114 挨拶
■挨拶■
るるるーーー。
るるるーーー。
(嫌な予感がする・・・)
「まだ、呼んでますわ」
「無視しよ・・・」
ぴんぽーーーん。
「今度は玄関ですわ」
「勧誘訪問だね」
「勧誘訪問?それは、どういったものですか?」
「きっと、新聞か、電話か、テレビか、太陽光発電か、発酵乳か、新興宗教か、車か、霊感商売か、政治家の後援会か、とにかく、その類の勧誘だよ。一度入ったら抜けるのが大変なんだよ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
和人はやれやれという顔をした。
「でも、お出になられた方がよろしいかと・・・」
にっこり。
ユティスにはそれがだれだかわかっていた。
「わかったよ。しょうがないか・・・。よっこらしょっと」
--- ^_^ わっはっは! ---
和人はゆっくりと腰を上げた。
ぴんぽーん。
ぴんぽーん。
ぴんぽーん。
(だれだよぉ、もう、ひつこい・・・)
「はぁーい」
「おーい、和人。いるんだろ・・・?可愛い娘ちゃんとぉ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「うるさいなぁ、もう・・・」
(やっぱり・・・。二宮先輩だ・・・)
「うふふ。わたくしたちが、どうしてるのか心配で、いらしたのですわ」
「ちぇ、また先輩か・・・。どうして、こうタイミングがいいんだろう」
--- ^_^ わっはっは! ---
すたすた。
とんとんとん・・・。
すたすた。
かちゃ。
「どうぞ。入ってください」
「おーーーす。電話くらい出ろよ、和人」
「ちょっと・・・」
「出んわってわけか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「先輩、駄洒落ですませないでくださいよぉ・・・」
二宮は和人の顔を見て直感した。
「ははーーーん。よんどころない事情で、出られない状況だったってわけか・・・」
「先輩!」
「わははは。大いにけっこう。ユティス、来たんだろ?」
「ええ、まぁ・・・」
「へへへ。会わせろよ」
「ええ・・・」
とんとんとん・・・。
玄関にスリッパとパジャマ姿のユティスが現れた。
ぱっ。
「まぁ、二宮さん?」
若い女性の声に、二宮はドキッとした。
「は・・・、初めまして・・・」
二宮は、和人の後ろの人影を見つめた。
ゆらゆら・・・。
「ああ・・・。ユ、ユティス・・・」
ユティスの身体からは淡い虹色の光が身体を包むように出ていた。
「リーエス。アステラム・ベネル・ロミア(こんにちわ)、二宮さん」
にっこり。
ユティスは二宮に近寄ると彼を優しく抱擁し、自分の頬を二宮のほほに交互にくっつけた。
ちゅっ。
ユティスは頬をくっつける時に、キッスするように口で軽く音を出した。
「こ・ん・ち・わ・・・」
二宮は実体として現れたユティスの美しさにわれを忘れていた。
「ユティス・・・。ホントに、きみ?」
「リーエス。二宮さん。わたくし、もう、精神体ではありませんわ」
ユティスはゆっくりと笑みを広げた。
「手も繋げます。こうして抱き合うこともできます。そして、ちゅ、だって・・・。うふふふ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あ・・・。それ、ごめん・・・。悪かったよ・・・」
精神体のユティスとはなにもできないと、和人をからかったことのある二宮は、ユティスに謝った。
「ふふふ。もう気になんかしてませんわ」
にこっ。
「あ・・・、そうだね・・・」
ぽかーーーん・・・。
「なんて、きれいなんだ・・・」
(ユティスとは、何度か精神体で会ってたからわかってはいたけど、実際、実物がこんなにきれいで可愛いなんて、思ってもみなかった・・・)
ぷるぷる・・・。
二宮は首を振った。
「アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)、二宮さん」
