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105 発表

■発表■




エルドはスーパーノバの脅威から地球を守るべく、次の指示を出した。


「さぁ、次だ。スーパーノバの放射本流から地球を守ろう。ぼやぼやできないぞ」

「リーエス」

「ソル恒星系周辺の時空屈折率を最大に」

「リーエス」


ぴっ。

「設定完了」


「屈折点での屈折範囲の設定を」

「リーエス」


ぴっ。

「設定完了」


「スーパーノバの方向を確認、設定」

「リーエス」


ぴっ。

「確認、設定しました」


「屈折点までの到達時間は?」

「26時間12分です」


「うむ。エネルギー波の反射角を最大に」

「リーエス」


ぴっ。

「天の川銀河面の北極側45度に設定完了」


「反射方向の生命圏の有無を確認したまえ」

「リーエス。10万光年以内に生命圏はありません」


「大丈夫だな?」

「リーエス」


「時空屈折開始」

「リーエス」


ぴっ。

「屈折点で、地球以遠のカイパーベルトまでをカバーしました」


「これでよし。小天体が爆発エネルギーを受けて、万が一、太陽に向けて落下しないか確認を」

「リーエス。屈折点以降については問題ありません。屈折点前のものは、時空に沿って上方45度に逸らされます」


「うむ。ご苦労だった」

「リーエス、エルド」

エルドはユティスに振り向いた。


「ユティス。これで、地球が、万が一、スーパーノバのエネルギー波の直撃を受けたとしても、そのずいぶん手前で銀河面から45度上空に逸れることになる」


「間に合ったということでしょうか?」

ユティスはほっとした表情になった。


「ああ、そうだよ。和人に連絡を。時空アンカーを打ったから、連絡も通常に取れるだろう」

「リーエス」


「地球では、大統領やら首相やら、お偉方が青くなっているに違いない。株式市場とやらも大暴落してるはずだ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「さぁ、ユティス急いで!」

「リーエス!」




「和人さん」

ユティスが呼びかけると和人はすぐに応えた。


「ユティス・・・?ユティスだね!もう連絡できないんじゃないかと思ってた・・・。あははは!」

和人は狂喜した。


「地球は無事ですわ。スーパーノバのエネルギー波を逸らせるよう、時空の屈折率を変更しました。カイパーベルトまでをカバーしていますから、もう大丈夫です。エネルギー波の到達まで28時間ですが、安心してくださいね。大田原さんに早くご連絡を・・・」


「リーエス。ユティス、アルダリーム(ありがとう)。地球にとって、エルフィアは命の恩人だよ」


「リーエス。それより、とっても不謹慎なことかもしれませんが、わたくしには、和人さんと再びお話できること。そして。ああ、ついにお会いできること。そちらの方が、遥かに意味があるように思えます・・・」


「ユティス・・・」

「わたくし、エージェントの資格を取り消されても仕方ありませんわ・・・」

「なに、言ってるんだよ。こんなに素晴らしい働きをしてくれているのに・・・」

「ナナン。わたくしは、ただ地球の現状を報告しているに過ぎません」

「止めろよ、自分を卑下するのは・・・。きみほど、素晴らしい女性にだれもが巡りあえるもんじゃない・・・」


「和人さん・・・」

「ほら、笑って」

「リーエス、わかりました。和人さんのおおせの通りにいたします」


「うん。それでいいのさ」

和人が微笑むと、ユティスもやっとこぼれるような笑顔になった。


「アルダリーム(ありがとう)、ユティス。きみがいなかったら、地球の生物は死滅してたかもしれない。エルフィアのテクノロジーは、本当にすごいと思うよ」


ユティスはにっこり頷くと優しく続けた。

「エルフィアのテクノロジーは時空を自由に操れるのです。地球の方にとっては、スーパーノバのエネルギー波の処理はものすごく大変なことかもしれませんが、エルフィアとってはそんなに難しいことでもないのです」


「そうなんだ・・・」


「でも・・・」

「でも?」


「人の気持ちはそうはいきません。真に人を動かすことができるものはテクノロジーではありません。理屈や理性でもありません。ましてや、権力なんかでは決してありません。感動なのです。人は感動しない限り自ら動くことはしませんわ」


