122 四人
■四人■
とろーーーん。
そして、イザベルは夢見るような目つきになった。
(な、なんだよぉ?)
二宮はイザベルの目線を追って後ろを振り返った。そして、すべてを悟った。
(げーーー、ユティス・・・)
ユティスはエルフィアの服装のままだった。
「ユティスさん・・・。あなたですか・・・?」
「まぁ、イザベルさん!」
ユティスはイザベルを認めると優しく抱きしめ、頬を寄せてキッスした。
ちゅ。
「お久しぶりですわ。お元気そうでなによりです」
「ユティス・・・」
二宮もびっくりしてユティスを見つめ、そして、すぐに和人にも気がついた。
「和人・・・」
「あれぇ、二宮先輩、ホントにいたんだ・・・」
「あれぇ、じゃないぜ・・・」
「ユティスさん、・・・天使・・・みたい・・・」
イザベルは夢見るように呟いた。
「ユティス、きみの身体から・・・」
ぽわーーーん。
ユティスの身体は黄色みを帯びた白い光が淡く纏わりつき、それはユティスの内部から放射しているように見えた。
「すべてを愛でる善なるものより、汝、イザベルに、永久の幸、あらんことを」
ユティスはイザベルに祝福を与えた。
「あ・・・」
たちまち、コンビニにいた人間はユティスに注目した。
「ユティス」
和人は小さく叫んだがすでに遅しだった。
「うぁあ・・・」
店員たちも、柔らかな不思議な光を放つユティスを目の当たりにし、その衣裳と合間って、天使が来たのかと思った。
「天使・・・?」
「まさか・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ユティス・・・」
和人はユティスに自重するよう言いかけたが、彼女に見とれて止めてしまった。
「二宮さんも、こんばんわ」
「やぁ・・・、こ、こんばんわ・・・」
やっと、二宮は挨拶した。
ちゅ。
ユティスは二宮にも頬を寄せてキッスした。
「わ・・・」
にまーーー。
「あらあら、二宮さんたち、お揃いで夜のデートですか?」
--- ^-^ わっはっは! ---
「ち、違います。道場の帰りなんです。たまたま、ここで一緒になって」
イザベルは頬を赤らめすぐに否定した。
--- ^_^ わっはっは! ---
「和人、おまえたちこそ・・・」
二宮は和人を認めて、ユティスと見比べ羨ましそうに言った。
「デートなのか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「いや、ただ、ちょっとドライブに出かけようと・・・」
「そういうのを、デートって言うんですよね?」
--- ^_^ わっはっは! ---
イザベルはユティスを見てにっこり微笑んだ。
「デートですか?それは、なんなんでしょうか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「うふふ。それは、友人以上、恋人未満のカップルが、次のステップに進むための二人っきりで外に出かける儀式ですよ」
イザベルがユティスに答えた。
「二人っきりの儀式なんですね?」
かぁ・・・。
ユティスは和人に視線を移すと赤くなった。
--- ^_^ わっはっは! ---
「やっぱり、あの時キッスされて・・・」
「あの時ですか・・・?」
「ほら、会社説明会です」
にこっ。
イザベルは悪戯っぽく微笑んでユティスに言った。
「デートって、とってもドキドキするんですよぉ・・・」
「リーエス。とっても緊張しそうです・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
にっこり。
ユティスも微笑んだ。
「そりゃ、緊張しますよ。ねぇ、宇都宮さん?」
イザベルはにっこり微笑んだ。
「なんのことだろうね。あはは・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「二人っきりで、夜の高速環状線かぁ。いいよなぁ・・・」
二宮は寂しくつぶやいた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「ちょっと、先輩。飲み物を調達しようとしただけです」
和人はなんとか言ってはみたもの、二宮が納得するような説明にはなっていなかった。
「とかなんとか言っちゃって、しっかり、おめかししてるじゃないか?」
「先輩、ただのドライブですって。夜景をユティスに見せようとしてるだけですよ」
二宮と和人が会話してる間、イザベルはユティスに耳打ちした。
「ユティスさん。思ったとうり、宇都宮さんとは恋人同士なんですね?」
イザベルは、就職活動で株式会社セレアムの説明会に訪問した時を、思い出した。
