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113 電話

■電話■




エルフィアでは、トルフォを中心にして地球の文明促進支援への反対派が、密かに打ち合わせをしていた。


「ブレスト。調子はどうだ?」

トルフォは、尊大に言った。


「計画通りですよ。トルフォ。SSは、超A級リュミエラを首尾よく引き入れることができました。既に、こちら側についてるA級SSファナメル。ゾーレ、シェルダブロウを入れ、総勢で4名です」


「結構。上出来だ。あの二人に対抗するにはそのくらいいないとな」

トルフォは深く頷いた。


「リーエス。それで、ユティスを地球に送った転送システム8号機のメンテナンスが、近々、行なわれます。それに合わせて、他の2機の同期を取れるよう、それらをうまくプログラムしなくてはなりません」

ブレストはトルフォに要求するように微かに笑った。


「なんだ?」

「転送システムの退役エンジニアを一人確保できますか?」


「退役エンジニアだと?そんなやつが使えるのか?」


にや。

「リーエス・・・。退役だからいいんです」


ぶるん・・・。

トルフォはさっぱり理解できないというように頭を振った。


「まぁ、いい。言う通りにしよう。それで、わたしになにをしろと?」

「トルフォ。当の昔に退役し、今は余生を悠々自適に過ごしている人物を、ご存じないですか?エルフィアでなく。グルデオン・デュル・ケームに・・・」


「なんだ、それは?」

「ケームの首都です。地球のメトロポリスに輪をかけたような、惑星中が摩天楼だらけの都市惑星ですよ」

トルフォは摩天楼が地平線まで続く様を想像した。


「ふん。そんなつまらんところに、隠居で行く酔狂なやつがいるのか?」

「まぁ、人はいいんですが、ちょっと変わり者で、人ごみや賑やかなところが好きでして、セキュリティがしっかりしていれば、そういう惑星の都会住まいがいいとか・・・」


「人ごみだと?理解できんな・・・」

「カテゴリー3、レベル2の惑星でして、転送システムの初歩的なテクノロジーを持ってはいるんですが、さらなる向上を望んでいます」


「それで、そいつが、隠居の片手間に・・・」

「そういうことです」


「で、そいつの肝心な名前は?」


にやっ。

「ふふ。ご存じないんですか?」

ブレストはにやりとした。


「勿体をつけずに、さっさと言え。だれだ?」

「あなたの叔父様ですよ」


「叔父だと・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「変わり者・・・?」

「リーエス。あなたの・・・」


「ランベニオ・・・。そうなのか?」

「リーエス。今、彼はそこにいるんですよ・・・」


「信じられん・・・」

トルフォは大きく口を開けたまま、ブレストを見つめた。


「彼は、現在、ケームの科学顧問をしています。超時空転送システムのエンジニアとしてはピカ一で、目立つ方ではありません。随分前に退役していて、しかも、エルフィアにもいない・・・。こんな好条件を揃えた人物は、他にいませんね」

ブレストはにんまりした。


「よく調べたな・・・?」

「それがわたしの役目ですから」

「ふふ。なるほどな・・・」


「とにかく、ランベニオ、彼の協力が是非とも必要です。トルフォ、あなたのお力添えいただけますね?」

「うむ。しかしなぁ・・・」

トルフォは渋い顔をした。


「そうは言っても、彼とは長いこと合ってはおらんし、あの変わり者を、エルフィアに来させるように説得させるのは、容易ではないぞ・・・。血筋とは言え・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それこそ好条件です。お会いになる筋立てはわたしが考えます。ですから・・・」