「でも、会社でも、どこでも、上の人たちの指示や命令を嫌々でも、みんな動いているんじゃないのかい?」

「リーエス。それも、やはり、理屈ではありません。感情に基づいているのです」


「でも、きみは今、自ら動くと言ったよね?」

「リーエス。この場合も、感情です。恐怖という・・・」


「しなければ、自滅や懲罰が待っている・・・、かい?」

「リーエス。残念ながら負の感情ですけど・・・」


「そして、正の感情と言うのが感動ってことだね?」

「リーエス。おわかりいただけましたのね・・・」

ユティスは嬉しそうに微笑んだ。


「エルフィアは、地球を守り、善なる精神に基づく世界を築こうとされている地球の方たちに感動しています。そして、わたくしも・・・」

「ユティス・・・」


「さぁ、和人さん。みなさんがお待ちしてますわ!」

「リーエス!」


「あっ、それで大事なことを言い忘れていた」

「なんでしょうか?」


「実は、オレ、新しい家に引っ越したんだ。きみやSSたちが、一緒に住めるくらいの一軒家にね」

「まぁ、それは、とてもステキですわ」

「うん。前のアパートに近いんだ。場所はここ」

和人はユティスにイメージを送った。


「リーエス。わかりました。そちらですね?」

ユティスはにっこり微笑んだ。


「では、3日後の午後11時に、わたくしが和人さんのもとにまいります」

「3日後?」


「申し訳ございません。準備が必要なのです・・・」

「うん。わかったよ。待ってる。それにしても、ずいぶんと遅い時間なんだね?」

「リーエス。昼間に突然、わたくしが現れると、なにかと問題が起きそうですので・・・」


「そおっと、現れるって訳だね?」

「リーエス。周りを、必要以上に刺激するのは、危険かと・・・」

「わかった」


「リーエス。和人さん・・・、歓迎してくださいますわよね?」

「もちろんだとも。待ってるよ・・・。ユティス・・・」


にっこり・・・。

ユティスのこぼれるような笑みに和人は胸が高鳴った。


「和人さん・・・」

「じゃあ・・・」

「はい、また・・・」




和人との交信を終えると、ユティスはそこにいる面々に向き直った。


「エルド、アンニフィルド、クリステア、それに、ここにいらっしゃる、みなさん。本当に、ご協力感謝します。アルダリーメ・ジェ・デーリア(ありがとうございますわ)。なんとお礼を言ったらいいのか・・・」

ユティスは涙声になって震えていた。


「ユティス、これは、あなただけのプロジェクトじゃないのよ。わたしたち、エルフィア全体の問題なの。もう、地球の要請を正式に受けちゃったんだから、形はどうあれ」

クリステアは優しく言った。


「ありがとう、クリステア・・・」


ぽたり。

ぽたり。

ぽろぽろ・・・。

ユティスの目からポロポロと涙があふれてきた。


「あらあら・・・。こんなところで泣いてちゃ、和人に会った時に流すものがなくなっちゃうわ」


ぎゅぅ。

アンニフィルドがユティスを優しく抱きしめた。


「リーエス、あなたの言うとおりだわ、アンニフィルド」

ユティスは涙を拭きながら笑顔で応えた。




ユティスはエルドと話していた。


「あのぉ、和人さんのお家ですけど、引越しなさったそうです」

「そりゃ、大変だ・・・!転送地点の大変更だね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ・・・!リーエス。お願いできますか、エルド・・・?」

「わはっはっは。無論だとも!」

エルドは和人の家の位置変更を指示した。


ぴっ。

「変更完了です」


「もう大丈夫だ。座標も読み込んだし転送地点アンカーも打った。後は、きみが転送室に行くだけだ」


「エルド、それですが、現地時間の3日後の11時には、まだまだ早すぎます。一休みされてからにしては、どうですか?」

システム責任者がユティスを見つめながら言った。


「わかった。きみたち、ユティスも、SSの二人も、ここんところ、ろくろく寝ておらんだろう。地球への転送は、アルファ星のエネルギー波が太陽系から逸れたのを確認してからでも、遅くはない」