「うふ。そうだといいんですけど。まだ、お会いして数日なんですのよ」
「数日?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「以前、会社説明会で、お会いしたんじゃ・・・」
「リーエス。でも、地球へ赴任する前でしたし、精神体でしたもの」
「地球へ赴任・・・?精神体・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あはは。ユティスさんって、面白いですね」
イザベルはそれを最高のジョークと受け取った。
「ユティス、まずいよ。きみから出てる生体エネルギー場が、光になって、みんなに見えちゃってる。さっさと、レビアンでも買って出よう」
にこにこ・・・。
和人は店員たちに誤魔化しの愛想笑いをした。
「リーエス。でも、せっかく、二宮さんとイザベルさんにお会いしたんですから・・・」
「とにかく、出ようよ」
くいっ。
和人はユティスの手を引っ張った。
「あ。リーエス」
「あ、待ってくだい。ユティスさん!わたし、ちょっとお話したいことが・・・」
イザベルがユティスと和人を呼び止めた。
「そうですわ。イザベルさん・・・」
ユティスはなにか思いついたのか、笑顔でそれに答えた。
「それに、二宮さん。お二人も夜のドライブをご一緒しませんか?」
「ええ?」
にこっ。
「お二人を、お家にお送りするついでに、車の中でお話しませんこと?」
ユティスは和人に微笑んだ。
「なに言ってるんだよ、ユティス」
(冗談じゃない。せっかくのデートをじゃまされてたまるもんか)
--- ^_^ わっはっは! ---
(ばぁーーーつ!)
和人は顔の前で思わず両手を交差させた。
「わたし、稽古の後で汗をかいてますし、お話は少しでいいんです」
イザベルは遠慮がちにユティスを見た。
「ほら。先輩も、イザベルさんも、都合ってものがあるんじゃないのかい?」
「ですけど、イザベルさん、車の中の方がお話し易くありませんか?」
イザベルは和人の顔をうかがった。
「えー・・・」
「はい。そうですね。せっかくお会いできたんだし・・・」
「二宮さんはいかがですか?」
「オレ?」
「リーエス」
でれぇーーー。
二宮は一人頷いた。
「えへ。そんなこと、決まってるじゃないか」
「やっぱり・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ということですわ。和人さん」
「先輩に聞けばそうなるに決まってるよぉ・・・」
がっくり・・・。
和人は大いに落胆した。
(悪いことを考えるとホントになっちゃう・・・。もう、絶対にいいことしか考えないぞぉ・・・)
「では、4人でまいりましょう」
ユティスは笑顔で言った。
(ううう・・・。せっかく、ユティスと二人きりの、夜のドライブが・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
かちゃ。
「どうして、こうなるんだよぉ?」
二宮は和人の隣の助手席でシートベルトを閉めた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「だって、イザベルさんは、ユティスと話があるっていうから、来たんですよ。二人は並んでなきゃ話ができないじゃないですか?」
「オレは、ついでか?」
「いいえ。想定外です」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ちぇっ」
ぶろろろ・・・。
「オレがドライバーですから、助手席にユティスがいたら、イザベルさんとユティスはシート越しに話すことになるでしょ?」
「それで、いいじゃないか。オレとイザベルちゃんが後部シートで」
--- ^_^ わっはっは! ---
「不便です。イザベルさんとユティスが並べるのは、後部座席しかないんです」
「なんでオレがドライバーじゃいけない?」
「この車のオーナーは、オレです」
--- ^_^ わっはっは! ---
「助手席にイザベルちゃんが座れば、おまえも後部座席でユティスと一緒。2組のカップルが仲良く、ちょうどいいじゃないか」
「そうして、わき見運転で、みんなして、地獄へ連れて行かれるのは御免です」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ユティスがいるだろ?」
「だから?」
「エルフィアの天使が助けてくれるさ」
「イザベルさんとオレをね」
「・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ユティスだって、手は2本しかないんですよ」