ばんっ。

トルフォはあれこれいつまでも悩む方ではなかった。


「リーエス。よかろう。わたしからあの変わり者に頼んでみよう」

トルフォは一呼吸置いた。


「どうも、恐縮です」

「それはいいが、シナリオはどうなっている?」

「ご心配は無用です。これからご説明いたします」




和人の家では、午後2時を過ぎた頃にやっとユティスが目を覚ました。


「あ・・・」

「ユティス?」

「和人さん・・・?」

ユティスの視線が和人に固定した。


「あは。ユティス、目が覚めたかい?」


にこっ。

「リーエス・・・」


「よく眠っていたね。どう気分は?」

「とても良い気分です」


「きみの寝顔はステキだったよ、とっても・・・」


かぁーーー。


「まぁ・・・。わたくしの寝顔をずっとご覧になられていたのですか?」

「リーエス・・・」


かぁ・・・。


「恥ずかしいですわ・・・」

和人の優しい眼差しに会い、ユティスはたちまち赤くなった。


「天使みたいだった・・・」

「あの、わたくし・・・」


「あ、ごめん。トイレとバスなら、あっち・・・」

「アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)」

「い、いいんだよ。いちいち礼なんか言わなくても」

ユティスはベッドから起きると部屋を出た。




(そうだ。常務に連絡をいれなきゃ)


和人はスマホを手にした。


るるるーーーっ。


「もしもし。常務ですか?オレ、和人です」

「おう、和人。ユティスは目覚めたのか?」

「はい」


「じゃ、すぐにそっちへ行く。いや、待ってくれ、まだ、どうしても片付けなきゃならん仕事があるんだ」

「そっちを優先されても結構ですよ」


「そっか。ちょっとばかし、オレは事務所を空けるから、用があったら姉貴にな」

「はい。そうします」


「頼む。ユティスのことはオレから姉貴に伝えるよ」

「わかりました」


ぷっ。

にやっ。


「ついに、ユティスに会えるぞ。エルフィア人だ、姉貴」

「ええ。側で聞いたわ」


「和人のところに行く前に、あいつに一本入れといてくれ。なにかと用意が必要かもしれん」

「ええ。わかったわ」




ユティスはバスルームから戻ってきた。

にっこり・・・。


「和人さん、わたくし、なんと申しあげたらよいか・・・」

「いいよ、なにも言わなくて。オレは、きみと一緒にいれるだけで、十分幸せなんだから・・・」


「和人さん・・・」


ぴとっ。

ユティスは和人の腕の中に静かに入った。


きゅ。

和人はユティスを優しく抱きしめた。二人は実際に声を出さずして、お互いの気持ちを伝え合った。


「赴任した途端結婚式だなんて、前代未聞だわよ・・・」

ユティスはクリステアの声を思い出した。


「本当に、そうできれば、いいのに・・・」

「んん?なにか言った?」

「ナナン。なぁんにも・・・、ですわ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あは・・」


にこにこ・・・。

「うふふ・・・」

ユティスは嬉しそうに和人を見つめた。


「和人さん。本当に、本当に、ご迷惑ではなかったですか?」

ユティスは茶目っ気たっぷりに、困惑したような顔になった。


「ナナン。とんでもないよ。なにを言ってるんだ。絶対にそんなことない」

「よかったです・・・」


「きみがここにいることが、オレにとってどれだけ幸せなことか、どう言ったら、わかってもらえるんだろう・・・」

和人はユティスを優しく抱きしめた。


「オレ、オレね・・・」


ぎゅ。

和人は、ユティスを抱きしめている腕に、少しだけ力を込めた。


「和人さん・・・」

ユティスは自分の体をさらに和人に押し付けてきた。


ぎゅっ。

「もう、和人さんのいない生活など、わたくしには考えることができません・・・」

ユティスは和人の耳元で小さく囁いた。


「そんな大袈裟な・・・」

「ナナン。本当です。和人さんのお側にずっといたいのです」


うるるる・・・。

ユティスの目がみるみるうちに潤んできた。


「ど、どうしたの・・・?」

和人は慌てた。


「・・・」

きゅ・・・。

ユティスはなにも言わずに、和人に回した腕に力を入れた。


「ユティス・・・。オレだってきみを離すもんか・・・」

和人は夢心地だった。そして、ユティスが目を閉じようとした時だった。



るるるーーー。


(だれだよ。こんな時に・・・)


るるるーーー。


(ん、もう。雰囲気ぶちこわしだよぉ・・・)


