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117 癒し

■癒し■




和人が気づくと、和人の頭はまたまたユティスのひざの上だった。


「うーーん?」

和人が優しく微笑みをたたえたユティスの顔を認めたが、その位置がおかしいので不思議に思った。


「お目覚めですか?」

「ユティス?え?これ、膝枕・・・」

ユティスに膝枕されていることを理解すると、あわてて和人は頭を起こそうとした。


がばっ。

さっ。


ちょうど屈みこんできたユティスの唇に自分の唇を触れさせてしまった。


「あっ・・・」


完全なハプニングではあったが、二人を動揺させるには十分だった。


「あ・・・」


ユティスも顔を赤らめたが、すぐにそれは微笑みに変わった。

にこっり。


「和人さん・・・。うふ・・・」

「ご、ごめん・・・」

「ナナン・・・」

偶然が、二人にいやがうえでもお互いを意識させた。


がばっ。


「オ、オレ、汗を流してくるよ」

「リーエス・・・」

たまらず、和人は身体を起こすとシャワーを浴びにバスルームに向かった。


(だめだ・・・。こんなんで、ユティスと同じ部屋で眠るなんて、とてもできないよ。オレ、変になりそう・・・)


ぷるぷる・・・。

和人は頭を振った。


じゃぁ・・・

和人はシャワーを少し熱めにして、頭をすっきりさせようとした。


「ふぅ・・・」


やがて、シャワーを終えると、和人はリビングに戻った。


「すっきりなさいましたか?」

「う、うん・・・」

和人は別のことを考えていた。


「ユティス、やっぱり、オレは別の部屋を使った方がいいんじゃないのかなぁ。その、なんて言ったらいいのかなぁ・・・。とにかく、オレは、隣の部屋で寝るから・・・」


「ナナン。和人さんとご一緒させてください・・・」

ユティスはすぐに懇願するように小声で言った。


「でも・・・、その、年頃の男女が一緒の部屋にだねぇ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「和人さんとご一緒じゃなきゃ、嫌です・・・」

もう一度、ユティスは和人と一緒にいたいと懇願した。


「真紀社長さんもおっしゃってますわ。一時も離れないようにって」

「そうはいっても、同じ屋根の下じゃないか」


「お部屋が違うと一緒という意味がありません。SSだってまだ到着してせんわ・・・」

「で、でもね。オレ、男なんだよ。特に地球人の男ってのは、本能ってものが、意思とは関係なく、ほれ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「どうしても、お嫌なのですか・・・?」


ぽろっ。

ユティスの目からポロリと涙が落ちた。


「ナナン。絶対そんなことない。けど・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


和人は、感情と理性の間に挟まれ、大パニックになっていた。


「ユティス。オレ、一応男だし。きみはとっても可愛い女の子で。その・・・大好きな、いや、一つ屋根の下で、同じ部屋にだね、同じベッドで、若い男女が夜を共に過ごすんだなんて・・・。オレ、カテゴリー2の地球人だし・・・」


「地球には、添い寝のサービスがおありなんでしょ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ええ?なんだい、それ?」


「そこに居合わせる見知らぬ男女が、気が合った同士、同じお布団で身を寄せ合って眠るんですわ。純粋に、お互いの温もりを提供し合うだけです」


「そんなサービスがあるなんて・・・、いったいどこで、知ったんだい?」

「うふふ。わたくしにお教えくださった方がいますわ」


「いったい、だれから?」

「精神体の時に、二宮さんから・・・」

「・・・」

和人は納得した。


「やっぱり・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「でも、それは商売の話しじゃないのかい?」


「ナナン。ボランティアの方たちも大勢いらっしゃいますわ。性的な意味ではなくて、純粋に精神的な意味です。お互いの温もりと存在が、孤独感からの開放を促し、心を癒し合います。極度にアソシエーション社会が発達した地球では、人間が独りで暮らすことは、大変なストレスを日常的に溜め込むことになるんです。だから、たまには、そういった考えの人たちが集まるところで、男女、年齢、時間に関係なく、添い寝し合うんだと、二宮さんがおっしゃってくださいましたわ・・・」


「男女がかい?」

「リーエス」


--- ^_^ わっはっは! ---


「信じられないや・・・。先輩もそれを利用してるのかな?」

「うふ。それは聞いていません。わたくし、とても興味を覚えてましたわ」


「でも、オレはオレだよ。一緒にいるのはきみなんだ。可愛くてキレイな女の子なんだよ。本能を押さえられなくなると、オレ、責任取れないよ・・・」


「和人さんの言う責任が、なんの責任かわかりませんが、責任ならわたくしが取りますわ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あぁ・・・。ユティス、きみは、本当にわかってるのかい?」