ユティスは二宮との抱擁を済ませると、和人の左腕に自分の右腕をからませ、ぴったりと和人にくっついた。
ぴとっ。
和人はそれを解くわけでもなく当然という様子だったので、二宮はそれには大そう驚いた。
「和人。おまえ、その腕・・・」
「オレの腕がなにか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
和人はまったく気づいていなかった。
「付いてるっていうか、絡んでるっていうか・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ああ、これですか・・・」
なおも腕を絡ませたまま、和人はユティスを見つめて言いかけた。
ぷよん。
「精神安定のためには、とっても効くんですのよ。ドクターの和人さんへの特別処方です・・・。うふ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「なんか、オレ、治療中だったっけ・・・?」
和人はユティスを問いかけるように見つめた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス。これしか対処法がなかったんですよ、患者さん・・・」
にこっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「あー。あのぉ・・・、おじゃまだったでしょうかぁ?」
ユティスの胸は和人の腕に押し付けられたままだった。
「あの、胸が・・・」
「んふ?」
にっこり。
「いえ、なんでもないっす・・・」
二宮は真っ赤に照れて、微笑んでいるユティスに遠慮した。
「ナナン。お気遣いなく」
にこっ。
ユティスは二宮に微笑みかけた。
かぁーーー。
二宮はユティスに見つめられて赤くなった。
(なんで、オレが赤くなってんだよぉ・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「あはは・・・」
和人はやっとそれに気づいた。
「ああ、これですね。一時も離れるなって、常務の言葉、真に受けちゃって・・・」
和人はなんとか誤魔化そうとした。
「ふうっ・・・」
二宮はため息をついた。
「そんなの言い訳けにもなってないぞ。あーぁ、いいなぁ・・・。和人君は・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「先輩・・・」
にっ。
二宮はにやりと笑った。
「よし。わかった。結婚式はオレが司会してやるからな、和人」
「け、結婚式って、なにを飛躍してるんですか?」
「うふふ。二宮さんもステキですわよ」
「ほ、ほんと?」
「すぐに恋人が現われますわ」
「そ、そうだよね。えへへへへ・・・。イザベルちゃぁ~~~ん」
--- ^_^ わっはっは! ---
ユティスの天使のような微笑に、二宮はすぐに幸せ感に満たされていった。
「まぁ、せっかく来てもらったんだし、上がってください、先輩」
「ああ。ちょびっとだけな。オレ、もっといたいけど、客回りの途中だから、長居できないんだ。ユティスが来たって聞いたんで、近くにいたから寄っただけなんだ」
「そうですか。それは、お気を使っていただきまして、感謝申しあげます」
ユティスは、和人にからませた腕を解いて、二宮に微笑んだ。
「なにか、お入れしましょうか?」
ユティスはキッチンを見た。
「あ、うん・・・」
「お茶で、いいですか?」
「ああ。ありがとう」
「はい。召しあがれ」
ユティスは紅茶をカップに注いで二宮に渡した。
「うーーーん。可愛い娘ちゃんが注いでくれるお茶は最高だぜ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「まぁ、二宮さん、お世辞がお上手ですこと。うふ」
ぴとっ。
ユティスは再び和人にぴったりとくった。
「あーあーーー・・・」
「なんですか、先輩?」
「おまえたち、どうみても、新婚ホヤホヤの若夫婦って感じだぞ」
「そ、そうですか・・・」
