118 友軍
■友軍■
ユティスと和人はエルドとの交信を再開した。
「やあ、ユティスに和人。元気そうでなによりだ。ユティス、きみの見聞きしたことや、きみの考え、そして行動、これらは、きみ望めば、いつだってアンデフロル・デュメーラ経由で、リアルタイムにこちらに自動転送されてくる。もちろん、プライバシーにかかわることや、触れられたくないことについては、いくらでもブロックをかけられるがね。ありのままの地球を知りたいんだ。できるだけ多く、そして、できるだけ正確にね。われわれは地球の支援を望んでいるんだ」
エルドは楽しげに語った。
「リーエス」
「それに和人。きみが望めばだが、ユティスと同様に、きみの見聞きしたことをモニタできるようにしたいんだ。反対派の妨害工作も完全に収まったというわけじゃないから、きみの活動を通じて地球の客観的事実を記録しておきたい。同意をしてくれるかね?」
「リーエス。もちろん。でも、地球のサンプルがわたし一人では、判断材料としては不十分ではないのですか?」
「ナナン。やみくもに、だれもかれもをモニタしてもしょうがないんでね。一番信頼性の高い人間からの情報があれば、当座は十分だ」
「そんなにオレを信用していいんですか?」
「もちろん。ユティスが選んだ男だ」
「オレが選ばれた?」
「いかにも。それに、きみは知らんだろうが、きみはウソをつくのが最高に下手だ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「好都合だとは思わんかね。事実を集めるのに」
「えっ?」
「エルドは褒めてるんですわ、和人さんのこと」
和人の側でユティスがそっと言った。
「な、なんか複雑な気持ちだな」
--- ^_^ わっはっは! ---
「うふ。エルドは和人さんをとても気にっていると思いますわ」
「和人、わたしからは以上だが、なにか希望があるなら遠慮なく言ってほしい。きみのためならできるかぎりのことをするつもりだ」
「リーエス。ありがとうございます」
「うむ」
「さしあたっては、ユティスの身の安全が一番気になります。大田原さんの話では、こちら側も警備の人員を政府が用意してくれてるということらしんですが、未だに姿は見えないし、今一つ不安なんです・・・」
「ほう。地球政府が信用できんかね?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ナナン。日本政府です」
「地球政府の自治体のことだね?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「えー、いやぁ・・・。ま、あなたにとってはそんなものです」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わかった。早急にセキュリティ・サポートをつけよう。ユティス自身も高度な能力があるので、少々のことは切り抜けられるとは思うが、用心するにこしたことはない」
「ありがとうございます、エルド」
「はっはっはっ」
そして和人はユティスを振り向いた。
「ユティス、きみの高度な能力って?」
「護身術身を多少・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「護身術っていうと、カラテのようなもの?」
「少しだけです・・・。とてもアンニフィルドやクリステアにはかないませんわ」
「そ、そう・・・」
(絶対に怒らせないようにしよう・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「まぁ、嫌だこと。ご心配いりませんわ」
にこっ。
ユティスは、すぐに笑顔になった。
「では、二人とも、また会おう」
「リーエス」
エルドとの通信は終わった。
和人たちとの交信を終え、エルドはSSを派遣する次のステップを考えていた。
「あの二人は準備できてそうかね?」
「リーエス。後は地球語のマスターの確認だけです」
「うむ。和人からリクエストが来ている」
「では・・・」
「うむ。もう、赴任してもらわんといかんみたいだな」
「リーエス。わたくしも同感です」
エルドは、直ちに二人のセキュリティ・サポートを送り込むことにした。
「アンニフィルドとクリステアの二人を、ここに呼んでくれたまえ」
エルドは秘書に言った。
「リーエス、エルド」
エルドは執務室にSSの二人を呼ぶことにした。
「アンニフィルドにクリステア、至急、エルドの部屋に」
「リーエス」
「やっと正式に出番ってとこね」
アンニフィルドはわくわくした。
「今回の地球は、カテゴリー2に成り立てだから、いつもより手がかかるわよ」
クリステアはクールに言った。
「とにかく、二人とも、ユティスと和人をよろしく頼む」
「リーエス、エルド」
二人はまかせろとばかり微笑んだ。
「アンニフィルドにクリステア、きみたちはユティスの姉妹のようなものだからね。彼女にも実の姉妹がいるにはいるが、歳はかなり離れているし、それに、みんな一応片付いてしっまたからな。ユティスは、子供時代、一人っ子のようなものだった。だが、きみたちは彼女に歳がほど近いんで、大変助かる」
「お礼の言葉なんていらないわ。わたしたちだって、ユティスが気になるんですもの」
「そうか・・・?」
「リーエス」
「応援が必要だったら、すぐに伝えてくれたまえ。フェリシアスを差し向ける」
「えっ、フェリシアスを?」
クリステアは驚いた。
その時、長身のブロンドを長く垂らした精悍な表情の男性が、エルドの執務室に入ってきた。
「わたしだ。入るぞ」
「リーエス。フェリシアス、入り給え」
エルドはフェリシアスを執務室に入れた。
「どうも」
ぱたっ。
「よく決心してくれたね?」
