ笑いした。


「二宮さん、ホント、面白いんですね」

「おす。人を笑わせて幸せにするのがオレの幸せですから」

「まぁ、素晴らしいことですわ。うふふふ」

ユティスも笑った。


「さぁ、これからハーバーブリッジを渡りますよ」


ぶろろろろ・・・。

車は橋へ向かう長い上り坂に差し掛かった。


「うぁ・・・、なんてステキなんでしょう」


ユティスはハーバーブリッジから見える都会の夜景に感嘆した。


「車が、光の川みたく見えます・・・」


「宇宙からだって、見えるんだぜ、ユティス。日本の夜の都会は、宝石を散らしたみたくエメラルドグリーンなんだ」

二宮が得意げに言った。


「ええ。オレも聞いたことありますよ、先輩。宇宙から見る世界の他の都市は黄色かオレンジっぽいそうですが、なぜか、日本の大都市はグリーンなんだって」


「まぁ、そうなんですか。なぜなんでしょう?ぜひ、見てみたいですわ」

ユティスはそう言うと、エストロ5級母船に呼びかけた。


(アンデフロル・デュメーラ?)

(リーエス。エージェント・ユティス。夜の地球を空中スクリーンに映し出しますか?)

(アンデフロル・デュメーラ、できますの?)

(リーエス。リアルタイムでモニターします)


ぼわんっ。


ユティスとイザベルの目の前に、夜の地球が20センチの球体となって浮かび上がった。


「きゃあ!」

イザベルは飛び上がった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「本当ですね。日本が光る島になってます。夜の地球にはっきり映えるんですね」

思わず、ユティスは目の前に展開された地球の夜景に声をあげた。


「な、なんです、これは?」


--- ^_^ わっはっは! ---


いきなり、空中に現れた夜の地球映像に、イザベルはびっくりしていた。

「うふ。この車にある特殊なしかけです。ね、和人さん?」


「ああ。なんだい、ユティス?」

後ろが見えない和人には、なんのことだかさっぱりわからなかった。


「でも、本当にキレイです。GPS搭載車は、こんなこともできるんですね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


シート越しに、イザベルは和人に質問した。


「ええ。一応、搭載してますよ」


(なんのことだろう?GPSって、ただ、人口衛星で位置を知らせるだけなんだけど)


--- ^_^ わっはっは! ---


「すごい。首都圏の電車路線に沿って、光が伸びて、まるで、大きな星みたい」

アンデフロル・デュメーラは日本付近を拡大したので、イザベルは感嘆の声を上げた。


(アンデフロル・デュメーラ。もう、けっこうですわ)

(リーエス。エージェント・ユティス)


しゅん。

出た時と同じく、空中スクリーンはあっと言う間に消えた。


「うぁあ・・・。すごいんですね、宇都宮さんの車・・・」

「いやぁ、一応日本車ですから・・・。あはは」


--- ^_^ わっはっは! ---


イザベルはそれが和人の車の特別装備だと疑わなかった。


「この車、ステキですね」

「あは。どうも」


「ほら、あそこ」

イザベルは右手前方遠くにそびえ立つスカイタワーを指差した。


「キレイです・・・」

ユティスは夢見るような表情になった。


スカイタワーは、上から下から、流れるように色を変えて、イルミネーションが一際映えていた。


「スカイタワーは数分しか見れないけど、ここを通る度、いつも感動するんだ」

和人は楽しそうに言った。


「二宮さんは来たことがあるんですか?」

ユティスが二宮にきいた。


「おす。何度か、常務の車で通ったことがあります」


「イザベルさんとは、来られたことないんですか?」

「今夜が初めてです!感激しています!ううっ・・・!」


「まぁ、二宮さんったら・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「港に入ってくる船も、灯りでとってもキレイですね」