和人はあわてた。
「なに、今頃、あせってんだよ。ユティスを見ろよ。新妻ですって訴えてるじゃないか」
--- ^_^ わっはっは! ---
「先輩、誤解を生むじゃないですか。新妻だなんて」
「変な意味じゃなくて、二人で一緒にいるって、そういう幸せ感が体中からあふれ出てるってことさ」
「本当ですか、二宮さん?」
ユティスは明らかに喜んでいた。
「ああ。ばっちし、目一杯」
「アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)。こんなに幸せなことは初めてですわ」
「ユティス!」
和人は慌てた。
「はははは。しっかりしろよ、和人。エルフィアの全権大使かどうかはさておき、ユティスも第一に女の子なんだから、そこんところをわかってなきゃぁな」
「ははは・・・」
和人は照れ笑いした。
「それでだ。常務が言ってた、ユティスと離れちゃだめってことだけど、家に閉じ込めるって意味じゃないからなって。逆にいろんなところを案内してやれってさ。費用は会社に請求しろとも」
「費用会社持ち?常務がですか?」
「ああ。だから、心配ない範囲で外を案内してみたらどうだ?」
「やったぁ・・・!」
「カフェに、レストラン、遊園地に映画館。カラオケ、それにホテルまで」
--- ^_^ わっはっは! ---
「まぁ、それはステキですわ」
ユティスも大いに喜んだ。
「了解です」
「じゃ、伝言は済んだし、そういうことで。そろそろ、オレは仕事に戻るわ」
「はい、どうもありがとうございます」
「二宮先輩、どーも」
「さてと、先輩もいなくなったことだし、今後のことを、ちゃんと考えなくちゃね」
和人はユティスを振り返った。
「リーエス。差し当たり、どのようなことがするのですか?」
「まずは、きみがここで生活するためのものを用意すること」
「わたくしに、なにかお手伝いできることはありませんか?」
ユティスは、和人が心配そうにユティスを見ていたので、思わず言った。
「そうだな。サイズが合うかどうか、試着してもらうことかな」
「和人さんが、立ち会っていただけるんですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ええ?」
「だって、和人さんが気に入っていただけるか、心配ですもの・・・」
「だめだめ。勘弁してよ。女性用の試着室の中にはきみだけが入るんだよ。入り口には、男性が入れないように、自動認識システムがしっかり監視してるんだから・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「自動認識システム・・・。すごいんですね。どんな仕組みなんですか?」
「えーと。それはね、店員さんとも呼ばれてるんだよ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「まぁ!ご冗談ばっかり」
「あはは。まさか、きみがこんなに早く現れるなんて思わなかったんで、オレ、本当になんにも用意してないんだ。食べるものとか、きみが使うものとか。だから、買出しに行かなきゃと思ってるのさ」
「うふふ。わたくし、どうしても和人さんのところに、1分1秒でも早く訪れたかったのです。委員会のみなさんには、ご無理を承知していただいて、日程を早めてここに来たんです。本当に、そうですわ・・・」
「うん。オレも嬉しいよ・・・」
和人は頷いた。
「さぁ、地球のスーパーマーケットを案内するよ。生活用品のほとんどすべてがあるから、地球人の暮らしぶりをいろいろ調査できると思うよ」
「リーエス」
「早速、行こうよ」
「うふふ。リーエス。それで、買出しとはなんですか?」
「つまり、生活するのに必要なものを、お金を出して、お店からもらってくるんだよ」
「例のお金ですね?」
「そう。なにかあるの?」
「リーエス。それについては、あらためて別の機会に少しお話しませんか?」
「リーエス」
るるるーーーっ。
(またか・・・。今度はだれなんだろう・・・?)