エルドが言った。


「そうしなさいよ、ユティス。十分に休養を取って、体を清めて、身だしなみも整えてからにした方がいいんじゃない」

クリステアが助言した。


「ちゃんとお化粧も直してね。和人には、最高にきれいになって会いたいんでしょ?」

アンニフィルドも微笑んだ。


「リーエス・・・」

ぽ・・・。

ユティスはほんのり頬を赤く染めた。


「ま、そっちは、まかすよ」

にっ。

エルドは笑った。


「早く行きたいのよね、和人のもとに!」

アンニフィルドは微笑んだ。


「リーエス・・・」

「うふふふ・・・」


「いろいろと用意するものもあるからな。それに、地球側への通知。それから、エトロス5級母船、アンデフロル・デュメーラを、地球周回軌道に乗せる。彼女を現地緊急避難センターとして、待機させる。いいね?」


「アンデフロル・デュメーラを、現地緊急避難センターにですか?」

「いかんかね?」


「エストロ5級の母船は、エージェントの宿泊施設のはずです」

「わっはっは。通常の宿泊施設なら、心配いらんよ。和人が提供してくれる」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そ、そうでしたか・・・」

メローズはエルドに言わんとするところを理解した。


「忙しくなるぞ!」

「リーエス」

「午後11時・・・」

「それ以上、時間を遅くすると、和人、眠っちゃうわ」

「しばらく解散。3日後、再集合のこと」

「リーエス」


「システム班、スーパーノバの本流の監視は続けてくれたまえ。・・・交代でな」


ぽん。

エルドは労をねぎらうに肩を叩いた。


「リーエス」



「さてと。ユティス、準備だ。いいね?」

「リーエス」

ユティスは頷いた。 


「着替え、その他必要なものは現地に直接転送する。きみは、文字通り、手ぶらで行けるよ。とにかく時間内にアンカーを打ち込めてよかった」

エルドのほっとした笑顔にユティスはびっくりした。


「まぁ、自信がおありでは、なかったのですか?」

「実は、内心、冷や冷やだったよ・・・」

エルドは優しく微笑んだ。


「アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございますわ)、エルド。わたくしも胸が締め付けられる思いでした」


じわぁ・・・。

ユティスはまたしても涙に濡れてきた。


「おいおい、それは、和人に会ってからじゃなかったのか?」

「リーエス・・・」

ユティスの声は震えて消えそうだった。


「お父様・・・」

エルドはユティスを優しく抱きしめた。




藤岡首相は和人の報告を大田原経由で聞いた。


「ほ、本当か?」

「ええ。もう安心ですな」


「しかし、いったいどうやって・・・?」

「簡単な理屈ですよ。時空を曲げて、爆発エネルギーの直撃波を逸らす」


「時空を曲げるったって・・・。だから、どうやって?」

「それは・・・」

「あー言わんでいい、大田原さん。到底、わたしの頭で理解できることではない」


「藤岡さん、国民への発表はどうされるおつもりで」

「会見中継をする。T大の高根沢博士も同席させる」

「なるほど。その方がよろしいでしょう」

「とにかくありがとう。大田原さん」

「どういたしまして。わたしはなにもしてませんよ」




「博士、アルファ星からと思われるニュートリノを数十個検出しています。しかし、思ったより、随分少ない量ですが・・・」

「それでいいんだ。極めて順調だ」

スーパーカミオカンデより報告が入り、T大の高根沢博士はうなずいた。


「どういうことで?」

「大田原さんのいうエルフィア人が、われわれの太陽系を守ってくれているんだ」

「エルフィア人?なにものです。聞いたこともない国ですね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わはははは!国ではないよ。ここから、5400・・・」

「5400キロ離れたところの、中央アジアあたりの軍事秘密都市かなんかで?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「少し、単位が違うな。エルフィアは、5400万光年離れた、天の川銀河と同じ規模の棒渦状銀河にある世界だ・・・」