イザベルは今度は海の方に目を向けた。


「おす」


やがて、車は4人を乗せてハーバーブリッジを渡り終え、大観覧車の脇を通りかかった。


「あれは、なんですか?」

ユティスは、色を次々に変えゆっくり回る大観覧車に、目を奪われた。


「あれは、大観覧車だよ。輪の周辺に、たくさんゴンドラがついてるだろ?」

二宮はすぐに反応した。


「リーエス」

「あれは、人が乗れる箱みたいになってて、ぐるっと一回りする間、乗ってられるのさ」


「あんな、高いところにも行くんですね?」

「そうさ。ここまで大きいと、一周30分くらいかかるんじゃないかな」


「いつか、乗ってみたい気がします」

「うん。乗ろう、乗ろう。なぁ、和人」


「今日はもう、時間じゃないですか?そろそろ10時だし」

「もちろん、今日じゃなくていいですよ。和人のいないところで、今度、また来ましょうね、喜連川さん」


--- ^_^ わっはっは! ---


二宮は後ろを振り返って、イザベルの気をうかがった。


「え、はい。また、機会がありましたら・・・」




ぶろろろろ・・・。


和人たち4人は、夜のドライブから戻ってきた。


「えーと、この辺でしたっけ?」

「あ、はい。ここで降ろしてくださいませんか?」

イザベルが和人に指示した。


「はい」

和人はあるマンションの入り口前に車をとめた。


「遅くまでお付き合いいただきありがとうございます。お疲れではありませんか?」

ユティスがイザベルに気を遣った。


「ええ。少し・・・」


ふぁ・・・。

ユティスに答えたイザベルは、本当に眠そうだった。


「おす。大丈夫っすかぁ?」

二宮もイザベルの押し殺したようなあくびを気にしていた。


「はい、二宮さん・・・」

「おす。オレ、玄関まで送りましょうか?」

「いえ、一人で歩けます」


--- ^_^ わっはっは! ---


「じゃ、後ろで見守っていますんで」

「余計怖いんですけど・・・」

にこっ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ここでいいです。二宮さんは車の中にいてください」

「お、おす・・・」


かちゃ。


「どうも、宇都宮さん、今日はありがとうございました。それに、ユティスさん、いろいろ教えていただいて感謝してます」


「なに、言ってんですか。喜連川さんなら、オレたちがバッチしサポートしまっすよぉ」

二宮が聞かれてもいないのに勝手にイザベルに答えた。


「じゃ、ここで」


イザベルはぺこりと頭を下げ、マンションの中に消えていった。


ぴっ。

和人はGPSを確認した。


「さ、次は先輩です。最寄り駅はと・・・」

「おいおい、オレだけ電車かよ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あれ、いつも電車通いでしたよね、先輩?」

「それは仕事ん時だろうが・・・」

「はいはい、冗談です。心配しないでください、先輩のアパートまでちゃんと送っていきますよ」


「ホントだろうな?」

「ホントです。どうせ、家の帰り道の途中ですし」

「ついでか?」

「ついでです」


--- ^_^ わっはっは! ---


「おまえの帰り道の途中に、オレの部屋があることを感謝しろってかぁ?」


「まぁ、二宮さん、いつも感謝の心をお忘れにならなくて、ステキですわ。やはり、道場で鍛錬されてるからなんですね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


にこっ。

ユティスはそう言うと二宮に微笑んだ。


「ま、まぁね・・・。えへへ・・・」

でれでれ・・・。


「先輩、鼻の下が20センチ垂れ下がってますよ」

「おほ、そうか、そうか・・・」




「はい。先輩、到着ですよ」


きーーー。


「おう。着いたか。じゃあな、今日はいろいろありがとう、ユティス」

「パジューレ。アステラム・ベネル・ナディア、二宮さん」

「ベネロ・ナジヤ、ユティス」


「まぁ、エルフィア語、お覚えになられたんですね?」

「ああ、記憶力はいいからな。可愛い娘ちゃんの言ったことは聞き逃さないぜ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「じゃ、先輩、ベネル・ナディア」