「SSの訓練は部下に任せます」
「けっこう・・・」
フェリシアスは、エルフィアのセキュリティ・サポートのトップ中のトップ、指導教官の中でも群を抜いて優秀だった。そして、アンニフィルドとクリステア、二人の主任教官でもあった。
「アンニフィルド、クリステア。フェリシアスが来たぞ」
「リーエス」
ぺちゃら、くちゃら・・・。
SSの二人はお喋りに夢中だった。
「おーーーい。そこのお二人さん?」
エルドはSSたちに呼びかけた。
ぺちゃくちゃ・・・。
「われわれは、なんとなく無視されてるようだな、フェリシアス?」
にたり。
--- ^_^ わっはっは! ---
「いつものことでして・・・。すみません。わたしの教育が至らなくて」
つかつか・・・。
フェリシアスは、二人に近づいていった。
「エルドは、そこまで地球のことを重要だと認識しているのね?」
「通常、予備調査の段階で、超A級のセキュリティ・サポートが3人。しかも、そのメンバーに教官が入るというのはありえないわよぉ」
「アンニフィルド、ひょっとして、わたしたちに、信用がないってことかしら?」
「まっさか。あなたとわたしよ。わたしたち、通常のシークレットサポートじゃなく、最高理事エルドの直下なんだから」
「今度のミッションは桁外れに重要だってこと?」
「そうよ。これまでだって十分やってきたじゃない。第一、ユティスはエルドの末娘。エージェントとその家族には、セキュリティ・サポートを指名する権利があるのよ」
「ええ、それはわかってるけど・・・」
「ん、ん!」
一向にお喋りを止めない二人に、フェリシアスは咳払いした。
「私語は慎むように。二人とも心配しなくてもいい。アンニフィルドの言うとおり、地球はカテゴリー2に成り立てで可能性も大きいが、危険度も高い。わたしの着任についてはエルドの要請だ。それに、彼に要請したのは委員会だ。すぐに準備に入ってくれ。用意が整い次第、ユティスと和人のもとに行ってもらう。わたしは、追って行く」
「リーエス!」
二人は同意した。
エルドとの会見をすませた後、二人はエルドの執務室を出て、Sたち専用の控え室にいた。
「ああは言ってたけど、きっと、フェリシアスがエルドに頼み込んだのに違いないわ」
アンニフィルドはクリステアに囁いた。
「そうかしら?」
クリステアは誤魔化すように笑った。
「決定事項に逆らうつもりはないけど・・・」
「素直に喜びなさいよ。フェリシアスに、先に行く挨拶しなくていいの?」
「ええ、するわ」
「あ・・・」
クリステアとアンニフィルドのところに、フェリシアスが入っていった。
「クリステア、きみもアンニフィルドも、ここにいてもいいのか?」
「準備なら、済ませてあるわ。一つを除いてね」
ぱちっ。
アンニフィルドはフェリシアスを見つめた後、クリステアにウィンクした。
「ひとつ忘れている・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ちょっと、アンンイフィルドってば!」
「クリステには、もう一つ支度をしないといけないものがあるの」
「ん、んっ・・・」
フェリシアスは、アンニフィルドの言わんとするところを知って、咳払いした。
「どうかしたの?」
「いや、実は、わたしもあるんだが・・・」
フェリシアスがはっきりしない言い方をした。
「なぁに?」
アンニフィルドは悪戯っぽくクリステアに近寄った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「後からくるんでしょ?エルドから直接聞いたもの。ピンチにはならないとは思うけど。最後は、あなたに頼らざるをえないともかぎらない。その時には・・・」
クリステアの口調が穏やかになってきた。
「ああ・・・」
「ええ、すぐに来てよね・・・」
「もちろんだ。じゃあ、しっかり」
「ええ・・・」
「それに、ユティスにもよろしく」
「リーエス・・・」
「それじゃ・・・」
「ええ・・・」
すたすた・・・。
フェリシアスはそい言うと、さっさと奥の教官エリアに引っ込んでいった。
「なによ、あなたたち・・・。ひょっとして、あれでおしまいなの?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス。フェリシアスらしいわ」
「人事みたいな言い方ね。仮にも、あなたの恋人でしょ?これから5400万光年先の危険な地球に、2年間派遣されるっていうのに、なんてそっけないの?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「いいじゃない!」
「抱きしめてキッスくらいしてくれてもいいんじゃないの・・・?ちゅっうって」
アンニフィルドは唇を突き出した。
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドは、いつものことながら、フェリシアスのクールすぎる態度にあきれた。
「い、いやらしいわね、アンニフィルド。その辺で止めなさいよ。あれで、彼にしては、精一杯の愛情表現をしているつもりなの」
「どこが?」
「んもうっ!わたしが、そう言ってるんだから、それでいいじゃない!それに、どうせ、わたしたちの後からくるんだし、5400万光年といっても、転送なんて、一瞬なんだからね。転送先さえ、正しければ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
クリステアがフェリシアスを弁護した。
「ま、あなたがそれでいいと言うのなら、わたしがどうのこうの言う権利なんてないけど」
「当然。で、アンニフィルド、あなたはどうなのよ?」
