000 序章
■ 序章 ■
ぺら・・・。
一人の女性がテーブル上の本を開けた。
「わたしは、アンニフィルド。この物語の語り部よ。簡単に言えば、これはSF・ラブロマンス・アンド・コメディ。大学を中退し専門学校から小さなIT会社に入った宇都宮和人が、ひょんなことから文明促進支援を無償で行なうという異星のエルフィア人、ユティスたちと係わり合い、友人たちを巻き込んで、みんなが『愛することを学び、幸せになること』を少しずつ実践いくの。これこそ、わたしたちが人間として生まれてきた唯一の理由よ。会話中心のドキドキ・ラブコメディだから、ユーモアのセンス、磨けるわよぉ。まずは、あなたが自身を好きになり、信じることができるようになることね。それで、自分自身だけでなく、他の人を愛することもできるようになるはずよ。そうなれば、わたしの役目は終り。ステキなあなたに、心の平安と幸せが訪れ、愛に満たされますように・・・」
「おーーーい、アンニフィルド。メシにしようぜ」
にこにこ・・・。
突然、一人のダンディーな男性の像が、にこやかに空中に現れ、出だしの雰囲気をぶち壊した。
--- ^_^ わっはっは! ---
きっ!
アンニフィルドは本を読むのを止めた。
「ちょっと黙っててよぉ。せっかく人がシリアスにやってんだから」
「似合わん。似合わん。よせ。よせ。無理しないで、そろそろメシにしようぜ。でもって、風呂入って、な・・・?」
「だめ」
「なんで?」
「だめったら、だめ!」
「アンニフィルドぉ・・・」
「だめ!」
しゅん・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「あーーーら、ごめんなさい。失礼しましたわ。おほほほ。お話を続けましょうね」
ぺら・・・。
アンニフィルドは再びページに戻った。
「幾百億光年にわたり広がる大宇宙。そこには、無数の銀河がそれぞれ何十、何百、何千となく集まり、銀河団を形成している。銀河団はさらに集まり、超銀河団を作っている。超銀河団同士の間は、何千万光年時には何億光年にもわたり、何もない空間が広がって、それはボイドと呼ばれる。そして、これら超銀河団とボイドは、まるで蜘蛛の巣かスポンジのような不思議な構造を作り出している。科学者たちはこれを『宇宙の大規模構造』と呼ぶ・・・」
「なるほど、『宇宙の大規模構造』ねぇ・・・」
一人のショートヘアの美女が寄ってきて、本を覗き込んだ。
「え?」
ぱく。
「地球の銘菓、ハチミツたっぷりのスポンジ・ケーキってわけね。地球産の緑茶と合うわよぉ」
「クリステア・・・」
あむあむ・・・。
「うーーーん。大宇宙って、美味しいわぁ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あーーーっ!それ、わたしのぶんじゃない!全部食べないでよ、クリステア!」
「いいじゃない、少しくらい。美味しいんだから。あなたはいっぱい食べてるんでしょ。わたしは気にせずに、どうぞ続きをお話しください」
「うん、もう、だめだってば!ちゃんと、残しておいてよ。それ、最後なんだからねぇ!」
「大丈夫よ。俊介に頼めば、すぐに100万ダース送ってくれるわ。愛するアンニフィルドへって」
にんまり。
--- ^_^ わっはっは! ---
「いいから邪魔しないでよ。話が続かないじゃない!」
「わたしは、構わないわ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わたしが困るの!」
「はい、はい。わかりました、語り部さん」
「しっ、しっ!」
クリステアはその場を離れていった。
「おほほ。では、本当に、お話を続けましょうね」
「この無数の銀河団の中、奇しくも、天の川銀河に匹敵する直径10万光年以上という一つの棒渦状銀河があった。この棒渦状銀河の第一大渦状腕の中心から約2万2千光年離れたところに、一つの美しい惑星があったとさ・・・」
「あったとさ・・・?自分の惑星でしょ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「突っ込まないでよ、クリステア!これは大事な物語の出だしなんだから!」
「はい。はい」
「この惑星は何万年も前から極めて高い文明を築き上げ、その文明を他の世界にも分け与えるべく、無償で星々の文明促進支援を続けていた。地球人はこの銀河をこう呼んだ。『失われし銀河』。そして、その惑星は自らその銀河と惑星系をこう名乗った。『エルフィア』。これは、偶然にも、地球の一人の若者が彼らと関わり、彼らを受け入れる生き方を選んだ物語である・・・」
「あったとさ、じゃないの?」
「うるさぁーーーい!」
--- ^_^ わっはっは! ---
じゃんじゃかじゃーーーん。
『失われし銀河の天使 ~ エルフィア ~』
じゃじゃじゃじゃーーーん。
「大袈裟ねぇ、まったく・・・」
もぐもぐ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「クリステア!」