「はっはっはっは・・・。は、博士?」


高根沢博士のいたって真面目な声が、それが冗談なんかではないことを物語っていた。


「いずれわかる。エルフィアは、地球など及びも着かない超高文明世界だ。アルファ星の超新星爆発のエネルギー波を逸らせてくれたのも、彼らの力なんだ」


「ば、ばかな!」

それには、さすがの高根沢もあきれ果てた。


「いい加減、あなたも、この大宇宙にいるのが、われわれ地球人だけだという、その傲慢でナンセンス極まりない考えを、改めたらどうだね?」


「博士は、信じてるんですか?」


「信じるもなにも、彼らから、直接メッセージをいやというほどもらっているよ。これらが、たちの悪い冗談だと思うなら、きみも確かめてみるがいい」


--- ^_^ わっはっは! ---


「地球外生命体からメッセージですと・・・?」


「変ですかな?」

「ははは・・・」

彼の笑いは最後で消えた。


「そんなことより、12時間後になにが起きるか、起きないか。それこそが問題だ」

「博士、首相から電話です」

「ありがとう。そろそろ来る頃だと思ってた」


ぴっ。


「やあ、博士。これからTV発表をする、ついては、至急用意をしてくれたまえ」

「了解です。実は、もうなにもかも準備してあります。中継はどこから」

「官邸ときみところの2元中継じゃまずいかね?」

「けっこうです」

「では、1時間後。中継車は、20分以内にそちらに到着予定だ」

「了解です」

「あ、それから、エルフィアについては、極秘条項ですから、くれぐれも、それには言及されないように」

「お望み通りに」

「ありがとう、博士」




「MTVSブレーキング・ニュースです。先ほど、アルファ星のスーパーノバ化による影響の回避について、首相の緊急会見が行なわれることになりました」

テレビは一斉に首相官邸から藤岡の発表を中継した。


「官邸とT大をつないでのお知らせとなります」

テレビの前で、民衆は藤岡が慌しく会見準備をしているのを目にした。


「あ、始まる模様です」


たったった・・・。

藤岡が、軽い足取りで、演説壇に着いた。


ぱっ。

藤岡は発表内容を記した紙を広げた。


「日本国民のみなさん、首相の藤岡です。単刀直入に申しあげます。先日、エータ星のハイパーノバについて、緊急情報をお伝えしたばかりですが、今回も、極めて幸運なことに、その影響を受けずにに済む見込みが立ちました。スーパーカミオカンデでのニュートリノ検出量は、初日に比べ、極端に減少しました。これは、予想値の百万分の1以下であります。よって、アルファ星からのエネルギー本流は、地球から逸れたことは、ほぼ間違いないと断言いたします。誠に幸運です。初めにニュートリノを検出して72時間程度で、可視光線を含むあらゆる波長の電磁放射線が、超新星爆発のエネルギー本流として、地球に到達します。3時間後、それが計算された時刻です。しかし、みなさん、ご安心ください。危機は回避されました。詳細については、T高根沢博士にお願いします。では、高根沢博士」


ぱっ。

中継はT大の高根沢博士に切り替わった。


「今回のスーパーノバはわずか640光年ということで、世界中の天文学者が非常に心配しておりました。ガンマ線放射軸は、地球に対して20度逸れると当初より予測しておりました。しかし、その爆発エネルギーは膨大で、最大光度は、真昼でも満月以上に輝いて見えると、予想されております。可視光線でもこれだけ強いということです。X線や、紫外線を含めて考えると、肉眼直視は、太陽を肉眼で直視するのと同等、非常に危険です。しかしながら・・・、そもそも、われわれが憂っているのは、地球磁場とオゾン層の破壊です。どちらも、宇宙から雨霰と降り注ぐ強力な紫外線やX線などの宇宙線から、われわれを守ってくれているのです」


カメラh高根沢博士をアップにした。


「特に、地球の磁場は、南北の極が逆になる反転期を迎えていると見られており、ただでさえ、弱まっています。この時期に、スーパーノバのエネルギー波が、これらを破壊することこそが、一番心配しなくてはならないことなのです。エネルギー波は、ガンマ線とほぼ直角方向、赤道の方向に対称的に拡大していくことが予想されています。ただ、赤道方向といっても360度ありますから、これがどこに向くかで、地球の受けるエネルギー量も大幅に異なってくるわけです」