「わたしは、お別れの挨拶しなくちゃいけない人が、いすぎちゃって困るわ。だから、だれか一人だけにしちゃうと、後が大変なのよ。なぜ、わたしには挨拶をしてくれなかったのかい、アンニフィルドって。そりゃもう・・・」
「ははは・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
クリステアは力なく笑った。
「クリシュフォンでしょ。アリエーズでしょ、ユーグに、リディック、ドレッグ、ランベルロッド、イネシス、タナーズ、ゼノ、それに・・・」
アンニフィルドは、止まることなく、名前をあげ続けた。
(やっぱり・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「はいはい。わかりました」
クリステアは、聞くのがバカバカしくなって、話を打ち切った。
「アンニフィルド、今日は一緒に食事でもどう?」
「いいわよ、リディック。ステキな夕食を期待してるわ」
「じゃ、迎えに行くよ」
「待っているわ」
アンニフィルドはシークレットサポートの中では特別に陽気な性格だ。男性の中で、彼女の人気は極めて高い。
「アンニフィルド、次の任地が決まったって?」
「ええ、そうよ」
「また、2年間?」
「今度は、半年よ」
「よかった・・・」
「でも、自動延長が1年半あるけど」
「ええ・・・?それは、2年て言うんじゃないのかい?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あはは。けど、いつだって戻れるわ」
「ぼくは、一日だって、きみの姿を見れないなんて、寂しいな・・・」
「あは。嬉しいこと言ってくれるのね?」
「ぼくには、永遠に思える」
「おバカさん・・・」
ちゅ。
[アンニフィ・・・」
「だーめ、キッスの最中よ。やり直し・・・」
ちゅうっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
んーーーん。
アンニフィルドは、ステディな恋人は作らない主義に思われていた。が、中には彼女の熱いキッスと抱擁を体験したという幸運な男性もいた。
「はーーーぁ。なんで、男って、あんなに必死で言い寄ってくるのかしら?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「それは、あなたがすっごく魅力的な・・・」
「リーエス。魅力的な・・・」
アンニフィルドはクリステアの次の言葉を期待した。
「ん・・・、とにかく女性だからよ」
「はいっ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「それだけ?」
「連れ合いになれるような男性は、たくさんいるんでしょ?」
「んーと。そうねぇ。いるかもしれないし、いないかもしれない」
「なによ、それ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あは。いいじゃない、そんなこと。わたしは、わたし」
しかし、アンニフィルドは、今現在、特定の恋人を作っている様子ではなかった。
「あ、アンニフィルド・・・」
「アステラム・ベネル・ロミア(おはようございます)、みんな!」
「おはよう・・・」
「ベネル・ロミア(おはよう)、アンニフィルド」
「ベネル・ロミア(おはよう)」
アンニフィルドにとって、その気になれば、恋人を作ることはいつでもとても簡単なことで、ウィンク一つ、1秒もあれば、十分だった。
「あの、明日は、夕食でも一緒にどうかなぁ?」
ぱちっ。
「まぁ、お誘いいただき、ありがとう。ブリュンデルゼール」
にこっ。
「じゃ、いいのかい?」
「んー、どうしようかな?トレーニングのすぐ後は、汗かいちゃうし」
「じゃ、汗を流した後でいいよ。いいだろ?」
「リーエス。7時ね」
「わぉ!やったぁ!ありがとう、アンニフィルド。迎えに行くからね!」
「はい。また明日」
にっこり。
「また、明日」
「あーあ、ブリュンデルゼールか。ハンサムだけど、デートする前に、飽きちゃいそう」
--- ^_^ わっはっは! ---
「どうしたのよ、アンニフィルド?」
「お付き合いしようとすると、なにか、急に、もの足らなくなるのよね」
アンニフィルドはおどけた。
「それって、本当に好きな相手に、めぐり会えてないってことよ」
クリステアが言った。
「夕食の約束しちゃった」
「またぁ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
(はじまったわ・・・)
クリステアは頭を抱えた。
「好きじゃないなら、断ればいいじゃない」
「でもね、悪いじゃない。嫌いなわけじゃないし。せっかくお誘いしてもらったのに」
「ビジネスじゃないんだから、そこまで義理立てしなくても。本命は、いないの?」
「ナナン。でも、可能性があるなら広げておかなくちゃね。もてる女の必須条件よ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「もう。そんな確率的な考えじゃだめよ。もっと、自分を大事にしなさいよ」
「その通りなのかも。ユティスがうらやましいわ」
アンニフィルドは素直に認めた。
「ねえ、クリステア・・・」
「なあに?」
「いるかしら?」
「なにが?」
「地球よ。地球」
「それが、どうしたの?」
「イイ男・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「かんべんしてよ、アンニフィルド」
「冗談よ、冗談!」
「半分本気でしょ?」
「半分くらいは・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「やっぱり・・・」
「あはは・・・」
SS二人の笑い声は続いた。