るるるーーー。


「和人さん、どなたか及びですわ・・・」

ついにユティスが電話に注意を向けるように言った。


「あ、電話だね。ごめん。ちょっと出るね・・・」

「リーエス」


ふぁさっ。

和人はユティスの腕を優しくほどくとスマホに出た。



ぴっ。

スマホの表示には、かけてきた相手の名前も番号も、表示されてなかった。


(なんだろう?なにも表示しないなんて・・・)

和人は恐る恐るスマホに出た。


「もしもし、宇都宮です・・・」

「どうかね?」

男の声がしたが、別に怪しそうな勧誘なんかではなさそうだった。


「はぁ・・・。元気は元気ですが・・・。あのぉ、どちら様で?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わたしだよ。わからないかなぁ・・・?」

「わたしと言われても・・・」

和人はその声に思い当たる節があったが、だれなのかとっさに思い出せなかった。


「まぁ、エルド!」

ところが、ユティスはそれがだれだかすぐに察した。


ぎょぎょっ。

「エ、エルド・・・なんですか?」

和人は仰天した。


(頭の中で響いてるんじゃないぞ。実際にエルドの声がしてる・・・)


和人はエルドの声を直に聞いていた。


(いったいどうやって、電話に・・・?)


「うむ。ちょっとばかし、アンデフロル・デュメーラに手伝ってもらってね・・・」

エルドの声は明るかった。


「スマホの回線を乗っ取ったんですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「乗っ取るだなんて、人聞き悪いな。きみのスマホとわたしとを直接繋いだのさ。地球の高額な回線はコンマ1秒だって使っておらんよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「うふふ。エルドのユーモアですよ。和人さん」

ユティスは笑った。


「実際に声がするんで、びっくりしました。本当にエルドなんですね?」

「ああ。そうだとも。きみには、この方が違和感なく話せると思ってね」


「はい。ご配慮、感謝します」

「気にしなくていいさ。わたしも、きみの声を聞けて嬉しいよ」


「とんでもない。こちらこそ、光栄です」

「そう、堅苦しくしなくていい。わははは」

エルドの声は弾んでいた。


「ユティスを歓迎してくれて礼を言うよ」

エルドは和人に感謝を述べた。


「ナナン。当然のことですから」

「それは地球人の義務とか儀礼と言うことかね?」

エルドは少しからかい気味に言った。


「と、とんでもない、義務だなんて・・・」


「じゃぁ、どういう意味なんだね?」

「個人的には、もう、大歓迎という意味で・・・」

「そりゃ、けっこう」


「リーエス。だから、ユティスにはいつまでもいてくれたらなぁとか・・・」


かぁ・・・。

和人は自分の言葉に恥ずかしくなった。


「わっはっは」


--- ^_^ わっはっは! ---


電話の向こうで、エルドが大笑いしているようだった。


「ユティスは元気でいるかな?」

「リーエス。ユティスを出しますか?」

「リーエス。そうしてくれたまえ」


和人はユティスにスマホを渡した。

「はい。使っていいよ、ユティス」


「どう、使うんですか?」

「フォーンの穴を耳に当てて、マイクの穴を口のところに合わせるんだよ」

「こうですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


ユティスは逆さまに構えてにっこり笑った。


「残念。上下反対だよ」


くるり。

ユティスは持ち直した。


「今度は、いかがですか?」

「それで、いいよ。しゃべってごらん」


「あー、あー、只今、スマホのテスト中。只今、スマホのテスト中・・・、ですわ・・・。お聞こえになって、エルド?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「うふふ」

「ああ。ユティス、よく聞こえるよ。地球のスマホは優秀な通信機だねぇ。きみも無事に着いたようで、わたしも安心したよ」


「リーエス。こちらは、とてもステキです」

「和人がかい?」

「まぁ・・・、エルドったら・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


かぁ・・・。


「うふふふ。リーエス。もちろんですわ」


ちゅ。

ユティスは和人にキッスする真似をした。


「わたくし、こちらに来て、突然意識が遠くなって眠ってしまいましたの。でも、和人さんがふかふかのベッドをご用意くださったので、ぐっすり眠れましたわ。ですから、今は気分がとても爽快なんです」