「リーエス。和人さんと同じお部屋でなければ、わたくし、まったく安心できません。それは、はっきりわかっています」


--- ^_^ わっはっは! ---


「オレ、理性、からっきし自信ないんだから・・・」

「どうしてもですか・・・?」


じぃ・・・。

ユティスは黙りこくって目を潤ませ、悲しげに和人を見つめた。

「・・・」


「ユティス、そうは言ってもさぁ・・・」


じぃ・・・。

「・・・」


「オレ、ホントは怖いんだ。もし、野生の呼び声ってか、その、衝動的にユティスを襲っちゃったりしないかって・・・」


じぃ・・・。

「・・・」


「そして、ユティスに嫌われちゃったりしないかって・・・」

「和人さんを嫌うだなんて。そんなことは、絶対にありません・・・」


にこっ。

ユティスは微笑んだ。


「オレ、いつまで自分を抑えられるかわかんないよ・・・」

「・・・」

「わかった。こうしよう」

和人は布団を2組抱えるとドアを開けた。


「こっちの部屋にお出でよ」

「リーエス」

和人は妥協案を見出し、隣部屋に布団を二つ並べて敷いた。


「これでどう?」

「リーエス」


ぎゅ・・・。

ユティスは満足そうに微笑むと、布団越しに和人の手を握って眠りについた。


「あっ・・・」


和人は、ユティスの手の感触に、嬉しさがこみ上げてきた。


(しかし・・・、手を握られたことで、当然、それ以上のことも想像してしちゃうよなぁ。神様、どうか、オレの煩悩が暴走しませんように・・・)


「色即是空。色即是空・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


和人は、やっとの思いで内なるオオカミを抑えた。だが、ユティスにとっては、和人と同じ時間同じ場所にいるということこそが、他の何よりも大切なことだった。


(地球代表だって?クソ喰らえだ!とほほ・・・。生殺しだよ、オレ。何日持つことやら)


そして夜はふけていった。




ちゅ。


「アステラム・ベネル・ロミア。和人さん・・・」


朝、和人はユティスの気配を感じて目を覚ますと、ユティスが和人の布団に潜り込んでいて、和人を愛しそうに眺めていた。


「わわわ・・・!」


--- ^_^ わっはっは! ---


ささっ。


ユティスが和人の布団から出ると既に着替えていた。


「あ、着替えてたんだ・・・」

「リーエス。おはようございます」


「おはよう。ベネル・ロミア・・・。起きたの?」


にっこり。


「はい、今しがた。わたくしたちの精神安定のため、少しの間だけ添い寝させていただきましたわ」


「精神安定・・・、オレたちの?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「んふ?」

「ホントにそれだけ?」


「ナナン。キッスもさせていただきました」


にこっ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「キッスだってぇ?」

「リーエス。こんな風に・・・」


ちゅ・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


ユティスは、屈みこんで、優しく和人の額に自分の唇を重ねた。


でれーーー。


はっ。

がばっ。

和人は半身を起こした。


「ちょっと、ユティス!」

「額がお気に召しさなかったなら、唇にし直しますか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「い、いいよ。もう」


しゅん・・・。

「そうですか・・・」


「どうしたんだい?」

「よくわかりません・・・」


「ごめんよ。オレ、もう起きなきゃ。よっこらしょっと」

和人は布団から出て立ち上がった。


「和人さん」


ぎゅうっ。

ユティスはいきなり和人に抱きついた。


「おっと、ユティス・・・」

「ずっと、こうしたかったんです・・・」

「・・・」


ちゅ。

和人は、ユティスの唇を首に感じながら、幸せを噛みしめた。


「和人さん・・・」

「うん。わかったよ。オレもそう」


ぎゅうっ。

和人もユティスを抱きしめ直し、数分間二人はそうしていた。


「ユティス・・・」

二人の目が互いに見つめ合うと、ユティスはゆっくりと目を閉じた。


ちゅう・・・。

三度目のキッスは和人がユティスの唇にした。




二人揃って、洗面所で顔を洗い、歯を磨いた。


「せっかくユティスのキッスを洗っちゃうのも、勿体ない気がするよ」

「うふふ。問題ありませんわ。お口がキレイになったら、もう一度しましょう?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わわわ!」

