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王女の婿選び  作者: 羽月
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第18話

ぽくぽくと馬車が街中を走る。


「・・・いつも思うのだけれど、どうしてこの馬車はこんなにゆっくりなのかしらね?」


「それは、姫様の安全の為ではありませんか。馬車でスピードを上げてしまえば、姫様は下りた瞬間立てなくなりますが、よろしいのですか?」


いや、それはよくない。

というか、何もそこまでスピードを上げなくても。


「そもそも、街中で馬車を速めれば、他の者にも危険となりますよ」


たしかに。それも言えるのだが・・・・。

それにしてもだ。


「・・・・人が歩くより遅いってどういう事よ?」


「・・・・・・・・」


最後の問いは思わず口から零れたらしい。

レイナは、ふぃっと窓の外に目をやり、ザ☆聞いてないふり。

そんなやりとりをしていると、どうやら目的地に着いたらしい。


「さぁ、姫様参りましょう」


確かに街中ではスピード上げるの危険だけど、馬車道ではもう少し頑張ろうよ!!

など、思いながら馬車を降りた訳では、決して・・・・・・ない!!


*******************************


「姫様、ようこそトラール孤児院へ!!」


建物の中に入ると可愛い子供たちが、声をそろえて私を歓迎してくれた。


「皆、お出迎えをありがとう。ささやかだけど、お菓子を持ってきたのよ。皆で仲良く召しあがってね」


そう言うと、レイナを筆頭について来ていた者たちが菓子を子供たちに配り始めた。


「姫様。いつも有難うございます」


皆が、お菓子に夢中になると、院長がわたしのところへやって来て頭をさげる。


「いいえ。こちらこそ、いつもたくさんの子供たちを見て頂いてありがとう。何か困った事はない?」


「はい。皆、すこやかに育ち孤児院の方も、姫様をはじめよくして下さる方々のおかげで困った事は御座いません」


「・・・そう。良かったわ。さて、私はすこし子供たちと触れ合ってきますわね」


毎度毎度、お決まりの様に繰り返される会話に、院長も手慣れたもので返事をし、私はその場を離れた。

子供達が美味しそうに菓子を頬張る姿は見ていて微笑ましい。

が、やはりというかなんというか、その中でぽつんとしている子供の姿を見つけた。


「どうしたの?貴方は食べないの?」


そっと菓子を差し出したら、その手をパンと叩かれた。

その途端、傍で見ていたシスターが大きな声を上げた。


「ガイア!!」


怒鳴るシスターを手で制し、私はそのガイアと呼ばれた子に対しにっこりと笑い、ガイアの手を叩いた。


「これで、おあいこね。私、理由もなく叩かれる趣味はないわ。理由があるのなら、ちゃんと言葉にしなさい」


そう言うと、ガイアはキッと私を睨み上げ口を開いた。


「お前らが、お父さんとお母さんを殺したんだ!!あいつらが俺達の家を焼き払ったから、お父さんもお母さんも逃げ遅れて死んだ!他の奴らだってそうだ!!お前らの所為で、俺たちは家も家族も失った!!」


怒鳴り上げている内にぽろぽろと涙をこぼすガイアに、私は目を瞑り頷いた。


「・・・・そう。それは、謝ってすむ事ではないでしょう。それに、私の立場ではそう簡単に謝る事は出来ないの。だから、約束するわ。ガイア。私は、この国で二度とあのような事が起こらない国にする」


涙を流すガイアの手にそっと手を重ねる。

今度は叩かれずに済んだが、ガイアは涙目で私をキッと睨む。


「そんなのっ!今更だ!!そんなことしたって俺達の家族は戻ってこない!!」


「そうね。わかっているわ。過去にあった事を戻す事はできないもの。憎んだっていいし、恨んだっていいわ。だけど、この先の未来を見なさい。その為の努力をなさい。貴方が貴方と同じように苦しむ子供たちを作らないような未来を作りなさい」


そう言って、ガイアと少しの間視線を合わせガイアの心に残ってくれればと願いを込める。

彼は、私を睨むのをやめたわけじゃない。

だけど、私はにっこりと笑う。


「それにね。貴方の家族はここにもいるでしょう?」


そう言って後ろを振り向けば、心配そうに見守る子供たちがいつの間にか集まって来ていた。

そっと、手を離し私がその場を離れれば、子供たちはガイアの傍に集まって口々に何かを言っていた。

きっと、ここにはガイアだけでなく同じように思っていた子もたくさんいるだろう。

そんな思いを直接ぶつけられるのはやはり辛かった。


「レイナ、少し風に当たるわ」


そう言うと、私はその部屋を後にし外に出た。

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