「あはは。それはけっこう。なにか必要なものとか、困ったこととかあるかね?」

「ナナン。必要なものは、わたくしのお側にあります・・・」


ちら・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


にっこり。

ユティスは、愛しそうに優しく和人を見つめた。


「わっはっは。そうか。そうだったな」

エルドはすぐに反応した。


「ところで、きみの準備リストになかったので、不思議に思ってたんだが、ドレスをいくつか送らなくてはならんのでは?」


「リーエス。ご配慮、ありがとうございます。地球では、エルフィアの格好より、地球の格好をしていた方がなにかと都合良いのではと思い・・・」


「うむ。一理ある。だが、一枚もないのも、不便じゃないかね?」

「ふふふ。それでは、フォーマルドレスと普段着、活動着に夜着、ランジェリー。季節に合わせて揃えていただけますか?」


「リーエス。それじゃ、すぐに取り掛かるよ」

「ナナン。いつでも結構です」


「いつでもって急がなくていいのかい?」

「リーエス。わたくし、ここの女性のドレスを着てみたいのです。うふふ」


「なるほど、了解した。アンデフロル・デュメーラに連絡して、いくつかストックして置くよ。好きな時に送ってもらうといい」

「リーエス。感謝しますわ、エルド」


「礼には及ばん。他にあるかな?」


「SSの方たちは、どうされていますか?」

「それなんだが、地球語の訓練中だ。もう数日待ってくれるかい?」


「リーエス・・・。もう少し後でも、結構ですわ。ね、和人さん?」


ぱち・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


ユティスは素早くウィンクすると和人に微笑んだ。


「え?」

和人は面食らった。


「わっはっは。そういうことなら、姉妹たちは二人のじゃまはせんよ」

「まぁ、では、やはりアンニフィルドとクリステアなんですね?」

「リーエス。そのつもりだ」


「まぁ、嬉しい。わたくし、お二人に来ていただけるなら、とっても心強いですわ」

「そう言うと思ってたよ」

「エルド・・・。本当にありがとうございます」


「和人も、二人がしっかりと守ってくれるさ」

「リーエス」


「では、また近いうちに話そう、ユティス」

「リーエス。また、エルド」


ぴっ。



「終った?」

「リーエス」

ユティスはにこにこしながら和人に答えた。


「さてと。汗でも流すかい?気分爽快になるよ」

「リーエス」


「ちょっと待ってて。お湯を入れるから」

和人はユティスのためにお風呂を用意した。


「和人さん、アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)・・・」

「パジューレ(どういたしまして)、ユティス・・・」

ユティスは礼を言ってバスルームに入った。




「んーんん。んーんん・・・」


ちゃっぷん。

ユティスの鼻歌とユティスが湯船の湯を手でかき回している音が、バスルーム越しに聞こえてきた。和人はユティスの入浴姿を思わず想像した。


(バスルームにはユティスがお風呂なんだ・・・。いかん、いかん。想像してたら、鼻血が出そうだ・・・)




エルドの執務室では、秘書がエルドと会話していた、


「エルド。ユティスの着替え服はいつ送りますか?」

「それなんだが、当座アンデフロル・デュメーラにストックしておこうと思う・・・」


「どういうことでしょうか?」

「うむ。準備リストから、わざわざはずしてあったし、さっきの会話でも・・・」

「はぁ?」

メローズは理解できないというようにエルドを見つめた。


「理解に苦しみます。どういうことで?」

「なにか考えでもあるんだろう・・・」


「意図的に、ユティスがはずしたのでしょうか?」

「まぁ、その当てがあるんじゃないかな。地球人の格好をしてみたいとか・・・」


「和人と同じものを・・・?地球人のコスプレですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そういうことかもしれん・・・」


「まぁ、それも面白そうですね。そういうことでしたか・・・」

「確かに、エルフィア人の正装じゃ、地球では目立ちすぎるからな」

「納得です」


「ああ。どうせ、いつだって、どこにでも、すぐに送れるんだし」

「あなたが、そうおっしゃるのも無理はありませんね。こちらから送るドレスはウェディングドレス一つで済むかもしれませんわ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はっはは。それなら、それで、わたしは、かまわんよ」

「リーエス。うふふふ」


エルドとメローズは微笑み合った。

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