「ああ言や、こう言いやがって。ちっとは先輩のことを大事に思えよ」
「だから、こうして、先輩もイザベルさんと一緒、一つ車の中にいるじゃありませんか。めったにないチャンスなんでしょ?」
「そういや、そうだな・・・」
「だったら、素直に喜んだらどうです?」
「そうっかぁ」
ひらひら・・・。
二宮が後部シートを振り返ると、イザベルがにっこり笑って手を振った。
「えへ・・・。ま、いっかぁ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
車は4人を乗せて快調に夜のハイウェイを飛ばしていた。
「喜連川さん。さっき買ったビール2本あるんすけど、いかがですか?」
二宮がビール缶を取り出してイザベルに見せた。
「わたしは、遠慮しておきます。宇都宮さん、運転してるし、なんか気の毒です」
「オレなら気にしないでいいですよ」
和人が答えた。
「でも、けっこうです」
「ユティスは?」
「わたくしも今日は控えておきます」
「じゃあ、オレは、稽古の後でのどが渇いてるんで」
ぷしゅっ。
ごっくん。
ぷはぁ・・・。
「いや、悪いなぁ、和人。オレだけ飲んじゃって」
「気にしませんから、どうぞ、おやりになってください」
「ふぅ、やっぱ、ビールはうまいねぇ!」
二宮は幸せそうな顔をした。
「そうだ。稽古の後のビールとかけて・・・、なんと解く?」
突然、二宮が謎をかけてきた。
「いきなり、謎掛けですか?」
「そうだよ。一発、笑えるのを頼むぜ、和人」
「しょうがないなぁ。うーーーん・・・」
「整いました!」
「先輩、早いですね。オレ、なにも思いつきません」
「おう。じゃあ、オレいくな。稽古後のビールと掛けて、『サドの女王様』と解く」
「なんですか、そりゃ?ま、一応、期待しないで聞きますけど・・・、その心は?」
「『冷たいほどいいわ」。『爪、痛いほど、いいわーーーん』。なんてな・・・。わはははは」
--- ^_^ わっはっは! ---
(さむぅ・・・)
「オレ、めちゃ、冴えてるじゃん、なぁーーーんて。わっはっは!」
「ヘンタイですか、先輩。降ろしますよ」
「わははは。マジになるなよ。こういう時は楽しくいかなきゃな」
「先輩がいるから、楽しくならないんです」
--- ^_^ わっはっは! ---
「前座席は、ずいぶんにぎやかですね?」
イザベルが本題に入るかどうか決めあぐねていた。
「二宮さんですもの。あの方がいれば、場が明るくありますわ。うふ」
ユティスとイザベルは、和人の車の後部座席に並んで、話していた。
「それで、わたくしに、お聞きになりたいってことは、なんでしょうか?」
ユティスが切り出した。
「はい。ユティスさん。わたし、セレアムに行くかどうか迷ってるんです」
「どちらのセレアムですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
イザベルは不思議そうな顔をした。
「どちらって・・・、セレアムは、宇都宮さんと二宮さんの会社ですが・・・」
「まぁ、そうでしたわ。わたくしったら、大田原太郎さんの故郷の星のセレアムのことかと思ってしまいました」
「はいっ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「大田原って、あの大物政治家の・・・?」
「はい。そうですわ」
「その人の故郷の星って・・・?」
「ここからは随分遠いんですのよ」
--- ^_^ わっはっは! ---
(そっか。ユティスさん、日本に来て日が浅いから、言葉を間違えたんだ)
イザベルはにっこり微笑んだ。
「フランスよりですか?」
「フランス?」
(ユティスさん、フランスを知らないってことはないと思うけど・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「ええ。フランスです。わたしの母親の国です」
(アンデフロル・デュメーラ。イザベルさんのおっしゃる言葉が理解できません。未修得の単語が出てきました。助けてくださいな)
(リーエス。エージェント・ユティス。今のお話のことですが、その女性は、この惑星上の特定地域のことを言っています。ここから、たったの9000キロメートル離れているにすぎません)
--- ^_^ わっはっは! ---
(そうですか。ご解説、アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)。アンデフロル・デュメーラ)
(パジューレ(どういたしまして))
「そうですわ。フランスよりは少し遠いかしら」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わかりました。それで、行くかどうか迷っているんです」