「おう、じゃぁな!」




和人は二宮を彼のアパートの前で降ろし、ユティスと家に向かっていた。


「イザベルさんとなにを話していたの?随分と盛り上がっていたけれど」

「ふふふ。気になりますか?」

二宮を降ろした後ユティスは、和人の隣の助手席に移動していた。


「あ、いや。話したくないなら、いいんだよ」

「ナナン。秘密ではありませんわ。会社のことです」


「彼女、セレアムに入るのを迷ってるの?」

「そうですね。少し不安なところがおありです」


「やっぱり、個人事業主ってところが、どんな風になってるかってとこでしょ?」

「リーエス・・・。和人さん、よく、おわかりですね?」

ユティスは感心したように、目を大きく開いて、和人を見た。


「あは。去年は、オレもそうだったから」

「うふふ。そうっだのですか」


「うん。それに、経費と税制と保険の扱い」

「まぁ。お聞きになってたのですか?」


「ナナン。それも同じだったんだ。だいたい予想がつくよ」

「うふふ。ご経験済みってことですね」

「リーエス。そういうこと」


「それと・・・」

「なんだい?」

「会社の人間関係のことです」

「なるほど。当然出てくる質問だね」


「それで・・・」

「うん。なんて言われたの?」


「わたくしと和人さんは、どういう関係ですかって」

「え・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わたくしたち、地球風にはどういうんでしょうか?」

「どういう関係かっていっても・・・」


「恋人、なんですかって・・・」


ちらちら・・・。

和人は、横目でユティスが自分をじっと見つめているのに気づいた。


「ええ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


どきーーーっ。


(思わず急ブレーキをかけるところだった・・・)


「きみは、なんて言ったの?」

「なんて言えば、よろしかったのですか?」

「ええ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


ユティスから最強の切り替えしがきた。


(ユティスと抱きしめ合って、キッスを交わして、好きって認め合ったんだ。一応。でも、ユティスはエルフィア人。2年後、帰っちゃうんだ・・・)


「あははは。エージェントとコンタクティーだよぉ、なんて・・・?」

ユティスは探るような感じで答えた。


「わたくし、うまく答えられませんでした・・・」


ユティスには石橋可憐の姿が目に浮かんでいた。


「わたくしからは、言えません」

「そうっか・・・」


「ただ、和人さんは、わたくしにとっては、とても大切な方ですとしか・・・」

和人はユティスの考えがわからなかった。


(そうだよな。こんなこと、大っぴらになんかできないよな)


「少しでも話しちゃうと、きみが地球人じゃないことがわかっちゃうから?」


ユティスは静かに首を振った。

「ナナン。それが一番重要なことではありません」


「じゃ、なに?」

「わたくしが違う立場でしたら、とても辛いと思うからです」


「辛い?」


「・・・」

ユティスは少し沈黙していた。


「もう、このお話はおしまいにしませんか?」

「リーエス。わかったよ。きみを困らせて、ごめんよ、ユティス」

「ナナン。そんなことありませんわ。気になさらないで」


にこっ。

ようやく、ユティスは微笑んだ。


「恋人同士どうかは、さておき、わたくしは、和人さんが大好きです」


どっきん!


「ユティス・・・」

またしても、和人は急ブレーキをかけるところだった。


き、きぃーーーっ。

ぶっぶーーーっ!

ぼろろろーーーっ!


「わたくし、和人さんの宣誓・・・」


ぶろろろろろ・・・。

後ろのトラックのものすごい咆哮が聞こえ、ユティスの声を掻き消した。


ぶろろろろーーーぉっ!


「もう一度、おっしゃ・・・」


「こらぁ。アホンダラ!なんもねぇ直線でいきなりブレーキ踏むんじゃねぇ!」

追い抜きざまに、トラックの運転手が開け放した窓から大声で怒鳴った。


「す、すいません」


ぺこり。

ぶぉろろろろぉーーーっ。


「・・・できますか?」


トラックのエンジン音で、和人はユティスの貴重な言葉に気づかなかった。


「う、うん。考えとくよ・・・。ふぅー、危なかった・・・」


和人は、トラックを避けるのに気を取られ、ユティスに中途半端な答えをしていた。


「すみません、和人さん」

「え?なんだい?」


「いえ、なんでもありませんわ・・・」


ユティスは心なしか沈んだように思えた。

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