高根沢は、スクリーンに映し出された動画スライドで説明を続けた。


「一方、ニュートリノの量からすると、実際のエネルギー波は、地球から逸れた、と結論づけられます。ただし、くれぐれも裸眼での直視は避けてください。この最大光度の状態は2週間ないしは3週間は続きます。それ以降、極めて明るい状態が3ヶ月くらい続くと思われますが、徐々に暗くなっていくでしょう」


「博士、どうして、エネルギー本流が逸れることが判明したのですか?相当の確信を持ってるようですが?」

キャスターがスタジオから質問した。


「ニュートリノの量は、爆発の大きさに比例します。それが予想値の百万分の一ということは、逸れたと認識できます」


「ニュートリノですか?」

「わかり易く言いますと、素粒子の一つです。ただし、あまりに小さいので、地球とぶつかったとしても、素通りしてしまうほどです」


「素通りするものを、どうやって検出するんですか?}


--- ^_^ わっはっは! ---


「地下1000メートルの巨大な純水タンクが検出装置です」

「純水?それが、どうやって?」


「ニュートリノは、わずかですが、水分子と衝突し光を発する場合があります。その時の発光現象を捕らえるのです。地下1000メートルであれば、通常の放射線は届きませんから、なにかしらの光を捕らえたとなると、間違いなく、ニュートリノが地球を通り抜けたことになります」


「そういうことでしたか・・・」


「次の質問は?」

「素粒子というと、陽子や電子じゃないんですか?」

「ええ、高校までは、それでいいでしょう。しかし、本当は、陽子も、中性子も、これらは、グルオンと呼んでいますが、さらに細かく粒子は分かれているんです。電子と同じサイズで、こちらはレプトンを言っておりますが、それも同じように素粒子と言ったもんですから・・・」


「混乱してしまいますね・・・」

「まぁ、そういうことで・・・」


「ところで、そもそも、超新星は真空中で爆発するんですよね?その光は、あらゆる方向に、均一に拡散するんではないんですか?」


「いいえ。超新星爆発によるエネルギー波は、均一に広がるわけではありません。詳しく説明すると長くなりますが、爆発エネルギーは、星内部で、まず、ある方向に向かいます。そして表面に達すると、反動で、反対方向にも、突き抜けます。いわば、両極から光が出る灯台のような感じです。また、アルファ星は脈動星といって、膨らんだり縮んだりを常にしている、非常に不安定な星です。最近の写真では、その形は、かなりいびつになっていて、とても真球とはほど遠いものでした。ですから、爆発のエネルギーは、両極を中心としながらも、かなり不定形に拡大すると思われます」


「なるほど」


「通常は、極方向に集中放射していきます。しかし、アルファ星は、予断を許しません」


「相当変形しているのか・・・」


「爆発前のアルファ星の写真を写してもらえますかな」

「はい、博士」

高根沢博士は、その最新映像を映すようスタッフに指示した。


ぴっ。


「これですね?」


アルファ星の姿がスクリーン上に大きく映し出された。

どわんっ。


「左様」


「うぷっ!なるほど、これほどとは・・・。とても変形しています・・・。どちらかと言うと・・・、そのぉ、グロテスク、といえますねぇ・・・」

「星の表面が絶えず波打っていますでしょう」


「ええ・・・。では、再び官邸に戻ります」




「こちら、官邸です。博士の説明を受けて、再び首相の話があります。あ、そろそろ始まるところです」


「国民のみなさん。そういうわけで、あと3時間足らずでエネルギー波の到達予定時刻となります。念には念を入れて注意を怠らないでください。繰り返しますが、裸眼でのスーパーノバの直視は絶対にしないように。それから、政府のスーパーノバ情報提供サイトで情報を確認してください。巷では、パニックを煽る悪徳商法が流行っているようなので、そのような不確かな情報に惑わされないように、くれぐれも十分にご注意願います。わたしからは、以上です。どうも、みなさん、ありがとう」


そう言うとさっさと藤岡は引き上げた。

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