「和人さん。また、スマホが鳴っていますわ」
「リーエス。ありがとう」
ぷっ。
「和人、いるの?」
「はい。あ、真紀社長」
「二宮から聞いたわ。ユティスは、目が覚めた?」
「はい・・・」
(早ぇ。二宮さん、もう報告しちゃったんだ)
--- ^_^ わっはっは! ---
「じゃ、ちょっと、ユティスと会話させて」
「あ、はい」
和人はスマホをユティスに渡した。
「真紀社長が、きみと話したいって」
「真紀社長ですか?」
「うん。オレの会社の」
「リーエス」
「ユティス?はじめまして、国分寺真紀よ。和人と同じ会社の」
「はじめまして、国分寺真紀さん。わたくし、ユティスと申します」
「ステキな声ね」
真紀は陽気に言った。
「ありがとうございます」
「あなたに、地球人用の着替えを持っていくんだけど、サイズを聞いておきたいのよ。教えてくれる?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「まぁ。お気遣いいただいて、申し訳ありません」
「なに、言ってるの。わたしがそう望んでるんだから。とにかく、サイズを教えて?」
「サイズですか?」
「ええ。身長、バスト、ウエスト、ヒップとか」
「はい・・・」
ちら・・・。
ユティスは和人を見つめた。
「ん?どうしたの?」
「ええ・・・」
かぁーーー。
ユティスは頬を赤らめた。
「あ・・・。そっかぁ・・・。そうよね。横に和人がいるのね?」
--- ^_^ わっはっは! ---
真紀もユティスの声の調子でそれに気づいた。
「オレ、部屋、出てるよ・・・」
「ナナン。大丈夫です。わたくし、和人さんになら、聞かれても・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
ユティスは和人を潤んだ目で見つめた。
「やはり、和人さんと離れているのは嫌です。わたくしとご一緒にいてください」
やっと、会えた和人と、ユティスは一瞬でも離れていたくなかった。
「オレに、聞かれてもいいって、なんなの?秘密?」
和人は不思議そうにユティスを見つめた。
「うふ。わたくしの体のサイズですわ」
「なんだってぇ・・・」
「あの、真紀社長さん。和人さんがいても構いません」
「あはは。そういうことね。じゃあ、遠慮なく聞かせてもらうわ。単位は、地球のメートル法よ。あなた知ってるかしら?」
「はい。和人さんから、教わっています」
「じゃぁ、上から順に教えて。まず、身長からいくわ」
「はい。172センチメートルです」
「うわぉ・・・。けっこうな長身ね。次は、バスト」
「はい。それは・・・」
ユティスは真紀に尋ねられるまま自分のサイズを教えた。
「うわぁお、うわぁお!あなた、モデル並みじゃないの。素晴らしいプロポーションだわ」
受話器越しに、興奮する真紀の声が和人にも聞こえてきた。
「そ、そんなぁ。わたくしは、エルフィアではごくごく平均的ですわ」
「まっさか。謙遜しなくていいのよ。ありがとう。6時頃そちらにうかがうわ」
ぴっ。
真紀はそう言うとスマホを切った。
「さてと、そろそろ、本当に買出しに行こうよ」
「はい」
「しかし、この格好じゃなあ・・・。可愛いんだけど」
--- ^_^ わっはっは! ---
和人はパジャマ姿のユティスを見て苦笑した。
「ステキですね」
ユティスは、パジャマを触って感触を楽しんだ。
「夜はね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「これは寝る時のものだから。普通、これで外に出歩くことはないんだよ」
(待てよ。なんか、胸のあたりが妙に悩ましすぎるぞ・・・)
思わず、和人はユティスの胸に視線を固定してしまった
(ユティス、パジャマの下は・・・)
「なにも着けてはいませんけど・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「だー!ノーブラだってぇ?」
「いけませんか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
(そりゃスゴイけど、このままじゃ、なおさら人前に出せないよ)
「だめ、だめ。車の中にいてよ、ユティス。いいね!」
「あの、これで人前に出たらよくないのですか?」
「まずい、まずい。非常にまずい!絶対にまずい!」
(それは、オレとうちにいる時だけにしてよ・・・。なんてね・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「そうですか。うちの中なら大丈夫なんですね?」
「あーーー。オレの考え読んだでしょう?」
「うふふ。しっかり、聞こえましたわ」
「でも、こんな格好じゃ、まじ、外を歩かせられないよ」
「大丈夫ですわ・・・。エルドから着替えがそろそろ来ると思います」
「それはいいね。あははは・・・」
「リーエス」
「そうだ。オレの上着でも羽織ってってよ」
和人は薄手のウール地セーターをユティスに着せた。
「これなら、なんとか大丈夫かな」
ユティスは微笑みながら、くるくる回ってそれを和人に見せた。
「どうですか?」
「とっても可愛いよ」
「嬉しい・・・」
和人は、近所のスーパーに食料の買出しに車でユティスを連れ出した。