「ふふふ」


がらがら・・・。

ぺっ。

ぷふぁ・・・。


「冗談はさておき、そろそろ朝食を取らなきゃね・・・」

「リーエス。キッスではお腹は一杯にはなりませんもの」


「あははは。そうだね。でも胸は一杯だよ」

「まぁ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「お食事は、いかがいたしましょうか?」

「オレは、パンと紅茶で十分だけど」


「そうですか。では」

ぱっ。


ユティスは、いきなりテーブルの上にそれを出した。


--- ^_^ わっはっは! ---


さぁーーーっ。

「はい。召し上がれ」


「あ・・・」

「すみません、遅かったでしょうか?」


「と、とんでもない。電光石火でびっくりしたんだよ。どうやったんだい?」

「うふふ。秘密・・・」

ユティスは悪戯っぽく微笑んだ。


(アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)。アンデフロル・デュメーラ)


ぱちっ。

「なんだい、ユティス、そのウィンクは?」


「なんでもありませんわ」


(うふふ)


--- ^_^ わっはっは! ---


(パジューレ。どういたしまして、エージェント・ユティス)


「ユティス、ミルクは、どう?」

「お願いいたしますわ」


「了解。温めた方がいいかい?」

「リーエス」


「了解。アンデフロル・デュメーラ、温めてくれるかい?」

「リーエス、コンタクティー・カズト」


「まぁ、和人さんもですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「えへへ。やっぱり、そういうことだったんだね?」


「リーエス。うふふ」


ちーーーん。

「コンタクティー・カズト、温め上がりました」


「ありがとう、アンデフロル・デュメーラ」

「パジューレ、コンタクティー・カズト」

和人は温まったミルクをユティスに差し出した。


「はい、どうぞ」

「アルデリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)、和人さん」


「32000キロ上空にいるけど、アンデフロル・デュメーラは、こんなこともできるんだね?」

「リーエス。とっても頼りになりますわ。うふふ」


「あは。電子レンジも炊飯器も要らないかな・・・?」

「ナナン。本来は、わたくしがすべきことです。今日は、時間がなかったので・・・」


「なに言ってるんだよ、ユティス。きみはお客さんなんだから、なにもしなくていいの」

「ダメです。わたくし、和人さんには手料理を作って差し上げたいです」


「あ、ありがとう」


「んふ?」

にっこり。




和人は、ユティスといつになくゆっくり朝食を取ることができた。


「こんなに余裕を持って、朝食を取れるなんて」


ユティスはにこにこしながらたずねた。

「お気に召しましたか?」


「うん、とっても」

和人は大きく頷いた。


「わたくしも、とても幸せです」

「オレも・・・。でも、本当はね・・・」


「リーエス」

「朝食そのものも最高に嬉しいんだけど・・・、きみと一緒に朝を迎えたんだってことに感動したのさ・・・」

「和人さん・・・!」


(われながら、気障・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「嬉しい。嬉しいですわ、とっても・・・」


「あはは。これからも、こうだといいね?」

「リーエス・・・」


ことん・・・。

ユティスが和人にそっともたれかかり、いい香りが和人の鼻腔をくすぐった。


「和人さんが喜んでいただくのが、わたくしの喜びです」

ユティスの身体を直に感じて、和人は動悸が激しくなった。


「ずっと、ずっと、こうしていたいです・・・」


どっきんっ。


ちゅう。

今朝、ユティスとの四度目のキッスは、ほんの少しだけ、バターの味がした。


--- ^_^ わっはっは! ---


(ひゃあ、毎日これかよ!新婚夫婦そのものじゃないか。みんな新妻を振り切って、よく仕事に出かけられるよな。日本人ビジネスマン、尊敬に値するよ・・・。オレ、理性、絶対に持たない・・・。普通じゃ、あっという間に、有休使い切っちゃうよ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


(ただでさえ、いきなり若い女の子と一緒に暮らすことになったわけだろ?それだけでも自制心がいるのに、憧れのユティスと一つ屋根の下、おまけにキッスまでしちゃったし、これから、ずっと暮らすんだぞ。どうすんだ、オレ?)


--- ^_^ わっはっは! ---


(ユティスはエルフィア人代表。ユティスの身の上になにかあったら、国際問題だ。いや超銀河間問題に発展するかもしれない。そうなれば、エルフィアの地球支援なんて、白紙に返されちゃう。やばいぞ・・・、絶対・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


和人は喜んでばかりはいられないことに頭を抱えた。


(キッスか・・・。オレ、ユティスとこれ以上個人的に近づけるのかぁ?)


和人は急に不安になった。


「んふ、お考え事ですか?」


ユティスは知ってか知らないでか、変わらない態度で和人を信頼していた。


「ナナン。なんでもないよ」


(でも、これはこれで、かけがえのない癒しに違いないよな)

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