「そうでしたか。なにかご心配でも?」
「はい。ですから、派遣社員の立場のユティスさんから見て、働いている様子がどんな具合だか、もう一度お聞かせしてもらえればと思って」
「派遣社員?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そう、おっしゃらなかったでしょうか?」
「ああ。和人さんが、お話したことですね。でも、もう正規の社員として、働く予定なんですよ」
(ふぅ・・・。なんとか、切り抜けましたわ。アンデフロル・デュメーラ)
(上出来です。エージェント・ユティス)
--- ^_^ わっはっは! ---
「そうですか。それはよかったですね。それで、お仕事の具合は?」
「どんなことをお聞きしたいのですか?」
「まず、みなさんは本当に個人事業主なんでしょうか?」
「個人事業主・・・ですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「違うんですか?」
「ふふ。ええ。まぁ・・・」
(アンデフロル・デュメーラ。わたくし、困っています)
(リーエス。エージェント・ユティス。お隣の女性の質問の意味ですね?)
(リーエス。派遣社員ですとか、個人事業主ですとか。地球独特の未修得の言葉がたくさん出てきて、わたくし、このままではイザベルさんのお話に着いていけなくなってしまいます)
--- ^_^ わっはっは! ---
(リーエス。同時解説いたしますので、大船に乗った気持ちでいてください)
(わかりました。でも、アンデフロル・デュメーラ?)
(リーエス。なんでしょう?)
(わたくし、今、乗っているのは大船ではなく、地上を走行する車というものなんですけど)
--- ^_^ わっはっは! ---
(リーエス。エージェント・ユティス。できるだけ、地球の比喩は使わないようにします)
--- ^_^ わっはっは! ---
(アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます))
(わたくしの解説のすべてが、100パーセント正確かどうかは、保証できません)
(それは、困りましたわ・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
(まずは、言い切ることは、しないようにしてみてください)
(リーエス)
(それで、個人事業主というのは、時間報酬で雇われてはいるんではなく、成果に対して報酬をもらう契約をした、いわば、自分イコール会社という人たちのことです)
(リーエス。アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます))
「そういうことでしたら、契約上、そうなっている・・・らしいです。うふふ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「じゃあ、ユティスさんも、宇都宮先輩も、二宮さんも、社長さんなんですか?」
(社長とは、その会社のオーナー、兼、最高執行役のことです)
(ああ。ベルシアーナ、ベルシアーヌのことですね?)
(リーエス。エージェント・ユティス)
「リーエス。はい。そうです、イザベルさん」
「リーエス?ウィのことですよね?さっきから、言われてますけど・・・」
(ウィとは、リーエスのことです)
(リーエス)
--- ^_^ わっはっは! ---
「わかりました。それで、会社から、お仕事はどんな風に発注されてくるんですか?」
(会社は、業務の一つ一つを各個人に請け負ってもらいます。この場合、発注単位は、月ごとの業務量で、発注者は代表権のある人間の承認を得て発注します)
(リーエス。わかりました)
「真紀社長さんから、月毎の各業務をその業務担当の方に発注されます・・・。たぶん・・・」
「たぶん?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そうっかぁ。ユティスさんは、まだ正社員になってないから、よくわからないんですね。大変失礼しました」
イザベルはユティスにちょこんと頭を下げた。
「は、はい。うふふ・・・」
「じゃ、別の質問、よろしいですか?」
「リーエス」
「会社の方たちはどんな方ですか?例えば、雰囲気とか、人間関係だとか?特に、女性が多くて男性が少ない職場って、どんなのかなぁって・・・。女性同士の職場って、人間関係が微妙じゃないかと思って・・・。好きとか、嫌いとか、恋愛感情とか・・・」
「そのようなご質問なら、大歓迎です」
--- ^_^ わっはっは! ---