第11話 過去2
あの日も同じように2人の背中を見送ったのだ。
「いい子で待ってろよ」
ダニー兄様は未だに子供扱いをするように私の頭にポンポンと手を乗せそう言った。
いい加減それはやめてほしい。私だって、もう15なのだ。
「もうっ!子供扱いはしないで頂戴って言っているでしょう?」
そう言うと、はははと笑いながらダニー兄様は馬に乗った。
「・・・クリス兄様。気をつけてね?最近の城下では物騒な事がよく起こっていると聞くわ」
そっと、クリス兄様に近づき、既に馬に乗っている兄様を仰ぎ見るようにそう言う。
私の言葉に、クリス兄様はクスリと笑いダニー兄様と同じようにポンと私の頭に手を置いた。
「ありがとう。気をつけるよ」
その言葉と笑顔に思わず頬が熱くなり、胸がキュンと痛くなる。
この想いを自覚したのはつい最近の事だった。
「ぅん・・・・」
クリス兄様へ返事を仕様にも、思わず赤くなった顔を隠すかの様に私は慌てて下を向いた。
「さぁ、リーナは下がっておいで。そんな所にいると馬に蹴られてしまうよ」
私の想いになど全く気付いていないクリス兄様に、思わず私は叫んでしまった。
「クリス兄様!!私、兄様が戻られたらお話したい事があるの!!」
顔を真っ赤にしながらそう叫んだ私を、不思議そうに見つめ、クリス兄様はわかったと返事をしていつものように城下へと降りて行った。
「あぁあ・・・!!どうしましょう!!思わずあんな事言ってしまったけど、戻ってきたときどうすればいいの!!」
赤くなった頬を隠すかの様に、両手を頬にあてながら2人の姿が見えなくなるまでその姿を見送った。
そして、頬の火照りが冷めるまであたりをうろうろと散歩していた時、ふと、強い風が吹いた。
その風に私は思わず立ち止り、風が流れて行った方を眺めた。
「リリナ様?いかがなさいましたか?」
城に滞在しているときには、いつもついていてくれる侍女に声をかけられてハッとし、声をかけてくれた侍女に視線をやると、侍女は急に立ち止まった私を心配そうに見ていた。
「・・・・いいえ。なんでもないわ」
なぜ立ち止まってしまったのか自分でもよくわからない。
「風が強くなって参りましたし、お部屋の方へ戻られてはいかかでしょう?」
侍女は、私の様子を伺いながらそう問いかけてきた。
「・・・・・そうね。・・・そうしましょう」
侍女から目をそらし、再び風が過ぎ去った方へ視線をやる。
なぜだか、この時に何かが心に引っかかったのだ。
それが何かはわからなかった。
侍女に促されるまま、私は城で与えられている部屋に戻り暖かいお茶を飲んだ。
それでも、どこか心の中がざわざわして落ち着かない。
ふと、窓の外に目をやると、いつもはないものがそこに立ちあがっていたのだ。
「っ!?・・・・・だ、誰か!!」
思わず椅子から立ち上がり窓の傍へと走った。
私の声に扉の外で控えていた侍女と騎士が慌てて部屋へとはいってくる。
「リリナ様!?いかがなさいました!?」
侍女は部屋へ入るなり窓にへばりついている私を見て声を上げる。
「町が・・・・」
声が出なかった。そんな私の様子に、侍女が傍まで走り寄って同じように窓の外に目をやった。
「っ!!」
侍女が息をのんだのが分かった。
「今すぐリリナ様を安全な場所へ!!リリナ様、失礼します」
侍女はすぐに持ち直すと騎士へと叫び、私の肩をそっと支えるように抱いた。
「ここは危険です。どうぞこちらへ」
侍女に支えられ、騎士の言うまま身体を動かす。が、目の前に広がっていた光景が頭から離れない。
「・・・・・ど、どう・・・いうこ・・・と・・・なの?な、なんで町が燃えているの!?」
私の叫びに、誰も何も答えない。
「ね、ねぇ。なぜ・・・・・・なぜ、城に向かって人々が押し掛けてきているのっ!?」
誰もが目を瞑り、唇を噛んで堪えている様な表情で足を進めていた。
「誰かっ・・・・っ!ねぇ・・・っ!誰かっ!!教えて!!」