第12話 過去3
侍女に連れられて着いたその場には、先にこの部屋に連れてこられたであろう王妃様がいた。
「王妃様っ!!ご無事ですかっ!?」
クリス兄様の母でもある王妃様には小さな頃からよくして頂いていた。
そんな、王妃様が侍女達に囲まれ座っていた。
「・・・リーナ・・・・」
力ない声で私の愛称を呼ぶ王妃様に近づこうとするが、侍女達に阻まれ傍まで近寄る事が出来ない。
「申し訳ありません。リリナ様であろうと現在王妃様のお傍に寄れるものは限られております。どうぞ、そちらの椅子におかけになってお待ちください」
王妃様についていた侍女にそう言われ、私は何がなんだかわからなかった。
「一体、何が起こっているのですかっ!?」
私の言葉に、その部屋にいるものが皆息をのんだ。
一瞬静まり返った空気を破る様に、私の言葉に答えたのは先程の侍女だった。
「リリナ様。現在、この国では城下の者たちによる反乱が起こっているのです。陛下を恨む者が、町の人々をたぶらかしこの国を乗っ取ろうとしています。まさか、こんなに早く起こるとは思ってもみませんでしたっ・・・・っ」
最後の言葉は、思わず零れてしまったと言う様に、侍女は唇をかんだ。
だが、私はそんな事に気づく事も出来ない。
「は、反乱ですって・・・・?」
確かに最近城下は物騒な事が起こっているとよく聞いていた。だからこそ、クリス兄様にも忠告したのだ。
その時にハッと顔を上げる。
「クリス兄様とダニー兄様はっ!?」
先程、城下へ下りたのを見送ったばかりだ。
あの人々が城へ向かっていると言うのなら、彼らはどうしたのだろう。
私の声に、王妃様は静かに目を閉じた。
その様子に、私は胸が潰されるかのように痛くなる。
「・・・・まだ、殿下とダニエル様の情報は入って来ておりません」
その答えに、思わず息をのむ。
そんな時、扉の外が急に騒がしくなり、部屋の中にいた者達が急ぎ王妃様の周りを囲む。
まさか、ここまで押し入ってきたというのだろうか?
急に自分の身に降りかかっている事に気付いたかのように、身体が震え始めた。
一体、何が起こっているのか。
そんなこともわからないまま、ただ迫りくる恐怖におびえていると、扉がどんどんと音を立て始めた。
「っ・・・たすけて・・・・」
声にならない声が出た。
いつの間にか、涙も流れていた。
自分で自分を抱え込むように腕をさするが、震えが止まらない。
「・・・大丈夫。貴女を殺させはしないわ」
その声が聞こえ、私の震えを止めるようそっと肩に温もりを感じ、顔を上げると、そこには王妃様が慈しむ様に頬笑み抱きしめてくれていた。
「っ・・・おぅひ・・・さまっ・・・」
私の呼びかけににっこりと頷くと、王妃様は立ちあがり、今にも破られてしまいそうな扉へと歩き始めた。
「王妃様っ!おやめ下さい!!」
「お下がりくださいっ!!王妃様!!」
口々に侍女達が王妃様を止めるが、王妃様は歩くのをやめない。
「守るべき民がいるのです。私がこんな所で閉じこもっていては、彼らに申し訳が立たないわ。彼らが不満を持っているのであるのならば、それは陛下だけでなく私にも受け止める義務があるでしょう。隠れているのは彼らと向き合っていないのと同じ事よ」
そう言うと、王妃様は扉に向かって声をかけた。
「今からこの扉を開けます!私は、ノーリッシュ王国王妃のノーリッシュ・L・フィリスです!」
そう言うと、扉を壊す音が止んだ。
それを確認し、王妃様は扉の外に出て行った。
それを見ていた私の耳に扉が閉まる音が消えるのと同時に、私は意識を手放した。